ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

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第39話:代償

 辺りを塗りつぶしていた雪のような白色は、勝敗がついた事で徐々に薄まっていき、やがて見慣れたドレミ界の景色へと戻った。

 

「俺の勝ちだ、ヴァーディクト」

 

 最後の攻撃をもろに受け、仰向けに倒れたヴァーディクトに話しかける。それは聞こえたようで、ヴァーディクトは起き上がった。

 けれど。

 

「この僕が、負けた……?」

 

 どうやら、自分が負けた現実が受け止められないらしい。自分のデュエルディスクを見て、呆けたように呟いている。

 だが、デュエルディスクは俺の勝利を示していた。ヴァーディクト側のライフも0と表示されている。ここに表示されている結果が全てだ。

 

「僕は、神に選ばれたんだぞ……世界をやり直すんだ……こんな奴に負けるなんて、あり得ない」

 

 立ち上がったヴァーディクトの顔には、さっきまでいやというほど見てきた笑みはない。あるのは焦りと、困惑。

 力なく頭を押さえているヴァーディクトに対し、俺は同情も怒りも何も感じず、告げる。

 

「諦めろ、お前は負けたんだ」

 

 びくんとヴァーディクトは震えたかと思ったら、動きを止める。

 そしてすぐに、何かを思いついたかのように俺を見て笑顔を浮かべると。

 

「……分かったよ、ここは大人しく引こう」

「?」

「だけど僕は、僕の目的を全うする。世界を創りなおす、その意志は変わらない。君がまた止めようとするのならそれでもいい。だが、二度目はない」

 

 この期に及んで、自分が間違っているとは思っていないらしく、考えを改めるつもりもなかった。

 だが、デュエルの前にヴァーディクトは、驕り高ぶったが故に、負けたらどうするかを言わなかった。だから、初めから勝っても負けても行動を改めるつもりはなかったのかもしれない。ちゃんと条件を決めなかった俺にも落ち度はある。

 ヴァーディクトの事は()()()()()()()()()()が、やろうとしている事は止めなければならない。どうしたものか。

 

「……?」

 

 その矢先、ヴァーディクトかデュエルディスクを収納しようとすると、そこに収められていたデッキが淡い紫色の光を放ち始めた。それはヴァーディクトも意図していないもののようで、彼もまたディスクにセットされたデッキを見る。

 だが突然、その光を放つデッキが、ガラスの砕けるような音とともに、粉々に崩れ落ちた。

 

「なんで、どうして……!?」

 

 地面に落ちるデッキの欠片を見て、慌てふためくヴァーディクト。

 しかしそれだけで終わらず、落ちた欠片が黒ずんでいき、ボヤのように黒い煙を吐き出し始めた。その上、さっきヴァーディクトが手下にしていた通常モンスターカードを投げ捨てた辺りからも、同じように黒い煙が上がり始め、ヴァーディクトに迫っていく。風が吹いているわけでもないのに、煙はヴァーディクトへ向かい、俺の方には全く流れてこない。

 

「うわ……」

 

 思わず俺も、声を出さずにはいられなかった。

 ヴァーディクトに迫る黒い煙は、まるで骸骨、死霊のような形をしていたから。

 

「やめろ、来るな! 僕に近づくな!」

 

 ヴァーディクトは半泣きになって黒い煙を腕で払うが、それでも死霊の煙は纏わりついてくる。しかも、ヴァーディクトの腕や脚を掴み、さらにはその顔を掴むものまで出てきた。ざっくり見ればキスする寸前に見えなくもないが、そんなロマンチックさは微塵もない。

 

「やめろ、助けて……バトレアス、助けてくれ! 頼む、何でもするから!!」

 

 ついには半泣きになって、俺に向かって腕を伸ばして助けを求めてきた。完全に余裕を失い、顔が恐怖に染まっている。

 けれど、俺がどうこうするよりも早く、ヴァーディクトの身体は黒い煙に覆いつくされた。

 

「嫌だ、こんなところで死にたくない!! 僕は、僕は世界を変えられるんだ!! 救世主になるんだ!! 助けて、たす――」

 

 命乞いも空しく、ついには頭の先まで黒い煙が覆い尽くし、声も聞こえなくなった。

 直後に、穏やかな涼風が吹く。黒い煙は何の抵抗もなく、蝋燭の火みたいに簡単に吹き飛ばされて消え去った。

 後に残っていたのは、ヴァーディクトがさっきまで付けていたデュエルディスクだけだ。

 消え方は、侵略者が姿を消す時と似たような感じだった。けれど恐らく、ヴァーディクトは存在そのものを消されたのだろう。精霊界でも明らかに普通ではない状況だったし、何よりヴァーディクト自身が死ぬのを理解しているような状態だった。無事で生き延びているとは思えない。

 神様とやらから授かった力を悪用した上で負けたからか、今まで手下にしてきた通常モンスターたちの恨みか。どうしてあんな目に遭ったのかの真相は分からないが、俺の知るところではなかった。

 

「皆を、どうにかしないと……」

 

 そんな事より、ドレミコードの皆が十字架にかけられたままだ。まずは、彼女たちを助けなければならない。

 だが、ヴァーディクトの力がなくなったためか、白い十字架がみるみるうちに溶けていた。その高さが低くなるにつれて縛っていた鎖も千切れ、ドレミコードの皆はやがて地面に倒れ伏す。

 その中で。

 

「……う」

 

 クーリアが、意識を取り戻したのか起き上がろうとしていた。

 俺は、自然とクーリアの下へ歩き出す。

 

「……バトレアス……?」

 

 そして、顔を上げたクーリアは、俺の顔を見て、はっきりと名前を呼んでくれた。

 その声と顔に、安心感を抱いた直後。

 

「――――」

 

 声を出す間もなく、まるで電気のスイッチを切るように、俺の意識はぶつりと途絶えた。

 

◆ ◇ ◇ ◇

 

 エンジェリアは、バトレアスと街に出かけた先でテロ騒ぎに巻き込まれ、はぐれた末にヴァーディクトに捕まり、脅迫されてドレミ界へのゲートを開いてしまった。

 そうしてドレミ界に乗り込んだヴァーディクトは、まずエンジェリアと、休養日で屋敷に残っていたエリーティア、そして丁度クルヌギアスの下から戻ったクーリアを拘束。さらに各世界に赴いていたドレミコードたちをも強制的に連れ戻し、同じように十字架に吊るして、異変を察知し駆けつけたミューゼシアをデュエルで倒した。

 その直前、ミューゼシアはバトレアスのデュエルディスクに仕込んだ魔術的な通信術式を使い、こちらへ呼び戻したのだそうだ。

 

 クーリアは、各々が話してくれた事を受け止め、胸を押さえる。

 まさか、こんな事になってしまうなんて。

 クーリアも巻き込まれた身だが、皆が拘束された経緯は分からなかった。覚えているのは、屋敷のホールに戻った直後、緑の衣を着る銀髪の天使からレイピアのような武器を向けられた事だ。その後、すぐに意識を失った。

 その時の事を思い出すと寒気が走る。それはクーリアに限った話ではなく、ヴァーディクトが犯した罪は、ドレミコードの皆の心に大なり小なりの傷を残していた。誰もが思い詰めた表情を浮かべ、皆の明るさは以前よりも暗くなっている。

 けれどそれは、今もクーリアの心を焦らせてやまない、現在進行系で発生している問題もあるだろう。

 

 あの日から3日。

 クーリアの目の前で倒れたバトレアスが、一向に目を覚まさないのだ。

 

 

「グレーシア、どう?」

「……精神状態は、穏やかです。恐ろしいほどに」

 

 バトレアスの内面を診ているグレーシアに尋ねる。最後に付け加えられた言葉だけでなく、その表情まで不安そのものだったため、クーリアもまだ安心しきれない。グレーシアもかなり追い詰められているのが分かった。

 

「……ごめん。私のせいで」

 

 そしてエンジェリアは、バトレアスの傍についてその手を握っている。自分がヴァーディクトに脅された結果、このような事態になってしまったと思い込んでいるため、エンジェリアは特に重く受け止めている。だが、それは間違いだ。エンジェリアが悪いわけではない。それをクーリアは理解しているからこそ、そっとその肩に手を添える。

 しかしやはり、一向に目を覚まさないバトレアスの事は不安でならなかった。今こうしてエンジェリアが手を握っていても、バトレアスの方からその手を握り返すような反応はない。

 その枕元には、クーリアの妖精体が正座をしている。悲しそうな顔で、バトレアスの頬を労わるようにペタペタと触っていた。それでもなお、何ら反応を示さない。

 試しにクーリアは、心臓の位置に手を当ててみる。鼓動は伝わってくるから、死んでいるわけではない。それは真っ先に確認しているが、それを確かめないと「そう」なってしまったのではと疑ってしまうほどだ。

 

「……失礼するわ」

 

 その時、ノックもそこそこに部屋に誰かが入ってきた。ミューゼシアと、アロマの庭でトップに位置する《アロマリリス-マグノリア》だ。クーリアもアロマを取りに行った事が度々あるので、面識はある。

 

「すみません、早速で申し訳ありませんが診てもらえますか」

「分かったわ。少し時間を頂戴」

 

 ミューゼシアが促すと、グレーシアとエンジェリアが一旦そこを離れ、クーリアの妖精体も姿を消す。

 マグノリアは、バトレアスのベッドの傍に膝をつくと、人の背丈ほどはある杖を異空間から取り出し、その先端についているアロマキャンドルに火を灯す。部屋の中が徐々に甘く優しい香りに包まれていき、クーリアも少しだけ安心感を覚えた。

 さらに、外からマグノリアがやってきた事で、キューティアやエリーティアと言った他のドレミコードも集まってくる。

 親交のあるアロマの庭の住人とは言え、外部から人をドレミ界に招き入れる事は全くと言っていいほどない。それだけ今が異常事態であると皆も理解したからだろうが、あまりマグノリアの集中を切らすような真似をするのは、と思う。けれどマグノリアは優しく微笑むだけで、出て行けとは言わなかった。

 

「……」

 

 マグノリアがバトレアスの身体に手をかざすと、その手が淡い緑色の輝きを放ち始める。恐らく、あの光で状態を詳しく確かめているのだろう。

 時間にして5分ほど、マグノリアはじっくりとバトレアスの頭からつま先までをその緑の光で照らし、やがてその手を引いた。緑の光もやがで消えていく。

 

「……あの、どうなんですか。バトレアスさんは」

 

 それを見計らって、不安そうに尋ねたのはファンシア。マグノリアは杖を仕舞い、立ち上がると穏やかな笑みを浮かべた。

 

「……大丈夫よ。今のままで」

「ホント!? よかった……」

 

 マグノリアが答えると、ドリーミアは安心したように胸を撫でおろす。キューティアやエリーティアもほっと息を吐いて、ファンシアは少しだけ涙ぐんだ。やはり、その情報だけで安心できたのだろう。エンジェリアとビューティアも、頷き合っている。

 けれど。

 クーリアは、今のマグノリアの答えにどこか違和感が拭えなかった。それは自分だけではないらしく、グレーシアとミューゼシアも腑に落ちないような顔をしていて。

 

「さて、と。クーリア様、ミューゼシア様、ちょっとよろしいかしら?」

 

 マグノリアに呼ばれ、クーリアはミューゼシアと共に話をする場所を別に設ける事になった。どこにすべきか迷ったが、結果として選んだのはクーリアの部屋だ。ここなら他の人が来る事もあまりない。

 

「……バトレアスの容態、良くはないんですか?」

 

 そして部屋の扉を閉めたところで、ミューゼシアがマグノリアに問いかける。

 嫌な話だが、それはクーリアもある程度予想していた。こうして場所を移して話をするとなれば、いい話が聞けるとはとても思えない。

 

「……落ち着いて、冷静に聞いてほしいの」

 

 マグノリアからも笑みが消えた。まさにミューゼシアの言う通りの状態である事が予測される。

 クーリアは唾を飲み込み、自分に冷静で落ち着くよう言い聞かせて、マグノリアの言葉を受け止める準備をする。

 けれど。

 

 

「……彼の命、もう長くないわ。明日の朝も迎えられないと思う」

 

 

 それは、あまりにもな言葉だった。

 クーリアは、途方もない孤独感に襲われたように錯覚する。

 

「……今、彼はどういう状態なんですか?」

「心はほとんど死んでる。身体はかろうじて生きている、という感じよ」

 

 ミューゼシアの質問に対する答えは、さらに追い打ちをかけてくるものだった。耳を塞ぎたくなってしまう。

 グレーシアは、精神は安定していると言っていたのに。いや、心が死んでいるからこそ、振れ幅というものがもう存在しないのだろう。

 

「私のアロマの力でも、あなたたちの『浄化の音色』でも……彼はもう救えない」

 

 身体の中で、感情と臓器がごちゃまぜになるような感覚。

 けれどクーリアの頭は、まだ冷静さを残していた。

 なぜそんな事になったのか。少なくとも、エンジェリアと一緒に出かける前までは何ともなかった。

 つまり、クーリアが知らない間、別の世界に行ってから、ヴァーディクトに拘束された自分が目覚めるまでの間に何かあった。そして、屋敷の前に残った形跡から、バトレアスがヴァーディクトとデュエルをしていたのもほぼ分かっている。

 とすると、こんな状況に陥った原因はかなり絞り込めた。

 

「……っ!」

「クーリア?」

 

 ミューゼシアの制止も効かず、クーリアはバトレアスの部屋に向かう。そこでは皆が驚いたようにこちらを見るも、「心配しないで」と雑な返事しかできずに、バトレアスのデュエルディスクを回収して自分の部屋に戻る。

 先日ミューゼシアが直したばかりなのに、デュエルディスクにはもう傷がついてた。それより気にすべきなのは、そこに収められているカード。デッキとエクストラデッキをつぶさに確かめると、明らかに異質なカードがあった。

 《ファインドレミコード・バトリア》。

 《グランドレミコード・ファンタジア》。

 同じ【ドレミコード】を使うクーリアも知らないカードだ。

 

「原因は……きっとこれかと」

「……なぜ、バトレアスはこんなカードを?」

 

 手に取った2枚を、ミューゼシアとマグノリアも不思議そうに覗き込む。だが、クーリアもなぜこのカードを持っているのかは分からなかった。

 その時だ。

 

『ここは、妾の出番かの?』

 

 クーリアにとっては聞き慣れた声が響いた。

 机に置いていたバトレアスのデッキ。それを見ると、一番上にあったカードが輝きを放ち、次の瞬間にはクルヌギアスが目の前に立っていた。

 初対面と思しきマグノリアは度肝を抜かれたようだが、クーリアは気にしない。神のクルヌギアスなら、自分の力を宿したカードから実体化するぐらい造作もないだろう。何より、今はそんな事にこだわっている場合ではない。

 

「……何が起きたか、ご存じなんですか」

「ほう。この状況で全く動じないとは、貴様もよほど――」

「教えてください!」

 

 クルヌギアスに、神相手にこんな剣幕で話を聞く事なんて今まで一度もなかった。

 だけど今は、最早一刻の猶予も許されない。

 

「……よかろう」

 

 それに押されてか、クルヌギアスもゆっくりと話してくれた。

 やはりバトレアスは、ヴァーディクトとデュエルをしたようだ。だがそのデュエルは、今までよりも遥かに過酷なもので、やっとの思いで呼び出したクルヌギアスをも倒され、肉体的・精神的なダメージも凄まじかったのが明らかだったという。

 

「途中で破壊された妾には、その後の詳しい状況は分からん。しかし、あやつが何か新しい力を手にしたような感覚は、なんとなく伝わったの」

「それが……この2枚のカードである、と」

「……なるほどね」

 

 クーリアが見せた2枚のカードを、クルヌギアスは興味深そうに眺める。

 そしてマグノリアは、何かを理解したのか頷いていた。説明を求めるようクーリアが目で訴えると、マグノリアは口を開く。

 

「私のところにも、彼と同じく人間界から転生した子がいる。その子は、元からこの精霊界にいるベルガモットとつながりを持って、新しい力を得た」

「……伺っています」

「それでも、知る限りの前例はそれだけよ。だからこれから話す事は、あくまで仮説という事を念頭に聞いてほしい」

 

 はい、とクーリアが頷き、ミューゼシアも黙って首肯する。クルヌギアスは腕を組み、話を聞く姿勢をとった。聞かれたところで、恐らくクルヌギアスは場を乱す真似はしないだろう。

 

「言うなら、人間がそうした新しい力を宿すには、正しい手順を踏むのが必要なのよ」

「正しい手順……?」

「まず大前提として、転生した彼らにも、私たち精霊界の存在にも、『体の器』と『心の器』があるの。そのどちらも、私たち精霊界の存在のほうが人間より遥かに強く丈夫よ」

 

 ミューゼシアは黙って首肯している。

 

「逆に人間はそのいずれも脆い。この状態で、私たち精霊の力をそのまま宿せば、心も体も耐えられず崩壊する。精霊の力とは、そういうものなの」

「……」

「だから、もし人間が精霊の力を宿すのであれば、相応に心と体の器を強くする必要があるわ」

 

 ほう、とクルヌギアスは興味深そうに相槌を打っている。

 

「私のところの子たちは、()()()()を持つ事で、その人間の子の器を強くし、結果として精霊の力を受け止めて扱えるようになった」

「……つまり今、バトレアスは人間の心と体を持ったまま、『強引な形で』精霊の力を受け入れてしまったと」

 

 クーリアの推測に、マグノリアは頷く。

 

「でも、今までバトレアスは、私たちの浄化の音色や、あなたたちのアロマの香りに触れる機会が何度もあったのですが……」

「確かに、それらにも精霊の力は多少含まれている。だけどそれは、精霊の力がかなり希釈されたものと言えるでしょう。でなければ、とっくの昔に彼はもう壊れてるわ」

「……」

「そして、薄まっていても精霊の力に触れ続け、それらの積み重ねが、力の通り道……とでも言うべきものを作り上げ、それを辿って彼は精霊の力を強引に手にした」

 

 多分だが、それらに加えて決定的な出来事は、クーリアの妖精体に力を貸して、クーリアに新たな力――カードを与えた件だ。あれで、マグノリアの言う「力の通り道」は、確かなものになってしまったのだろう。

 そしてバトレアスは、ヴァーディクトに勝つための力を強く願ったがために、その道を通じて精霊の力を手にしてしまったというわけか。

 

「『人間』のままだからこそ、彼は精霊の力を受け止めきれず、心が潰れ崩壊し、体もまた死につつある。身体がなければ心もない、だから先に心が死んでしまったのよ」

「……本当に、もう助からないんですか」

 

 恐る恐る、クーリアは尋ねる。

 どうしてこんな事になったのかは分かった。

 なら次に聞きたいのは、助かるかどうかだ。

 その答えを聞くのはとてつもなく恐ろしい。けれど、わずかにそれが残っているのなら聞かずにはいられない。

 

「……助かる方法は、ただひとつ」

 

 希望が示される。

 たったひとつだけでもあるのなら、それに賭けたい。

 だが、マグノリアの表情は険しかった。

 

「けれどこれは……極めて大きな覚悟と責任が伴う」

「……」

「あなたたちにとっても……彼にとっても」

 

 そう前置きをした上で、マグノリアはその「方法」を教えてくれた。

 

◇ ◆ ◇ ◇

 

 「方法」を話してくれた後、マグノリアは自らの世界へと戻っていった。自分にできる事はもうない、と。その方法を実行するべきは自分ではない、と告げて。

 

「さて、どうしたものかの?」

 

 一緒にそれを聞いていたクルヌギアスは、指で自分の顎を撫でて思案する仕草を取る。

 一方のミューゼシアは、マグノリアの話を聞いた今、崖っぷちに立たされているような気分だ。

 バトレアスの状況は理解できたし、話も飲み込めた。そして、彼を助ける方法を実行できる力がある。

 けれど彼女の言った通り、その方法は中々に罪深い。簡単に、ひょいとできるものではなかった。

 

「どうする、貴様らのどちらかがやるか?」

「……」

 

 クルヌギアスに問われるが、ミューゼシアはすぐに答える事ができない。自分と同じ、それだけの力を宿しているクーリアも、この判断は迷っているらしい。

 

 ミューゼシアは、バトレアスがこのような事態になったのは自分のせいだと考えてもいる。

 あの時、ヴァーディクトとのデュエルで負ける直前、ミューゼシアは密かにバトレアスのデュエルディスクに仕込んだ通信術式を使い、彼をドレミ界に連れ戻した。

 そうしたのは、バトレアスの強さを、実際に戦いさらに何度も見て知っていたから。彼なら勝てると信じていたからだ。

 しかし結果は、勝利はしたものの、バトレアスに多大な負担がかかり、死の瀬戸際にまで追い込まれている。

 そうなった責任は自分にあると言っていい。だから、「それ」を実行するのも辞さない心構えだ。

 けれど、その判断を鈍らせてしまうのは、マグノリアが話した代償だ。それをバトレアスに言わないまま、勝手に負わせてしまうのは難しい。

 

 そんな迷うミューゼシアと、クーリアを見て、クルヌギアスは。

 

「何なら、妾がやっても良かろう」

「え……?」

 

 実に突拍子もない発言だった。ミューゼシアも驚きのあまりぽかんと口を開けている。

 

「あやつには妾の下へ来るよう命じておる。この妾との約束を反故にして死ぬなど罷りならん」

 

 それにな、とクルヌギアスは続ける。 

 

「お主らが『そう』したら、綻びも生じるだろう。が、妾はこちらの世界の存在ではない。その責任を負うてもよいと言っておる」

 

 ふ、と笑うクルヌギアス。

 普段の尊大さからは全く考えられない申し出に、クーリアは面食らい、ミューゼシアは思わず笑みをこぼしていた。

 

「……驚きました。貴女がまさか、我々の事を気遣うだなんて」

「まぁ、妾も力を貸し切れんかったが故、今回の事があったと言える。このまま背を向けるのは、少々寝覚めが悪い」

 

 バトレアスは、ヴァーディクトとのデュエルでクルヌギアスを呼び出し、それでも突破されてしまった。結果として新しい力を頼らざるを得なかった。

 単純に、相手が未知のカードを使ったから誰も責められないだろう。けれど、クルヌギアスもそれなりの呵責というものはあったらしい。それは非常に驚きだ。

 

「で、どうする? 本当に『その気』がないのなら――」

「私がやります」

 

 だが、ここで名乗りを上げたのは、クーリアだった。それも迷いなく、力を込めて。

 ミューゼシアとクルヌギアスが、揃ってクーリアを見つめる。ミューゼシアは、それですぐさま背中を押すような真似はできない。クルヌギアスも、揶揄うような感情は見せなかった。

 

「……あなたも、事の重大さは理解しているわよね? 方法は兎も角、結果としてどうなるか」

「はい、十分に。だからこそ、私がそれをやります」

 

 ミューゼシアは、今まで以上に真剣に問う。

 だがそれでも、クーリアの意思は変わらないらしい。

 

「バトレアスの事は見捨てられませんし、皆も彼を喪えば大きく悲しむでしょう。しかし一方で、彼を助ける方法が危険で、かつ大きな責任を伴う罪深い事も理解しています」

「……」

「けれど私は、それを全て承知の上で、彼を助けたい。そしてその後、何がどうなるとしても、私は全てを受け入れ、責任を取るつもりです」

 

 不思議な事に、そう告げるクーリアの言葉は、まるで実体を持っているような重みと圧がある。瞳の奥で感情が燃え盛っているのを幻視する。

 何より、クーリアが握りしめている左手。そこからポツポツと血が滴り落ちていて、白いカーペットに小さな赤いシミができていた。

 

「彼は私にとって……ドレミコードの皆にとって、大切な人ですから」

 

 それだけ告げて、クーリアは毅然とした態度でミューゼシアを見る。

 クルヌギアスは、満足げに笑っていた。クーリアの意思の強さを理解したらしい。

 そしてミューゼシアは、考える。

 無論、皆がバトレアスを助けたいというのであれば、リスクや責任を全て背負ってそれをする覚悟はあった。

 だが、今目の前にいるクーリアは、ミューゼシア以上の強固な意志と覚悟を持って、その役を買って出ているように思う。

 そこには、ミューゼシアがバトレアスを大切にしたいと思う気持ち以上の、彼に対する何かしらの思いが秘められているようだ。

 

「……分かったわ。あなたに任せる」

 

 それらを考慮し、ミューゼシアも頷く。

 どう転ぼうとも、ケアはするつもりだ。

 けれど同時に、世代交代も近い事を密かに感じ取った。

 

◇ ◇ ◆ ◇

 

 その日の夜、クーリアはバトレアスの部屋を訪れた。

 防音性故に、外からは何も聞こえなかった。けれど部屋に入れば、ハーモニカとアコーディオンの穏やかな和音に出迎えられる。

 

「あ、クーリア様……」

「こんばんは」

「遅くまでありがとう、2人とも」

 

 バトレアスがいるベッドの傍で、キューティアとファンシアがタクトを振っていた。傍には、それぞれの妖精体が自らの楽器を持って静かに漂っている。

 

「……どうかしら、バトレアスは」

「それが……」

「まだ……」

 

 聞いてみるが、やはりキューティアとファンシアの表情からして目覚めてはいないらしい。

 分かっていた。

 それでも、ほんのわずかな希望を信じずにはいられなかったから。

 

「……2人とも、今日はもう休みなさい。後は私が診るわ」

 

 この2人に限らず、他のドレミコードたちも体力と気力さえあれば彼の傍で妖精体と演奏をしているのは知っている。普段は当たりの強いドリーミアさえそうしていたのだから、バトレアスの人望は厚いのをクーリア自身も実感する。

 そしてそれは、誰もがバトレアスを救いたいと思っている事に他あるまい。

 だけど、これは残酷な話になってしまうから絶対に言えないが、どれだけドレミコードの「浄化」の旋律を奏でようが、無駄なのだ。最早バトレアスは、それだけで回復できる状態にない。明日の朝にはもう帰らぬ人となる。

 だから今、クーリアがドレミコードの皆にできる事は、これ以上皆が力を使って疲弊しないようにするだけだ。

 

「……すみません」

「おやすみなさい、クーリア様」

「ええ、お休み」

 

 ファンシアが頭を下げ、キューティアもしょぼんとした顔で部屋を後にする。それぞれの妖精体も一息ついてから姿を消す。

 だが、2人が部屋を出る直前。

 

「あの、クーリア様」

「?」

 

 キューティアが潤んだ瞳をクーリアに向けてきて、純粋な疑問を呈す。

 

「バトレアスさん、元気になるんですよね……?」

 

 石の礫を投げつけられたような感覚がした。

 だけどクーリアは、自分の中に淀む不安や緊張を押し殺して。

 

「……ええ」

 

 笑って、誤魔化した。

 するとファンシアは、キューティアの肩に黙って手を置き、部屋を出ようと目で告げる。それを受けて、キューティアも一礼をしてから部屋を出た。

 2人が出て行ったのを見届けてから、クーリアはベッドの傍に膝をつく。

 

「……」

 

 試しに、横になっているバトレアスの手を握ってみる。優しく力を籠めたり、お互いの指を絡ませてみても、反応は一切ない。体温は、まだ温かさが残っていた。

 バトレアスの胸に耳を当ててみる。心臓の鼓動は、まだ伝わってくる。死の間際にも関わらず、穏やかな律動を繰り返していた。

 

「本当に……あなたは……」

 

 言葉がぽろりとこぼれてしまう。それは、普通なら聞こえるぐらいの大きさなのに、バトレアスは全く反応しない。

 すると、クーリアの妖精体がバトレアスのすくそばに現れ、その髪を撫でる。前は、クルヌギアスの話を聞いて怖くなり、傍について離れなかった彼女。だが、ぴくりとも反応しない事で余計悲しくなったのか、ぽろぽろと妖精体は泣き出してしまった。

 その妖精体の頭を優しく撫でてあげると、悲しみに耐えかねたように姿を消す。

 

「……」

 

 クーリアだって同じだ。

 このどうしようもない事態に、涙が出そうになる。悲しさに、押しつぶされそうになる。

 

 今まで自分は、ドレミコードのリーダーとして皆を率いてきた。それは、バトレアスというイレギュラーな存在を迎え入れてからも同じだったし、その後も変わらないと思っていた。

 けれど、違った。

 

――助けてもらった身として、自信を持って言えます。クーリア様は、グランドレミコードに相応しい方だと

 

 幾度となく、バトレアスには励まされ、時には命の危険をも救われた。負けられない戦いでは、力を貸してもらった。

 受け入れてもらえたから、主君と従者の関係だから。そんな風に、バトレアスは自分を下に置いて、クーリアの助けになるのを当たり前の事だと思って疑っていない。

 だけどクーリアは、違う考えだ。

 リーダーとして皆の上に立っていたからこそ、そうされる事がなかった。それはとても新鮮な事で、嬉しい事だ。時折、恥ずかしいところを見せてしまった事もあった。けれど、クーリアにとって害となりうる事は、何一つとしてなかった。

 そして今度は、自分の命をなげうってでもクーリアを……ドレミコードを救ってくれた。

 

「……っ」

 

 不安や恐れといった冷たい感情とは違う、温かさが胸の中で渦を巻く。

 その温もりを、身体全体に行き渡らせるようにイメージすると、腰の裏から何かが生えるような感覚がした。

 見ればそこには、ミューゼシアと同じ、ピアノの鍵盤のような金色の翼が生えている。グランドレミコードの力を宿した証だ。

 

「初めてこの力を宿した時も、あなたを思った時だったかしら……」

 

 ミューゼシアとのデュエルでの事だ。今と同じように、目の前にいるバトレアスの事を思うと、自然と胸の中が温かくなって、不安や恐れも薄まって、自分ならできると自信を持てた。

 その自信と、心地よい温かさを失わないうちに、やらなければ。

 静かにクーリアは立ち上がり、ベッドで起きないままのバトレアスの上に跨る。腕や脚を踏まないように、慎重に体勢を整える。

 

「……ふぅ」

 

 見下ろせば、バトレアスの顔がある。そこでクーリアは、一度息を吐いた。

 マグノリアから教わった、バトレアスを助ける唯一の方法。その理屈は理解している。その上で、それができるのは、グランドレミコードの力を宿すクーリアかミューゼシア、あるいは神としての力を持つクルヌギアスだけだ。

 あの話を聞いた後、ミューゼシアも覚悟を決めていたのは理解していた。バトレアスを呼び戻したのはミューゼシアだから、そこに責任も感じていただろう。

 それでも、クーリアが進んでその役目を負うと言った理由。それはミューゼシアに話したし、そこに嘘はない。

 けれど、伝えていない本当の気持ちはあった。

 

「お願い。どうか……」

 

 バトレアスの頬を両手で優しく包み込み、ゆっくりとクーリアも顔を近づける。

 彼が死んでしまえば、ドレミコードの皆は悲しむ。勿論それはクーリアも同じだし、ミューゼシアもそうだろう。

 だけどクーリアが悲しむのは、大切な仲間だから、家族も同然だから、という理由だけではない。

 こうして今まで自分に仕え、気遣い、支え、励まし、守ってくれたバトレアスに対する感情は、それだけでは留まらないほどに大きくなっていた。

 迷宮姫の写真集の件や、クルヌギアスの話で嫉妬じみた感情を抱いた理由には、もう疑いの余地もない。

 

 

 クーリアが、バトレアスの事を好きだから。

 愛しているから。

 そんな最愛の人が死ぬ事に、悲しまないものが果たしているだろうか。

 

 

 

 

「……」

 

 そっと、クーリアはその唇にキスをした。

 反応はない。何も返してはくれない。

 それでもクーリアは、自らの舌を捩じ込むように口の中へ入れと、より深く繋がりを交わす。

 自分の中の気持ちを、愛を、力を注ぎ込むように。

 

 

 どれだけそうしていたかは、自分でも覚えていない。

 クーリアは唇を離して、今一度バトレアスを見下ろす。

 相変わらず、眠っているような穏やかな顔だ。

 状況が状況であっても、初めてこうした感情を抱き、こうした行動に出た事で、クーリアの心は温かいを通り越して熱くなっているというのに。

 

「……」

 

 そんなバトレアスの横に、クーリアも寝転ぶ。背中の金色の翼は、いつの間にかなくなっていた。

 これで助からなかったら、という予想はもうしない。それを少しでも考えたら、自分は自分を保てなくなりそうだ。

 なら、もし助かったとして、バトレアスは自らの「状態」を知って、どう思うだろうか。

 だが、どうなるとしてもクーリアは全てを受け入れると宣言したし、そう決めている。怒り狂い罵倒するなら、それを黙って聞き入れる。途方もないほど悲しむのなら、それが癒えるまでずっと傍にいる。激情任せに押し倒してきたら、純潔を捧げてでも慰める。

 それぐらいの覚悟を持って、クーリアはこうした。

 

「……バトレアス」

 

 それがドレミコードを代表して、自分が愛している人を救いたいと願い、行動した事に対する責任。

 どうあっても、自分は共にある。

 そう思いながら、クーリアは静かに眠りに就いた。

 

◇ ◇ ◇ ◆

 

 雲ひとつない青空の下、どこまでも広がる草原。風が吹けば草花が揺れ、擦れる音が心地よい。

 そんな中で、8人の仲間たちと一緒に楽器を奏でる。周りに遮蔽物がないから、音が反射する事はない。だから聞こえ方は屋内とほんの少し違う。

 だけど、とても楽しい。こんな美しい素敵な場所で、大切な仲間たちと一緒に曲を演奏できるのが。

 

 それなのに、何かが足りない気がした。

 

 最後の1パートまで演奏し終えると、皆は自然と喜びの声や息を洩らした。そして皆で握手をしたり、手を叩いたり、頷き合う。ひとつの曲を協力して演奏し終えたのは、達成感というだけでは言い表せない嬉しさがあった。

 それは理解していたし、自分も嬉しいと思っている。やり切ったと心から言える。

 

 だけど、自分の中で何かが欠けている気がした。

 

 思わず、周りを見る。

 キューティアは笑っている。ドリーミアも胸を張っていた。エリーティアは安心したように目を閉じている。ファンシアも笑顔で喜んでいた。グレーシアは余韻に浸るように静かに笑っている。エンジェリアも満面の笑みだ。ビューティは微笑んで頷いていて。ミューゼシアは皆を見て手を叩く。

 そして。

 

 その人は、自分たちに背を向けて、草原を歩き出していた。

 

 待ってほしい。

 行かせたくない。

 離れないで。

 その先には無限に広がるような草原。だけど、それ以上先へ行くと、二度と自分たちを顧みてはくれないような、戻ってこないような予感がする。

 駆け出して、手を伸ばす。声が出ない。

 足音は聞こえているはずなのに、その人は振り向いてはくれなかった。

 それでもいい。この手で引き留める。

 一歩、また一歩と近づいていく。そして。

 

「待って!」

 

 やっと、声が出た。その手を掴み取った。

 それでようやく、その人は振り返ってくれた――

 

 

 

 

 肩を揺すられ、クーリアは目を覚ました。

 爽やかながら、どこか恐ろしさを感じさせる夢を見た気がする。だけどその内容も、今や朧気だ。

 そして夢から覚めたのなら、後は起きるしかない。

 起き上がったところで、クーリアは昨夜眠りに就いたのは自分の部屋ではない事を布団の柄で思い出す。

 そうだ、バトレアスはどうなった。寝る直前は死の間際だった。カーテンから差し込む光で、もう夜が明けてしまったのは明らかだ。マグノリアの言葉通り、助けられなかったらもう死んでいる。

 けれど。

 

「……クーリア様?」

 

 バトレアスは、体を起こしてクーリアの事を心配そうに見ていた。

 生きている。

 2つの瞳には光が宿っている。

 クーリアの事を、ちゃんと見てくれている。

 その声で、名前を呼んでくれた。

 

「……無事、なのね」

「……そのようです」

 

 尋ねてみる。バトレアスは、どう答えていいのか分からないながらも、笑顔を作って答えてくれた。

 クーリアにとっては、それでもう充分だったし、限界だった。

 

「俺は――」

 

 何か言おうとする前に、クーリアはバトレアスを抱きしめた。病み上がりなのは分かっていても、自分がこれまで感じた不安や恐怖の反動で、それを少しでも和らげたくて、強くバトレアスを傍に感じられるように腕を回す。

 昨日までは、触れても反応を示さなかったし、温もりだって薄まっていた。それがクーリアの不安を余計に助長させた。

 けれど、今のバトレアスからは確かな温かみを感じる。

 起き抜けにこんな状況になって、バトレアスも困惑している事だろう。

 それでも、控えめながらも、バトレアスはクーリアの背中に腕を回してくれた。

 

「……ぅ」

 

 感情の堰が崩れたのを、自覚してからは早かった。

 

 

 クーリアは、バトレアスを抱きしめたまま泣いた。

 今まで上げた事のないほどの声を上げ、流した事のないほどの涙を流し、入り混じった感情を、涙と声に乗せて吐き出す。

 喜び、嬉しさ、愛おしさ、安心感、緊張感。

 そして、ほんのわずかに混じる罪悪感。

 収まる気配がないほどに、抱きしめたまま泣き続けた。

 それでもバトレアスは、拒絶する事も止める事もなく、クーリアの背中を優しくさすって、為すがままになってくれる。

 少しの間、お互いが離れる事はなかった。




次回、ひとまずの最終話です。
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