1日が終わり、自分の部屋で一息ついていた時だった。
(……何か来る!)
窓の外から感じる、尋常じゃない気配。カーテンの外、ドレミ界では特に何も起きていないようだが、予感を無視できなくて、すぐさま部屋を出て廊下を駆け、玄関扉を開けた。
そうして屋敷の外へ出たのと、夜空に突如として白い龍が現れたのは、ほとんど同時だった。
「あれは……!」
思わず、声を出すほかない。
その白い龍は、全身が硬い鱗ではなく白い羽毛で覆われている。爪は血のように赤く、鼻と口元からはそれぞれ2本ずつ、白く長い髭が伸びていた。夜空を背に飛ぶその姿には神々しさを覚えるほど。
そんな姿の龍は、俺も覚えがある。
デュエルモンスターの、《
「―――――――――――――――ッ!!」
存在を認識した直後、《裁きの龍》が咆哮を上げる。それは到底生き物が発するものと思えない大きさで、耳を塞がなければ鼓膜が破れそうなほど。しかも、声に押しつぶされそうになって片膝をつく。
音に耐えながら周囲を見てみると、屋敷の外壁や窓ガラスに罅が入りつつあった。
「何事……!?」
「あれって……っ!」
そこへクーリアとミューゼシアがやってきて、俺と同じように耳を押さえながらも《裁きの龍》を見上げる。やはりグランドレミコードでも、この咆哮は堪えるようだ。そして、反応からして《裁きの龍》の事は知っているらしい。
さらに他のドレミコードたちも出てくる。時刻は既に夜遅く、全員が寝支度を始めていたところだ。おかげで、普段着どころか完全に寝巻のドレミコードもいるが、それを指摘している場合ではない。
「みんな、逃げて!」
するとミューゼシアは、右手でタクトを振るとゲートを開く。その先がどこかは分からないが、おそらくはミューゼシアが普段旋律を組んでいる上層界だろう。
咄嗟に皆を逃がす判断を下すあたり、ミューゼシアもこれはかなり危険な状況だと思ったようだ。
「バトレアスさんも逃げましょう!」
「俺は後から行きます! プリモア様も急いで!」
ウィズダムと遭遇した時と同様、プリモアは俺にも逃げるように言ってくる。けれど、あの時とは場所が違うにしても、やる事は変わらない。皆を先に逃がすのが先決だ。
プリモアはやはりその場を動こうとしなかったが、エンジェリアに抱えられてやむなくゲートの向こうへと連れられて行った。これなら安全だと、少しだけ安心する。
「ミューゼシア様、小夜丸さんは……!」
「部屋から連れてきて、早く!」
俺とクーリア、ミューゼシア以外が逃げたのを確認した後、ミューゼシアに指示を仰ぐ。それを受けて一度屋敷に戻り、小夜丸がいる部屋まで駆ける。急な事態だから、ノックは省略させてもらった。あられもない姿ではないことを頭の中で一瞬で祈る。
「小夜丸さん! 逃げます!」
「あれはいったい……!?」
「説明は後!」
小夜丸は支給した寝巻きだったが、完全に困惑している。ただでさえ、自分が普段活動する世界とは別の世界にいる上、不測の事態まで起きたのだ。パニックに陥るのは理解できるが時間がない。とにかく今は逃げる事だけを考えて、小夜丸を連れて玄関まで戻る。
そして外へ出て、すぐに小夜丸をゲートの向こう側へ逃がそうとしたら。
「その子か」
咆哮の最中でもやけに通る、男の声が聞こえた。
その直後、目の前で光が閃く。
「ッ!!」
思わず目を瞑るが、特に何かが俺の身に起きた様子はない。
けれど、何かを貫くような音は聞こえた。
それの正体を知るために、ゆっくり目を開けると。
「……ミューゼシア様!?」
目の前には、ミューゼシアの金色の翼が広がっていた。
そしてそれを、純白の槍が貫いている。その切っ先は俺の胸の前で止まっていて、ミューゼシアが守ってくれたのだと瞬時に把握した。そばにいた小夜丸とクーリアは愕然としている。
「大丈夫……?」
「ミューゼシア様こそ……!」
気丈に笑うも、苦痛が隠しきれていないミューゼシアのセリフは、そっくりそのまま返したい。貫かれた羽から血が滴ったりはしていないが、痛みは感じるようだ。
「賢明とは思えん判断だな、ミューゼシア殿」
また、男の声が聞こえた。
槍が消え去り、ミューゼシアの翼に空いた丸い穴が克明になる。そんな傷ついた翼をミューゼシアは仕舞い、地面に力なく座り込む。痛みやショック由来か身体が傾いだのを、すかさず支えた。
そんな動けないミューゼシアや俺たちの前に、《裁きの龍》が降り立つ。さらに《裁きの龍》が首を垂れると、その頭の上に光が生まれ、何者かが姿を現した。翼のついた金色の鎧を纏う、屈強な男だ。
「……っ」
ただその姿を目にしただけで、ぞくりと寒気が走る。思わず腹に力が入ってしまう。この感覚は、ウィズダムを前にした時と似ていた。
一方、その男がドレミ界の大地に危なげなく降りると、《裁きの龍》は静かに瞼を閉じて姿を消した。
「……ご無沙汰しております、ミカエル様」
そんな男に挨拶をしたのはクーリア。知り合いらしい。
だが、《裁きの龍》に加えて「ミカエル」という名前からして、彼の正体が《ライトロード・アーク ミカエル》だと俺も理解した。
「まさか、このような形でこちらにいらっしゃるとは」
「急を要する事態でな」
「急、とは」
クーリアが皮肉交じりに話しかけるが、ミカエルは冷酷ともとれる落ち着いた口調で返す。
そしてミカエルが見ているのは、突然の事態にどうする事もできず動けない小夜丸と、俺に支えられているミューゼシアだ。
さらに俺と視線が合うと、ミカエルは何とも言えない目を向けてくる。それもすぐに切れ、クーリアを再び見た。
「まさかとは思ったが……ドレミコードほどの天使が、少女を捕らえるとはな」
そんなミカエルの言葉には、まさしく失望の感情が混じっていた。
少女とは誰かなど問い返すまでもない、小夜丸だ。
「……あなた方は、何者ですか」
「なに、安心するがいい。私は君の味方だ」
「味方……?」
「そうか、君は私たちの事を知らないのか」
ミカエルの事を全く知らない小夜丸が問うと、ミカエルはわずかに笑みを浮かべた。
「我々は、弱き者の助けに応じて正義を執行し、悪しき者どもを屠る。端的に言えば、正義の味方だ」
「……なるほど」
「そして今回ここへ来たのは、君が助けを必要としていたようだったからだ」
「ライトロード」というカテゴリは俺も知っているし、有名どころのモンスターなら多少頭に入っている。設定に関しても、概ねミカエルが言っているようなものと理解していた。
「……なぜ、この世界の場所が、分かったのですか……?」
ミューゼシアが、つらさに耐えながらも問いかける。
ドレミコードとライトロードは知り合いらしいが、このドレミ界の座標までは教えていないようだ。懇意の【アロマ】にさえ教えていないその座標を、なぜ彼らは知っているのか。
「我々が手にした新たな力……それを使い、この場所を捉えたのだ」
「力……?」
「そう。それさえあれば、助けを求める多くの人々に、我々は手を差し伸べられる。今のようにな」
新しい力、という言葉には中々いい思い出がない。
ミカエルを初めて見てから今に至るまで、ひしひしと伝わってくる奇妙な威圧感。決して、相手がライトロードの上位天使だから、という理由のものではないだろう。
恐らくだが、ラビュリンスの迷宮姫や、以前のクーリアと同様、ミカエルはエグザムのカードを手にしている。感覚が非常に似ているから、これは確信に近い可能性だ。
「さて、お嬢さん」
そしてミカエルは、紳士的に微笑みながら、小夜丸に手を差し伸べた。
「私と一緒に来るといい。君を元居た場所に送り届けてあげよう」
「お待ちを」
だがそこで、クーリアが待ったをかける。ミカエルから笑顔が消えた。
「彼女は、私たちが進んで捕らえたわけではありません。誤って、こちらの世界に迷い込んだのです」
「ではなぜ、今もこうして彼女をここに留めている? それも、助けを必要とするほどまでに」
「……彼女を元居た世界に戻すと、我々の存在が露見してしまう恐れがあるからです。そうなれば、我々の使命は全うできなくなるでしょう。その先にあるのは、世界の混沌です」
ドレミコードの存在は、基本的に普通の存在には知られない。だからこそ、世界の淀みをそれとなく変えられるきっかけを作りだせる。
けれど、その存在がうっかり明るみになれば、「浄化」の使命にも影響が出るかもしれない。小夜丸が元いた世界にゲートを開けば、S-Forceが俺やこのドレミ界を見つけるかもしれないのだ。
「そして……彼女には既に解放する条件を明示しています。それを受け入れれば、彼女は解放いたしますが、自分の意思でそれを拒んでいるため……ここにいてもらっているのです」
クーリアの言う通り、俺たちは小夜丸を一生ここに閉じ込めるつもりはない。S-Forceが持っているエグザムに関する情報を話してくれれば解放する。小夜丸が元いた世界は難しいが、ドレミ界よりは開けた世界に放すつもりだと、俺はミューゼシアから聞いていた。
「それは全て君たちの不注意によるものだろう。この少女を泣かせて良い理由にはならない」
しかしながら、ミカエルは聞き入れなかった。
唇を噛む。こうなってしまったのも、俺が原因のひとつだったから。そしてミカエルの言っている事も、全くの不当と言い切れないから。
「さて、ドレミコードの諸君。賢明な判断を私は期待しよう」
もう一度、小夜丸に向けて手を差し出すミカエル。
小夜丸はどうしたらいいのか分からないようで、俺やミューゼシア、クーリアに視線を巡らせる。ミューゼシアは、怪我をしたこの状況で、深く物を考えたり声を発するのがつらいのか、脂汗を浮かべて目を閉じていた。クーリアは、これ以上言い返すのが難しいらしく、口を閉ざしている。
そして俺は、
「……小夜丸さん」
「!」
支えるミューゼシアの手をほんの少し強く握って、小夜丸を見る。
「ミューゼシア様を連れて、そのゲートを通ってください」
「えっ……!?」
「時間がありませんので、早く」
俺の提案は予想外だったか、小夜丸が目を丸くしている。
いちはやく俺の意図を察したのはクーリアだ。すぐに立ち上がり、ミューゼシアと小夜丸をミカエルから守れる位置に立つ。それに俺は心から感謝をし、もう一度小夜丸に行動に移すよう目で訴えかける。
「……」
やがて小夜丸は、俺に対して頷き、ミューゼシアに肩を貸して光のゲートへ向かう。おっかなびっくりだったが、それでも意を決してミューゼシアごと身体を滑り込ませると、光のゲートは閉じた。
その間、ミカエルは一切手出しをしてこなかったが、小夜丸とミューゼシアが姿を消したのを見届けると、深いため息をついた。
「大きな間違いだぞ」
それは、俺に向けられた言葉だった。
立ち上がり、できるだけ目に力を込めてミカエルを見る。威圧感がさっきよりも濃くなった気がするが、怯んではいられない。
「……小夜丸さんが、あの人がここへ来てしまったのは俺が原因でもあります。助けを求めるほどに追い詰められていたというのであれば、それは全面的に受け止めましょう」
「ほう」
「ですが、ここはドレミ界です。ライトロードの皆様方の世話には及びません」
心に鞭を打って、強気な言葉で返す。
「何より、あなた方に引き渡すと、どうにも嫌な事が起きそうだという勘が働きまして」
ミカエルから感じる謎のエネルギーは今なお消えない。それについて考えると、小夜丸を引き渡しても、クーリアの懸念に限らず全て丸く収まるとは思えなかった。
ミカエルは虚を突かれたように黙る。
そして、くつくつと笑いだした。
「……いや、すまない。軟弱な男だと思ったが、肝に関してはそうでもなさそうだな」
見てくれに関して口答えはしない。だが、確かに転生してから度胸は多少ついた気もする。
「とはいえこちらも、ここまで来てすごすご大人しく引き下がるつもりもなくてな。ここはひとつ、デュエルで決着をつけるとしよう」
ミカエルが指を立てて提案する。やはり、それが一番手っ取り早いようだ。
「分かりました――」
「待って」
しかし、俺が応じようとしたところでクーリアが止めてきた。
「ミカエル様は、今まで戦った相手とはまた段階が違う。私が戦うわ」
クーリアの言い分も、分からなくはない。
相対するだけで、ミカエルは只者ではないのが分かった。クルヌギアスや迷宮姫、ヴァーディクトの誰とも違う雰囲気がある。何より、「エグザム」のカードを所持している可能性が高い。これまで同様、戦って無事で済む相手ではないだろう。
「いえ、しかし……こうなってしまったそもそもの原因は、自分です」
だからこそ、俺が戦うべきだと思っている。この事態を招いたのは俺のせいも同然だから、クーリアの手を煩わせるわけにはいかない。
「だけど……」
なおもクーリアは食い下がろうとする。
そこで、ミカエルがぱちぱちと手を叩いた。それは拍手ではなく、言い争いを止めさせるための警告だと気付き、俺とクーリアは口を閉ざす。
「忠誠心、部下を思う気持ち、大いに結構。だが、それでは埒が明かない」
そしてミカエルは、指をパチンと鳴らす。
直後、そのすぐそばに、さっきミューゼシアが作り出したのと同じような光のゲートが開いた。
「ここは君たちの意思を尊重し、同時に相手をしよう」
「「え?」」
「だが、2対1は我々の掲げる正義と平等の理念に反する。よって、こちらももう1人用意させてもらう。よいな?」
光のゲートから誰かが出てくる気配はない。しかしミカエルは、俺たちを見て挑発するように笑っていた。
つまり、タッグデュエルを仕掛けるつもりだ。
「……クーリア様」
だが、俺に退く気はない。
こんな事態になってしまったのは、俺が不甲斐なかったせいだ。そのツケをクーリアだけに背負わせるなど、あってはならない。これ以上クーリアを悲しませたり、負担を強いたりするなど自分で許せなかった。
その意思を込めてクーリアを見ると、クーリアは諦めたように、けれど嬉しそうに頷く。
「ミネルバ」
ミカエルはそんな俺たちの様子を見てから、光のゲートに向かって名前を呼ぶ。
それに応じて、光のゲートから誰かが姿を見せた。大きな赤いペンダントを首から提げ、修道服に似た白い衣装に身を包む明るい茶髪の女性。背中からは、天使のような白い羽根を生やしている。《ライトロード・セイント ミネルバ》だ。
「……?」
その姿に俺は違和感を抱く。
ミネルバは、幾何学的な白い模様が入っている紫色の目隠しをつけていた。あんなものは、ミネルバのカードのイラストにはなかった気がするが。
「バトレアス」
デュエルをするために距離を取ろうとすると、クーリアが話しかけてくる。
「ミカエル様は、前会った時と様子が変わってる。恐らくは……」
「『エグザム』の影響、ですかね」
可能性を示すと、クーリアは首を縦に振る。同じ予感を抱いていたようだ。
「それに、ミネルバ様も様子がおかしい。気を付けて」
「承知いたしました。クーリア様も」
忠告に素直に応じて、俺はデュエルディスクを展開する。さらに2〜3人分の間を空けてクーリアが並び立ち、同じくディスクを展開した。
そして、ミカエルとミネルバも俺たちに向かい合って、左腕を構える。ミカエルは天使の翼を、ミネルバは盾を模したディスクをそれぞれ展開した。
気をつけるのはクーリアの警告もだが、このデュエルがタッグデュエルという点もだ。アニメでは何度か見る機会めあったものの、俺は現実でやった事がゲームでさえない。どう戦うべきかは不透明だが、勝つのが絶対条件、最低限クーリアの脚を引っ張らないのを目標にする。
両手に力が籠もった。
「「「「デュエル!」」」」
バトレアス & クーリア LP4000
VS
ミカエル & ミネルバ LP4000
ライフポイントは共通なのが、デュエルディスクで俺とクーリアの名前の横に表示されているのが分かった。
さらに、ターンの順番がミネルバ、俺、ミカエル、クーリアの順に回るのを示す。つまりこちらは後攻。そしてフィールドと墓地、除外ゾーンに「SHARE」とポップアップが表れ、これも共有されるのが分かった。
最低限のルールを提示されたところで一つ深呼吸をし、最初の5枚を引く。悪くない初手だ。
まず始まるのはミネルバのターン。
「ワタシの先攻。魔法カード《ソーラー・エクスチェンジ》発動。このカードは手札の『ライトロード』1体を墓地へ送る事で発動できます」
いきなりドローを仕掛けてきた。そしてどうやら、あちらのデッキは【ライトロード】らしい。
「ワタシは《ライトロード・ドラゴン グラゴニス》を墓地へ送り……」
「私はデッキから2枚ドローして、その後デッキの上から2枚のカードを墓地へ送る」
「……?」
だが、ミネルバがコストを支払ったのに、ドロー効果と墓地肥やしはミカエルが使ってきた。そこに、違和感を抱く。
しかしこれで、ミカエルはまだターンが回っていないのに手札が7枚。そして、デッキから《ライトロード・ビースト ウォルフ》と《トワイライトロード・ソーサラー ライラ》が墓地へ送られた。
【ライトロード】の基本戦術は自己デッキ破壊。墓地に「ライトロード」を溜めて墓地アドバンテージを稼ぎつつ、最終的には《裁きの龍》の召喚を狙う、という手筈だったはずだ。
「そして、効果でデッキから墓地へ送られたウォルフの効果発動。このカードを墓地から特殊召喚する!」
魔法陣がフィールドに現れ、その中から雄叫びと共にモンスターが姿を現す。屈強な体つきの白い戦士だが、顔は犬、右手にはかぎ爪、左手に斧を携えている。
ライトロード・ビースト ウォルフ
ATK2100 レベル4
コンセプトが自己デッキ破壊だからこそ、墓地へ送られる効果を持つモンスターもいる。それも理解していたが、俺は「ライトロード」のどのモンスターがどんな効果を持っているのかを、具体的には覚えていない。アロマの庭でラベンダーの【アロマ】と戦った時と同じだ。
「ワタシはモンスターを守備表示でセット。さらに、カードを2枚伏せてターンエンド」
本来のターンプレイヤーであるミネルバは、守りを固めただけだった。
その所作には人間らしさがあまり感じられない。具体的に言えば彼女も人間ではないだろうが、見た目が人故に妙な恐怖心を抱いてしまう。
何より疑問なのは、《ソーラー・エクスチェンジ》の効果をミネルバ自身が使わなかった事。墓地肥やしもそうだが、戦略の幅を広げる意味でもドロー効果は貴重だ。運良くウォルフの効果が発動したからよかったものの、まだターンを迎えていないミカエルに使わせたのはリスキーかつ不合理的な気がする。
「俺のターン!」
だが、そればかりを気にしていると悪い事を引き寄せかねない。だから、考えるのをほどほどにドローする。引いたのは、【ドレミコード】においては不可欠のカード。これなら理想的な展開ができる。
「《ドドレミコード・キューティア》を召喚!」
元気良く腕を構えて現れるキューティア。景気づけのように、傍に漂う妖精体がハーモニカを奏でた。
ドドレミコード・キューティア
ATK100 レベル1
「キューティアを召喚した時、デッキから自身以外の『ドレミコード』ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺が手札に加えるのは《ソドレミコード・グレーシア》だ」
手札に加えるのは、これもまた重要なポジションにいるモンスターだ。
だが、そのカードとは別の手札を手にする。
「そして魔法カード《ドレミコード・エレガンス》を発動。このカードは3つの効果から1つの効果を選んで適用できる。俺は2つ目の効果……手札の『ドレミコード』1体をエクストラデッキに加え、デッキからスケールが奇数と偶数の『ドレミコード』を1枚ずつ選び、ペンデュラムゾーンに置く効果を選ぶ!」
手札には、グレーシアだけでなく《ラドレミコード・エンジェリア》もいる。グレーシアと併せてペンデュラム召喚すれば、それぞれの効果で攻撃時の効果の発動を防げる。このまま一気に攻め込む事が可能だ。
「永続罠《センサー万別》発動。このカードがフィールドにある限り、それぞれのフィールドで同じ種族のモンスターは2体以上同時に存在できません」
「何!?」
「っ……!」
ところが、ミネルバが発動したのは非常に厄介なロックカードだ。俺だけでなくクーリアも表情が歪む。
キューティアを始め、「ドレミコード」は全て天使族。つまりこの状況下では「ドレミコード」のペンデュラム召喚が行えない。
「……《ドレミコード・エレガンス》の効果で、手札の《ラドレミコード・エンジェリア》をエクストラデッキに加える。そしてデッキから、スケール2の《シドレミコード・ビューティア》と、スケール7の《レドレミコード・ドリーミア》をペンデュラムゾーンにセッティング!」
それでも発動した効果、選んだ効果は止められない。エンジェリアをエクストラデッキに加え、このデッキ的に相性が良い2枚の「ドレミコード」をペンデュラムゾーンに置いた。そして、フィールドの両端に光の柱が現れ、ビューティアとドリーミアがその中に揺蕩う。
しかし、準備したところで今はもうモンスターを呼べない。デュエルディスクに現れる色鮮やかな「PENDULUM」の文字が、ペンデュラム召喚できない虚しさを逆に突きつけてくる。
「キューティアの効果で、ペンデュラムゾーンに偶数のスケールが存在する事により、『ドレミコード』ペンデュラムモンスターの攻撃力は自身のスケール1つにつき100ポイントアップする。キューティアのスケールは8だ」
ドドレミコード・キューティア
ATK100→900
「カードを2枚伏せて、ターンエンド……」
このターンでは《センサー万別》を破壊できない。仕方なく次のターンに備える事しかできず、状況を変えられない自分が非常に腹立たしくなってしまう。
恐れているのは、クーリアもまた【ドレミコード】を使う点だ。《センサー万別》がある以上、同じ種族のモンスターは2体と存在できない。であれば、同じデッキを使う俺とクーリアは圧倒的な不利だ。
「フン、私のターン!」
そんな俺の初手を鼻で笑ったミカエルがドローする。
「フィールド魔法《ジャスティス・ワールド》を発動!」
まず手始めに、フィールド魔法を発動してきた。轟音と共に、夜のドレミ界が一転して昼のように明るくなり、光り輝く街並みが出現する。ヴァーディクトが使った《
更にミカエルは、フィールドにセットされていたカードに指を向けた。
「《ライトロード・ハンター ライコウ》を反転召喚!」
最初のターンにミネルバが伏せていたモンスターだ。表になったのは、白い鎧を装着する白い犬。
頭上に表示された種族は、「獣」。ウォルフは獣戦士族で被りはない。《センサー万別》の影響は受けなかった。
ライトロード・ハンター ライコウ
ATK200 レベル2
「リバースしたライコウの効果発動。フィールドのカードを1枚破壊し、デッキの上から3枚のカードを墓地へ送る!」
姿を見せたライコウが吠えると、フィールドにのキューティアが苦しそうに耳を押さえ、やがて破壊されてしまった。そしてミカエルはカードを墓地へ送っていく。《迷い風》《光の援軍》《ライトロード・ドルイド オルクス》が墓地へ送られた。
「《ジャスティス・ワールド》は、自分のデッキからカードが墓地へ送られる度にシャインカウンターを1つ置く」
ミカエルとミネルバの背後に、塔のようなモニュメントが出現する。その先端に光がひとつ宿った。
ジャスティス・ワールド
シャインカウンター:0→1
「フィールドの『ライトロード』の攻撃力は、《ジャスティス・ワールド》のシャインカウンター1つにつき100ポイントアップ!」
ライトロード・ビースト ウォルフ
ATK2100→2200
ライトロード・ハンター ライコウ
ATK200→300
この程度の上昇値は微弱だが、【ライトロード】の動きを考えれば中々厄介な効果だ。
そして、ライコウはミネルバが伏せたカードだが、効果はミカエルが使った。タッグパートナーのカードは自由に使える、という認識でいいだろう。
しかし、これで俺たちのフィールドからモンスターはいなくなってしまった。
「そして私はライコウをリリースし、《ライトロード・エンジェル ケルビム》をアドバンス召喚!」
ライコウが瞳を閉じて姿を消す。新たに現れたのは、翼をはためかせ、錫杖を構える白い鎧の天使だ。こちらの種族は見た目通り「天使」、やはり《センサー万別》には引っかからない。
ライトロード・エンジェル ケルビム
ATK2300→2400 レベル5
「そして、『ライトロード』をリリースしてケルビムがアドバンス召喚した時、デッキの上から4枚のカードを墓地へ送って効果が発動!」
ケルビムが錫杖を天に向けると、ミカエルがコストとしてデッキの上からカードを墓地へ送っていく。《ライトロード・アーチャー フェリス》《トワイライトロード・シャーマン ルミナス》《ライトロード・スピリット シャイア》《ライト・リサイレンス》が墓地へ送られた。
「バトレアス、君のフィールドにセットされた2枚のカードを破壊する!」
ケルビムが掲げた杖から赤い稲妻が走り、俺のフィールドへ迫ってくる。
「速攻魔法《光神化》発動! 手札の天使族モンスター1体を、攻撃力を半分にして特殊召喚する! 来てくれ、グレーシア!」
だが破壊される前に、1枚の発動できるカードを使っておく。《光神化》のカードが光り、グレーシアが姿を見せた。ただし片膝をついた守備の姿勢を取る。
ソドレミコード・グレーシア
DEF1400 / ATK2100→1050 レベル5
だがケルビムの放った稲妻は止まらず、発動した《光神化》と、セットされていた《スキル・サクセサー》を破壊した。
ジャスティス・ワールド
シャインカウンター:1→2
ライトロード・ビースト ウォルフ
ATK2200→2300
ライトロード・エンジェル ケルビム
ATK2400→2500
「特殊召喚したグレーシアの効果で、デッキから『ドレミコード』の魔法・罠カードを手札に加える事ができる」
そこで効果を発動すると、デュエルディスクの画面にクーリアの顔写真が映った。一瞬戸惑ったが、クーリアに効果を使わせる事もできるらしい。同じ【ドレミコード】でサーチ先が確保されているから、グレーシアの効果をパートナーも使えるという事か。
それなら。
「クーリア様、サーチをどうぞ」
「え、だけど……」
「クーリア様のターンの方が先に回ってきます。なら、クーリア様が使われた方がいい」
次に俺のターンが来るのは3ターン後。もしかしたら、その前にミネルバが何か仕掛けてくるかもしれない。それなら、すぐ次のターンが来るクーリアの助けになった方がいいだろう。
少しだけクーリアは迷ったが、やがて頷いてデッキからカードを手札に加える。
「……ありがとう。私は《ドレミコード・ハルモニア》を手札に加えるわ」
「ならばバトルだ。まずはウォルフでグレーシアを攻撃!」
ウォルフが怒号を上げながらグレーシアへと迫り、斧を横に薙いでグレーシアの脇腹を強く打ち付け破壊する。痛々しい光景に唇を噛みつつ、グレーシアに詫びた。
「さらに、ケルビムでダイレクトアタック!」
ケルビムの錫杖が俺に向くと、赤い稲妻を纏わせ始める。いきなり2500のダメージを受けるのはきついところだ。
「手札の《バトルフェーダー》の効果発動! ダイレクトアタック宣言時、このカードを手札から特殊召喚し、バトルを終了させる!」
しかしそこで、救いの手をクーリアが差し伸べてきた。
現れたのは、時計の振り子と鐘が一体化したようなモンスター。それが鐘を鳴らすと、ケルビムは錫杖を引いて攻撃する態勢を解いた。
バトルフェーダー
DEF0 レベル1
「……助かりました、クーリア様」
「大丈夫、さっきのお礼よ」
クーリアにお礼を告げると、微笑みを返してくれる。
だがそこで、ミカエルは首を横に振った。
「見るからに、バトレアスは君たちのしもべといったところか。クーリアよ」
「少し違います。彼は私たちの従者であり、共に戦う仲間でもあります」
「そうか。とはいえ、十全なサポートができているとは言い難いな」
ミカエルに厳しい評価を下されて、視線が下に向く。
最初の《センサー万別》で戦略を狂わされ、できたのはグレーシアの効果でクーリアをサポートするぐらいだ。さっきのダイレクトアタックも自力で止められればよかったが、クーリアの手を借りてしまった。
進んでこの場に立っているのに不甲斐ない。
「バトレアス、気にしないで」
だけど、クーリアは俺に対して安心させるような声を掛けてくれた。それには少しだけ心も軽くなるが、同時に甘えてしまっている事に自己嫌悪する。
「私はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
「私のターン!」
クーリアのターンが始まる。しかし、ミカエルは伏せカードを3枚も増やした。怪しい匂いがプンプンするが、クーリアはどう出るか。
「私は《ファドレミコード・ファンシア》を召喚!」
まずクーリアが呼び出したのは、【ドレミコード】において疑似サーチと最低限の攻撃力を備えたファンシアだ。フィールドに現れると、妖精体が元気いっぱいにアコーディオンを奏でる。
《バトルフェーダー》は悪魔族で、ファンシアは天使族。《センサー万別》の効果は適用されない。
ファドレミコード・ファンシア
ATK1600 レベル4
「そしてフィールド魔法《ドレミコード・ハルモニア》を発動!」
クーリアもさっき手札に加えたフィールド魔法を発動する。《ジャスティス・ワールド》によって昼のように明るくなった空が、音楽記号と円環の五線譜で彩られ、華やかに変わる。ミカエルとミネルバはぴくりともしなかった。
「ハルモニアは3つの効果を1ターンに1度ずつ発動できる。私は2つ目の効果を発動し、ビューティアのペンデュラムスケールをそのレベル7つ分上げる!」
クーリアが指さすと、光の柱の中に佇むビューティアが、スカートの端を摘まんでお辞儀をした。
シドレミコード・ビューティア
スケール:2→9
「私たちの場の『ドレミコード』のスケールが、奇数または偶数で3種類以上存在する事により、ハルモニアの3つ目の効果を発動。フィールドのカードを1枚破壊する。《センサー万別》を破壊!」
ハルモニアの空に浮かぶ五線譜が光り輝き、中心から白い雷が落ちる。それが直撃した《センサー万別》は黒焦げになって崩れ落ちた。
それを見届けて、クーリアはさらに動く。
「ファンシアの効果発動! 1ターンに1度、デッキから自身以外の『ドレミコード』を1体エクストラデッキに加える。私が加えるのは《ドドレミコード・クーリア》!」
ハルモニアの効果により、俺たちのフィールドのペンデュラムスケールではレベル8のモンスターしかペンデュラム召喚ができない。だが、それだけでも十分に頼もしいモンスターを呼び出す事ができる。
「セッティング済みのペンデュラムスケールを使い、ペンデュラム召喚! エクストラデッキより現れよ、我が現身《ドドレミコード・クーリア》!!」
そしてクーリアが高らかに宣言すると、ハルモニアの円環の中心から、まさしくクーリアと同じ姿のモンスターが降り立つ。傍らに控える妖精体は、淑やかにバイオリンを奏でた。
ドドレミコード・クーリア
ATK2700 レベル8
そこで、ミカエルがちらとデュエルディスクを見る。何か仕掛けるつもりらしいが、ビューティアとドリーミアのペンデュラム効果で、このペンデュラム召喚成功時に相手は一切のカード効果を使えない。ミカエルは諦めるように視線を戻した。
「私自身の効果発動! 1ターンに1度、相手フィールドの表側表示カード1枚の効果を、次の相手ターン終了時まで無効にする。私は《ジャスティス・ワールド》の効果を無効にする! レスト・オブ・スキル!!」
フィールドにいる《ドドレミコード・クーリア》が天にタクトを向けると、その先端から休符が放たれ空を覆いつくす。それによって、光り輝く街は輝きを失い、ハルモニアが生み出した彩り豊かな音楽記号が空に残った。
そして効果が無効になったため、自身の効果で置かれていたシャインカウンターも、全て取り除かれる事になる。
ジャスティス・ワールド
シャインカウンター:2→0
ライトロード・ビースト ウォルフ
ATK2300→2100
ライトロード・エンジェル ケルビム
ATK2500→2300
これで、微量ながらも上がっていた攻撃力は元に戻り、ダメージが通りやすくなる。けれどあちらの伏せカードはまだ4枚残っていた。迂闊に攻めるのは厳しいが。
「現れよ、清浄なる旋律のサーキット!」
クーリアが前に手を伸ばすと、空にリンクサーキットが現れた。
「召喚条件はペンデュラムモンスターを含むモンスター2体以上。クーリア、ファンシア、《バトルフェーダー》の3体をリンクマーカーにセット!」
名前を呼ばれた3体のモンスターが、それぞれ軌跡を描きながらリンクサーキットへと飛び込む。そして、サーキットが光を放った。
「リンク召喚! 秘めたる思いを指揮に乗せ、世に満ちる淀みを浄化せよ!《グランドレミコード・クーリア》!!」
眩い光の中から姿を見せたのは、チューブドレスに身を包み、金色の翼を腰から生やしたクーリア。傍らにはバイオリンの代わりにタクトを携える、装飾が豪華になった妖精体が浮かんでいた。
なお、自身の効果で特殊召喚された《バトルフェーダー》は、フィールドを離れた事により除外される。
□□□ グランドレミコード・クーリア
□◆□ ATK2700
■■■ リンク3
「相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時、墓地の《迷い風》の効果発動。このカードを私の場にセットする」
だが、グランドレミコードと成ったクーリアを見てもミカエルは動じず、墓地のカードをセットしなおす。さっきフィールドの状況を窺っていたのはそのためか。「ドレミコード」であっても、リンク召喚時には効果の発動を許してしまうから。
「《グランドレミコード・クーリア》の攻撃力は、自分のエクストラデッキのペンデュラムモンスター1体につき100ポイントアップする。私のエクストラデッキには2体、バトレアスのエクストラデッキには3体。よって、攻撃力は500ポイントアップ!」
このタッグデュエルでは、フィールドとライフ、墓地を共有しているが、手札やエクストラデッキは共有しない。だが、《グランドレミコード・クーリア》は俺たちがコントロールしているから、エクストラデッキのカード枚数は合算する、という理屈なのだろう。
グランドレミコード・クーリア
ATK2700→3200
「バトル!《グランドレミコード・クーリア》で、《ライトロード・ビースト ウォルフ》を攻撃!」
攻撃宣言すると、ウォルフが身構える。
しかし、ミカエルはそこで笑った。
「罠カード《次元幽閉》発動! 攻撃モンスターを除外する!」
仕掛けられていた1枚は、今でも刺されば強い除去カード。発動したカードが強風を巻き起こし、《グランドレミコード・クーリア》が苦しそうな顔を浮かべる。
だが、その手の効果は通用しない。
「《グランドレミコード・クーリア》の効果発動! 1ターンに1度、ペンデュラムゾーンで奇数のスケールを持つ『ドレミコード』1体をリンク先に特殊召喚し、相手の効果の発動を無効にする!」
「ほう」
ハルモニアの効果でスケール9となっていたビューティアが、光の柱から軽く跳ねてフィールドに降り立った。そこは丁度、《グランドレミコード・クーリア》の右斜め下に当たる。
そして、《グランドレミコード・クーリア》がタクトを振ると、その先端から光が放たれ、《次元幽閉》のカードを真っ白に染めて融解させた。
シドレミコード・ビューティア
ATK2500 レベル7
「そして私は、デッキからスケールが偶数の『ドレミコード』1体をエクストラデッキに加える。私が選ぶのは《ミドレミコード・エリーティア》。エクストラデッキのペンデュラムモンスターが増えた事で、《グランドレミコード・クーリア》の攻撃力がアップする!」
グランドレミコード・クーリア
ATK3500→3600
「バトル続行!《グランドレミコード・クーリア》の攻撃、グランド・アンサンブル!!」
妖精体がタクトを振り、さらに《グランドレミコード・クーリア》が金色の翼をはためかせる。金色の粒子を纏った風が巻き起こり、ウォルフを包み込むと破壊した。
ミカエル & ミネルバ LP4000→2500
「さらにケルビムを対象に、ビューティアの効果を発動! このターン、ケルビムはフィールドを離れた場合に除外される。そのケルビムをビューティアで攻撃! ビューティフル・アラベスク!!」
対象に取ったケルビムを即座に攻撃させる。ビューティアが右手でタクトを振ると、左腕に抱きかかえる妖精体がハープを奏で、黒い連符を出現させた。
「ビューティアは1ターンに1度、ペンデュラムゾーンで一番低いスケール×300以上の攻撃力を持つ相手モンスターとバトルする時、その相手モンスターを破壊する!」
出現した連符はケルビムに巻き付き、そして締め付けるようにして破壊した。
「ライトロード」の切り札である《裁きの龍》は、墓地に「ライトロード」が4種類以上いる事が召喚条件だったはず。既にミカエルたちの墓地には4種類以上いるが、再利用しにくい除外の方がまだ刺さる。ケルビムを除外するのはいい判断だ。
《センサー万別》を破壊した上、【ドレミコード】ではとても頼りになる《グランドレミコード・クーリア》を召喚し、しかもビューティアまでフィールドに呼び出す。同じデッキを使う俺からすれば、非常に理想的な動きをクーリアはやってのけた。
「ハルモニアの最後の効果を発動し、エクストラデッキの『ドレミコード』を手札に加える事ができる」
メインフェイズ2に入り、クーリアはその効果の発動を宣言すると、俺を見た。
「バトレアス。この効果はあなたが使って大丈夫よ」
「よろしいんですか?」
「ええ。次はあなたのターンでしょう?」
先ほどのグレーシアの効果と同じで、次に回ってくるターンが近い方に効果を使わせてくれる。その申し出は、手札が枯渇しかけている俺からすればありがたい。
「俺はエクストラデッキのキューティアを手札に加える」
グランドレミコード・クーリア
ATK3600→3500
「カードを2枚伏せてターンエンド」
クーリアがターンを終える。フィールドとライフのアドバンテージは、こちらが取ったと見ていいだろう。
1ターンで形勢を逆転させたクーリアがすごいと思うと同時、俺自身は力になれていないと、自分が小さく思えてしまった。
《精霊界でのタッグデュエル》
○ライフポイント(4000)・フィールド・墓地・除外ゾーンは共有する。
○デッキ・エクストラデッキ・手札は共有しないが、永続効果で手札やエクストラデッキの枚数を参照して攻撃力等の数値が変動する場合に限り、両者のそれらの枚数を合算する。
○パートナーがフィールドにセットしたカードを確認する事はできるが、具体的な相談はできない。
○カードまたはその効果を発動するためのコスト(ライフポイントを除く)は、そのカードを最初にフィールドに出したプレイヤーが払う。
○自分が発動したカードの効果がパートナーも適用できる場合、パートナーに使わせる事もできる(パートナーはそれを拒否する事も可能)。
○「相手プレイヤーに影響を及ぼす効果」「お互いのプレイヤーに影響を及ぼす効果」は、それぞれのタッグの内1人がその影響を受け、どちらがその影響を受けるかはタッグ内で決めてよい。
○タッグのいずれかのデッキが0枚になった場合、そのプレイヤーはデッキからカードを引けなくなった時点からデュエルに一切干渉できなくなり、以後そのパートナーが1人でデュエルを続行する(デッキが0枚になったパートナーがフィールドに残したカードを使う事は可能)。