ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

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ご無沙汰しております。
昨年は読者の皆様に大変お世話になりました。
本年もよろしくお願いいたします。

第ニ部第3章、投稿してまいります。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。


第3章
第67話:不本意な取引


 《ライトロード・アーク ミカエル》の襲来を受け、ドレミ界も「エグザム」の脅威を再認識する事となった。ミカエルとミネルバはそれについて謝罪してくれているので、そちらに対してはもう怒りや恨みなどは抱いていない。

 けれど、ドレミ界ももっと積極的に「エグザム」の情報を集める方針になった。同じように狂わされる人を、これ以上増やさないために。

 しかし、ドレミ界はS-Forceのようなハイテク設備の類がなく、そもそも閉鎖的で他の世界や次元との関わりをあまり持たない。

 だから、数少ない関わりを手繰って探る事となった。

 

 

 

「人を狂わすカード、か」

「何か、心当たりはございますか? 些細な事でも構いませんが……」

「ふむ……儂はその手の話は聞かないが……」

 

 例えば天老。《F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)》の人間体である彼は、初めてドレミ界へ依頼した際のいざこざ以来、しばしば親交がある。

 ただ、グレーシアが事情を聞いても、彼に心当たりはなかったようだ。

 

「ハスキーはどうじゃ?」

「いえ、私にも覚えは。他のメイドにも聞いてみましょう。外へ出る機会は、彼女たちも多いですし」

 

 話を振られたハスキー、さらに他のドラゴンメイドたちにも聞いてはみたが、やはりエグザムやそれらしき情報は得られなかった。

 

「すみません、大したお役立ちもできず」

「いえ、お気になさらず。ですが、その手のカードを見つけた際には、迂闊には触れないよう」

「分かった、留意しておく」

 

 ハスキーが礼儀正しく謝るが、グレーシアはやんわりと否定する。

 そして情報こそ得られなかったが、危険性がある旨は共有すると、天老は頷いてくれた。

 彼は、ヴァーディクトによって謂れのない怪我を負わされた。エグザムをうっかり手にして、また同じような目に遭ったりなどしてほしくない。

 その思いも込めて、グレーシアは頭を下げた。

 

 

 

「――と、言う感じなんです」

「まさか、そのような事が起きるとは……」

 

 例えば、六花。

 年がら年中雪の降り積もる世界だが、バトレアスが最初にエグザムのカードを手にしたのは冥界。あのカードはどの世界に出現してもおかしくはない。

 ドリーミアが事情を説明すると、ヘレボラスは口元を押さえて驚きを露わにする。エグザムの危険性もそうだが、持っている力はドリーミアでも俄には信じがたい。実際に目にしてもそう思っているのだから、聞いただけでは現実味は湧かないだろう。

 しかし、六花界はヴァーディクトが遣わした黒い鎧の男に襲われ、ヘレボラス自身も傷ついている。だから痛ましい話については、どれだけ現実離れしていても真摯に受け止めるようだ。

 

「それで何か……おかしなカードとかに心当たりはないですか?」

「いえ、私たちは……」

「その手のカードが現れたら、逐一私たちも感知できるし……」

 

 ヘレボラスも、その隣に座るスノードロップも、エグザムのカードは知らないらしい。そばで話を聞いていたボタンも、心当たりはないと首を横に振る。

 ここにも芳しい情報はなさそうだ、とドリーミアは嘆息しつつ出された緑茶を啜る。

 

「何かありましたら、こちらからも共有いたしましょう」

「それはありがたいです」

「貴女方のおかげで、我々は変われたのですから」

 

 2人の申し出に感謝しつつ、ドリーミアは窓の外をちらと見る。

 一番最初にこの世界を訪れた時は、バトレアスと一緒にパニックに陥ったほどの猛吹雪だった。だけど今は、しんしんと音もなく雪が降り、風情さえも感じられるほど穏やかだ。

 それは、この世界の天候がスノードロップとヘレボラスの心境に左右されるから。その内のヘレボラスは、バトレアスとのデュエルで自身を取り戻した。あのデュエルは、観ていただけのドリーミアが言うのも何だが、依頼を受けてただそれに応えただけの事。礼なら疾うに受け取っている。

 だけど、今は急を要する事態だ。借りられるものは猫の手でも借りたい。

 

「平穏を脅かすものなど、私たちにとっても不要ですから」

 

 にこ、とスノードロップが笑う。

 ドリーミアは頷き、頭を下げた。

 

 

 

「エグザムねぇ……聞いた事もないな」

 

 例えば、アロマ。

 庭の中心にあるティーテーブルで、ベルガモットは頭の後ろで腕を組んで唸る。

 

「ラベンダーはどうだ? 何か、そんなものがあったりした覚えは?」

「いえ……私も聞き覚えがないです」

 

 隣でハーブティーを飲むラベンダーも、首を傾げた。

 バトレアスと同じ、人間界から転生したラベンダー。もしかしたら、同じ転生者だからこそそう言ったカードが近くにあるのでは、と薄っすら希望を持っていたが、それは叶わなかった。クーリアは仕方なく、自分もハーブティーを啜る。甘い香り、仄かに苦く温かいお茶は、気分を安らかにしてくれた。

 

「お茶美味しいです~」

「それはよかったわ♪」

 

 そんなクーリアの隣で、同じくハーブティーを飲むプリモアは、一口飲むとにぱっと笑う。隣に座るマグノリアは、目を細めて彼女の頭を撫でた。

 ドレミコードの原点ともいえる力をもつプリモアだが、その見た目は可憐な少女。そんな彼女が見せる笑顔は、本当に花が咲いたように可愛らしく、クーリアも顔が緩んでしまいそうになる。加えて、マグノリアはお世話好き。そんな彼女とプリモアは、まさにマリアージュと言っていいかもしれない。

 プリモアを連れてきたのは、アロマの面々に紹介する意味も込めていた。

 

「しかし……そちらも色々な事が起きるのですね」

「ええ。今回は特に、危険なものでした」

 

 ラベンダーの言葉にクーリアも苦笑する。

 こちらの世界では非日常的な事が色々あるが、ドレミ界でこうも色々起きる事はあまりなかった。それがバトレアスのせいとは毛頭思わないが、エグザムの一件が終わったらゆっくりしたいところだ。

 

「バトレアスさんが来られないのは、残念ですね……」

「ええ。彼はちょっと今、動けなくて」

 

 カナンガが残念そうに言う。

 この場にバトレアスがいない理由だが、S-Forceに目をつけられているため、迂闊に外の世界を出歩けないのだ。バトレアスはよろしく伝えてほしいと言っていたし、それは既に言ってある。

 

「残念です……一緒にお出かけしたかったのに……」

 

 そしてプリモアは、唇を尖らせて悲しそうな目をする。

 庇護欲を否が応でも掻き立てられ、クーリアはプリモアの髪をそっと撫でた。

 

「……ま、一刻も早くエグザムとやらの事件が解決すりゃ、バトレアスもまた来られるだろ」

「ええ、確かにそうですね」

 

 ベルガモットが気分を変えようと明るく告げると、ラベンダーがにっこり笑って頷く。ビューティアから聞いていたが、やはりラベンダーはベルガモットに惚れ込んでいるようだ。

 

「それに、あいつが来たら色々聞きたい事もあるしな」

 

 さらに続けるベルガモットは、不満そうではなく、逆ににやにやと嬉しそうな笑顔を浮かべてプリモアとクーリアを見ている。

 どういう意味か分からなくて、クーリアはプリモアと顔を合わせてきょとんとしたが、カナンガが溜息をついているのが視界の端で見えた。

 

◆ ◇

 

 ミカエルの襲来から3週間。

 ドレミ界の屋敷も土地もすべて直り、ドレミコードたちがエグザムを探しているという点を除けば、いつも通りの時間が戻りつつあった。

 けれどその3週間で、エグザムの情報は全く掴めていない。

 

「ここ以外の世界は無数にありますし……道は険しいですね……」

 

 エリーティアがビスケットをつまみ、嘆息する。傍らの妖精体は、ずっと張り詰めていたのか船を漕いでいる。

 俺が精霊界に転生してから、存在を認知しているドレミ界以外の世界は、まだ両手の指で数えられるぐらいだ。しかし実態は、エリーティアの口ぶりからして本当に無数にあるのだろう。

 

「『浄化』の合間に、それらしい気配を探しているけど……やっぱりそれっぽい感じはしないなぁ……」

 

 ファンシアが頬杖を突きながら、疲れたように息を吐く。すかさず空になったカップに紅茶を注ぐと、ファンシアは小さく笑って頷いた。同じく紅茶を飲み終えた妖精体は、「ぷはー」と息を吐いている。

 アクティブなところがあるファンシアは、休日に外の世界へ出かける事が多い。しかし、俺のようにマークされているわけではなくとも、ファンシアの姿はS-Forceに捕捉されてしまっている。なので、存在が認知されない「浄化」以外では迂闊に外を出歩かないよう、ミューゼシアに言われていた。「浄化」の合間にエグザムの存在を探して神経を尖らせているのに、外でリフレッシュができないという状況はさぞきついだろう。

 

「色々な方にも聞いてはいますが……皆さん見た事がない、と」

 

 グレーシアが紅茶で口を湿らせる。その側で、疲れているらしい妖精体が寝転がりながらクッキーを食んでいる。ぺし、とグレーシアがお尻を叩くと、起き上がり正座をしていた。

 「浄化」だけでなく、これまでに「依頼」を通じてかかわりを持った人に話を聞いてみても、情報はないのだそうだ。ドリーミアやクーリア、エンジェリアも同様にコクリと頷く。探し物は探している間は見つからない、という言葉が頭を過る。

 

「……あっ、このクッキー美味しいです!」

 

 ちょっとばかり空気が重くなってきたのを察したか、プリモアが方向転換を試みようと俺を見る。その気遣いにほっこりした。

 

「作ったの、バトレアスだっけ?」

「ビューティア様に手ほどきを受けながら。まぁ、ほとんどビューティア様が作ってましたけどね」

 

 ドリーミアに聞かれ、俺は斜向かいに座るビューティアを手で示す。にこにこと、ビューティアは笑って頷いた。ドリーミアの妖精体はもくもくとクッキーを食べ、ビューティアに抱えられる妖精体は変わらず微笑んでいる。

 休日を外で過ごせないのはファンシアだけでなく俺もだ。元から休日自体少ないから特に苦ではないものの、外へ出る機会がないと少し窮屈な気分になる。

 そんな俺を見かねてか、ビューティアがお菓子作りに誘ってくれたのだ。空いている時間でクッキー作りをレクチャーしてもらったが、言った通りほとんどビューティアがやってくれた。

 

「あなたを外へ出せないのは、ちょっと申し訳ないけど……」

「大丈夫です。安全には代えられませんし」

 

 隣に座るクーリアがすまなそうに言うが、俺は本当に気にしていない。確かに外へ出られないのはもどかしいが、暇すぎて死んでしまうほどではない。掃除に洗濯、炊事、その他雑務と、プリモアに付き合って遊んだり、書類整理をしたり、やる事は色々とある。そうして気付けば3週間だ、時間の流れを早く感じる。

 だが、これだけ時間が経っても情報がないのは、流石にそろそろ問題だろう。ドレミコードの皆が疲弊し始めているのが余計にまずい。

 

「……クーリア様。後で少々お話が」

「?」

「できれば、ミューゼシア様もご一緒に」

 

 今までは余計な事はすまいと思っていたが、ぐずぐずしていては最後のエグザムが得体の知れない不穏な輩に渡ってしまいかねない。

 だから、あまり使いたくなかった手段も検討するしかないだろう。

 

◇ ◆

 

 夕方に帰ってきたミューゼシアに声を掛け、俺はクーリアの部屋に伺う。話をするのにどこがいいか悩んだが、頻繁に人が来るわけでもなく、かつ他人に話が聞かれにくいここが一番と思ったのだ。

 俺は扉を閉め、懐からあるものを取り出す。自分の机に仕舞っておいたものだ。

 

「都市の世界でウィズダムと戦った日……このカードがいつの間にかポケットに入っていたんです」

 

 見せたカードに、クーリアとミューゼシアは眉を顰めた。

 

「これは?」

「俺を助けてくれた、マスカレーナのカードです」

「ただのカードではないわね。見るからに」

 

 クーリアの質問に答えると、ミューゼシアはそのカードを観察する。

 この《I∶P マスカレーナ》のカードは、通常版とイラストが異なるだけでなく、記載されている情報がコンピューターのコードのように記されている。前世だったら、多分枠の外に「公式のデュエルでは使用できません」と書かれている事だろう。

 だが、このカードは単なるプロモ系のカードなんかではない。ミューゼシアの推察は正しかった。

 

「これは、マスカレーナ本人と会話ができるようになってるんです」

「……本人と?」

「一度だけ、俺の部屋でこのカードを使ってやり取りをしました。本人が安全と言っていましたが、大事を取ってそれ以降は使っていません。報告しなかったのは謝ります」

「それはいいけれど……」

 

 ミューゼシアに話した通り、俺がこのカードを使ったのは一度だけだ。噂に名高いサイバース界の運び屋であるマスカレーナの腕は一応信用しているが、念には念を入れて、不用意には使わないよう心掛けていた。

 

「……そのカードを今見せたという事は」

「今は、マスカレーナの力を借りるべきではないか、と」

 

 俺の意見に、クーリアもミューゼシアも考えこむ姿勢を取る。

 

「現状、こちらはエグザムの情報が一切掴めていません。かといって、同じエグザムの力を使って探すのは危険です。ならここは、運び屋としてのパイプに期待できるマスカレーナの力を借り、少しでも情報が得られれば……と考えまして」

 

 ドレミコードの皆は、「浄化」の傍ら様々な世界で情報を探してくれている。にもかかわらず、手掛かりが全く掴めないまま神経をすり減らしてしまうのは、徒労と言わざるを得ない。だから、情報を持っているかもしれないマスカレーナに頼る事もひとつの手として考えられる。

 そして、俺にはもうひとつの考えがあった。

 

「また、小夜丸さんによれば……S-Forceもエグザムを1枚持っています」

 

 ミューゼシアの目つきが、鋭くなる。そして、怪訝な顔で問いかけた。

 

「……S-Forceから奪い取るって言うの?」

「いえ、流石にそこまでは」

「穏便な方法でS-Forceから貰い取ると」

 

 俺の答え方で、どうするつもりかをクーリアは理解したらしい。

 口の中の渇きを実感しつつ話す。

 

「今現在、所在が明らかになっているのはS-Forceの1枚だけです。あと1枚はどこにあるか知りませんが、まずは既に存在が知れている場所のカードを回収すべきかと」

「それで、どうやって?」

「交渉するしかありません」

 

 精霊界では意味が薄いかもしれないが、まずは話し合いが先だ。しかし俺はS-Forceに追われている身。だから、のこのこ顔を出せば問答無用で捕まってしまう。とてもじゃないが、エグザムについて交渉などできないだろう。

 

「その交渉の場を、マスカレーナに用意してもらえないか頼んでみます」

 

 ミューゼシアとクーリアが、問いかけてきた。

 本気か? と、目で。

 俺だって、この方法はかなり危ない橋だと理解している。何せ、マスカレーナもS-Forceに追われているお尋ね者だ。エグザムの情報を教えてもらうのは兎に角、交渉の場を用意してほしいなんて依頼、受ける可能性は限りなく低い。

 だが、今のエグザムに関する情報の少なさを考えると、少しでも前に進むためにはこれしか方法がない気がした。

 

「……勿論、あくまで手段の一種ですが」

 

 黙り込む2人を見て、そう付け加える。

 これは俺なりに考えた方法だ。グランドレミコードの2人が他に何か方法を思いつくのであれば、俺はそれに従うし、この案は即時撤回する。

 けれど少しだけ時間を置き、ミューゼシアは閉じていた目を開けた。

 

「……そのマスカレーナさんは、それができる技術と情報がある、って事かしら」

「ええ、そのはずです」

 

 都市の世界でも、マスカレーナの技術の高さは目の当たりにしている。それに、S-Force内部の情報までも把握していた。そちらの面に関しては、十分信用できる。

 

「なら、それで行きましょう」

「……よろしいんですか?」

 

 思いのほか、すんなりとミューゼシアは俺の提案を受け入れた。クーリアも小さく頷いている。

 だからこそ俺は、提案した身でありながら不安になってしまった。

 

「皆も今は神経を擦り減らしてるし……こうしている間に、私たちの知らない場所で、また惨い事が起きているかもしれない。その可能性を減らすためにも、今は取れる方法は取るべきだと思う」

「それに、そのマスカレーナって人が依頼を受けるかどうかにもよる。ダメもとで頼んでみてもいいんじゃないかしら」

 

 クーリアもミューゼシアに続く。

 ミカエルの時のような事は二度と起きてほしくないが、もしかしたらどこかの世界で同じ力を持った輩が、似たような事をしているかもしれない。それは考えるだけで悲しいし、あの時感じた痛みと熱まで背中に蘇ってくる。そんな事態は何としても阻止しなければならない。

 そして、まだマスカレーナが受けるか断るかは聞いてすらいないから、頼むだけ頼んでみてもいいわけだ。エグザムの情報が手に入れば、それだけでも十分お釣りがくると考えていい。マスカレーナでも分からないとの事だったら……また一からやり直しだが。

 兎に角、話だけは持ちかけてみる事に決まった。

 

「それで、連絡はどうやって?」

「普通にデュエルディスクにこのカードを置けば」

「なら、早いところ連絡をしましょう。今は正直、時間が惜しいし」

 

 この3週間は収穫が何もなかった。これ以上の時間の浪費はなるべく避けたい。ミューゼシアの意見に頷き、俺はデュエルディスクを左腕につけて展開する。

 そして、マスカレーナのカードを盤面に置いた。ドレミ界とあちらの世界の時間の流れはほぼ同じ。夕方に近いこの時間に連絡をしても、大丈夫だろう。

 それから数秒ほど経ってから。

 

『――えっ』

 

 シャワータイム中と思しきマスカレーナが目の前に現れた。

 

「!!」

 

 それを認識してコンマ数秒。マスカレーナの悲鳴が聞こえる前に、俺はディスクに置いていたカードを即座に回収すると、あられもない姿のマスカレーナは消えた。

 そして後に来るのは、痛いほどの沈黙。とりわけ後ろから感じるクーリアの視線は、さながら心臓を刺し貫くように鋭い。

 

「……ちょっと、時間を置いてからやり直します」

「極めて賢明な判断ね」

 

 言葉を選んで告げると、ミューゼシアはやれやれと首を振りながら答えた。

 

 

 そんなこんなで、30分後。

 恐る恐る、クーリアとミューゼシアに振り向いて、再チャレンジしてもいいかを確かめる。2人共が頷いてくれたので、俺は深呼吸をしてカードをセットしようとする。

 しかしながら、先ほどの事が頭を過り、次の行動に出られない。

 

「……すみません、ミューゼシア様。さっきの事もあるので、代わりにやってもらえませんか。普通に置くだけでいいんで」

「……分かったわ。少し外で待ってなさい」

 

 ディスクを外し、カードを一緒にミューゼシアに預けて一度部屋を出る。あんな事は二度も起きてほしくない。

 ドアを閉じ、今度は盛大な溜息をつく。

 マスカレーナに悪い事をしてしまったという意識は勿論ある。しかし同時に、これは絶対にの依頼に響くだろう事は確実だ。俺の不注意で、ただでさえ勝ち筋の薄い交渉が余計危うくなってしまい、後悔と罪悪感の波に押し流されそうになる。

 

「バトレアス。大丈夫よ」

 

 クーリアが教えてくれたのに頷き、重い足取りで部屋に入ると、マスカレーナ――のソリッドビジョン――はミューゼシアに向かい合っているところだった。当然、服は着ている。

 クーリアに導かれ、俺はマスカレーナの前に姿を現す。

 

「ええと――」

『これはこれは、誰かと思えば。覗き魔のバトレアスさんじゃあないですか』

 

 出合い頭に辛辣な言葉。腕を組んでふくれっ面なものだから、見るからに不機嫌。

 ただ、不可抗力とは言え、不快な思いをさせてしまったのは事実だ。全面的に俺が悪い。

 

「……先ほどは、とんだご無礼を。申し訳ございません」

『まあべっつにー? いいんですけどねー? 変態バトレアスさんに裸を見られたと思ったらすぐ通信が切れたんで、わざとじゃなかったんでしょ〜?』

 

 小夜丸にしたのと同様、正座をして頭を下げる。しかしマスカレーナは、未だに不貞腐れ、こちらを侮っているのが丸わかりな話し方だ。効果はほとんどないらしい。

 そこでふと、前回よりも通信のラグなどがなくスムーズにやり取りができているのに気付く。あちらが何かしらのバージョンアップをしたのか、それとも2回目だから接続が安定したのか――

 

『それでー? 変態覗き魔のバトレアスさんは何の御用ですかー? こんなお綺麗な方2人も侍らせて、しかも私のヌードまで見ちゃうエッチで欲張りな不審者バトレアスさーん?』

「いちいち変な二つ名つけんな! マメかコノヤロウ!」

 

 あまりにもひどいいわれように、思考が中断されて感情が前に出る。つい素が出てしまった。

 

『ちょっとなんですかその言い方! こっちは優雅なシャワータイムを見られてるんですよ!』

「確かにそれは悪いと思ったよ! 悪かったよ! でもさぁ、そう何度も何度も不名誉な形容詞付けられたらそりゃ怒るわ!」

『事故でも女の子の裸を見たんですからそれぐらいは当然ってやつです!』

「それに関しては謝るけど! ごめんなさい! けどこのカードが今のお前の状況を直接映すなんて仕様は説明されなかったんだぞ!」

 

 マスカレーナから受け取ったカードは、スマートフォンのコール音など相手に一度呼びかけるワンクッションを置かず、直接相手の姿を映すものだった。最初に使ったのは、たまたまマスカレーナも問題ないタイミングだったのだろうが、今回は一番最悪だったわけだ。

 

『へえ! 自分の失敗を人のせいにするんですか変態さんは!』

「名前で呼べっての!」

『変態不審者バトレアスさん』

「なんだとこの――」

 

 パン、と手を叩く甲高い音に、俺とマスカレーナは沈黙する。

 そして振り返れば、両手を合わせたままのクーリアが、背筋が凍ってしまいそうなほどの笑顔を浮かべていた。

 

「話が進まないから、()()はそのぐらいで、ね?」

「『はい』」

 

 画面越し(?)でもクーリアの恐ろしさは伝わったのか、マスカレーナも大人しくなり、俺と声を揃えて返事をする。

 俺も落ち着きを取り戻し、咳払いをしてマスカレーナに話しかける。

 

「改めて、頼みたい事があるんだ」

 

 話しかけると、流石にもう俺をおちょくる雰囲気ではないと悟ったのか、マスカレーナも話を聞く姿勢をとってくれた。

 とはいえ、依頼したい事をいきなり話しても、多分話が呑み込めないだろうし、何よりさっきの事もあるので断られる可能性が高い。ここは、おさらいも兼ねて話をするべきだ。

 

「この前ちょっと話した、『エグザム』ってアイテムの事は、覚えているか?」

『あー……それは覚えてますよ。っていうか、もう聞かざるを得ないというか……』

 

 話を切り出すと、なぜかマスカレーナは苦笑した。

 

「何かあったのか?」

『あったも何も……まあ、バトレアスさんにとっても他人事じゃないですね』

 

 溜息をひとつ吐き、マスカレーナは話し始める。何かに憂鬱になっているのは確かだが、俺に対してではなさそうに見える。

 

『実はこの間、S-Forceがエグザムの所有者を1人確保したらしくてですね』

「……お?」

『その人物が、エグザムの力を使って派手に暴れてしまったものですから、情報がかなり拡散されてしまったんです』

 

 知らない間に、俺たちが恐れていた事態が現実に起きてしまっていた。ミューゼシアとクーリアも、厳しい表情を浮かべている。

 そして、情報が拡散されているのは、かなりマズいのではないだろうか。

 

『そしてバトレアスさんは今S-Forceに広域手配されてます』

「……ああ」

 

 どうしようもない事実。

 それは受け入れざるを得ない。

 

『それで、あなたが手配されているのはエグザムが原因と決めつけた、愉快犯とかS-Forceに恨みを持っている連中がですね……』

「?」

『バトレアスさんの名を騙って、S-Forceに「攻撃」してるんですよ』

「……は?」

 

 バカみたいな声が漏れたと思うが、それぐらい、その状況は意味が分からなかった。

 隣にいるクーリアやミューゼシアと顔を合わせてみるが、同じようにきょとんとしている。

 

『ああ、「攻撃」といってもブリッジヘッドを直接破壊するような行為じゃありません。イタ電とか、スパムメール爆弾とか、ネットワーク上での攻撃……物理的じゃなく電子的な感じです』

「なにも安心できないわよ、それ」

 

 マスカレーナが付け加えても、クーリアは呆れたように、あるいは苛立っているように答えた。

 俺だって、どう反応をすればいいのか分からない。そんな、誰かが俺の名前を使って、人を傷つけたりバカにしたり、兎に角迷惑をかけているだなんて。

 ただ確実に言えるこの気持ちは、怒りだ。

 

『しかもデマまで出回り……まぁ、「エグザム」はSNSに普通に出てくるレベルのものになっちゃいましたから、知らないでいる方が無理って話ですよ』

「……そうか」

 

 俺たちは、マスカレーナが普段いる世界とのパイプが現状ない。だから、どうなっているのかが分からなかった。

 そして聞いてみたら、ひどいものだ。クーリアとミューゼシアの表情も渋い。

 

『ただ、どういうわけか……最近はエグザムの情報もぱったりと無くなりました』

「?」

『さっき言ったSNSとか、ネットニュースとか考察サイトとか、ついこの間までわんさかエグザム関連の話が上がっていたのに、それが全部消えているんです。新しい情報に埋もれたとかではなく、まるで誰かが消したみたいに』

 

 誰かが消した。

 その言葉で、俺はウィズダムが都市の世界で告げた言葉を思い出す。

 

――偽りを真実に書き換える事もできれば、真実を嘘にもできる

 

『で、そのエグザムがどうしたんですか?』

 

 マスカレーナに聞かれ、思考を一度切り上げる。

 そして今までの話の中で、確かめたい事がひとつできた。

 

「……S-Forceが所有者を確保したって言ったな。それじゃあ、エグザムもS-Forceに回収されたって事?」

『まぁ、外部に引き渡したって情報は調べた限りないですし、順当に考えればそうじゃないですか?』

 

 クーリアとミューゼシアと、顔を見合わせる。

 これではっきりした。S-Forceはエグザムを「2枚」持っている。

 

『なんです? まさか、S-Forceからエグザムを奪えなんて言い出すんじゃないでしょうね?』

「いや、そう言う話じゃないんだ」

 

 深呼吸をひとつする。

 俺たちが現状一番知りたかった情報が知れたのはいいとして、問題はここからだ。

 

「頼みっていうのは……エグザムのカードについてS-Forceと交渉したい」

『へ?』

「そのための場を、用意してほしい」

『ほ?』

 

 案の定、マスカレーナは二つ返事で了承などしなかった。

 

『ちょちょちょ、バトレアスさん? 何言ってるか分かってます? 私が何者か理解しています? あなたと同じ、私もS-Forceに追われている身です。そんな私に、S-Forceに交渉しろだなんて無理難題ですよ』

「交渉の『場』を用意してほしいだけだ。同席してほしいとは言わない」

『ほとんど同じ意味ですって!』

 

 ツッコまれた。

 ソリッドビジョンのマスカレーナは、俺を指差して説教の姿勢に入った。

 

『大方、バトレアスさんがS-Forceに連絡できないからお願いしたいって話でしょうけど、コンタクトを取る事自体リスクが大きすぎます! 現に、S-Forceはここ最近でセキュリティを格段に強化して、警備も厳しくなって、「同業者」が何人もお縄についてしまってるんですから!』

「それこそ、エグザムの力だと思う」

 

 マスカレーナの話を遮って悪いが、今の時点で考えられる話を伝えておく。

 

「エグザムは、色々なエネルギーに活用できて、技術の発展にもつなげられるらしい。S-Forceのセキュリティがグレードアップしたのは、エグザムの力かもしれない」

『そうです、私もその可能性は考えていますよ!』

「ネットからエグザムの情報が消えたのも、S-Forceが情報操作をしたからかもしれない」

 

 半ば陰謀論だが、ウィズダムの言葉とエグザムの有用性を考えれば、ネットに広がる情報を消したり書き換えたりする事も可能かもしれない。何せウィズダムは、エグザムの力で崩壊した街を元通りにできたのだから。

 そして、治安維持のために存在するS-Forceが、エグザムによる混乱を止めるために、所持しているエグザムの力を使って情報操作をするのも、ありえなくはない。

 

『だから尚更、今のS-Forceに連絡なんて――』

「このままS-Forceが力をつけ続けたら、マスカレーナも隠れ続ける事はできないかもしれないぞ」

 

 そう告げると、マスカレーナが口を閉ざす。

 ちょっかいを掛けたり、あるいは痕跡を消しきれなかった裏社会の人が既に捕らえられている。であれば、大人しく隠れていても、次第にS-Forceの力は強まり、やがて捕まってしまうだろう。

 

「そして、俺たちはそんなエグザムのカードを3枚持っている」

『……それは脅しですか? 応じなければ、居場所を探し当てて密告すると?』

「そんなつもりはない。むしろ俺は、助けられた借りがある。どちらかといえば君の味方だ」

『……つまり、私を守ってくれると』

「それだけじゃない」

 

 クーリアが再び、声を挟んできた。

 

「マスカレーナさん……あなたは『エグザムの情報が出回った』と言ったわね」

『ええ』

「であれば、エグザムがどれほどの価値があるかも知られているでしょう」

 

 マスカレーナは頷く。エネルギー資源という意味だけでなく、金額に換算すれば計り知れない値がつくのも、分かっているだろう。

 クーリアは、少しだけ目を閉じ、胸に手を当てて続ける。

 

「エグザムは、1枚だけで莫大な価値があり、未知数のポテンシャルを秘めている。S-Forceがそうしたように、様々な事ができるようになる」

『……』

「そんなものを、あらゆる勢力が放っておかないはずはない」

「最悪の場合は奪い合い、戦争になる。それも、次元や世界を跨いで。そんな事は、決して起きてはならないわ」

 

 ミューゼシアの言葉で空気の重みが増した。

 ミカエルがドレミ界を襲ってきたのを思い出す。関わりこそ昔からあれど、この世界がある座標自体は教えていないのに、それを突き止められた。その上、《神光の龍(エンライトメント・ドラグーン)》がデュエル中に起こした影響は、都市を破壊したウィズダムの《サイバー・エンド・ドラゴン》に匹敵するほどだった。

 つまりエグザムは、1枚あるだけで世界を侵略する事もできる。それ自体が戦争の原因にもなる。所有者を狂わせるだけでなく、あらゆる資源に活用できる万能のアイテムという点がタチが悪い。誰もが正気を失い、欲しがり、争い合うよう仕向けられる。

 

『……まぁ、碌でもない事態を避けたい気持ちは分かりますが、こちらからも聞かせてもらいます』

 

 マスカレーナは少し考えてから、俺たちに聞いてくる。

 

『あなた方は、そんなエグザムを集めた後、どうするつもりですか?』

「どうもしない」

 

 即答すると、マスカレーナは目を丸くした。

 俺たちの話を聞いて、俺たちがエグザムを手にしても碌な事にならないと踏んでの質問だろう。

 だけどこれは、もう俺たちの間で確定している事だ。

 エグザムは、決して使わない。

 

「エネルギーを活用するとか、人様の世界に侵略するとか、そんなつもりはない」

「私たちの役目を詳しくは言えないけれど、私たちは戦争を止める側にいる。私たちが、その火種を抱え続けるわけにはいかないわ」

 

 ドレミコードの「浄化」は世界の淀みを清めるためのもの。淀みには、戦争などのつらい現実も含まれているから、ミューゼシアが言うように自分たちはそれを止める立場にある。助長させるような代物を、自分たちが持つわけにはいかないのだ。

 

「よって私たちは、5枚すべてを集めた後、これを誰にも触れられないよう隔離する」

 

 クーリアが告げる、俺たちの最終目的。

 マスカレーナは、再び黙り込む。今度は深く考えて、判断をするようだ。

 エグザムに関する情報は、話し方からしてマスカレーナも集めているはずだ。しかし、デマが飛び交い、情報操作までされる中では、真実と嘘を完全に見分けるのは難しいだろう。

 そして、本物を所持している俺たちの意見も嘘ではないか、と疑っているはずだ。自分が持たない、実態が不明瞭な物に関する情報なら、簡単に信じないに決まっている。でなければ、彼女は今日まで運び屋として無事でいられるはずがない。

 

「……頼む。こんな事を頼めるのは、マスカレーナしかいないんだ」

 

 だから俺は、愚直にお願いする以外の選択肢を取れなかった。

 早い段階で、俺はマスカレーナにエグザムの事を話している。だからこそ、どうか信用してほしい。

 

『……事情は分かりました。私にとっても、無関係ではありませんし』

 

 マスカレーナの態度が、軟化した。

 心の中で緊張を解くが。

 

『ですが! さっき言った通りバトレアスさんのお願いはかなりリスクが高いです! タダでとはいきません』

「……この間は受けるって言ってたのに」

『受けてもいいとは言いましたが、受けるとは言ってませんよ』

 

 S-Forceとのデュエルをした後、その縁で依頼を受ける的な事を言っていたはずだが、妙な屁理屈をこねられてしまった。

 

『私に仕事として依頼をしたいのなら――』

「対価、という話であれば……これでどうかしら」

 

 話を聞いていたミューゼシアが、手元にあった紙に何かを書き、それをマスカレーナに見せる。何が書いてあるかは、俺やクーリアからは見えない。

 

『……え、うっそ。こんなに?』

 

 そして、それを見たマスカレーナは、今度は半分嬉しそうな感じで驚いていた。見るからに、相応の報酬が記載されているらしい。

 

「今回の依頼がとても重要な事と……さっきの事のお詫びも込めて」

 

 閉口する。俺が余計な事をしたばかりに、ドレミ界側にも損失が生まれてしまった。

 

『……まぁ、これぐらいでしたらいいでしょう。けれど、バトレアスさん?』

 

 続いてマスカレーナは、俺の方を見る。

 

『さっきも言いましたが、私はあなたに裸を見られたのが非常に腹立たしいです。謝罪だけじゃ物足りません』

「……どうしろと」

 

 胃が捩じ切られるような感覚になりながらも聞いてみると、マスカレーナは指を向けた。

 

『私とデュエルで勝負です』

 

 少し意外な申し出だった。てっきり小間使いとして契約でもさせられるのかと思ったが。

 

『あなたが勝てば、今回の事は水に流し、依頼を受けてあげましょう』

「負けたら?」

『そのエグザムのカード、5枚集めた後で1枚を私に分けてもらいます』

「!?」

 

 その交換条件はあまりにもだった。隣の2人も息を呑んだのを感じ取る。

 

『エグザムがどんなものかは、今はひとまずあなたたちの話を信じましょう。けれど最終的には私が決めます。そのために、あなた方の手に5枚集まるよう協力はしますが、その後で1枚私がもらいます』

「いや、それはあまりにも危険……」

『そう思うのなら、私に勝てばいいだけの話です。このデュエルを受けないなら、今日の話はなかった事になりますよ?』

 

 歯ぎしりをし、唾を飲み込む。

 残りのエグザム2枚は、九分九厘S-Forceが持っている。つまり、これ以上他の世界を当てもなく探す必要はない。ドレミコードの負担は減る。

 けれどそのS-Forceとコンタクトを取るのは、俺たちでは事実上不可能だ。万が一S-Forceに辿り着いても、事情を聞かれる前に没収されるのがオチだろう。デュエルを申し込む暇も与えられない予感がする。

 だから、話し合う場を用意してもらい、情報があるマスカレーナに仲介してもらうのは必須と言ってもいい。

 

「……」

 

 クーリアとミューゼシアの顔色を窺う。

 マスカレーナの提示したデュエルの条件は、正直言って受け入れがたい。だけど現状、マスカレーナしか頼れないのは2人も理解しているはず。

 そして、こんな事態に陥ったのは俺の不注意が原因。

 2人がゆっくり頷いたのを見てから、マスカレーナに向き直る。

 

「……分かった」

『賢明な判断、褒めてあげましょう』

 

 皮肉たっぷりに言われた。全然嬉しくない。

 

『では、3日後の同じ時間に連絡をください。まずはあなたたちとデュエルをする場を、別空間に用意しますので』

「……3日後の同じ時間だな」

『ええ、それでは』

 

 そして、マスカレーナとの通信が終わる。

 窓の外に焦点が変わり、夕方に近づいているのが見て分かった。

 

「……すみません。俺の不注意で、事態がややこしくなりました」

「アレは仕方がない事だったわ。それに、貴重な情報は得られたし」

 

 クーリアに肩を叩かれるも、残念ながら今はあまり安心できない。

 S-Forceが残りの2枚を持っているという情報は確かに貴重だが、代償が大きすぎる。差し引きイーブンにはほど遠い。

 

「彼女とのデュエル、頑張って」

 

 ミューゼシアに優しく言われる。さらに、すぐ近くに現れたクーリアの妖精体が、「よしよし」と言いながら俺の頭を静かに撫でてくれた。同じく現れたミューゼシアの妖精体は、「やれやれ」と言っているが。

 ラッキースケベなど現実にあってはならない、と俺は痛感しながらため息をついた。

 

 


 

《空白の30分》

 

クーリア「バトレアス、私は今怒っているわ。なぜだかわかる?」

バトレアス「……あなた方の前で、マスカレーナの裸を見てしまった事です」

クーリア「よろしい。ではそれについて、あなたの言い分を聞きましょう」

バトレアス「マスカレーナから受け取ったカードの仕様をこちらも聞いておらず、使った時点での相手の姿をそのまま映すものとは思っていませんでした。それ以上の言い訳はしません。不快な思いをさせてしまった事、心より深くお詫びいたします。申し訳ございません」

クーリア「結構。ではこれについて、判決を言い渡すわ」

バトレアス「はい」

クーリア「今夜、私と2人きりでお風呂に入りなさい」

バトレアス「……は?」

クーリア「いいわね?」

バトレアス「……はい」

ミューゼシア(私一体何を見せられているのかしら)

次のうち、この作品で、デュエル外の登場人物として見てみたいのは?

  • 魔術師
  • コード・トーカー
  • ARG☆S
  • ウィッチクラフト
  • 閃刀姫
  • 霊使い
  • 勇者トークン一行
  • 推しがいないんですが……
  • 全部書いて
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