バトレアス 手札1 / クーリア 手札4 LP3150
【モンスターゾーン】
カード無し
【魔法&罠ゾーン】
カード無し
ミカエル 手札1 / ミネルバ 手札1 LP500
【モンスターゾーン】
ライトロード・ドラゴン グラゴニス ATK5600 レベル6
【魔法&罠ゾーン】
伏せカード2
クーリアが俺のために怒り、俺の存在に意味と価値がある事を証明しようとしてくれるのは、嬉しいに決まっていた。
クーリアは俺の事を愛してくれている。だからこそと、俺のために動いてくれるのであれば、クーリアを愛している俺としてももう迷ってはいられない。
けれど、フィールドの状況はややこちらが悪いのが実情だ。こちらは《裁きの龍》の効果でフィールドを更地にされてしまい、ゼロの状態からスタートしなければならない。クーリアは果たして何をするか。
「このカードは、自分フィールドのモンスターが、存在しないか『ドレミコード』のみの場合、手札から特殊召喚ができる!」
「え……?」
しかし、クーリアが呼ぼうとしたモンスターには、声が出た。
そんな召喚条件を持つのであれば、それは恐らく「ドレミコード」にまつわるカードだろう。けれど俺は、そんな効果を持つモンスターに覚えがない。
「ならばこちらは、手札の《儚無みずき》を墓地へ捨てて効果発動。このターンのメインフェイズ及びバトルフェイズに、相手が効果モンスターを特殊召喚する度に、その攻撃力分のライフを回復する!」
その未知のモンスターが現れる前に、ミカエルが手札を墓地へ捨てると、ミカエルの下に修道服を着る薄い水色の髪の少女が姿を現す。けれど、その少女は祈るように手を合わせて虚空を見上げると、すぐに姿を消してしまった。
「私は《ドレミコード・ソルフェージア》を特殊召喚!」
それを見てからクーリアはモンスターをフィールドに出す。
出てきたのは……ミューゼシアとクーリアの妖精体2人。特にクーリアの妖精体は、《グランドレミコード・クーリア》に付く際の豪勢な装いになっている。
ドレミコード・ソルフェージア
ATK400 レベル2
ミカエル & ミネルバ LP500→900
「クーリア様、そのカードは一体……?」
フィールドに現れたモンスターは、やはり俺が知らない「ドレミコード」だった。
どうやって手にしたのか。それを込めてクーリアを見ると、俺に対して微笑みを返してくる。
「あなたとの『時間』を過ごした後、ふとデッキに目を通した時にね」
思い至ったのは、俺とクーリアが2人だけで過ごした時の事。あの後ドレミ界に戻ってから、俺のデッキには新たにプリモアのカードが入っていた。あれと同じタイミングで、クーリアのデッキにはソルフェージアのカードが出現したというわけか。
「ソルフェージアの効果発動! 私のメインフェイズに、手札から『ドレミコード』を1体特殊召喚できる。ただし、このカードをリリースして発動すれば、エクストラデッキか墓地からも特殊召喚できる!」
ソルフェージアが……つまり2人の妖精体が、ぺこりとお辞儀をして姿を消す。クーリアはリリースして効果を発動したのだ。
「バトレアス!」
そしてクーリアは、特殊召喚する効果を俺に使わせてきた。この状況で、クーリアが俺に呼び出してほしいモンスターとなれば、これだろう。
「俺はエクストラデッキのグレーシアを特殊召喚!」
グレーシアの姿がフィールドに現れてから、クーリアの表情を窺う。俺を見て頷いていたので、彼女が望んだ通りの答えを出せたようだ。
ソドレミコード・グレーシア
ATK2100 レベル5
ミカエル & ミネルバ LP900→3000
「グレーシアを特殊召喚した事で効果発動! デッキから『ドレミコード』魔法・罠カード1枚を手札に加える。クーリア様!」
「ありがとう。私は《ドレミコード・ハルモニア》を手札に加える!」
クーリアはそれを手札に加えると、また別の手札のカード1枚を手にした。
「《ファドレミコード・ファンシア》を召喚!」
それはさっきのターンにハルモニアの効果で手札に戻していたカードだ。現れた妖精体がアコーディオンを軽快に奏でると、気分が高揚してくる。
ファドレミコード・ファンシア
ATK1600 レベル4
「ファンシアの効果発動! デッキの《ラドレミコード・エンジェリア》をエクストラデッキに加える。そして魔法カード《ペンデュラム・ホルト》発動! 私のエクストラデッキにペンデュラムモンスターが表向きで3種類以上存在する場合、2枚ドローする。ただしこのターンが終わるまで、私はデッキからカードを手札に加えられない」
デメリットと引き換えに引いた2枚のカードを見て、クーリアは小さく頷く。
「フィールド魔法《ドレミコード・ハルモニア》を発動!」
再び夜空が音楽記号で彩られ、ファンシーな雰囲気に包まれる。
「私はスケール2の《シドレミコード・ビューティア》をペンデュラムゾーンにセット!」
最初のターンに俺がしたのと同じように、ビューティアを右側のペンデュラムゾーンに置いた。ただし、もう片方のペンデュラムゾーンにカードはない。
「魔法カード《ドレミコード・エレガンス》を発動! その1つ目の効果を使い、デッキの《レドレミコード・ドリーミア》をペンデュラムゾーンにセッティング!」
最初の俺のターンに使ったのと同じカード。けれど選んだ効果は違った。ドリーミアがビューティアの反対側に現れた光の柱に浮かび、ビューティアと頷き合う。
「現れよ、清浄なる旋律のサーキット! 召喚条件はペンデュラムモンスター2体。グレーシアとファンシアをリンクマーカーにセット!」
彩の空に手を挙げると、その先にリンクサーキットが出現する。そのサーキットに2人の音階の天使が飛び込むと、音符などの音楽記号が交じる光が放たれた。
「リンク召喚! 淀みを濯ぐ旋律の天使、《グランドレミコード・ミューゼシア》!!」
光の中から羽根のようにゆっくり舞い降りる、ドレミコードの統治者。妖精体と共に姿を見せた彼女は、淑やかな笑顔でお辞儀をした。
□□□ グランドレミコード・ミューゼシア
□◆□ ATK1900
■□■ リンク2
ミカエル & ミネルバ LP3000→4900
「ハルモニアの1つ目の効果を発動。エクストラデッキの《ドドレミコード・クーリア》を手札に加える。続いて2つ目の効果を発動し、ドリーミアのスケールをそのレベル2つ分だけ上げる!」
レドレミコード・ドリーミア
スケール:7→9
「これで、レベル3から8のモンスターが同時に召喚可能!」
ペンデュラム召喚の準備が整った事で、クーリアは空を見上げて両腕を広げた。
「我が麗しき同胞たちよ。守るべきもののため、清らかな旋律を三千世界に響かせよ! ペンデュラム召喚!」
宣言と共に空の円環に穴が開き、中から赤とオレンジ、緑の光が降り注がれる。その光を割って、3人の音階の天使が姿を見せた。
ラドレミコード・エンジェリア
ATK2300 レベル6
ファドレミコード・ファンシア
ATK1600 レベル4
ドドレミコード・クーリア
ATK2700 レベル8
ミカエル & ミネルバ LP4900→7200→8800→11500
「義憤に駆られるのは勝手だが、これだけ増やした我らのライフを削る手立ては用意しているのだろうな?」
挑発的に問うミカエルだが、確かに《儚無みずき》の効果であれだけ膨れ上がったライフを削り切るのは簡単ではない。ハルモニアやクーリアの効果があるとはいえ、クーリアはどうするつもりなのか。
けれどクーリアは、ミカエルの言葉には応えずに、空を指さす。
「ハルモニアの3つ目の効果発動! 私たちのフィールドの『ドレミコード』のスケールは、奇数4種類と偶数1種類。よって《裁きの龍》を破壊する!」
空に浮かぶ五線譜が雷を帯び、輝きが増すと《裁きの龍》の首に雷が落ち、純白の龍は咆哮を上げて爆散する。
「そして、《ドドレミコード・クーリア》の効果発動! グラゴニスの効果を次の相手ターン終了時まで無効にする! レスト・オブ・スキル!!」
グラゴニスに向けてタクトを振る《ドドレミコード・クーリア》。そのタクトの先端から休符が放出され、雨のようにグラゴニスへと降り注いだ。
ライトロード・ドラゴン グラゴニス
ATK5900→2000
グラゴニスの攻撃力が一気に下がり、攻撃で破壊する事もできるようになった。
しかしながら、あちらのライフは11500にまで増えている。エンジェリアの効果で攻撃時に魔法・罠カードの発動は防げるとは言え、与えるダメージ量は今のままではまだ足りない。
「バトレアス、あなたのアイデアを借りるわよ」
けれど、そんな俺の懸念を見越したかのような、優しい声で告げて最後の手札を手にする。
「装備魔法《団結の力》をファンシアに装備! その攻撃力を、私の場のモンスター1体につき800ポイントアップさせる!」
「何だと!?」
この局面でそれを使われるのは少し予想外だったのか、ミカエルの顔が驚きに染まった。
そして俺も、同じデッキ、同じカードを使う身として嬉しさを抱く。その目の前で、ファンシアが白いオーラに覆われて、フィールドにいる他の3人のドレミコードたちと視線を交わして頷く。
ファドレミコード・ファンシア ATK1600→4800
無意識に、高揚で拳を握った。
「バトル! まずはエンジェリアでグラゴニスを攻撃! エンジェリック・マーチ!!」
まずはエンジェリアがタクトを振り、妖精体がトランペットを元気いっぱいに吹く。ベルの部分から放たれたオレンジ色の光線は、グラゴニスの身体に直撃して爆発を起こした。
ミカエル & ミネルバ LP11500→11200
「我が身、クーリアでダイレクトアタック! クーリー・レクイエム!!」
フィールドにいるクーリアがタクトを振り、妖精体がバイオリンを奏でて、緑色の五線譜を生み出す。それはうねりを見せながらミカエルたちに迫る。直接攻撃だと威力を多少感じるのか、2人は僅かにバランスを崩した。
ミカエル & ミネルバ LP11200→8500
「ファンシアでダイレクトアタック! ファンシー・ワルツ!!」
ファンシアがタクトを振り、その妖精体がアコーディオンを奏でる。音が具現化し、赤い竜巻を巻き起こすと、ミカエルとミネルバは風を受けて苦しそうに表情を歪めた。
ミカエル & ミネルバ LP8500→3700
「ミューゼシアでダイレクトアタック! グランド・コンダクター!!」
最後の攻撃はミューゼシア。金色の翼を羽ばたかせ、さらに妖精体がタクトを振ると、金色の粒子が混じった風を巻き起こす。ただし、彼女はペンデュラムモンスターではないため、エンジェリアの効果による恩恵を得られない。この状況でミカエルたちが伏せカードを発動したら、流石に少しマズい。
けれどミカエルたちは、カードを発動する気配を見せなかった。
ミカエル & ミネルバ LP3700→1800
全てのモンスターの攻撃が終わった。
けれど結局、あちらのライフはターン開始時よりも増えている。クーリアは少しだけ口惜しそうに息を吐き、腕を振った。
「私はこれでターンエンド。ドリーミアのスケールは元に戻る」
レドレミコード・ドリーミア
スケール:9→7
ターンを終えたクーリアは、腕を下ろして俺を見る。後悔しているのが見て取れた。
「ごめんなさい……削り切れなかったわ」
「大丈夫です」
《儚無みずき》の効果により、クーリアはこのターンに勝負を決めるつもりだったにもかかわらず、結局ライフを増やしてしまったのを気にしているようだ。
それだけじゃない。クーリアは、俺がここにいる意味も価値もないと宣ったミカエルに報いようともしていた。その結果が振るわなかったから、俺に対して申し訳なさも抱いているのだろう。
「……あなたが俺のために戦ってくれたのは、伝わっていますから。後は、お任せください」
悪く思う必要なんてない。
例えあちらのライフを増やしたとしても、厄介な《裁きの龍》とグラゴニスを退けたうえ、こちらのフィールドを整えてくれた。次のターンにクーリアはつないでくれたのだ。
そして、俺のために戦ってくれた事が、何よりも嬉しかった。
だからこそ、ここまでしてくれたクーリアの行動を何一つ無駄にしないためにも、次のターンに勝負を決めて見せる。
「ワタシのターン」
まずは、ミネルバのターンに何が来るかを見極めなければ。
「魔法カード《封印の黄金櫃》を発動。このカードは、デッキからカードを1枚除外し、2回目のワタシのスタンバイフェイズにそのカードを手札に加えます」
ドローしたカードが即座に使われる。原作を履修している身としては感慨深い櫃が現れた。
しかし、ミネルバが何かを除外しようとする前に、ミカエルの方が動いた。
「速攻魔法《非常食》を発動。このカードは、私の場の他の魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送り、1枚につき1000ポイントのライフを回復する」
これまた時代を感じるカードを発動してきた。しかし効果自体は優秀で、既に発動した《封印の黄金櫃》と、ミカエルが合わせてセットしていた《異次元からの埋葬》が墓地へ送られる。そして、ミカエルとミネルバの頭上に、きらきらと輝く粒子が降り注がれた。
ミカエル & ミネルバ LP1800→3800
「《封印の黄金櫃》の効果で、《ライトロード・アサシン ライデン》を除外します」
そしてミネルバがデッキから取り出したそのカードを宙に放ると、ひとりでに黄金櫃へと収められた。
原作では重要な意味を持つ《封印の黄金櫃》だが、現代環境では2ターンも待ってサーチするカードなど遅いという、実に悲しい評価を下されている。だから、除外する事に意味を見出してコンボに繋げるのが今の主流だ。
ミネルバも、それ以外にできる事がないから仕方なく使った、という感じではない。機械的な印象しか感じないからかもしれないが、それとは別の理由が必ずある気がする。
「『ライトロード』が4種類以上除外されている事で、手札の《
「そうきたか……!」
そのカードをフィールドに出すと、ハルモニアの円環の中心に黒い渦が現れ、1体の巨龍が舞い降りる。《裁きの龍》とフォルムが似ているが、こちらは対照的に全身が黒い羽毛で覆われ、爪の赤みは血のように暗い。
戒めの龍
ATK3000 レベル8
やはり《封印の黄金櫃》は、新しいモンスターを呼ぶための布石だった。さっきのターンにこのモンスターを手札に加えていたのは知っていたが、これで何をしてくるのか。
「さらにこのカードは、フィールド及び墓地から《裁きの龍》と《戒めの龍》を1体ずつ除外する事で、エクストラデッキから特殊召喚ができます」
「「なっ!?」」
しかし、ミネルバがエクストラデッキからカードを取り出した事で、俺もクーリアも息を呑む。
そして、そのカードかまだ明らかになっていないにもかかわらず、全身を圧縮するようなプレッシャーが襲い掛かってきた。身体ががくがくと震え始め、自分を押さえつけないと逃げ出したくなるような、威圧感。それを感じたのは、きっとクーリアも同じだろう。
「罪を裁く光よ、咎人を戒める闇よ。いま明暗ひとつに合わさり、正義の頂点に輝く神の龍となれ!」
感情が籠っていなかった今までとは打って変わって、力強くミネルバが口上を宣言する。
そして、さっきの《ジャスティス・ワールド》など比べ物にならないほどの強烈な光がフィールドを支配し、周囲は昼どころか完全な光そのものと言える明るさに染まった。
「出でよ、レベル10!《
光の強さに目が眩んでしまいそうになる中、空を割って現れたのは、金色の龍。赤い爪以外は、身体を覆いつくす羽根、翼、首から尻尾まで全てが金色に覆いつくされているドラゴンだ。
神光の龍
ATK3000 レベル10
そのドラゴンは、ドレミ界の大地に地響きと共に降り立つと。
「――――――――――――――――――ッ!!」
耳を劈くような咆哮を上げた。鼓膜どころか全身を叩く大きさと勢い。さっきから強く感じるプレッシャーも含めて、何もかもがこのデュエルで今まで見たモンスターと次元が違う。
片膝をつき、耳を指で塞ぎながらも、横にいるクーリアを見る。彼女もまた苦しそうに手で耳を塞ぎ、脳をも砕かんとするのに耐えようと、細い指で頭を押さえている。
その時、《神光の龍》が爪を立てている地面に大きな亀裂が入った。それは俺とクーリアの間を裂くように伸び、さらに後方まで続く。
「……っ!」
それを目で追った直後、ドレミ界の屋敷の窓が完全に砕け散ったのが見えてしまった。しかも、外壁や扉にも罅が入り始め、壁の一部が崩れ落ちている。
程度こそ違うが、俺のデュエルで崩壊した都市の一角がフラッシュバックした。
「や、めろ……!」
声を上げようとしても、《神光の龍》の力が強すぎて上手く声が出ない。
そして、ミカエルは。
「思い知るがいい、神の力を!!」
これまでよりも声を張り上げ、両腕を広げ、誇らしげに力を見せつけている。さっきまでは、尊大ながらもまだ理性を保っているようだったが、それさえ完全に失せていた。
そしてさっきから感じるこの謎の感覚は、《神光の龍》が初めてではない。これまでにも感じ、都市の世界でウィズダムが使った《サイバー・エンド・ドラゴン》が一番近い。
疑いの余地もなく、このカードはエグザムの力を宿している。
「《神光の龍》の効果発動! 互いのターンに1度、2000ポイントをライフから払い、フィールド及び墓地の他のカードを全て除外する!」
「な、に……!?」
「そんな……っ!!」
ミカエル & ミネルバ LP3800→1800
《神光の龍》が天に向かって吼えると、ハルモニアによって現れていた音楽記号や環状の五線譜が掻き消え、空に巨大な渦が出現する。俺たちのフィールドにいた6人の「ドレミコード」は、抵抗するも成す術なく渦に吸い込まれ、さらには俺とクーリアのデュエルディスクの墓地からもカードが吸い上げられてしまう。ちらとみれば、ミカエルたちの墓地からもカードが吸い上げられていた。
そうして渦が閉じると、俺とクーリアのフィールドからは全てのカードが消え去ってしまった。
そしてフィールドに残っているのは、《神光の龍》のみ。
「《神光の龍》でダイレクトアタック! エンライトメント・オーダー・ブラスト!!」
ミネルバの攻撃命令を受けて、《神光の龍》が口を開けると、黄金の炎を蓄え始めた。
あの攻撃をまともに喰らうのは、ライフポイント的な意味に加え、感じる熱や気配からしてもまずい。これまで何度もエグザムの攻撃を受けた俺には分かる。
それを理解してからクーリアの下へ駆け出すのに、1秒もかからなかったと思う。
「え……っ!?」
驚くクーリアへの説明は申し訳ないが省く。俺はクーリアを庇うように正面から抱きしめ、《神光の龍》に対し背を向ける。
その直前、ミカエルがにやりと笑ったのが見えた。
そして、《神光の龍》が炎を放出した音が耳に呆気なく入り込む。
「ッ……!」
絶対に無傷では済まない。
それを覚悟し、歯を食いしばり、ぎゅっと目を閉じてそれに備える。
「う……あ?」
だが、奇妙な事になった。
クーリアを庇って《神光の龍》に背を向けているのだから、その炎は確実に俺に襲い掛かるはずだ。なのに、脚に熱さを多少感じるものの、総じてそこまでの熱や痛みを感じない。ミカエルたちや《神光の龍》の雰囲気からして、単なる見せかけのようではなさそうだったが。
何が起きているのか確認しようと、少しだけ振り向いて見て。
「クーリア様!?」
今なお抱きしめているクーリアの名を叫んだ。
クーリアの金色の翼が……グランドレミコードの証である翼が、《神光の龍》が放つ炎から俺を守る盾のように広げられている。2枚の翼を縦に並べ、できる限り俺に炎が当たらないようにしていた。
だけど、クーリアも無事ではないらしい。
「う、ぁ……!」
なぜって、俺の胸の中でクーリアの表情は苦しそうに、つらそうに歪んでいる。その上、俺のスーツを引き千切らんとするほどに強く握り、呻いているのだから。
「クーリアやめろ!」
クーリアを苦しめたくない。
だから敬語も放り捨てて叫ぶ。
「……ごめ、ん……バトレアス……!」
ところが、クーリアは声を絞り出して俺に謝ってきた。この期に及んで何を、と聞こうとしたら。
ぐしゃ、と。
何かが崩れるような音がして。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
猛烈な熱が、痛みが、背中に襲い掛かってきた。
次に感じるのは、匂い。フライパンで肉を焼いた時に漂う食欲をそそるようなものとは程遠い、不快な匂い。自分の身体が焼けているせいだ、すぐに気づけた。
「あああ、が……っ……!」
痛みに耐えかね叫び続けた喉が限界に至り、声が出なくなる。
時間の流れが非常に遅く感じる。
身体がこの熱から逃げたいと叫んでいる。
いっそ死んだ方が楽だと、脳が諦めを訴えかけてくる。
「っ!!」
だけど、クーリアの身体は決して離さない。
この炎からは、死んでも守り抜く。
強く抱きしめる。今は痛くても、苦しくても、我慢してほしい。
「十分だ」
そんな声が聞こえたと思ったら、背中に感じる熱、そして炎の音が不意に収まった。
バトレアス & クーリア LP3150→150
取って代わるように、氷漬けにされるような冷たさに襲われる。
「……」
意思に関係なく、クーリアの身体を離してしまった。
そして、俺の意思など関係なしに地面に横倒しになる。
命に代えても守りたかったクーリアは、腰から生えていた金色の翼が焦げて焼け落ちているのが見えた。けれど、それ以外の場所は無事らしい。
「バトレアス……! しっかりして……!」
クーリアが、自分も痛いだろうに俺に声を掛けてくる。
身体が揺さぶられるが、ろくに反応もできない。表情筋を動かす事さえつらい。
さっきの攻撃は、あまりにも苛烈すぎた。生きながらに焼かれる事がどれだけ惨たらしいかを、身をもって理解した。
「ワタシはこれでターンエンド。このエンドフェイズに《神光の龍》の効果で、デッキから4枚のカードを墓地へ送ります」
「く……っ」
淡々とデュエルを進め、ターンを終えるミネルバ。
そしてクーリアも、さっきの攻撃でのダメージが響いたのか、俺の傍に横たわる。
お互い横になって、視線がぶつかった。
◆ ◇
「クーリア様!!」
「バトレアスさん!!」
モニターを見ていたキューティアとプリモアが2人の名を叫んだ。後ろにいたドレミコードたちも、前のめりになっている。
「……」
夕食が胃の奥から逆流してきそうになるのを、喉に熱を感じながらも小夜丸は必死に堪える。治安維持組織の一員として、悲惨な現場は何度も目にしてきたが、人が生きながらに焼かれる場面など経験がない。
こんなにも、惨たらしいなんて。
「ミューゼシア様! ゲートを……!」
エリーティアが虚空を指差す。助けに入るつもりか。
「……あのエグザムは、今まで話に聞いたり見たりしたのとは全く違う、別次元の存在よ。迂闊にゲートを開けたら、ここにも被害が出る。誰も、何も、救えないわ」
「ッ……!」
涙ぐみ、口を噤むエリーティア。
《神光の龍》とやらが、S-Forceが探しているエグザムの1枚である事は確実だ。ブリッジヘッドで行われた実験より遥かに強い力を感じるのも、傍目に見ただけでよく分かる。
悔しいが、そんなカードが猛威を振るっている場所に出て行くのは危険だという、ミューゼシアの意見は正しいだろう。エリーティアもそれを理解している。だからこそ、そんな顔をするのだ。
「それに……」
さらにミューゼシアは、小夜丸を見る。どういう理由だか知らないが、小夜丸がいるから助けに入れないのか。
だったらもう、小夜丸も黙っていられない。
「……私がいるから2人を助けられないと言うのなら、私が彼らに投降すればよろしいかと」
「それをしたら、クーリアさんとバトレアスさんが、苦しむよ」
エンジェリアが強めに否定してきた。
見ればエンジェリアは自らの腕を押さえている。
「2人とも、あなたを守るために命がけで戦ってる。あれだけの怪我をしてまで、戦ってるのに……それを全部無駄にするような事は、あなたがしちゃ、ダメ……だよ、っ」
話すエンジェリアの声は、震えていた。言葉を切ると、ぎゅっと閉じた目から涙が零れ落ちる。
周りを見る。全員が、何かを堪えるように黙り込み、胸を押さえ、震えていた。
皆は、悔しいのだ。
助けたいのに、それができなくて。
「2人が死んでもいいんですか!?」
モニターに映るバトレアスとクーリアを指差し、小夜丸は怒鳴る。
クーリアはまだ見るからにそこまでではないにしろ、放っておくのは危険な容態だろう。
だが、バトレアスはどうだ。どう見ても絶対安静どころか危篤状態、処置をしなければすぐに死んでしまうほどの大火傷を負っている。今だけは、彼が要注意人物とか監視対象とか、そんな事は関係ない。
それでも何もできない今を、本当に受け入れられるのか。
水を打ったように、静まり返った。
「……」
そんな中、プリモアが地面に両膝をつき、祈るように両手を合わせた。
まさか、この状況で神頼みなどするのか。
「プリモア? 何を……」
「今はちょっと、集中させてください……」
傍らに立つドリーミアが問いかけるも、プリモアは取り合わず姿勢を保ったままだ。
それが何になるのか分からないが、モニターの向こうにいるバトレアスとクーリアの状況は一向に変わらない。
『何とも、痛々しいな』
ミカエルの声が聞こえた。
◇ ◆
手離しかけていた意識が蘇ってきた。
それはミカエルの声が聞こえたから、ではない。
(……なんだ、これ……?)
未だ、背中に感じる痛みと治まらず、空気の冷たさは体を刺すようなものと錯覚している。
しかし、痛みがまだギリギリ耐えられるレベルにまで和らいだ。そして、薄まっていた意識を優しく呼び起こすような力の感覚が、身体の奥底からゆっくり広がり始めている。
これは、俺の中にあるドレミコードの力を誰かが増幅させているのか。そんな芸当は俺にはできない。誰がそれをしてくれている?
(……プリモア?)
クーリアやミューゼシアの顔が浮かぶよりも早く、あの少女の姿が思い浮かんだ。
それは何故か、可能性の話ではなく、確信に近い。
「バトレアスとやら」
また、ミカエルの声が聞こえた。
だが、いかに痛みが和らいだとはいえ、まだ起き上がるのは難しい。返事をするのも億劫なほどだ。
「君のその忠誠心、中々見応えがあった。しかしクーリア、そんな彼を守るために自分の身を犠牲にしたのは滑稽だったよ」
投げ出していた手、その指先に、わずかに力が入る。
「彼ひとりに任せておけば、自分は無傷でいられたものを。君が誰を愛し、愛されようが知った事ではないが、バトレアスの君を守るという意思を尊重せず、自分を犠牲にするのは愚かだ」
指先に宿った力が手へと移り、自然と握りしめられる。
「このデュエルもそうだ。君は彼を庇い、守ろうとした結果、ミスを犯している。彼が足を引っ張っていたのは確かだが、君も彼に入れ込み過ぎて正常な判断ができていないと見えるな」
クーリアを見るが、言い返す気力もないらしい。目を閉じて、ミカエルの酷評を受け入れている。
閉じた瞳から、小さい涙の粒がいくつも浮かんでいた。
「
すうっと、身体を焼き尽くさんとしていた熱と痛みが引き、冷静になる。
全身に蔓延る重さを振り払って、起き上がる。
「ほう、あの攻撃を受けてなお立ち上がるとは――」
「お前が俺の事を何て言おうと、それはまだいい」
立ち上がって、ミカエルを見て、開口一番そう告げてやる。
鳩が豆鉄砲を食ったように、ミカエルは口を閉ざした。
「俺は確かに皆のお荷物かもしれない。いる意味も価値もない腰巾着って言われても、文句はない」
「何が言いたい?」
「だけど」
拳を強く握り、今できる限りの眼力で、ミカエルを睨みつける。
「こんな俺を助けてくれたクーリアを! 俺を認めてくれたドレミコードの皆を!」
「っ」
「大切な皆を、この場所を侮辱するような奴は……誰だろうと許さない!!」
ターンエンドはもう聞いた。
だから返事は待たない。動かさせてもらう。
「俺のターン、ドロー!」
引いたカードを視認し、倒れてしまったクーリアに視線を落とす。
クーリアは未だ立ち上がらない。その状態ではもうデュエルはできないだろう。だから、このターンで決着をつける。
「《ドレミコード・プリモア》召喚!」
現れたのは、薄いグレーのドレスを着る少女。俺とクーリアの心身が通じ合った結果生まれた、ドレミコードの原初とされる存在。
しかし彼女は、普段見せる人懐こい表情とは異なり、厳しい目でミカエルとミネルバ、さらに《神光の龍》を見つめる。
ドレミコード・プリモア
ATK 0 レベル1
「プリモアを召喚した時、俺はデッキから『ドレミコード』カード1枚を手札に加える!」
「なら、余計な事をされる前に墓地の《ネクロ・ガードナー》を除外して効果発動。このターン、相手モンスター1体の攻撃を無効にできる!」
初めてデュエルに使用するプリモアの効果を使う前に、ミカエルが動いた。さっきの《神光の龍》の効果で、あちらも墓地は空になったはず。であれば、今の《ネクロ・ガードナー》はエンドフェイズにデッキから墓地へ送られたものか。
それは念頭に置きつつ、プリモアの効果でサーチするカードを選ぶ。キューティアよりも範囲が広いサーチ。それだけで十分に頼もしい効果だ。
「手札に加えた魔法カード《
捨てるカードは、発動するタイミングに恵まれず、クーリアに引き継ぐ事もできなかった《金満な壺》。そして、手札に加えるのは。
「スケール4のグレーシアと、スケール8のキューティアを手札に! さらに《幸せの多重奏》の効果で、相手の場のモンスターより1体多い数だけ、手札の『ドレミコード』を特殊召喚する! 来てくれ、グレーシア、キューティア!」
呼び出すのは、このデッキにおいては優秀なサーチ効果を持つ2人だ。その2人に加えてプリモアは、俺の火傷を気遣っているのか、こちらを振り向き不安げな目を向けるが、心配には及ばないと首を横に振ってみせる。
ドドレミコード・キューティア
DEF400 レベル1
ソドレミコード・グレーシア
ATK2100 レベル5
「特殊召喚したグレーシアとキューティアの効果を発動! キューティアの効果でエンジェリアを、グレーシアの効果で《ドレミコード・エレガンス》を、それぞれデッキから手札に加える!」
《神光の龍》の攻撃力は3000。さらに《ネクロ・ガードナー》の効果もある。あの布陣を超えて勝つためには、攻撃できるモンスターを3体以上並べるのが必須条件だ。
だから、少ない消費でペンデュラム召喚の準備ができる2枚を手札に加えた。
「《ドレミコード・エレガンス》発動! 手札のエンジェリアをエクストラデッキに加え、デッキよりスケール1のクーリアと、スケール8のキューティアをペンデュラムゾーンにセッティング。これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!」
デッキから取り出した2枚に映る2人の天使は、どちらも使用する俺に対して笑ってくれている。その笑顔に、荒れ狂う怒りが少しだけ収まるのを感じつつ、ペンデュラムゾーンに置く。これでペンデュラム召喚の準備は整った。
「ペンデュラム召喚! エクストラデッキから頼む、《ラドレミコード・エンジェリア》!」
このデュエルでは目立った活躍のないエンジェリアだが、彼女の出番はここからだ。
ラドレミコード・エンジェリア
ATK2300 レベル6
「キューティアの効果で、『ドレミコード』ペンデュラムモンスターの攻撃力は、自身のスケール1つにつき100ポイントアップする」
ソドレミコード・グレーシア(スケール4)
ATK2100→2500
ラドレミコード・エンジェリア(スケール3)
ATK2300→2600
「その程度のパワーアップが何になる!《神光の龍》には届くまい!」
微弱なパワーアップをミカエルは鼻で笑うが、これは永続効果で俺が狙ったものではない。それに、キューティアには悪いが、この効果で勝つつもりではないのだ。
「現れろ、清らかな旋律のサーキット!」
拳を夜空に突き上げると、リンクサーキットが頭上に出現した。
「召喚条件はペンデュラムモンスターを含むモンスター2体以上! キューティア、グレーシア、エンジェリアをリンクマーカーにセット!」
一旦リンク素材として利用する事に、心の中で詫びを入れる。グレーシアとエンジェリアが、キューティアの手を引いてリンクサーキットへと飛び上がった。そして、3人を受け入れたリンクサーキットが輝きを放つ。
「リンク召喚! 流麗にして偉大なる、我が最愛の音階の大天使!《グランドレミコード・クーリア》!!」
現れるのは、グランドレミコードとなった姿のクーリア。その金色の翼だが、現実ではさっき《神光の龍》の攻撃で焼け焦げてしまったため、見ていると少し物悲しい気持ちになってしまう。
そんな俺を励ますかのように、《グランドレミコード・クーリア》は微笑み、妖精体はガッツポーズを取って見せてくれた。
□□□ グランドレミコード・クーリア
□◆□ ATK2700
■■■ リンク3
「……ふふ」
その時、微かな笑みが聞こえて、後ろを見る。
倒れていたクーリアが、少しだけ体を起こし、俺を見て笑っていた。さっきの召喚口上が聞こえたらしい。
もう大丈夫だという意思を込めて俺もクーリアを見て頷いてから、ミカエルたちを見据える。
「《グランドレミコード・クーリア》の攻撃力は、俺たちのエクストラデッキの表側ペンデュラムモンスター1体につき100ポイントアップする。今、俺とクーリアのエクストラデッキにいるのは、全部で10体!」
グランドレミコード・クーリア
ATK2700→3700
すると、《グランドレミコード・クーリア》を守るように、キューティア、ドリーミア、エリーティア、グレーシア、エンジェリア、ビューティアの姿が現れる。さらに、《ドレミコード・ソルフェージア》としても現れていたミューゼシアの妖精体が傍らに現れて、《グランドレミコード・クーリア》もまた俺を振り向いて力強く頷く。
「君もそのモンスターを使えるとはな。だが、いくら攻撃力を上げても、既に発動した《ネクロ・ガードナー》の効果で攻撃は無効になるぞ!」
その通りで、《ネクロ・ガードナー》の効果は《グランドレミコード・クーリア》の効果で無効にできる範囲の外。だから、攻撃しても意味はない。
ここは、プリモアのさらなる効果を使わせてもらう。
「俺が『グランドレミコード』をリンク召喚した時、プリモアの効果が発動! 墓地の『ドレミコード』カード1枚を手札に戻す事ができる!」
「何?」
「俺は、墓地の《幸せの多重奏》を手札に戻す!」
するとプリモアは、俺を振り向いて微笑みながら、1枚のカードを差し出してくる。それはまさしく、《幸せの多重奏》。俺はプリモアに笑いかけ、手札に加えたそれをすぐさま発動する。
「《幸せの多重奏》発動! 俺は2つ目の効果を選び、もう一度『ドレミコード』のペンデュラム召喚を可能にする!」
「何だと!?」
ミカエルの余裕が崩れた。
視線を上げて、ペンデュラムゾーンにいるクーリアとキューティア、モンスターゾーンにいる《グランドレミコード・クーリア》とプリモアを見る。皆と視線を合わせ、頷いた。
「ペンデュラム召喚! もう一度力を貸してくれ、《ソドレミコード・グレーシア》!《ラドレミコード・エンジェリア》!」
再び夜空に穴が開き、群青とオレンジの光が降り注ぐ。
攻撃では非常に頼もしい2人のドレミコードは、俺を振り返り頷いたり、笑ったりしてくれる。そして、妖精体はサックスとトランペットで士気を高めてくれた。
ソドレミコード・グレーシア
ATK2100 レベル5
ラドレミコード・エンジェリア
ATK2300 レベル6
グランドレミコード・クーリア
ATK3700→3500
「あの状況から、これだけの盤面を整えるとはな……」
俺のフィールドを見て、ミカエルが驚きを隠せないでいる。手札2枚の状況からこれだけ展開できるとは思っていなかったらしい。
さらにこの状況なら、精霊界で俺だけが所有している《グランドレミコード・ファンタジア》を召喚する事ができる。
だが、どれだけ俺がミカエルたちに腹を立てているとはいえ、流石にそこまでする気は起きなかった。それぐらいの理性は取り戻せている。
それに、これならもう大丈夫だ。
「バトルだ! グレーシアで《神光の龍》を攻撃!」
グレーシアがタクトを振り、妖精体がサックスを吹くと、ベルから群青色の光線が放たれる。
一見すれば自殺行為。しかしグレーシアの攻撃は、《神光の龍》に届く事なく途切れた。《神光の龍》は身じろぎひとつしていない。
「《ネクロ・ガードナー》の効果は、確かにモンスター1体の攻撃を無効にする。だが、それをバトルフェイズの前に発動したら、必ず最初の攻撃が無効になる!」
「くそ……!」
ミカエルが歯ぎしりをした。片やミネルバは、全く表情を変えていない。
大方、グレーシアの効果を警戒してメインフェイズの内に《ネクロ・ガードナー》の効果を使ったのだろう。けれどあのカードは、前世で現実やマスターデュエルで遭遇する事が多く、自然とそう言う効果をしているのだと理解していた。
これでもう怖いものはない。
「《グランドレミコード・クーリア》で《神光の龍》を攻撃! グランド・アンサンブル!!」
攻撃名を聞き、《グランドレミコード・クーリア》はタクトを嫋やかに、妖精体は楽しそうにタクトを振ると、音楽記号を帯びた竜巻が発生する。それは大きくうねりながら《神光の龍》に襲い掛かり、飲み込むと黄金色の爆発を起こした。
「ぐっ……!」
ミカエル & ミネルバ LP1800→1300
「破壊された《神光の龍》の効果発動! 除外されている《裁きの龍》と《戒めの龍》を手札に加えた後、召喚条件を無視して特殊召喚――」
「《グランドレミコード・クーリア》の効果発動! 相手の効果が発動した時、奇数のスケールを持つ『ドレミコード』をペンデュラムゾーンからリンク先に特殊召喚し、それを無効にする!」
《神光の龍》、もしくは2人の墓地にまだ発動できる効果がある事を予測し、この布陣を整えたわけだが、案の定だった。そしてもちろん、それをさせるつもりはなく、《グランドレミコード・クーリア》の空いている残り1つのリンク先に、ペンデュラムゾーンにいるクーリアを呼び出して無効にさせた。
モンスターゾーンに現れたクーリアは、俺に向けて手を振ってくれる。
ドドレミコード・クーリア
ATK2700 レベル8
「エンジェリアでダイレクトアタック! エンジェリック・マーチ!!」
エンジェリアに最後の攻撃を託すと、彼女はにっと楽しそうに笑い、タクトを振った。それに応じ、妖精体がトランペットを勢いよく吹いて大きな音を鳴らし、オレンジの光線がベルから放たれる。音符を纏ったそれは、ミカエルとミネルバの足元に着弾し、オレンジ色の大爆発を巻き起こした。
「うおおおおおおおおおおおおッ!」
「ぐっ……!」
ミカエル & ミネルバ LP1300→0
そのオレンジの爆発が、2人のライフを削りきったのを認めた瞬間に、身体から力が抜け落ちてしまった。