ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

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第75話:最後の試練

――余計な感情に左右され、闘いにまで影響を及ぼすとは。ドレミコードも落ちたものだ

 

 失望の声が心に突き刺さり、背中に浴びた炎の熱を想起する。

 

――涙ぐましい痩せ我慢だな。苦しいのなら、潔くサレンダーしてくれて構わないぞ?

 

 諦めを促す哀れみの言葉が脳を揺さぶり、胸を貫いた痛みに侵される。

 

――よく見ろ、そして肌で感じろ! これこそが『エグザム』の本当の力だ!

 

 計り知れないほどの力の宣告が鼓膜を叩き、目の当たりにした惨状や心に感じた悲哀が蘇る。

 

 テレビのザッピングみたく、これまでのエグザムとの戦いがフラッシュバックし、この体で受けた苦痛、見た悲劇、味わった無力感が全身を蝕んでくる。凝縮されたそれに犯され、立つ事はおろかまともな言葉も紡げない。強く目を閉じても、俺にとって痛ましい経験が瞼の裏にまで映り、逃げるのを許さない。

 恥も外聞も今は忘れ、頭を押さえ、声を上げて少しでも苦しみを緩和しようとする。

 

 これがエグザムの影響なのは、残った理性と脳が理解していた。所有者に及ぶ影響を受けるのは初めてだが、ここまで重いものだとは。

 けれど抗う。どれだけの力を持っていようと、人を進化させるものであろうと、それに屈してはならないのだ。

 こんな力に頼っては、いけないのだ。

 

――私の仲間を、傷つけるなァああああああああああああああッ!!!

 

 怒号が頭の中に響き渡り、腹部に受けた衝撃が蘇る。

 それは迷宮姫。俺がデュエルで彼女の仲間のモンスターを破壊した事を引き金に、彼女の逆鱗に触れた。

 仲間を傷つけられたから。

 

――全員動くな! 大人しくしろ!

――聞こえなかったか、動くな!

 

 ついさっき。俺が守るべきドレミコードの皆は、S-Forceに銃で脅された。一歩間違えば、血も流れただろう。

 それは全部、俺の考えが足りなかったせい。

 守ると言っておいて、あんな事態が起きた。

 守るべき仲間が、傷つけられそうになった。

 俺ひとりで守れなかった。

 

 

 それを痛感した直後。

 それまでが嘘のように、静かになった。

 痛みを感じず、声も聞こえず、目に見える景色も変わっている。

 

 

 そこは宇宙みたく、深い青をベースにした空間。星のような光が至る所で瞬き、中心には銀河の如くひときわ大きな光の渦。

 そんな空間で、俺は本当に宇宙空間の無重力状態のように漂っている。さっきまでの電脳空間は見る影もなく、周りには誰も、何もない。

 

――あなたはこれまでに、多くの痛みと苦しみを受けたようですね

 

 男とも、女とも取れない声が響く。

 周りを見ても、そんな声を発するようなものは何もない。

 

――骨身に染みた苦痛を忘れず、強大な力には決して手を出さない。その信念は非常に立派なものです

 

 その声は、目の前に広がる白い光の渦から聞こえていた。

 そしてその渦を見つめていると、色が白から淡い紫へと変わっていく。

 

――けれどあなたは、大切な仲間、愛する人を守るという使命を自分に課している

 

 光の渦から、赤い光の筋がいくつもこちらに向かって伸びてくる。それは俺を貫きはしないが、視界を徐々に赤く染め上げていった。

 謎の声が告げた「使命」は、確かに俺の中にある。ドレミコードの皆が「浄化」を使命としているように、それは俺にとっての譲れないもの。

 

――あなたは、その使命を全うできなかった

――それでもあなたは、自分だけの力で皆を守り切れると考えているのですか?

 

 目の前で、赤い光が弾ける。

 その通り、俺は皆を守れなかった。言い訳のしようもない。

 その使命を本当に遂行できるかについては、ずっと前から考えていた。

 必ず生きて皆の下に帰ると誓ったし、自分の中には確かに定義した使命がある。

 けれど俺は、自分が誰にも負けないぐらい強い、などと考えた事がない。今まではどうにかなってきても、それは運がよかっただけかもしれない。強敵を相手に勝っても、自分が強いと思い込むのは慢心でしかないと思っているから。それこそ、遊戯王のアニメの主人公みたいな自信が俺にはない。

 

――あなたは、自分の使命を遂行できるに足る力を持っていない

――それでもあなたが力を拒んで、同じように仲間が危険に晒されたら。あるいは命を落としたら……

――そうなった時、あなたは自分を許せますか?

 

 仮定の話でも、それを考えるのは非常に恐ろしい。

 だけどそれは、可能性がないわけではない。むしろ、あり得る話でもあった。

 そしてその時、俺は絶対に自分を許せないだろう。

 

――守るべき彼女たちは……使命を果たせなかったあなたを、どう思うでしょう?

 

 今まで感じた事もない恐怖に晒される。寒さを凌ぐ時のように自分の身体を抱きしめる。

 そんな自分でも許せない事が起きたら? ドレミコードの皆は、失望してしまうかもしれない。孤立してしまうかもしれない。

 命に代えても救った皆から、排除されてしまうかもしれない。

 歯を食いしばった。考えるだけで、恐ろしくて。

 

――恐れる事は、悪でも罪でもありません

 

 光の渦が、今度は淡い緑色へと変色する。

 光の筋が途切れ、今度はいくつもの光の環が生まれ始めた。

 

――しかしそうならないためには、やはりあなた自身が力をつける必要がある

 

 環は絡み合い、やがて1枚の光り輝くカードが目の前に現れる。

 

――これは、必ずやそんなあなたの手助けになる

 

 自然と、ゆっくりと、右手がそのカードに伸び始めた。

 そのカードの後ろにある光の渦が、オレンジ色に発光する。

 

――その力があれば、守る事ができるのです

 

 カードに指が触れようとした瞬間。

 

――大切な仲間や、愛する人を

 

 ドレミコードの皆の顔が、脳裏に浮かぶ。

 そして、クーリアとの思い出が蘇ってきた。

 

* * *

 

 ミューゼシアが用意してくれた、穏やかな世界。

 夜明け前に、俺とクーリアは浜辺へ出た。昨夜は寝る前に「色々」あったため、身体には程よく気怠さと痛みが残り、おまけに寝不足気味だが出歩く分には支障がない。外の空気を吸って気持ちを切り替える意味もあった。

 

「海を見ながら朝を迎えるなんて、初めてかも」

「俺もです」

 

 浜辺に並んで腰かけ、クーリアと日の出を待つ。空は白んできているが、まだ太陽は上がらない。

 ドレミ界に海はないからこそ、クーリアはこの空間でしかできない事を何でも試してみたいようだ。

 

「……ねぇ、バトレアス」

 

 視線を海に向けたまま、クーリアが問いかけてくる。

 

「あなたは、私たちの下へ帰ってくるって言った。私たちのために戦う力を捨てはしない、そう言ったでしょう?」

「はい」

 

 クーリアとのデュエルで誓った事。勿論忘れはしないし、それはずっと俺の中に留めておく。

 膝を抱えるクーリアは、視線だけを海から俺に移した。わずかに水平線の近くが明るくなったのを捉えつつ、俺もクーリアを見た。

 

「……あなたの事だから、ひとりで色々と背負おうとするかもしれない」

「……」

「そんなあなたに、忘れないでほしい事もあるの」

 

 クーリアは身体ごと俺に向き合う。自然と、俺もクーリアと向かい合うように位置を変えた。

 

「私も昨日、あなたに誓ったわ。あなたが帰るべき私たちの居場所を守れるように、あなたを守れるように強くなる、って」

「……はい」

 

 それも覚えている。今と同じ、浜辺でクーリアに言われた事だ。

 

「私には、グランドレミコードの力が宿っている。『浄化』の旋律を編むだけじゃない、皆を守れるような力が」

 

 ばさ、と音が聞こえた。

 クーリアの腰から金色の翼が生えている。グランドレミコードの力の証のそれは、夜明け前でも光を宿し、輝いて見える。

 

「つまり、何が言いたいかって言うと……」

 

 するとクーリアは、俺の顔を両手で優しく包み込むと、自分の方へと引き寄せる。

 おでこ同士、こつんと軽くぶつかった。

 

「私とあなたは、もうただの主君と従者じゃない。かけがえのない、特別で、唯一の愛する人」

 

 目を閉じ、静かに笑うクーリア。触れている部分を通して、身体の奥に心地よい熱が注ぎ込まれているような感覚がする。

 

「だから、あなただけが背負わなくていい。あなたが背負うべきものは、私も背負いたい。私だって、ドレミコードの皆は勿論、あなたも守りたい」

 

 告げられ、俺も目を閉じる。

 真っ向から言われて照れ臭いものの、それを嬉しさが上回った。

 

「ただ私は、あなたに情けない部分を何度も見せてしまったし、取り返しのつかない事もしてしまっている。そんな私には、全部任せてほしいなんて言う資格はない。だからこそ……私の背負っているものを、あなたが少しでも一緒に背負ってくれたら嬉しい」

「……当然です」

 

 それだけは、自信を持って答える。

 

「あなたが背負うものは、俺も一緒に背負いたい。あなただけが苦しむのなんて、見たくありません。あなただけに負担を強いるなんて、できません」

 

 クーリア自身が言った通り、俺たちは切っても切れない深い関係となった。

 だからこそ、クーリアが背負うものを担いたくない、なんて弱音は決して許されない。

 

「それなら……胸に留めてほしいの」

 

 クーリアの手が顔から離れ、くっつけていた額も離れる。熱がわずかに引いた。

 そして、改めてクーリアの顔を見ると。

 

「もしもあなたが折れそうになったら、どうしようもないほど追い詰められたら……今の私との事を思い出して」

 

 徐々に、クーリアの顔が光で照らされ始める。夜明けだ。

 

「私はあなたの事をずっと愛し、ずっと見守り、ずっと傍にいるから」

 

 朝日に照らされたクーリアは、とても美しかった。

 

 

バトレアス LP4000 手札2

【モンスターゾーン】

サイバー・エンド・ドラゴン ATK4000 レベル10

 

【魔法&罠ゾーン】

伏せカード1

 

 

ウィズダム LP1500 手札4

【モンスターゾーン】

(ヒロイック)(チャンピオン) クレイヴソリッシュ ATK2500 ランク4 

ORU(オーバーレイ・ユニット)3

 

【魔法&罠ゾーン】

カード無し

 

 

「ほう」

 

 立ち上がった俺を見て、ウィズダムは感心したように息を吐いた。

 それでどうやら、あちらも気づいたらしい。

 俺は、エグザムの力に汚染される事はなかった。

 

「……バトレアス」

 

 声が聞こえて、そちらを見る。忘れようがない、俺にとっても唯一で最愛の人の声。

 

「……クーリア様。そして皆さんも、ご心配をおかけしてすみません」

 

 ドレミコードの皆に向けて、今できるだけの元気そうな顔を浮かべる。

 確かにエグザムの支配は振りほどいた。それでも、さっきまでに全身に浴びた苦痛は引ききっていない。だからどうしても、呼吸は少し乱れてしまう。

 それでも、俺がこうして声を掛けた事で、皆は安心したのか少しばかり笑っている。中には、キューティアやプリモアのように、安心して涙ぐむ子もいた。

 

「大丈夫です」

 

 それだけ、重要な事を告げると、ビューティアが安心したように息を吐く。ミューゼシアも頷いていた。

 そして俺は、クーリアに視線を向ける。

 

「ありがとうございます、クーリア様」

「……?」

「あの時の、あなたの言葉があったおかげで、俺は自分を保てました」

 

 突然のお礼に困惑した様子のクーリアだが、俺の言葉で何を指しているか気づいたらしく。

 

「……そう」

 

 嬉しそうに笑ってくれた。

 

「のろけという奴か」

 

 そして不躾に水を差してくるウィズダム。だが実際、今のはそう聞こえても仕方ないとしか思えないので、俺はウィズダムに対して肩を竦めるだけにしておく。

 ちらっと視線を逸らすと、小夜丸がなぜか顔を赤らめているのが見えた。さらにマスカレーナは、エンジェリアがよく浮かべるようなにんまりとした笑顔を浮かべている。もしかしたら、後でいじられるかもしれない。

 その「後」について考えるよりも、今は目の前のデュエルだ。

 

「確かめたい事も確かめられた。これで、心置きなくデュエルができる」

 

 そう告げてウィズダムは、俺のフィールドの《サイバー・エンド・ドラゴン》を指さした。

 

「バトルだ。クレイヴソリッシュで《サイバー・エンド・ドラゴン》を攻撃。そして、クレイヴソリッシュの効果を使わせてもらうぞ!」

「くそ……」

「相手モンスターが戦闘する時、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、ターン終了時まで相手モンスター1体の攻撃力を自分の攻撃力に加算する!」

 

H-C クレイヴソリッシュ

ORU:3→2

ATK2500→6500

 

 本来なら俺のモンスターだが、ウィズダムの宣言に応えたクレイヴソリッシュは金色の剣を構える。その刃は一瞬で何倍にも伸び、《サイバー・エンド・ドラゴン》を下から切り上げ両断する。そして《サイバー・エンド・ドラゴン》は、苦しそうな咆哮を上げながら大爆発を起こした。

 

「ぐ……!」

 

 《(ヒロイック)(チャレンジャー) ソード・シールド》の効果で、このターンの俺への戦闘ダメージは0になる。だが、戦闘破壊から免れるのは「ヒロイック」モンスターだけ。《サイバー・エンド・ドラゴン》は普通に破壊されてしまう。

 そしてこのカードは、エグザムの中でもひときわ強い力を宿している。そんなカードが破壊されれば、衝撃波も普通では済まない。爆発の衝撃と熱で身体が押しつぶされそうになるのを何とか耐えた。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 

 エグザムの支配から逃れたはいいが、よりにもよってクレイヴソリッシュを奪われたのは痛い。使っている者として、あのモンスターの強力さと厄介さは十分理解している。

 ただし、ドローしたカードを見ると「待っていた」と言いたくなった。

 

「《H・C サウザンド・ブレード》を召喚!」

 

 無数の刃を背負う武者然とした戦士は、フィールドに現れると槍を演武の如く振り回した。

 

H・C サウザンド・ブレード

ATK1300 レベル4

 

「その効果を発動! 手札から『ヒロイック』カード1枚を捨てる事で、デッキから『ヒロイック』モンスター1体を特殊召喚し、このカードを守備表示にする。現れろ、《H・C ナックル・ナイフ》!」

 

 どうにもできずにいた《H・C ウォー・ハンマー》をコストとして墓地へ送り、短剣を持つ小柄な戦士をフィールドに呼び寄せる。

 

H・C ナックル・ナイフ

ATK600 レベル1

 

H・C サウザンド・ブレード

ATK1300→DEF1100

 

「特殊召喚したナックル・ナイフの効果発動! 俺のフィールドの戦士族モンスター1体とこのカードのレベルを、片方と同じにする。俺は、サウザンド・ブレードのレベルをナックル・ナイフと同じ1にする!」

 

H・C サウザンド・ブレード

レベル:4→1

 

「レベル1のサウザンド・ブレードと、ナックル・ナイフでオーバーレイ! 2体の戦士族でオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 2人の戦士がオレンジの光へと変わり、絡み合いながらエクシーズの渦に吸い込まれる。光が弾け、渦の中から現れたのは、朱色をベースとした鎧に身を包んだ戦士だ。他の「ヒロイック」エクシーズモンスターとは異なり、得物を持っていない。

 

「来てくれ、ランク1!《H-C ヤールングレイプ》!!」

 

H-C ヤールングレイプ

DEF1800 ランク1

 

「ヤールングレイプの効果発動! オーバーレイ・ユニットを2つ使い、墓地のレベルまたはランクが4の戦士族モンスターを特殊召喚する!」

 

H-C ヤールングレイプ

ORU:2→0

 

 ヤールングレイプの周りを漂うオーバーレイ・ユニットが、胸に刻まれたヒロイックの紋章に吸い込まれる。そして両腕を前に突き出すと、地面に魔法陣が現れた。

 ウィズダムに奪われたクレイヴソリッシュは、戦闘面では無類の強さを誇る。そんなモンスターを倒す手段が今すぐには用意できないため、まずは壁を作る。だからこのヤールングレイプを呼んだのだ。

 

「俺は墓地のクレイヴソリッシュを――」

「速攻魔法《墓穴の指名者》発動! 君の墓地のクレイヴソリッシュを除外する!」

「何!?」

 

 魔法陣から姿を見せようとしたクレイヴソリッシュが、突如現れた次元の裂け目から伸びる悪魔の手に掴まれ、異空間へと引きずり込まれる。これで、ヤールングレイプの効果は無駄遣いに終わってしまった。

 こうなると、次のターンへの備えが少し心配になる。

 

「ターンエンド……」

「私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見たウィズダムは、満足げに頷く。

 

「魔法カード《サイバー・レヴシステム》発動。手札または墓地の《サイバー・ドラゴン》1体を、効果破壊耐性を与えて特殊召喚する。私は、墓地で《サイバー・ドラゴン》として扱う《サイバー・ドラゴン・フィーア》を特殊召喚!」

 

 ウィズダムのフィールドに魔法陣が出現し、現れたのは紫のオーラを纏うシャープなデザインの機械竜。

 

「フィーアはフィールドでも《サイバー・ドラゴン》として扱う。そしてその効果で、私の場の《サイバー・ドラゴン》の攻撃力は500ポイントアップする!」

 

サイバー・ドラゴン・フィーア

ATK1100→1600 レベル4

 

「さらに、《サイバー・ドラゴン・ツヴァイ》を召喚」

 

 その隣に、前のターンにも見た別の機械竜が、黄緑の光を漂わせて出現した。

 

サイバー・ドラゴン・ツヴァイ

ATK1500 レベル4

 

「ツヴァイの効果発動。1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を相手に見せる事で、このターンは自らを《サイバー・ドラゴン》とする」

 

 ウィズダムが公開したのは《サイバーロード・フュージョン》。そしてツヴァイの黄緑の輝きが一段と増し、次の瞬間にはオリジナルの《サイバー・ドラゴン》の幻影がその背後に現れた。

 

「フィーアの効果でツヴァイの攻撃力がさらにアップ!」

 

サイバー・ドラゴン・ツヴァイ

ATK1500→2000

 

 こうしてモンスターを複数呼んだという事は、ウィズダムも大きく勝負するつもりだろう。

 

「バトルだ。ツヴァイでヤールングレイプを攻撃! ツヴァイはモンスターに攻撃する時、攻撃力が300アップする!」

 

サイバー・ドラゴン・ツヴァイ

ATK2000→2300

 

 ツヴァイの口が開き、薄緑の雷を纏った白い光線を放ってくる。本来なら破壊されるところだが、ヤールングレイプはその光線を両腕をクロスさせて防いだ。

 

「ヤールングレイプの効果により、俺の戦士族モンスターはそれぞれ1ターンに1度だけ、戦闘及び効果では破壊されない!」

 

サイバー・ドラゴン・ツヴァイ

ATK2300→2000

 

「ならば、クレイヴソリッシュでヤールングレイプを攻撃!」

「この瞬間、俺はヤールングレイプの効果発動! 相手モンスターが戦闘を行う時、その攻撃力の半分だけ自分のライフを回復する!」

「む?」

 

バトレアス LP4000→5250

 

 攻撃される前に効果を使い、ライフを回復する。本来ヤールングレイプのこの効果は、クレイヴソリッシュの攻撃力倍増効果を使う際にライフを500まで払った後、再度発動できるようにするためのものだ。そうでなくても、ライフアドバンテージを得るために、この効果を使う事は案外多い。

 だが、クレイヴソリッシュが黄金の剣を迷いなく力強く振る。ヤールングレイプはそれを右腕で防ごうとするも、耐え切れずに爆発してしまった。

 

「フィーアでダイレクトアタック!」

 

 その攻撃はツヴァイに似て、紫のエネルギーが混じる白い光線。それが口から放たれると、俺は反射的に姿勢を低くしてどうにかやり過ごす。しかし、間近に感じる熱や風は、本物としか思えなかった。

 

バトレアス LP5250→3650

 

「墓地のサウザンド・ブレードの効果発動! 俺がダメージを受けた時、墓地のこのカードを攻撃表示で特殊召喚できる!」

 

 俺のダメージに反応し、魔法陣から再び現れるサウザンド・ブレード。槍を構えて仁王立ちするその姿は、武蔵坊弁慶を彷彿とさせた。

 

H・C サウザンド・ブレード

ATK1300 レベル4

 

 しかし、それを見てもウィズダムは余裕の笑顔を崩さない。

 

「速攻魔法《サイバーロード・フュージョン》発動! 自分のフィールド及び除外されているモンスターを融合素材としてデッキに戻し、《サイバー・ドラゴン》を素材とする融合モンスター1体を融合召喚する!」

「!」

「よって私は、《サイバー・ドラゴン》扱いのツヴァイとフィーアをデッキに戻して融合!」

 

 地面に融合の渦が出現し、ウィズダムの場にいる2体の機械竜がその中へと吸い込まれる。

 その中から閃光と共に姿を見せたのは、2つの首を持つ大きな機械竜だった。

 

「現れろ、《サイバー・ツイン・ドラゴン》!!」

 

サイバー・ツイン・ドラゴン

ATK2800 レベル8

 

「《サイバー・ツイン・ドラゴン》でサウザンド・ブレードを攻撃!」

 

 2つの首の内のひとつが口を開けると、稲妻を纏う白い光線を発射してきた。サウザンド・ブレードは微動だにせずそれを正面から受け止め、小さな呻き声だけを残して爆発する。

 

「く……!」

 

バトレアス LP3650→2150

 

「そして《サイバー・ツイン・ドラゴン》は、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる!」

「え、それじゃ……!」

 

 《サイバー・ツイン・ドラゴン》の能力に、エンジェリアが口を押える。あのモンスターは《サイバー・エンド・ドラゴン》より能力値こそ低いものの、それなりに高い攻撃力で2回攻撃できるのが利点だ。マスターデュエルなんかでも、最終段階で詰めを任される事が多かったと記憶している。

 《サイバー・ツイン・ドラゴン》のもうひとつの首が口を開けると、黄色が混じる稲妻を放ってくる。それを喰らえば俺のライフは尽きるが。

 

「罠カード《ガード・ブロック》発動! 戦闘ダメージを0にして、カードを1枚ドローする!」

 

 俺のフィールドにシールドが張られ、放たれた黄色い稲妻が弾かれる。それを見つつカードをドローしてみるが、それは2枚目のナックル・ナイフだった。

 

「ある程度予想はしていたが、やはりしぶといな。私はこれでターンエンド」

「俺のターン!」

 

 次に引いたカードは《貪欲な壺》。一種の賭けに出ざるを得ないが、他に方法はない。

 

「《貪欲な壺》を発動。墓地のヤールングレイプ、ソード・シールド、ナックル・ナイフ、夜襲のカンテラ、スパルタスをデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

 モンスターの再利用の目を立てつつ、手札補充ができるのはありがたい。だが、このドローカードもまた今の局面では重要だ。これ以上、クレイヴソリッシュを奪われたままだとかなり苦しくなる。

 緊張感を抱きつつ2枚ドローし、確認する。

 そして、クレイヴソリッシュを倒せる事を確信した。

 

「魔法カード《死者蘇生》発動! 墓地のウォー・ハンマーを特殊召喚!」

 

 魔法陣が出現してフィールドに降り立ったのは、巨大な鉄槌を担ぐ、紺色の鎧の戦士。さっきはサウザンド・ブレードのコストとして捨て、デッキに戻して再び事故要因となるのを防ぐために墓地に置いたままにしていたが、役立てる機会が来た。

 

H・C ウォー・ハンマー

ATK2100 レベル6

 

「さらにナックル・ナイフを通常召喚!」

 

H・C ナックル・ナイフ

ATK600 レベル1

 

「そしてナックル・ナイフの効果発動! レベルをウォー・ハンマーと同じ6に変更!」

 

H・C ナックル・ナイフ

レベル:1→6

 

「レベル6になったナックル・ナイフとウォー・ハンマーでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 空に出現したエクシーズの渦に、2人の戦士が怒号を上げながら吸い込まれる。呼び出すのは、俺の【ヒロイック】でも召喚する難易度が少々高く、しかしクレイヴソリッシュと別の意味で戦闘では頼りになる、出せたら心強いモンスターだ。

 

「現れろ、ランク6!《ソードブレイカー》!!」

 

 地響きと共にエクシーズの渦から降り立つのは、銀の鎧の戦士。刀や剣、モーニングスター、斧、その他諸々の武器で武装しており、「ヒロイック」のエクシーズモンスターとはまた別の意味で殺意が高い。

 

ソードブレイカー

ATK2700 ランク6

 

「これはまた、すごそうなモンスターですねぇ……」

「《ソードブレイカー》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、種族を宣言する。俺は戦士族を宣言!」

 

 マスカレーナの感心する声を聞きながら、《ソードブレイカー》の効果を使う。オーバーレイ・ユニットが1つ右手の剣に吸い込まれると、《ソードブレイカー》は闘志を露わにするように右手の剣と左手のモーニングスターを擦り合わせた。

 

ソードブレイカー

ORU:2→1

 

「バトルだ!」

「分かっているだろうが、クレイヴソリッシュの効果で、君は他のモンスターを攻撃できないぞ?」

 

 そう、クレイヴソリッシュの恐ろしい点として、自身以外への攻撃を禁止する効果がある。さらに戦闘する相手モンスターの攻撃力をほぼ確実に上回るから、オーバーレイ・ユニットさえあれば戦闘ではほぼ無敵と言って差し支えない。

 だけど、それは承知の上だ。

 

「《ソードブレイカー》でクレイヴソリッシュを攻撃!」

「クレイヴソリッシュの効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで自分の攻撃力に加える!」

 

 クレイヴソリッシュも、自身の周りを漂うオーバーレイ・ユニットを金色の剣で叩き斬る。そして、その剣の刃が光り輝いて、一気に刃が伸びる。

 

H-C クレイヴソリッシュ

ORU:2→1

ATK2500→5200

 

「本来なら返り討ちだが……」

「ここで《ソードブレイカー》のもうひとつの効果が発動! このカードの効果で宣言した種族のモンスターとバトルする時、その相手モンスターを破壊する!」

 

 クレイヴソリッシュが剣を振るうが、《ソードブレイカー》はそれを自身の剣でいなす。さらに、その隙を突いて間合いに入り込み、一瞬で紫色に輝いた剣でクレイヴソリッシュの胴を両断した。自分のモンスターを倒してしまうのはいつも罪悪感が強いが、背に腹は代えられない。

 

「何とかクレイヴソリッシュは倒せたわね……!」

「でも、また《サイバー・ツイン・ドラゴン》に攻撃をされたら……」

 

 喜ぶドリーミアとは裏腹に、エリーティアは不安がる。《ソードブレイカー》の攻撃力は、2回攻撃できる《サイバー・ツイン・ドラゴン》に100劣る。だから次のターンが来れば、確実に2回攻撃を食らってしまう。

 しかしここで、手札に残っていた装備魔法カードの出番だ。

 

「装備魔法《エクシーズ・ユニット》を装備。これを装備したエクシーズモンスターの攻撃力は、自身のランク1つにつき200ポイントアップする!」

 

 周りを漂うオーバーレイ・ユニットの輝きが強まり、《ソードブレイカー》は右手の剣を構え直した。

 

ソードブレイカー

ATK2700→3900

 

「よし、これなら……!」

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 ファンシアが嬉しそうな声を上げたのを聞きつつ、ターンを終える。攻撃力で上回っていれば、《サイバー・ツイン・ドラゴン》の攻撃で破壊される事はまずない。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを、ウィズダムは一瞥してから即座にフィールドに出した。

 

「《サイバー・ヴァリー》召喚!」

 

 現れたのは、大きさこそ《サイバー・ドラゴン》と同じぐらいだが、オリジナルよりも身体が細く、眼球に当たる部分が空洞になっていて若干不気味な雰囲気がする機械竜だ。

 

サイバー・ヴァリー

ATK 0 レベル1

 

「このカードは3つの効果から1つを選んで発動する効果を持つ。私は第2の効果を選び、フィールドのこのカードと他のモンスター1体を除外して、2枚ドローする!」

 

 《サイバー・ヴァリー》と《サイバー・ツイン・ドラゴン》が無数の光の粒子となって消え、ウィズダムはそれを見届けてから2枚引く。強力な融合モンスターをコストに使うという事は、あちらも今のこちらの盤面を突破できないらしい。

 しかし、2枚のカードを引いたウィズダムは笑った。

 

「速攻魔法《エターナル・サイバー》発動! 墓地の機械族の融合モンスター1体を、エクストラデッキに戻すか、召喚条件を無視して特殊召喚する!」

「何!?」

「甦れ、《サイバー・エンド・ドラゴン》!!」

 

 稲妻を纏う魔法陣が現れると、その中から再び現れる巨大な機械龍。大きく翼を広げると、決してソリッドビジョンではない突風が吹き荒れ、その咆哮は鼓膜を破らんとするほどに大きかった。

 

サイバー・エンド・ドラゴン

ATK4000 レベル10

 

「ここにきて、また出てくるなんて……!」

 

 猛威を振るう《サイバー・エンド・ドラゴン》を前にして、小夜丸が嘆く。俺だって勘弁してほしかった。

 

「いくぞ。《サイバー・エンド・ドラゴン》で《ソードブレイカー》を攻撃!」

 

 三つの機械の首がエネルギーを蓄え始める。

 そこでウィズダムが、手札のカードを手にした。

 

「速攻魔法《リミッター解除》発動! 機械族モンスターの攻撃力を、ターンの終わりまで2倍にする!」

「引いてやがったか……!」

 

 言わずと知れた機械族最強のパンプアップカード。発動すると、フィールドの《サイバー・エンド・ドラゴン》がショートするように稲妻を放ち始める。俺も使った事があるからこそ、機械族デッキで使用頻度が高く、このような最終局面で使われてもおかしくないと予測していた。

 

サイバー・エンド・ドラゴン

ATK4000→8000

 

「マズい……!」

「今度こそ本当の終わりだ! エターナル・エヴォリューション・バースト!!」

 

 珍しく――この状況で気づくのも何だが――焦りの色が滲んだビューティアの声に、ウィズダムの攻撃宣言が被さる。

 3つのエネルギー弾が放たれ、《ソードブレイカー》に迫る。そのエネルギー弾の明るさによって、まるで太陽の逆光を浴びるかのように、目に映るもの全てがシルエットになってしまう。

 

「バトレアス!」

 

 そんな中、クーリアの声ははっきりと聞こえた。

 そして俺にも、まだ打てる手は残っている。

 

「罠カード《ハーフ・カウンター》! 攻撃された自分のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、その攻撃モンスターの元々の攻撃力の半分アップする!」

「何!?」

 

 全てがシルエットになってしまう中では表情も見えないが、流石のウィズダムも驚いているのは声で分かった。

 

ソードブレイカー

ATK3900→5900

 

 しかし攻撃力を上げても、《サイバー・エンド・ドラゴン》にはまだ届かない。圧倒的な威力のエネルギー弾は、直撃した《ソードブレイカー》を一瞬で消し炭に変えてしまう。痛ましい有様に申し訳なさを抱きながら、俺は爆発と攻撃の衝撃波に突き飛ばされた。

 

「う、ぐあああああああああああっ!!」

 

バトレアス LP2150→50

 

 電脳空間を転げまわり、天地が何度も入れ替わる。気づけばうつ伏せになっていて、煌々と輝く電気回路が目の前にあった。

 

「バトレアスさん!!」

 

 プリモアの声が聞こえ、何とか起き上がってから笑顔を見せる。攻撃が終わった事で視界は元に戻っていた。そして今の攻撃は、確かにかなり効いたものの、命に支障をきたすほどでもない。

 

「今の攻撃をも凌ぐとは……」

 

 そして、立ち上がった俺を見るウィズダムは、完全に予想を外されてしまったらしい。ほんのわずかに一歩先を行けた事に満足しつつ、墓地のカードを操作する。

 

「くっ……俺が、ダメージを受けた事で……墓地のサウザンド・ブレードを、特殊召喚……っ!」

 

 しかし、身体へのダメージは容赦なく蓄積している。少しだけ手間取りながらもモンスターを召喚すると、仁王立ちで現れたサウザンド・ブレードは、俺を見てこくりと勇気づけるように頷いた。

 

H・C サウザンド・ブレード

ATK1300 レベル4

 

 その時、ぱちんと指を鳴らす音が響く。正体はエンジェリアだ。

 

「やった! 確か《リミッター解除》の効果を受けたモンスターは、ターン終了時に破壊される!」

「そしてバトレアスの場にはモンスターがいる。これなら……」

 

 エンジェリアに続き、グレーシアも希望を見出したように嬉しそうに告げる。

 

「じゃあ、次のターンでバトレアスさんの勝ちですね!」

「……小夜丸、人はそれをフラグと言ってだね」

 

 同じくデュエルを観ていた小夜丸も喜んでいたが、マスカレーナにツッコまれた。俺自身、今の言葉を聞いてすごい不安になっている。

 そして、不安は的中するだろう事がウィズダムの表情で分かった。

 

「私はこれでターンエンド。《リミッター解除》の効果が切れ、効果が適用された機械族モンスターの攻撃力は元に戻る」

 

サイバー・エンド・ドラゴン

ATK8000→4000

 

「さらに《リミッター解除》の効果を受けたモンスターは破壊される……が、墓地の《エターナル・サイバー》を除外する事で、『サイバー』融合モンスターの戦闘もしくは効果による破壊を無効にする!」

「え……それってつまり……!?」

「《サイバー・エンド・ドラゴン》はフィールドに残り続けるって事ね……」

 

 落胆するプリモアと、冷静ながらも悔しそうにするミューゼシア。その通りで、《サイバー・エンド・ドラゴン》は破壊される気配がなく、その巨体で俺を見下ろしたままだ。

 そしてウィズダムは、俺を指さす。

 

「さあバトレアス。このエグザムの支配を振り切るほどの意思と力を持っているのであれば、デュエルでも倒してみろ」

「……」

「これが、私が君に課す最後の試練だ!」

 

 高らかに告げるウィズダム。

 エグザムの試練云々は置いておいても、あの《サイバー・エンド・ドラゴン》を突破できない限り俺に勝機はないだろう。

 俺のフィールドはサウザンド・ブレード1体。手札もフィールドもカードは0、ライフはたった50。さらに《サイバー・エンド・ドラゴン》は貫通効果持ちだから、守備表示で時間を稼ぐ事もできない。

 つまり、次のドローに全てがかかっている。

 ドローしなければ何も始まらないが、それでも1枚の重みが強く、デッキにかける指が震えてしまう。

 

「バトレアス」

 

 するりと滑り込むような声で、名前を呼ばれた。

 顔を上げれば、クーリアがこちらを見ている。クーリアだけでなく、ドレミコードの皆やマスカレーナ、さらには小夜丸までもが俺を見ているのにも気付く。

 だけど、誰もが緊張の面持ちでいる中、クーリアだけは微笑んでいた。

 

「あなたなら大丈夫。絶対に、勝てるわ」

 

 手放しに励ましているのではない。

 それはある種、俺に対して安心しているような気持ちなのだと、すぐに気づけた。

 そして何より、クーリアのその声と顔だけで、恐れるものは何もないと自分を奮い立たせられる。それほどまでに、俺もクーリアに入れ込んでいるらしい。

 

「……俺のターン、ドロー!」

 

 その熱を忘れないままに、カードを引く。

 引いたのは……魔法カード。

 

「墓地のモーニング・スターの効果発動! このカードは俺のライフが500以下の場合、墓地から効果を無効にして特殊召喚できる!」

 

 フィールドに手を伸ばすと魔法陣が出現し、自らの名前にもなっているモーニングスターを振り回す戦士が現れ、サウザンド・ブレードと並び立つ。

 

H・C モーニング・スター

ATK1500 レベル4

 

 効果が無効になっているため、特殊召喚成功時に発動する「ヒロイック」魔法・罠カードのサーチ効果は使えない。

 だが、勝利に必要なカードなら既にある。

 

「レベル4のサウザンド・ブレードとモーニング・スターでオーバーレイ! 2体の戦士族でオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 天に出現したエクシーズの渦に2人の戦士が飛び込むと、先ほどの《サイバー・エンド・ドラゴン》に負けず劣らずの光が降り注がれた。

 

「猛き英雄よ。その聖剣に全身全霊を注ぎ、勝利の頂に立て!《H-C エクスカリバー》!!」

 

 剣を振り回して現れたのは、赤い鎧に身を包んだ剣士。兜には角のような金の装飾が取り付けられ、剣の鍔は鳥の形をしている。

 

H-C エクスカリバー

ATK2000 ランク4

 

「エクスカリバーの効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを2つ取り除き、相手ターン終了時まで、エクスカリバーの攻撃力を元々の数値の2倍にする!」

 

 周りを漂うオーバーレイ・ユニット2つが吸い込まれた剣が、太陽のように光り輝く。それをエクスカリバーは誇示するように《サイバー・エンド・ドラゴン》へと向けた。

 

H-C エクスカリバー

ORU:2→0

ATK2000→4000

 

「攻撃力を並べたか……何をするつもりだ?」

「こうするのさ! 魔法カード《ヒロイック・チャンス》発動! このターン、エクスカリバーはダイレクトアタックできない代わりに、攻撃力が更に2倍になる!」

「な……っ!?」

 

 ウィズダムが、目を見開く。

 デュエルを観ている誰もが驚愕しているのが、空気で分かった。

 

H-C エクスカリバー

ATK4000→8000

 

「行くぞ、エクスカリバー!《サイバー・エンド・ドラゴン》に攻撃!」

 

 攻撃を宣言すると、エクスカリバーは剣を構えて跳躍し、一気に《サイバー・エンド・ドラゴン》の目の前に迫る。機械族だから分からないが、《サイバー・エンド・ドラゴン》は感情が動かされたのか低く唸った。

 そして、一層輝きを増した上に刃が巨大化したその剣を、エクスカリバーが振り上げる。

 

「一刀両断・必殺真剣!!」

 

 その剣を、エクスカリバーが容赦なく振り下ろす。

 斬撃が《サイバー・エンド・ドラゴン》の胴体を袈裟切りにした。切られた部分が赤い光を放ち始め、天を貫くほどの咆哮が響き渡る。

 そしてついに、《サイバー・エンド・ドラゴン》の身体が爆ぜ、視界がオレンジがかった白で包まれた。

 

ウィズダム LP1500→0

次のうち、この作品で、デュエル外の登場人物として見てみたいのは?

  • 魔術師
  • コード・トーカー
  • ARG☆S
  • ウィッチクラフト
  • 閃刀姫
  • 霊使い
  • 勇者トークン一行
  • 推しがいないんですが……
  • 全部書いて
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