ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

54 / 81
第53話:はじまりの音

 8割方眠っていた頭に響く、甲高いベルの音。

 キューティアは目をぎゅっと閉じながら、記憶と音を頼りにそちらへ手を伸ばし、サイドチェストに置いてある子豚型の目覚まし時計を押さえる。手に伝わる冷たい感触と共に、ベルの音は止んだ。

 そこでキューティアは、もう一度布団を被りなおす。この微睡みが心地よいのだ。

 けれど数秒も経たないうちに意識は覚醒し、やがて起き上がる。

 

「……あふぁ」

 

 ここは自分の部屋。多少はしたなく口を開けてあくびをしても、誰も咎めはしない。しかし、いつまでも寝起きモードではいられないので、速やかに普段着に着替え、パジャマとナイトキャップを畳んでベッドの上に置く。

 カーテンを開ければ、いつものように薄桃色の空が広がっていて、今日も1日が始まったのを実感した。

 

「さてと」

 

 部屋を出て洗面所へ向かい、顔を洗う。

 朝食当番の日は大体これぐらいの時間に起きる。でなければ後2~30分は眠ったままだ。

 しかし今日、キューティアは当番ではない。それでもこうして早起きしたのは、クーリアとバトレアスがいないからだ。

 

「がんばろっと」

 

 自分に気合を入れる。

 言わずと知れたドレミコードのリーダーであるクーリア。そして、キューティアからすればデュエルに強いバトレアス。

 その2人がいない今の状況は、キューティアに「私がちゃんとしないと」という意識を芽生えさせていた。

 もしも、バトレアスと初めて会った日みたいに、どこかの誰かがドレミ界に攻め込んできたら。2人がいない今、そうなればキューティアが戦う覚悟はある。バトレアスと一緒に練習して、デュエルの腕はこつこつ上がり、この間は後一歩まで追い詰められたのだ。慢心ではなく、前よりもずっと強くなった自覚がある。

 だから、今みたいにバトレアスやクーリアがいない時、安心してこのドレミ界を任せられるようになりたい。今はミューゼシアがこの屋敷にいてくれているが、それで安心安全、全部任せられるとはいかないのがキューティアだ。こうして早くに起きたのは、万が一に備えてと言う気持ちからである。

 

――俺は皆のために、戦う力を捨てたりはしない。必ずあなたの、皆の下へ戻ってくる! ここに誓います!

 

 先日のクーリアとバトレアスのデュエルで聞いた、バトレアスの決意。どれだけ自分が怖くても、キューティアたちを守るために戦い、その上で彼はここへ帰ってくる。

 それを聞いてキューティアは、それなら自分が戦わなくても大丈夫、などと楽観的には考えられない。バトレアスの意思を知った事で、キューティアも頼りきりになるのではなく、少しでも安心させられるように強くならないとと思うようになった。

 

(クーリア様とバトレアスさんは、楽しくやれているかな?)

 

 そのバトレアスとクーリアは休暇中。ミューゼシアの計らいで、今は彼女が作った世界で仲良く過ごしている事だろう。そこで何が起きているかは知らないが、あれだけ本音をぶつけ合った後だ。きっと大丈夫だろう。

 外の空気を吸ってリフレッシュしようと思い立ち、キューティアは玄関の扉を開けて外へ出る。

 

「んー……っ、いい気持ち……」

 

 背伸びをして、空の光を直に浴びて、寝起きで凝っていた身体に朝を知らせる。こうすれば、1日はより良いものになるような気がした。

 ただ、屋敷の目の前にあるものを見て、唇がぎゅっと締められる。

 ドレミ界に存在するはずのない植生の植物。それはクーリアが使った「白紙のカード」の影響で生まれたもので、消える気配が全くない。それでドレミ界の生態系に悪影響が及んだりはしないとミューゼシアは言っていたが、あのデュエルでのクーリアの変わりようにキューティアは少なからずショックを受けた。

 

――また……嫌な事が起きてしまいそうな予感がします

 

 初めてあの白紙のカードを知った日、キューティアはそんな予感を口にしていた。実際、その通りになってしまったわけだ。

 かといって、キューティアがクーリアに幻滅したなんて事はない。後でバトレアスからも説明があり、決してクーリアが悪いわけではない事は理解している。そして、そうさせてしまったと自分で謝罪したバトレアスを責める気もない。

 とにかく今は、今のドレミ界の平穏を守る事。そして、あの「白紙のカード」の悪影響をこれ以上引き起こさない事が先決だ。

 

「こんなに、綺麗なのに……」

 

 そう思わせるのは、突然変異で生えてしまった花だ。

 キューティアも「浄化」などで外の世界へ出る事あるし、そこで咲く花を見た事ももちろんある。普段ドレミ界に生えているものとはまた違う、色鮮やかなものから淑やかなものまで色々目にした。

 今目の前に生えているのも、外で見たのとほとんど同じだ。しかし、これはその「白紙のカード」の影響によるもので、自然に芽生えたものではない。

 あんなカードが、こんな綺麗なものを生み出すという矛盾した事実が、何とも言い難い。

 

「……?」

 

 すると、その時だった。

 そんな草花が咲き誇るドレミ界の大地に、「何か」が横たわっている。

 いや、違う。

 「誰か」だ。

 

 

「今日も~いちにち~らんららら~♪」

 

 身支度を終えて厨房へ向かうビューティアは、小声で歌いながら厨房へ向かう。ビューティアは決して朝に弱い方ではなく、むしろ割と早く意識のスイッチを切り替えられる。

 そして今日は食事当番。献立は昨日のうちにベーコンエッグと決めている。しかし、今日はクーリアとバトレアスが不在で、ミューゼシアがいるから作る数には気をつけないと。

 そんな事を考えつつ1階に降りると。

 

「びびびびび、ビューティア様!!」

「あら、おはようキューティアちゃん。どうしたの?」

 

 玄関扉を勢い良く開けたキューティアが、まだ朝だというのに血相を変えて自分を呼んできた。いくら皆の部屋が防音性に優れているとはいえ、女の子がそんな声を朝から上げるのは如何なものか。

 だがキューティアは、そんな事は気にしていられないとばかりにビューティアに駆け寄り、外を指さす。

 

「あの! そ、外に!」

「外に何かあるのかしら? 落ち着いて?」

 

 あたふたと腕をぶんぶん振って外を指差すキューティア。人懐こい小型犬みたいな可愛らしさを何となく抱きつつも、なだめるように、小さな肩に手を置いて優しく尋ねる。

 だが、それでもキューティアの興奮は収まらず、告げた。

 

「女の子が倒れています!」

 

 それを聞いて、事態が全く見えないビューティアもすぐに外へ向かう。

 キューティアに先導されたそこは、件のクーリアとバトレアスのデュエルで植物が突如現れた場所。中でも色鮮やかな花々が咲く一角を、キューティアが指さす。

 

 そこには、確かに少女が倒れていた。

 薄い灰色のボブカットヘアのその子は、キューティアと同じか、それよりやや幼げな外見。着ているワンピースはクリーム色で、裾の部分には髪の毛と同じ色の生地も使われていて、黒いストッキングを履いている。

 

「……すぅ……すぅ」

 

 息遣いは、まるで眠っているようだった。少なくとも、声を掛ける前からすでに手遅れ、と言うわけではないらしい。

 

 そして奇妙な事に、その少女に対して、ビューティアは異物感を抱かなかった。

 バトレアスが初めてドレミ界に転生した時は、違った記憶がある。自分たちとは違う人間、それも転生した存在だからか、あの時はビューティアも違和感を拭えなかった。

 けれど、目の前で眠っている少女を見ても、ビューティアはそう思えない。知り合いのアロマやラビュリンスの皆に対するような、知人だからこその安心感とはまた違う感覚がする。

 ここにいてもおかしくない、という安心感をも抱かせた。

 

 兎に角ビューティアは、キューティアに一旦下がるように手で伝えて、静かにその少女に近づく。この子が何者なのか分からないが、敵とも味方とも区別がつかない。ミューゼシアもまだ起きていない。クーリアがいない今、対応できるのは自分だけだ。

 だから慎重に、横たわる少女の肩に手を置いて、できる限り優しく揺する。

 

「もしも~し?」

 

 声を掛けてみる。

 すると、少女はゆっくりと、目を開けた。髪の色と同じ薄い灰色の瞳、その中心には白い光が宿っている。

 

「……んぅ?」

 

 少女はゆっくりと起き上がると、目をこすってビューティアと視線を合わせる。

 そして、こてんと首を傾げると。

 

「おはよう、ございます?」

 

 透き通った声で、疑問とも取れる寝起きの挨拶を返してくれた。

 

◆ ◇ ◇

 

 朝食の席は、どこかそわそわした空気だ。

 当番のビューティアとファンシアが作ったベーコンエッグとサラダ、ポタージュスープには何の問題もない。どれも美味しいとエリーティアは思う。カリカリのベーコンも、絶妙な焼き加減の目玉焼きも、シャキシャキ触感のサラダも、温かくて甘みのあるポタージュも、どれも完璧な出来栄えだ。

 ミューゼシアが一緒に朝食を摂っているのは普段と違うが、それは昨日の夕食があるから慣れた。ドレミコードのリーダーであるクーリアと、バトレアスが不在なため、万一に備えてとミューゼシアがここに滞在しているのは昨日から。だからもう、エリーティアは勿論他の面々も彼女の存在には動揺したりしない。

 であれば、この異様な空気の原因はただひとつ。

 

「はむ……」

 

 ミューゼシアの隣で、自分たちと一緒にご飯を食べている、謎の少女。淡い灰色のボブカットヘアの少女は、ビューティアが作ったベーコンエッグをもぐもぐ食べていた。

 

「どうかしら? お口に合うといいのだけれど……」

「ありがとうございますっ。とっても美味しいです!」

「それならよかったわ」

 

 屈託のない笑顔で感想を述べる少女に、ビューティアは目を細めた。

 食事を受け入れてもらったのはいいが、彼女は何者なのか。それはエリーティアだけでなく、この場にいる全員も分かっていない。

 エリーティアが起きて食堂に来たら、ビューティアたちがこの少女を介抱していたのだ。彼女は外で倒れていたのをキューティアが発見し、ビューティアと共に屋敷の中へとりあえず運んで、それからお腹が空いているという事でひとまず朝食を用意してあげたわけだ。詳しい事は、まだ分かっていない。

 

「ねぇ、エリーティア。気のせいかもしれないんだけど……」

「?」

 

 隣で食事をしていたファンシアが、小声で話しかけてきた。エリーティアはスプーンを置いて、耳を傾ける。

 

「なんかあの子……他人みたいな感じがしないというか……ボクだけかな」

「いえ……私もそう思います」

 

 同じような感覚をエリーティアも抱いていた。

 以前、ドレミ界に迷い込んだ《竜角の狩猟者》。彼女は人間でありながら、竜の返り血を浴びたために竜になりつつあったという、特殊な体質の持ち主だった。そんな彼女を最初に見て看病もしていたエリーティアは、どことなく違和感を覚えていた。また、バトレアスが転生した当初も、人間の彼に対して妙な感覚を持っていた。

 だけど今、ポタージュスープを美味しそうに飲んでいる少女。彼女を見ても、そういった感覚が全くない。自分たちは知らないはずなのに、この世界にはいなかったはずなのに。異物感が全くない。

 彼女は仲間だと、そんな気がする。

 

「ふはぁ……ご馳走様でした。美味しかったです、ビューティアさん!」

「お粗末様でした」

 

 礼儀正しく、すべて綺麗に食べ終えた少女は、手を合わせてビューティアに挨拶をする。ちゃんと全部食べてくれた事が嬉しいのか、ビューティアはニッコリ笑顔だ。

 そして、彼女の発する声だが、なんだか妙に安心感がある。心を落ち着かせるような、そんな声質だ。1/fゆらぎ、というやつだろうか。

 だがそこで、痛烈な違和感に見舞われた。

 

「……あら? 私、名乗ったかしら」

 

 ビューティア本人も気づいたらしい。

 そうだ、自分たちはまだ自己紹介もしていない。起き抜けの食事前だったし、少女の容体も分からなかったから、それは後としていた。

 なのに少女は、ビューティアの名前を知っている。

 

「えっと、何でだか……私、皆さんの事は知ってるんです」

「え?」

「あなたはエンジェリアさん、ですよね?」

 

 エンジェリアがぽかんとする。少女は自分でもなぜか分かっていないようだが、ドレミコードたち全員を見つつ名前を告げていく。エリーティアの名前も分かっていた。

 

「今はここには居ませんけど、クーリアって方もいらっしゃいますよね?」

 

 少女はさらにクーリアの事まで言及してきた。

 しかしながら、エリーティアはもちろん、他のドレミコードも彼女の事は知らないらしい。なぜ、彼女はドレミコードを知っていて、自分たちは彼女を知らないのか。

 

「……改めて、聞かせてもらえるかしら」

 

 そこでミューゼシアがコーヒーカップを置き、少女へ身体を向けて視線を合わせる。

 

「あなたのお名前は?」

 

 ミューゼシアが尋ねるが、少女は首を傾げる。どうやら、分からないらしい。

 

「……どこから来たか、とかは分かるかしら?」

「ええと……ごめんなさい。気が付いたら、ここにいて」

「誰と一緒にいたとかも、わからない感じですか……?」

「……はい」

 

 キューティアも慎重に尋ねてみるが、やはり有効な答えはもらえなかった。

 

「それなのに、私達を知ってるなんて……」

「中途半端な記憶喪失?」

「そのような感じではないですが……」

 

 ファンシアが首を傾げ、ドリーミアがひとつの可能性を挙げるが、グレーシアは首を横に振った。エリーティアも、あの少女は一部の記憶を失ってしまったという風には思えない。

 

「えと、あの……」

「ああ、ごめんね。別にあなたが悪いってわけじゃないんだよ」

 

 こちらも戸惑っているのに気づいた少女の顔が曇る。そこですかさずエンジェリアがフォローに入った。こういう時に彼女の社交性の高さと明るさは役に立つのだ。

 

「バトレアスさんなら、何か知ってるかも?」

「ああ、ぜん……昔の経験で?」

 

 エンジェリアの意見は悪くないと思う。バトレアスは転生した立場から、前世のデュエルモンスターズの記憶もある。だからもしかしたら、あの少女が何者かを知っているのかもしれない。ただ、少女の前で迂闊に「前世」などと言っても頭がパンクするだろうから、適当に誤魔化しておく。

 

「バトレアス……さん?」

「えっとね、今はここにいないんだけど、私たちにはまだ仲間がいるんだ」

 

 少女は小首を傾げ、エンジェリアが手短に説明する。今日には帰ってくるだろうから、その時に改めて挨拶をすればいい。

 ただ疑問なのは、ドレミコードの面々は知っているのに、バトレアスを知らない事だ。彼が転生した、いわばこの世界には本来いるはずがない存在だからかもしれないが。

 

「あの子も転生した子?」

「可能性はなくもないですが、だとすればこの安心感は何でしょうか……」

 

 ファンシアの考えも間違いとは言い難い。

 しかしながら、彼女に対する違和感のなさと、この安心感は何なのだろう。

 考えても、分からなかった。

 

「それで結局、どうしましょう? ボクらで引き取りますか?」

「それしかないんじゃないかしら……何せ、ほとんど分からないみたいだし」

 

 結局、少女の身元は全く持って不明だ。そして、転生直後のバトレアス以上に何も知らないというのであれば、他の世界に預けるのも危険すぎる。

 そして彼女からは、自分たちに危害を与えるような危険性を感じない。大丈夫だという謎の安心感があった。

 ここは、ドレミ界で引き取った方が安全だろう。ビューティアもそう言うと、他のドレミコードも頷く。

 

「……ちょっと、ごめんなさいね」

「?」

 

 すると、何かを考えていたらしきミューゼシアが動いた。断りを入れると、その少女の灰色の髪に両手を置き、集中するように目を閉じる。手を置かれている少女も、その感覚が心地よいのかすうっと目を閉じていた。

 

「これは……」

 

 するとミューゼシアが、何かに気づいたように声を洩らした。エリーティアを含め全員の意識が、そちらに向けられる。

 

「何か分かったんですか?」

 

 少女の頭から手を離して、ミューゼシアは目を開ける。キューティアが質問すると、ミューゼシアは少女の肩に手を置いて告げた。

 

「この子、皆やその妖精体が持っているような、『浄化』の力を宿してる。それも、私と同じかそれ以上に強いわ」

「え? じゃあつまり……その子もドレミコードって事?」

「でも、ミューゼシア様以上に強いとは……?」

 

 頬に手を当てるエンジェリア、こめかみに指を添えるグレーシアは、いずれも戸惑っているようだ。

 自分たちと同じ力を持っているとなれば、十中八九ドレミコードと言うことになる。その力がミューゼシアより上という理由は分からないが、安心感はそれが理由だろうか。

 

「それと、おかしな事に……」

 

 だが、ミューゼシアはさらに続ける。

 

「この子、ほんのわずかにだけど……クーリアとバトレアスの『力』を感じる」

『……え?』

 

 その言葉に、食堂の空気が止まった。

 

◇ ◆ ◇

 

 夕方の5時頃、俺とクーリアはドレミ界へ戻る事にした。こんなに長居していいものかと少し悩んだものの、ミューゼシアからは今日1日はゆっくりして大丈夫と予め言われたので、ひとまずはそれに甘えさせてもらう事にした。夜になる前に戻ると決めたのは、俺とクーリアの合意の上である。

 

「名残惜しいけれど……そろそろ行きましょう」

「分かりました」

 

 最後に並んで海を眺めてから、クーリアがゲートを開く。海を見る機会はこの先少なくなるから、ここを離れるのは惜しいのだろう。それだけでなく、こうして2人きりの時間と場所を作れなくなるのが残念なのだ。それはもう分かる。

 だからこそ、俺はこの場所で、クーリアの望みにはできる限り応えた。この空間で、2人でできる事は()()()やった。デュエルはデッキがないから無理だし、喧嘩や言い争いも特になかったが、俺とクーリアだけの思い出はたくさん作ったと思う。

 それでも、この時間が終わるのを寂しく思っているようだ。俺は違うのかと言われれば、違わない。

 

「……もしも」

「?」

 

 だからこそ、ゲートをくぐる前に、少しだけクーリアに話しておく。

 

「……また、俺との時間が欲しいってなったら」

 

 クーリアの横に立って、拳を強く握って、その顔を見て告げる。

 こう言えるだけの覚悟と強さは、もう持っていた。

 

「遠慮とかしないで言ってください。できる限り応えます」

 

 その直後に、視界がクーリアでいっぱいになったと思ったら、唇に温かい感触が伝わっていた。

 

「……ありがと」

 

 顔を離したクーリアは微笑んでゲートをくぐる。俺もそれに続いてゲートをくぐると、そこはドレミ界の屋敷の玄関だった。

 

「ただいま戻りました」

 

 ついさっきの出来事は頭の中心に押し込み、これからは今まで通りに従者としてドレミ界の屋敷で過ごす。

 その手始めに、まずはいつものような調子で挨拶をした。返事はなかったが、代わりに足音がパタパタと2~3人分こちらへ近づいているのが聞こえた。

 

「あら、お帰りなさい」

「おかえりー。クーリアさん、バトレアスさん」

 

 まず姿を見せたのはミューゼシアと、ファンシアと……

 

 ミューゼシアと手をつないでいる灰色の髪の少女。

 彼女は見覚えがない。

 

 

「ええと、ミューゼシア様? そちらの子は……」

「今朝がた、屋敷の近くで倒れているのを見つけたの。それで保護したのだけれど……」

 

 クーリアも驚いているらしく、先にミューゼシアへ問いかけた。ミューゼシアも、状況を把握しきれていないのか、説明にも少し困惑が見え隠れしている。

 そこでファンシアが、その灰色の髪の少女に声を掛けた。

 

「あっちの男の人がバトレアスさんね」

「……あの人が」

 

 手で示されながら名前を呼ばれたので、俺は曖昧に笑って会釈をする。

 だが、ファンシアが俺しか紹介しなかったのが少し疑問だ。クーリアも知らないとなれば、恐らく少女は俺や《竜角の狩猟者》みたいにイレギュラーでドレミ界に迷い込んだ存在のはず。にもかかわらず、まるでその少女はクーリアを知っているようではないか。

 そして俺は、その少女に対して、妙な安心感を抱く。初対面のはずなのに、他人のような気がしなかった。

 さらに灰色の髪の少女は、ミューゼシアの手から離れて、俺の方へ近づいたかと思うと。

 

「えい」

「「「「え」」」」

 

 なぜか、俺に抱き着いてきた。それも、強く。

 俺は勿論、クーリアも、ミューゼシアも、ファンシアも絶句していた。

 

「……えーっと、バトレアスは知り合いなのかしら?」

「いえ、全く」

 

 ミューゼシアに言われるが首を横に振る。こんな少女は全く知らない。

 と言うか、少女に抱き着かれた事で、隣にいるクーリアからの視線が妙に鋭くなった気がする。嫉妬なのは言うまでもないが、俺も望んでこんな状況になったわけではないので勘弁してほしい。

 そして、背丈はキューティアと同じぐらいと思うその少女は、少ししてから身体を離すと、今度はクーリアに抱き着く。

 

「……???」

 

 クーリアもまた、俺を見て「なんで?」と言いたげな顔をするが、それはこっちのセリフだ。何故、この名前も知らない少女は俺とクーリアに抱き着いてきたのか、皆目分からなかった。

 

「あっ、ごめんなさい」

 

 そこで少女が、今更になって自分が何をしたか気づいたように体を離す。

 

「その、お2人を見たら、何だかこうしたくなってしまって……」

「「どういう事……?」」

 

 理由になっていない話に、俺とクーリアは声を揃える。

 そこでミューゼシアが一歩前に出た。

 

「……ファンシア、この子をちょっと預かってもらえるかしら」

「分かりました。それじゃあちょっと、あっちでボクとゲームしよっか」

「バトレアスはデッキを持って、クーリアの部屋へ。少し話をしましょう」

「承知いたしました」

 

 少女は決して聞き分けがないのではないらしく、ファンシアの言葉に頷くと、彼女と手をつないで談話スペースへと向かって行った。

 そして俺は、自分の部屋へ戻り荷物を置き、後で片づけるのを念頭に置きつつ、言われた通りデッキを持ってクーリアの部屋へ向かう。こちらの世界で、これほど長い時間デッキを近くに置いていなかったのは初めてかもしれない。

 そしてクーリアの部屋の戸をノックし、断りを入れてから足を踏み入れる。

 

「楽にして大丈夫よ」

 

 そう言われて、クーリアはベッドに腰かけ、俺はどうしたものかと思ったらクーリアに隣に座るよう促された。仕方ないので、ミューゼシアの前と言う状況でも恥を忍びそこへ座る。ミューゼシアは、クーリアの部屋に元々ある椅子に座った。

 

「さて……あなたたち、あちらの空間でちゃんと話はできたかしら?」

「はい」

「それは、もう」

 

 先日のデュエルの件で、俺とクーリアは仲違いをしたと思っているようだ。実際には、気持ちがすれ違っていた。そして、それには話をつけて俺はクーリアと共にある事を決めている。

 

「まあ、その様子だと随分打ち解けられたみたいね」

「ええ、まぁ……」

 

 ミューゼシアが笑って頷くと、クーリアは照れくさそうに頬を掻く。これについて俺は沈黙しつつも、頷くだけにしておいた。何せ、打ち解けたどころではないのだ。

 

「本題は……さっきの子よ」

 

 やはりその話だ。

 とはいえ、俺は勿論、クーリアも何の心当たりもないと見える。俺たちが話せる事は何もないとは思うが。

 

「さっき、ちょっとだけね。あの子の中にある力を少しだけ調べてみたの」

「……どうやってですか?」

「グランドレミコードの力よ」

 

 グランドレミコードのミューゼシアは、世界の淀みを測り、それを「浄化」する旋律を組み上げる。その応用で、人や物の力を読み取る事ができるのだろう。具体的なやり方は、ドレミコードの端くれな俺が聞いても理解できない気がする。

 

「そしたら奇妙な事にね」

「?」

「あの子……私よりも強大なドレミコードの力を宿しているのよ」

 

 グランドレミコードのミューゼシアをして「強大」と評すのであれば、それがどれほどかは漠然とだが分かる。クーリアも、同じくグランドレミコードの力を持っているから、重大さは理解できるようだ。

 

「そして、私を含め他の皆はあの子を知らない……にもかかわらず、あの子はバトレアス以外の全員を知っている」

「……ミューゼシア様も、あの子を知らないんですか」

「ええ。でもドレミコードの力は強い。そして何より、彼女を見ても他人の気がせず、むしろいる事が自然で、安心する」

 

 ミューゼシアの抱く感覚は、まさに俺が今さっき感じたものに近い。いてもおかしくないと、感じてしまうのだ。

 

「……そこでひとつ、仮説が生まれたの」

 

 いいながら、ミューゼシアは腰に提げていたケースから、自らのタクトを取り出す。それに釣られるようにクーリアもタクトを手にし、俺も胸ポケットに差していたタクトを見る。

 

「あの子はいわば……ドレミコードの力そのもの。私たちが宿している力のベースと言っていいものよ」

 

 クーリアと顔を見合わせる。

 あんな小さな子が、ドレミコードの力の源?

 

「バトレアスには馴染みがないかもしれないけれど、私たちはこの世に出現した時から、自分たちの使命を理解していた。この力を宿している事も、自分たちが何者なのかも、誰かに教えられる事なく理解し、長い間この『浄化』の使命を全うしてきた」

 

 それはまた、気が遠くなるほど壮大な話だ。自我を自覚した時から自分が何なのかを理解していたと言うのは、人間だった俺には理解が及ばない。何せこっちは幼稚園時代の記憶さえあやふや、産まれた直後なんて全く知らない。

 そしてミューゼシアの話からして、やはりドレミコードという存在は、精霊界では遥か昔からいたのだろう。前世で彼女たちのカードが発表されたのは数年前だから、やはり時間の流れが全く違う。

 

「だけど、何事も無から有は生まれない。私たちという存在にも、その力にも、ルーツは必ずある」

「それが……あの子だと」

 

 恐る恐る尋ねると、ミューゼシアは「仮説だけれどね」と断りを入れたうえで首を縦に振った。では、そんな少女は、ドレミコードの力はなぜ生まれたのか。そういった事情については、海よりも深い謎だろう。今考えるべきではない。

 

「でも、彼女自身は自分が何なのか分からない。自分がドレミコードのルーツだと気づいていないのでしょう」

「それでも無意識に、私たちの事はインプットされているのですね」

「人間が、産まれた直後の赤ちゃんが呼吸の仕方を理解しているようにね」

 

 ドレミコードの始まりだからこそ、みんなの名前を知っていた。俺を知らなかったのは、やはり転生した存在だからだろう。

 

「ですが……なんで今になってそんな」

 

 少女が何者なのかはある程度分かったが、何故このタイミングで現れたのかが不明だ。

 

「それについては、あなたたちにあると思う」

「?」

「あの子は、あなたたち2人の力をほんの少しずつ持っているの」

「「はい?」」

 

 揃って声を上げる。

 それは当然「なんで」という疑問からくるものだ。

 

「2人もその身を持って理解しているでしょうけれど……本来こちらの世界にいるはずがない転生者と、こちらの世界に元から住む存在。それらが力を合わせると、この世界に新たな力が生まれる……覚えがあるでしょう」

 

 それはもちろんだ。

 俺やクーリア、アロマの庭のラベンダー、さらにはヴァーディクト。そういった事例は忘れていない。

 頷くと、ミューゼシアは俺とクーリアを交互に見た。

 

「バトレアス、あなたは人間からドレミコードに成ったイレギュラーな存在。そしてクーリアは、グランドレミコードの特殊な力を宿した天使」

「……」

「そんなあなたたちが……力を重ね合わせたら、何が起こるかはまた未知数」

 

 そこでミューゼシアは、前に体を乗り出してきた。

 それはまるで、この場に俺たち3人以外誰もいないとしても、他の誰にも聞かせるわけにはいかない話をする、と言うサインに見える。

 

「あなたたちが例の空間で何をしたのかは……まぁ聞かないでおくけれど」

 

 その言い方は、全部お見通しと言っているも同然だ。クーリアが自分のスカートを掴んだのを視界の端で捉える。俺は、穴があったら入りたい気分だ。

 俺とクーリアは、昨夜一線を越えた。ミューゼシアも恐らくは予想しているだろうけれども、それは1回や2回ではない。その事実だけは何としても墓まで死守するつもりだ。

 

「つまり、あの場所でのあなたたちの行動が、ドレミコードの力を具現化させたんじゃないかと思うの」

「……あの子は、ドレミコードの力を大なり小なり持つ私たちが……()()()()()結果、何らかの形で呼応し自我を持ったと」

 

 まだ恥は完全に引いていないだろうに、クーリアが徐に問いかけると、ミューゼシアはこくりと頷く。俺と妖精体が力を合わせて新しいカードを作りだした事の延長線、と言っていいのだろうか。

 

「だから、さっきあの子があなたたちに抱きついたのも……2人の力に反応して覚醒し、少しずつその力を持っているから。あなたたちの意思の影響も、受けているのかもしれないわね」

 

 ミューゼシアの言っている意味が理解できるほどには、俺も多少賢くなれたらしい。クーリアは言うまでもない。

 要は、俺もクーリアも、お互いに触れたいと思っていたから、あの少女はそれに影響を受けて俺たちそれぞれに抱き着いたわけだ。恥ずかしさのあまり顔を両手で覆う。

 

「とはいえ、これはあくまで仮説。前例が他にないし、探しても見つからないでしょうから……すべては予想でしかないけれどね」

「……マグノリア様でも分からないのでしょうか?」

「でしょうね」

 

 安心させるように言うミューゼシアだが、他の例がないからこそ、それが正しいと考えてしまう。グランドレミコードの言葉なら尚更だ。

 ミューゼシアはそこで、俺の手にあるデッキを指さす。

 

「バトレアス、あなたのデッキを見せてもらえるかしら?」

「……どうぞ」

 

 恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだが、それでもミューゼシアにデッキを渡す。カードを1枚ずつ確認していったミューゼシアは、やがて1枚のカードを取り出して俺たちに差し出してきた。

 

「……これって」

 

 受け取ったカードを見て、俺は思わずと溢した。羞恥心から脱したクーリアも、そのカードを覗き込んでくる。

 

 そのカードは、俺もデッキに入れた覚えがなく、それ以前に全く知らないカード。クーリアを見るが、やはりこのカードを知らないらしく首を横に振っていた。

 そのカードのイラストに描かれているのは、間違いなくさっき見た少女。淡い灰色の髪、クリーム色のワンピース。スカートの部分は髪の色と同じような生地が使われている。

 他の「ドレミコード」と同じような雰囲気だが、違うところもあった。それは、カードのイラストに妖精体が写っていない点。描かれている音楽記号が休符ばかりな点。さらにカードの名前に音階が含まれていない。極めつけに、ペンデュラムスケールは0。

 そのカードの名は。

 

「……《ドレミコード・プリモア》」

 

 あらゆる面で、他の「ドレミコード」とは異なるカードだ。そのカードの名前を、ミューゼシアは静かに告げる。

 

「あの子の名は、プリモア」

「……」

「この世界に発現した、新しい存在」

 

 静かに告げたミューゼシアの言葉に、息を呑む。

 精霊界で色々な事象を見て、俺自身が精霊界の事象の結果人間から変わっても、身近に新しい存在が出現する事は流石になかった。それも、俺自身の行動の結果だ。

 だからこそ、俺は事の重大さを痛感した。

 

◇ ◇ ◆

 

 「S-Force(セキュリティ・フォース)」のブリッジヘッド。その中層階にある、総司令官・ジャスティファイの執務室はとても広かった。プラ=ティナやラプスウェルの部屋も中々だが、ここはそれ以上だ。モニターは所狭しと壁に並び、棚には大小厚薄様々な本が納められている。全体的にシンプルなデザインの設えで統一されたそこは、オシャレと言う印象がない。

 執務机の後ろ、ガラス張りの壁からは、ブリッジヘッドの司令本部が見渡せる。今日も局員が忙しなく働いていた。

 そんな部屋に、テータはディガンマと共に入室する。ジャスティファイは丁度、ARモニターで何らかの資料を見ているところだった。

 

「失礼します、司令官」

 

 テータは先んじてジャスティファイの下へ向かい、アクリルケースに収められたカードと、書類を差し出す。ジャスティファイはARモニターを一旦脇に避けて、テータに向き合った。

 

「こちらのカードを再度地下保管庫へ保管したく。申請書を確認していただけますでしょうか」

「分かった。実験結果は?」

「案の定、危険な代物ですね」

 

 書類とカードを受け取ったジャスティファイの質問に答えるのはディガンマ。手にしていたタブレットを操作し、画面をジャスティファイに見せた。

 実験と言うのは、あの押収した「特殊なカード」が人体にどんな作用を及ぼすかを確認するもの。そのために、件の「特殊なカード」を一旦地下保管庫から取り出していた。

 実験内容はシンプルに、そのカードを使ってデュエルをするだけだ。デュエルをしたのは、そもそも「S-Force」がこのカードの存在を知るきっかけとなった強盗団・スナッチスの面々。取引をし、実験に協力すれば何らかの形で還元するというものだ。

 有体に言えば、人体実験。

 テータは気が進まなかったが、「S-Force」を始めこの精霊界ではそういった実験も普通にあるのは、他のデュエルモンスターのカテゴリで知っている。薬の効き目を確かめるための「治験」と同じだと自分に言い聞かせて、どうにか平静を保っていた。

 

「このカードを使った奴ですが、フィールドに出した直後に性格が豹変しました。観測していた計器類も数値が振り切って、兎にも角にもヤバいエネルギーを持っているのだけは確かです」

「……あらゆる用途に使えるエネルギーは、同時に所有者にも多大な悪影響を与える、というのが今回の実験で分かりました」

 

 ディガンマの報告にテータも続く。

 ディガンマが見せているタブレットには、その実験の映像が映されていた。

 カードを使用したスナッチスのメンバーは、突如として高笑いを上げ、狂気に満ちたようにハイテンションでデュエルを行い勝利して見せた。そのデュエル後は気絶し、現在治療中である。

 莫大なエネルギーを宿しているのは知っていたが、使用者にまでこれほどの影響を及ぼすとは。ディガンマの言う通り、このカードは危険だとテータも確信している。

 

「書類は確認した。これは直ちに保管しよう」

「承知いたしました」

「後、こちらは気になるものを見つけた」

「?」

 

 書類とカードを一旦仕舞ったジャスティファイは、宙に浮かぶARモニターをひとつ手元に寄せて、テータとディガンマに見えるよう反転させる。これだけでも結構な未来技術だ。

 

「街の監視カメラを解析していたチームからの報告だ。映像は、まあ少し古いが1か月ほど前のものだ」

 

 「S-Force」は治安維持活動の一環として、ブリッジヘッドを中心に半径十数キロ圏内の監視カメラ映像を、常日頃から解析している。数が多い故に時間がかかるのがネックだが、平和には代えられない。

 ジャスティファイが見せた、そんな監視カメラの映像は、どこかの地区の路地を映したもの。

 眼鏡をかけた黒く長い髪の少女が、1人でうろついているのが見えた。こんな暗く狭い場所を1人で歩くのは不用心だ、とテータは思わなくもない。しかしジャスティファイは、そんな事のためにこの映像を見せてはいないだろう。

 

「……この女、妙ですね」

「?」

 

 先に違和感に気づいたのはディガンマ。テータにも分かるように、映像を指さす。

 

「見えるか? この女の輪郭部分、不自然なノイズが走ってる。多分映像を誤魔化してるな」

「ああ。正確には、現実で姿を偽装しているようだ。それでチームが解析した結果……」

 

 別のモニターを見せてくるジャスティファイ。

 そこに映し出されている、監視カメラ映像を分析して明かした正体に、テータは「あっ」と声を洩らした。

 

「それだけじゃない」

 

 さらにジャスティファイは、最初のモニターを操作し、監視カメラの映像を逆再生する。それは一か所のカメラだけでなく、別の場所のいくつものカメラの映像に繋がり、女の動きを連続して映していた。

 そして最後に映ったのは、「ラーメン鬼火屋」と言うお店の前のカメラ映像。店自体はテータも行った事があるので知っていたが、そこに映っている人物を見て。

 

「……バトレアス」

「覚えているな?」

「あいつか……」

 

 ジャスティファイに聞かれ、ディガンマも頷いている。

 店の前で、黒髪眼鏡の女と親しげに話しをしているのは、テータと同じ転生者のバトレアスだ。その隣には黄色い髪の少女もいるが、立ち位置的にバトレアスの知り合いだろう。

 問題なのは、眼鏡の女と話をしているバトレアスだ。おまけに、ちょっと画面を戻せば、3人は明らかに他人ではなさそうな距離感で店から出てきた。

 

「彼らがどういう関係かは分からない。だが、彼女と接触したという事は何かしらの情報を持っていると考えられる。さらに深く疑えば、何らかの『取引』をした可能性も高い」

 

 ジャスティファイが告げると、ディガンマは机の上のアクリルケースに収められたカードに視線を向ける。

 

「そのカードについて、何かやりとりをしたかもしれない、と」

「あるいは、何かを知っているかもしれない」

 

 ジャスティファイが頷く

 ラーメン屋で取引などするだろうか、とは思えない。逆にこういう場所でそういう話をすれば、気づかれにくいかもしれないから。

 

「……どうしますか」

「彼からは恐らく、情報が得られるだろう。例のカードや、こいつの事も含めて」

 

 アクリルケースに入ったカードと、モニタに映るターゲットを交互に指さすジャスティファイ。

 そして彼は、机の上で腕を組み、告げる。

 

「よって彼を、重要参考人として多次元手配する」

 




ほとんどの「ドレミコード」カードのサーチとサルベージ効果を持ち、プリモ(最初)という名前的に、プリモアはドレミコードでもかなり重要ポジションなんじゃないかなと個人的に考えております。
どうやって登場させるか迷った末、このような形で登場となりましたが、設定はあくまでこの作品独自のものですので、悪しからず。

これにて第二部第1章は終了でございます。
第2章(第5章)はまたしばらくお待ちいただければと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。