ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

91 / 91
第90話:花の息吹

ラベンダー LP6500 手札3

【モンスターゾーン】

カード無し

 

【魔法&罠ゾーン】

伏せカード2

 

 

スノードロップ LP3700 手札5

【モンスターゾーン】

六花聖ティアドロップ ATK3200 ランク8 

ORU(オーバーレイ・ユニット)

 

【魔法&罠ゾーン】

カード無し

 

【フィールドゾーン】

六花来々

 

 

 失敗した、とラベンダーはフィールドの状況を見て思う。

 【六花】の出方を知っていたうえで、先んじてサーチとリリース要員となる《六花のひとひら》を破壊しようとしたが、逆にこちらのフィールドをがら空きにされてしまった。それなりに備えたつもりだったのに、それを越えられてしまうなんて。

 しかし、まだ慌てるような時間じゃない。

 発動していないラベンダーの伏せカードは2枚。これらがあれば、恐らくどうにかなる。

 

「バトル!」

「罠カード《恵みの風》発動! このカードは1ターンに1度、3つの効果の中から1つを選んで発動できます。私は第3の効果で、ライフを1000払い、墓地の『アロマ』モンスターを復活させます。《アロマセラフィ-スイート・マジョラム》を特殊召喚!」

 

 スノードロップがバトルに入ったため、ラベンダーは伏せカードを使う。これなら何とかなりそうだ。

 

ラベンダー LP6500→5500

 

 ライフを払ったことで、少しだけ身体の力が抜ける。精霊界で何度もデュエルをしてきたが、この感覚ばかりはどうしようもない。けれど、目の前に現れた魔法陣の中から、白と黒のドレスを着るマジョラムが蘇った。

 

アロマセラフィ-スイート・マジョラム

DEF2000 レベル6

 

「では、ティアドロップでスイート・マジョラムを攻撃!」

 

 スノードロップは動揺せず、攻撃を再開する。ティアドロップが傘を開き、攻撃態勢に入った。

 それこそ狙い通りだ。

 

「罠カード《王者の調和(キングス・シンクロ)》発動! シンクロモンスターへの攻撃を無効にします!」

 

 伏せていたカードを発動させると、スイート・マジョラムの正面に薄緑色の障壁が出現した。ティアドロップはそれを見て、広げようとした傘を仕舞う。

 

「そして、私の墓地のチューナー1体と、そのシンクロモンスターを除外することで、レベルの合計がその2体と同じシンクロモンスター1体を、エクストラデッキからシンクロ召喚扱いで特殊召喚します」

「!」

「よって、レベル6のスイート・マジョラムと、墓地のレベル1のロザリーナを除外し、チューニング!」

 

 ラベンダーのディスクの墓地から《アロマリリス-ロザリーナ》のカードが排出されると、黒いドレスの小さな妖精が現れる。それは杖を振って円を描き、シンクロ召喚の環に姿を変え、スイート・マジョラムがその環を潜った。

 

「冷たい炎が世界の全てを包み込む。漆黒の花よ、開け! シンクロ召喚! 現れよ、レベル7!《ブラック・ローズ・ドラゴン》!!」

 

 光の中から姿を見せたのは、薔薇の花びらのような羽の赤黒いドラゴン。身体から茨のような触手がいくつも伸びている。

 

ブラック・ローズ・ドラゴン

ATK2400 レベル7

 

「さらに、シンクロ召喚した《ブラック・ローズ・ドラゴン》の効果発動! フィールドのカードを全て破壊します! ブラック・ローズ・ガイル!!」

 

 スノードロップが冷汗を垂らす前で、《ブラック・ローズ・ドラゴン》が咆哮を上げ、翼を勢いよく広げる。

 それを合図に、紫の花びらが混ざる嵐が発生した。嵐はラベンダーの《恵みの風》を巻き込み、風を凌ごうとしていたティアドロップを吹き飛ばし、さらに《六花来々》によって空に広がっていた雲を散らして青空を取り戻す。最後に、当の《ブラック・ローズ・ドラゴン》が翼を閉じて消滅した。

 

「攻撃を退けた上、フィールドを一掃するとはやりますね」

「お褒めの言葉、恐縮です」

 

 称賛は受け取るが、懸念もある。

 スノードロップは手札の《六花のしらひめ》を温存した。あれは自分の植物族をリリースして、モンスター効果の発動を無効にする。

 つまりスノードロップは、やろうと思えば《ブラック・ローズ・ドラゴン》の効果を無効にできたが、ラベンダーのフィールドもリセットさせ、状況を互角にさせたのだ。しらひめを使わせるのもラベンダーの狙いのひとつだったが、外されたことになる。

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

 スノードロップはそれ以上展開をしなかった。

 だが、フィールドを敢えて一掃させたのは、その2枚の伏せカードでどうにか巻き返せるからに違いないだろう。

 

 

 

「……すごい」

 

 デュエルを観ていたローリエが、半分放心したように呟く。

 

「ラベンダーさんの盤面を破ったスノードロップさんもですけど……」

「それをさらに巻き返すなんて」

 

 ジャスミンとローズマリーも、同じく衝撃を受けたらしい。隣に座るクーリアは興味深そうにフィールドを注視している。

 《アロマセラフィ-ジャスミン》と《アロマセラフィ-スイート・マジョラム》による布陣を、スノードロップは「六花」の効果で突破して見せた。

 だが、ラベンダーもバトルフェイズ中にシンクロ召喚からのフィールドリセットという、高いデュエルタクティクスでスノードロップの一歩先を行った。

 その応酬に、俺も息を呑む。アニメでもかなりの活躍を見せた《ブラック・ローズ・ドラゴン》を、この目で実際に見られたことに興奮もしたが、お互いの一進一退の攻防に胸が熱くなった。

 

「まあ、ちょっと力業感はあったな」

 

 ベルガモットは苦笑いをし、ハーブティーを一口飲んだ。そこへマジョラムが話しかける。

 

「あれもあなたの入れ知恵?」

「いいや。俺はただ、この2枚に頼らない戦い方を考えとけ、って言っただけ」

 

 ベルガモットは、テーブルに並べられた、ラベンダーしか持たない2枚のカードを指さす。それらは確かに強いが、故に頼りがちになってしまうこともあるだろう。そうならないために、ラベンダーに考えさせたわけか。

 

「……確かに目を見張るものがありましたが、スノードロップ様も負けてはいませんよ」

 

 そこでヘレボラスが、やや得意げに告げる。

 同じ六花の面々をまとめるリーダーとして、彼女はスノードロップの強さを疑っていないらしい。それにスノードロップは、ヴァーディクトが遣わした黒い鎧の侵略者を退けたことがあるとも聞く。この程度は何てことないようだ。現にスノードロップの顔は、ちっとも勝負を諦めていない。

 一方のラベンダーにとって、今の状況はあまりよくないはずだ。急場を凌げたとは言え、彼女のフィールドも空になってしまったのだから。

 

「私のターン。私は魔法カード《アロマブレンド》を発動。手札を1枚捨てることで、手札またはデッキから《恵みの風》《潤いの風》《渇きの風》のいずれか1枚を表側表示でフィールドに出します」

 

 何を手札コストに使ったかは分からないが、ラベンダーはデッキから《潤いの風》をフィールドに置いた。手札とフィールドが乏しい今はそれが最善だろう。

 

「そして、墓地の《アロマブレンド》を除外して効果発動! 私の手札・フィールドのモンスターを融合素材として除外し、植物族の融合召喚を行います。ただし、私のライフが相手を超えている場合は、墓地からも融合素材にできます!」

 

 この盤面、さらに【アロマ】で出せる植物族の融合モンスターとなれば一択だろう。ラベンダーの頭上に融合の渦が出現する。

 

「罠カード《エクシーズ・リボーン》発動! 墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚し、このカードをオーバーレイ・ユニットにする!」

「ッ……!」

 

 しかしそれより早く、スノードロップが伏せカードを発動した。ラベンダーに緊張が走ったのが分かる。

 スノードロップのフィールドに現れた魔法陣から、ティアドロップがまた姿を見せた。さらに、発動した《エクシーズ・リボーン》のカードが水色の光となり、周りを漂い始める。

 

六花聖ティアドロップ

ATK2800 ランク8 ORU1

 

「私は墓地の《アロマージ-マジョラム》と《イービル・ソーン》を除外し、融合」

 

 そして発動した効果は止められない。この後どうなるかはほとんど分かっても、ラベンダーはモンスターを呼ぶしかない。さっきよりも声の勢いは若干落ちている。

 

「淑やかなる調香師よ、憎悪に根付く花弁を清め、新たな香りの境地を拓け! 融合召喚!《アロマリリス-マグノリア》!!」

 

 融合の渦から舞い降りる、アロマの庭の主。特殊な形状の翼を広げ、手に持つ杖のアロマスティックには穏やかな炎が宿っている。

 

アロマリリス-マグノリア

ATK2600 レベル8

 

「この瞬間、私はティアドロップの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、マグノリアをリリース!」

「く……!」

 

六花聖ティアドロップ

ORU:1→0

 

 すぐさまスノードロップが効果を使うと、オーバーレイ・ユニットを吸い込んだブーケをティアドロップが空へ投げ、花びらの雨をマグノリアに降らす。氷漬けになったマグノリアは砕け散った。

 マグノリアは2000のライフと引き換えに、《潤いの風》《渇きの風》《恵みの風》の数だけフィールドのカードを除外する効果がある。スノードロップは先にその手を潰したわけだ。

 

「モンスターがリリースされたことで、ティアドロップの効果発動。ターン終了時まで、攻撃力をリリースされたモンスター1体につき200ポイントアップ!」

 

六花聖ティアドロップ

ATK2800→3000

 

「私は《アロマージ-ジャスミン》を召喚」

 

 ラベンダーはすぐに次の手を打つ。新たに現れたのは、さっきのターンに見たアロマセラフィ態とは異なる、今もデュエルを観ているジャスミンと同じ姿のモンスターだ。

 

アロマージ-ジャスミン

ATK100 レベル2

 

「そして1000ポイントのライフを払い、《潤いの風》の効果発動! デッキから《アロマージ-ローズマリー》を手札に加えます」

 

ラベンダー LP5500→4500

 

「ジャスミンの効果で、私のライフが相手を上回っている場合、もう一度植物族の召喚ができます。よって、ローズマリーを召喚!」

 

 ジャスミンの隣に姿を見せたのは、青系の装束を着る少女。杖を片手に微笑みを浮かべる。

 

アロマージ-ローズマリー

ATK1800 レベル4

 

「罠カード《六花深々》発動! 墓地の『六花』モンスター1体を特殊召喚する。スノードロップを特殊召喚!」

 

 ラベンダーがモンスターを並べたのを見て、何かしてくると踏んだらしい。スノードロップは蘇生札を発動させて、自らと同じモンスターを呼び戻した。

 

六花精スノードロップ

DEF2600 レベル8

 

「私の場に『アロマ』モンスターがいて、ライフが相手を越えているため、墓地のアンゼリカの効果発動! このカードを特殊召喚します!」

「手札の《六花のしらひめ》の効果発動。私の場に『六花』モンスターがいる時、私の場のモンスター1体をリリースし、このカードをデッキに戻して、モンスター効果の発動を無効にする!」

 

 フィールドのスノードロップが姿を消し、輝き始めていたラベンダーディスクの墓地が再び暗くなる。アンゼリカは確かチューナーだったから、シンクロ召喚も防いだわけだ。

 

「デッキの一番上のカードを墓地へ送り、墓地の《グローアップ・バルブ》の効果を発動! このカードを特殊召喚します!」

「お」

 

 どうやら、《アロマブレンド》のコストにしていたのは《グローアップ・バルブ》だったようだ。眼球のついた球根がラベンダーのフィールドに現れ、白い花を咲かせる。

 

グローアップ・バルブ

DEF100 レベル1

 

 《グローアップ・バルブ》はチューナーのはずだ。これでシンクロ召喚をすれば――

 

「現れよ、香しき癒しのサーキット!」

 

 しかし、ラベンダーが選んだのはリンク召喚。この状況で何を呼び出すのか。

 

「召喚条件は植物族モンスター2体以上。ジャスミン、ローズマリー、《グローアップ・バルブ》の3体をリンクマーカーにセット!」

 

 ラベンダーの場のモンスターたちが一斉にリンクサーキットに吸い込まれる。そして青みを帯びた風がサーキットから吹き始めた。

 

「さらなる癒しをもたらす青き涼風!《アロマリリス-ローズマリー》!!」

 

 サーキットから舞い降りたのは、デュエルを観ているのと同じローズマリー。だが、服に青の深みが増し、背中からステンドグラスのような翼を生やし、杖を携えている。浮かべる笑顔は凛としていた。

 

□□□ アロマリリス-ローズマリー

□◆□ ATK2200

■■■ リンク3

 

「リンク召喚したローズマリーの効果発動。デッキから『アロマ』カード1枚を手札に加えます。私はローリエを手札に加えて、その効果を発動! このカードを特殊召喚します!」

 

 1ターン目と同じ方法でローリエを特殊召喚する。フィールドに現れたローリエは、フィールドの状況が芳しくないせいか表情が硬めだ。

 

アロマージ-ローリエ

DEF 0 レベル1

 

「リンク先のローリエをリリースし、ローズマリーの効果発動! フィールドのカード1枚を除外し、1000ポイントのライフを回復します。私はティアドロップを除外!」

「!」

 

 ローズマリーに杖を向けられて、ローリエが瞳を閉じて姿を消すと、ローズマリーはその杖を天に向ける。そして、杖から一筋の青い光が放たれると、それを浴びたティアドロップは消滅した。スノードロップの表情がわずかに曇る。

 

ラベンダー LP4500→5500

 

「さらに、墓地へ送られたローリエの効果で500ポイントのライフを回復!」

 

ラベンダー LP5500→6000

 

「バトルです! ローズマリーでダイレクトアタック!」

 

 《アロマリリス-ローズマリー》が再び杖を振ると、今度は青みを帯びた風がスノードロップに吹き付ける。スノードロップは腕を構えてその風をやり過ごすが、風の勢いはそこまで強くなさそうだ。

 

スノードロップ LP3700→1500

 

「メインフェイズ2で、墓地の《バラガール》の効果を発動。フィールドに植物族モンスターが存在する場合、このカードを手札に戻すことができます」

 

 そのカードは、多分《グローアップ・バルブ》で墓地に落ちていた物。何ともラベンダーはカード運に恵まれているようだ。

 

「私はこれでターンエンドです」

「このエンドフェイズに、墓地の《六花のひとひら》の効果を発動。私の場にモンスターが存在しない場合、このカードを特殊召喚できる!」

 

 案の定、ターン終了間際にスノードロップも動く。スノードロップの足元に白い花が咲き、小さな雪の妖精が姿を現した。毎ターン蘇生するあの効果も、使ったことがある身としてはありがたいものだ。

 

六花のひとひら

DEF 0 レベル1

 

「私のターン、ドロー!」

 

 続くスノードロップのターン。ラベンダーがサーチを容易にできるのは向こうも理解しているはずだが、どう出るか。

 

「魔法カード《サルベージ》発動。墓地より、攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を手札に加える。私は攻撃力1000のボタンと、攻撃力1200の私自身を手札に戻す!」

「な……!?」

 

 【六花】においては不可欠な2体を一気に手札に加えてきた。これには、流石にラベンダーも驚きが抑えきれないらしい。

 

「そしてひとひらの効果発動。私はデッキから《六花精エリカ》を墓地へ送る」

 

 スノードロップはひとひらの効果で、サーチではなく墓地肥やしを選んだ。しかし、スノードロップとエリカの効果を考えれば、それは正しい判断だろう。

 

「ひとひらをリリースし、手札の私自身の効果発動。このカードとボタンを手札から特殊召喚!」

 

 1ターン目と同じやり方で、同じモンスターを呼び寄せたスノードロップ。折角取り戻しかけていたラベンダーの流れが、またスノードロップに向き始めたのが見えてしまう。

 

六花精スノードロップ

DEF2600 レベル8

 

六花精ボタン

DEF2400 レベル6

 

「特殊召喚したボタン、さらに墓地のエリカの効果発動。エリカは、私の場のモンスターがリリースされた場合、墓地から特殊召喚できる!」

 

 雪の結晶が舞う魔法陣が現れる。その中から起き上がったエリカは、大正ロマンを彷彿とさせる和装を着こなし、雪の結晶を象る傘を淑やかに差している。

 

六花精エリカ

ATK2400 レベル6

 

「そしてボタンの効果で、デッキから《六花の薄氷(うすらい)》を手札に加える」

 

 今手札に加えた罠カードは、対象になったモンスターの効果を1ターン発動できなくさせ、モンスターをリリースして発動すればさらに植物族としてコントロールを得られるものだ。つまり、また次のラベンダーのターンに思うような動きをできなくさせられる。

 

「《六花精シクラン》を召喚」

 

 前のターンにしらひめと共にサーチしていたカードをさらに召喚するスノードロップ。パステルカラーのガーリーファッションでまとまった、紫のロングヘアの少女だ。

 

六花精シクラン

ATK1800 レベル4

 

「レベル6のエリカとボタンでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 地面にエクシーズの渦が出現し、フィールドにいた2人の六花精は水色の光となってそれに吸い込まれる。その光を飲み込んだ渦は、青白い光の柱を立てた。

 

「温順なる光輝の花弁よ、玉屑の下に咲き誇らん! ランク6、《六花聖カンザシ》!!」

 

 光の柱が空へ伸び、粉雪を舞い散らせる。それと共に舞い降りたのは、紅色をベースにした和服の女性。黒いボブカットヘアに、赤い花の髪飾りが映えていた。

 

六花聖カンザシ

ATK2400 ランク6

 

「さらに、レベル4のシクランを対象に私自身の効果発動。全ての植物族のレベルをシクランと同じにする!」

 

六花精スノードロップ

レベル∶8→4

 

「レベル4となった私自身とシクランでオーバーレイ! オーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 さらに続けてエクシーズ召喚を行うスノードロップ。光の渦に、水色の光となった2人の六花精が吸い込まれ、今度は明るい青色の光が弾けた。

 

「深雪の大地を軽やかに舞う可憐なる一輪! ランク4、《六花聖ストレナエ》!!」

 

 口上とともに姿を見せたのは、パステルカラーのドレスを着る、淡いピンク色の髪の少女。まるでダンスを踊るようにくるりと一回転をしてみせた。

 

六花聖ストレナエ

ATK2000 ランク4

 

「そしてストレナエの効果発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、墓地の『六花』カード1枚を手札に戻す。私が戻すのは《六花来々》!」

「ぅ……!」

 

六花聖ストレナエ

ORU∶2→1

 

 ストレナエの傘にオーバーレイ・ユニットが吸い込まれ、その傘を優しく振ると、スノードロップの手札に1枚のカードが蘇った。

 

「この《六花来々》を発動!」

 

 そしてそのカードを、すぐさま発動する。アロマの庭は、またしても雪が静かに降る曇天に覆われた。

 

「《六花来々》の効果を発動。私はデッキから《六花絢爛》をセット。そしてこのカードを、《六花来々》の効果で《アロマリリス-ローズマリー》をリリースして発動!」

「っ!」

「私はデッキから、レベル4の《六花のしらひめ》と《六花精プリム》を手札に加える」

 

 折角のリンク3を利用され、しかも手札誘発まで掴ませてしまったラベンダー。状況は圧倒的に悪い。

 

「モンスターがリリースされたことで、カンザシの効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、互いの墓地からモンスター1体を特殊召喚する。ただし、そのモンスターは効果が無効になり、植物族となる」

 

六花聖カンザシ

ORU∶2→1

 

「私の場のモンスターが墓地へ送られたことで、手札の《バラガール》の効果発動! このカードを特殊召喚!」

 

 しかし、何もかもスノードロップのいいようにはさせないつもりのようだ。ラベンダーは手札から、バラの花の茎のように細い身体と、バラの花のような頭部を持つ少女を呼び出した。

 

バラガール

DEF600 レベル3

 

 だが、カンザシの効果もある。オーバーレイ・ユニットが宿り輝く傘をカンザシが地面に向けると、その先に魔法陣が広がる。その中から現れたのは。

 

「私はカンザシの効果で、あなたの墓地のマグノリアを特殊召喚!」

 

アロマリリス-マグノリア

ATK2600 レベル8

 

 同じ植物族だからか蔦が巻き付いたりなどはしていないが、羽の一部や杖が凍りついているアロマの庭の主。デュエルを観ているマグノリアも頬に手を当てているが、そこまで悲しんではいない。

 

「バトル! まずはストレナエで《バラガール》を攻撃。銀花の神楽!!」

 

 ついにバトルに入った。

 ストレナエは傘を自在にステッキのように振り回しながらフィールドでステップを踏むと、傘から水色の光の帯がいくつも伸びる。それで叩かれたバラガールは消え去ってしまった。

 

「続いてカンザシでダイレクトアタック、弔いの瑞花!!」

 

 カンザシが傘を横に薙ぐと、氷の槍を出現させてラベンダーに向けて放つ。槍はラベンダーに命中はしないが、すぐそばを掠めたことで風が体を叩いた。

 

ラベンダー LP6000→3600

 

「そしてマグノリアでダイレクトアタック!」

 

 アロマの庭の主に攻撃をさせるとは、中々酷なことをする。フィールドのマグノリアが杖を振り、オレンジの風をラベンダーにけしかけたのを見て、デュエルを観ているジャスミンは小さく息を吐いた。

 

ラベンダー LP3600→1000

 

「そして私はカードを1枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズに、私のライフが相手より低いため《潤いの風》の効果を発動。500ライフを回復します」

 

ラベンダー LP1000→1500

 

「そして1000ポイントのライフを払い、《潤いの風》のもうひとつの効果発動! デッキからアンゼリカを手札に加えます」

 

ラベンダー LP1500→500

 

「手札に加えたアンゼリカを捨てて、効果発動! 墓地の『アロマ』モンスター1体の攻撃力分のライフを――」

「手札のしらひめの効果発動。マグノリアをリリースし、このカードをデッキに戻して、その効果を無効にする」

 

 冷静にラベンダーの動きを止めるスノードロップ。その仕草に、俺はある種の恐ろしさを抱く。

 

「あれがスノードロップ様の強さです。いかなる局面においても落ち着いて、相手の動きを見極めて戦う」

 

 同じくデュエルを観ているヘレボラスは、ハーブティーを一口飲んでからそう話した。まるで、俺が何を思っているかを理解しているように。

 

「……これ、かなりマズイんじゃない?」

「そうね……ラベンダーちゃんのフィールドはがら空き、《潤いの風》が使えるライフもない。よほど次のドローがよくなかったら、もう……」

 

 ローリエとマジョラムが深刻に話し合っている。確かにこの状況は、ラベンダーにとっても厳しいところがある。それに、《六花来々》と《六花の薄氷》を仕掛けているのも厄介だ。しらひめの効果を使わせたとはいえ、それだけで勝てるわけでもない。

 周りを見る。同じくデュエルを観ているクーリアとプリモアも、状況が悪いのを分かっているのか口を閉ざしている。カナンガやローズマリー、ジャスミンとマグノリアも表情が硬い。

 

「……」

 

 だが、ラベンダーのパートナーたるベルガモットだけは、まだ笑っていた。

 まるで、ラベンダーの勝利を諦めていないように。

 

 

 内心、ラベンダーはかなり焦っている。

 フィールドと手札が枯渇しているのもそうだが、スノードロップの余裕が全くと言っていいほど崩せていない。そんな彼女からはプレッシャーじみたものがにじみ出ていて、戦う気力まで吸い取られるかのようだ。

 そして次のドローで、何かいいカードが引けなければ、ラベンダーの負けだ。

 

「私のターン……ドロー!」

 

 引いたカードを見て頷く。もってこいだ。

 

「《貪欲な壺》発動。墓地の《アロマセラフィ-ジャスミン》、《ブラック・ローズ・ドラゴン》、《アロマリリス-ローズマリー》、マグノリア、さらにロザリーナをデッキ・エクストラデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

 自動でシャッフルされるのが終わってから、ドローする。

 その2枚は、運命としか言いようがない中身だ。

 

「速攻魔法《サイクロン》発動! その伏せカードを破壊!」

 

 雪の粒を舞い上がらせながら竜巻が発生し、指さした伏せカードに迫る。そのカードはやはり《六花の薄氷》、破壊しておくべきものだった。

 

「《アロマリリス-ロザリーナ》召喚!」

 

 通算3回目となる召喚は過労死気味だが、勝つために許してほしいとラベンダーは思う。

 

アロマリリス-ロザリーナ

ATK 0 レベル1

 

「召喚時の効果で、デッキから《アロマージ-ベルガモット》様を特殊召喚!」

 

 渦巻く炎と共にフィールドに現れる、ラベンダーが慕ってやまないアロマの庭のサブリーダー。彼はフィールドに立つと、杖を振るって闘志を露わにする。

 

アロマージ-ベルガモット

ATK2400 レベル6

 

「レベル6のベルガモット様に、レベル1のロザリーナをチューニング!」

 

 ロザリーナが杖を振って一回転し、シンクロの環に姿を変える。ベルガモットは跳び上がり、その環をくぐった。

 

「大地に巡る数多の命が、奇跡の円を紡ぎ出す! シンクロ召喚! レベル7、《サークル・オブ・フェアリー》!!」

 

 光が空から降り注ぎ、木でできた体の巨人が姿を見せる。体中にコケや結晶のようなものが生え、頭の部分には同じく木でできた円がついている。

 

サークル・オブ・フェアリー

ATK2200 レベル7

 

「そして、ライフが相手より低いことで、《潤いの風》の効果を発動。500ライフを回復します」

 

ラベンダー LP500→1000

 

「バトル!《サークル・オブ・フェアリー》でストレナエを攻撃! ネイチャー・アロー!!」

 

 今はこれ以上できることがない。《サークル・オブ・フェアリー》がストレナエに飛び掛かり、右手で強烈なパンチを打ち込む。突き飛ばされた少女は小さな悲鳴と共に破壊された。

 

スノードロップ LP1500→1300

 

「この瞬間、《サークル・オブ・フェアリー》の効果発動! 自分の植物族または昆虫族のバトルでモンスターが破壊された場合、そのモンスター1体の攻撃力の半分のダメージを相手に与え、与えた数値分のライフを回復します!」

「く……」

 

スノードロップ LP1300→300

 

ラベンダー LP1000→2000

 

 ライフを逆転できた。

 バトルフェイズを終了させ、次に行く。

 

「墓地の《バラガール》の効果発動。このカードを手札に戻します。そして《サークル・オブ・フェアリー》の効果により、私は植物族の召喚を1回増やすことができます。よって《バラガール》を召喚!」

 

バラガール

ATK800 レベル3

 

「私のライフが相手を超えていることで、墓地のアンゼリカの効果を発動し、特殊召喚!」

 

アロマセラフィ-アンゼリカ

DEF 0 レベル1

 

「現れよ、香しき癒しのサーキット! 召喚条件は植物族モンスター2体。《バラガール》とアンゼリカをリンクマーカーにセット!」

 

 2体の小さな花の妖精がリンクサーキットに吸い込まれる。ただし墓地から復活したアンゼリカは除外された。

 

「リンク召喚! リンク2、《アロマセラフィ-ジャスミン》!!」

 

 最初のターンぶりに呼び出すアロマの精霊。彼女は翼を羽ばたかせ、たおやかに杖を振った。

 

□□□ アロマセラフィ-ジャスミン

□◆□ ATK1800

■□■ リンク2

 

「《潤いの風》の効果! 1000ポイントのライフを払い、デッキからローリエを手札に加えます」

 

ラベンダー LP2000→1000

 

「そしてローリエの効果を発動し、このカードを特殊召喚!」

 

 ジャスミンのリンク先にローリエを特殊召喚する。その顔は、これまでと違ってやる気に満ちていた。

 

アロマージ-ローリエ

DEF 0 レベル1

 

「リンク先のローリエをリリースし、ジャスミンの効果発動! デッキからマジョラムを特殊召喚!」

 

 ローリエが目を閉じて姿を消し、入れ替わるようにマジョラムが姿を見せた。

 

アロマージ-マジョラム

ATK2000 レベル5

 

「リリースされたローリエの効果発動!」

「こちらはカンザシの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、私の墓地のボタンを特殊召喚!」

 

六花聖カンザシ

ORU∶1→0

 

 ジャスミンの効果によるリリースによって、カンザシの効果を発動する機会を与えてしまった。オーバーレイ・ユニットを吸い込んだ傘をカンザシが地面に向けると、現れた魔法陣からボタンが溌剌とした笑みと共に現れる。

 

六花精ボタン

DEF2400 レベル6

 

 だが、その程度は大した支障もない。ラベンダーはローリエの効果で500のライフを回復できる。

 

ラベンダー LP1000→1500

 

「ライフが回復したことで、ジャスミンとマジョラムの効果発動! マジョラムの効果で、私の場の『アロマ』の数だけ相手の墓地のカードを除外します。よって、ひとひらとスノードロップを除外!」

 

 毎ターン復活してサーチをする初動と、厄介なレベル変動効果持ちを先んじて除外する。その2枚を墓地から取り出し除外したスノードロップは、わずかに苦しそうな表情だ。

 

「ジャスミンの効果で、デッキから植物族1体を手札に加えます。私はカナンガを手札に。そして再び現れよ、香しき癒しのサーキット! 召喚条件は植物族2体以上!」

 

 間髪入れずリンクサーキットを開く。リンク2のジャスミンの姿が2つに増え、さらにマジョラムと共にリンクサーキットへと飛び込んだ。

 

「リンク召喚! リンク3、《アロマリリス-ローズマリー》!!」

 

□□□ アロマリリス-ローズマリー

□◆□ ATK2200

■■■ リンク3

 

 再びフィールドに舞い降りる青い精霊。その表情は変わらず穏やかだ。

 

「リンク召喚したローズマリーの効果で、デッキから《アロマガーデン》を手札に加えます。そして、このフィールド魔法を発動!」

 

 すぐさまフィールド魔法を発動するが、今いる場所が本当の《アロマガーデン》のため、景色は変わらない。しかし、空に広がる雲は払わなければ。

 

「《アロマガーデン》の効果発動! 私の場に『アロマ』がいるため、500ライフを回復し、さらに次のターン終了時まで私の植物族の攻撃力を500アップします!」

 

ラベンダー LP1500→2000

 

アロマリリス-ローズマリー

ATK2200→2700

 

サークル・オブ・フェアリー

ATK2200→2700

 

「ライフが回復したことで、ローズマリーの効果発動! 手札の『アロマ』モンスターを任意の数だけ、リンク先に特殊召喚します!」

 

 さっき手札に加えていたカナンガを、空いているローズマリーのリンク先ににあたる真下に特殊召喚する。厚手の服装のカナンガは、杖を傍らに跪いた。

 

アロマージ-カナンガ

DEF1000→1500 レベル3

 

「ローズマリーのさらなる効果! リンク先のカナンガをリリースし、1000ポイントのライフを回復! さらに《六花来々》を除外!」

 

 ローズマリーに杖を向けられたカナンガが頷いて姿を消すと、ローズマリーは杖を天に向ける。その杖から放たれた青い光が、空に広がる雪雲を消し去った。

 

ラベンダー LP2000→3000

 

「私はこれでターンエンドです」

「すごいです、ラベンダーさん!」

「あの状況からこんなに逆転するなんて……」

 

 ターンを終えたところでジャスミンとプリモアが声を上げた。それに向けてラベンダーは片手を振る。

 そしてベルガモットも、満足そうに頷いていた。彼に恥じない戦いができて嬉しく思うと同時に、認めてくれたようで天にも昇りそうな気分になる。

 しかし、まだデュエルは決着がついていない。

 次のターンで決着をつける。ラベンダーはそう強く心に刻み、スノードロップの最後のターンに臨んだ。

 

 

 

「私のターン、ドロー」

 

 スノードロップは、やや緊張しながらもドローする。

 よもや1ターンでここまで形勢をひっくり返されるとは。しかもライフを300まで削られ、もう後がない。フィールドもあまりよくはないため、文字通りこれが最後のドローだ。

 しかし、引いたカードを見た瞬間に、勝利へのルートが構築できた。

 

「《ローンファイア・ブロッサム》を召喚!」

 

 燃える種子が膨らむ異界植物がフィールドに現れる。

 そのモンスターを見た瞬間、ラベンダーの表情がわずかにひきつった。同じ植物族使いとして、これが厄介なモンスターなのは知っているのだろう。

 

ローンファイア・ブロッサム

ATK500 レベル3

 

「このモンスターの効果を発動。私のフィールドの植物族モンスター1体をリリースし、デッキから植物族モンスターを1体特殊召喚する。カンザシをリリースし、《妖精弓士イングナル》を特殊召喚!」

 

 カンザシが一礼して姿を消し、新たに現れたのはそれこそ妖精のように神秘的な狩人の女性。薄水色の髪をなびかせ、黄緑の弓矢を構えている。

 

妖精弓士イングナル

ATK2400 レベル6

 

「植物族の効果で特殊召喚したイングナル、さらに手札のプリムの効果発動。プリムは私のフィールドの植物族モンスターがリリースされた場合に特殊召喚できる!」

 

 薄桃色のワンピースを着る少女が、楽しげに傘を振りながら現れた。

 

六花精プリム

DEF1800 レベル4

 

「さらにイングナルの効果で、墓地のレベル6以上の植物族モンスター1体を特殊召喚する。エリカを復活!」

 

六花精エリカ

ATK2400 レベル6

 

「プリムの効果発動。私の場の植物族を2体まで対象とし、そのレベルを2つ上げる」

 

 勝負を決めるために、その効果を使うのはプリム自身。その傘を開くと、プリムはにっこり笑った。

 

六花精プリム

レベル∶4→6

 

「レベル6のイングナル、ボタン、プリムでオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 イングナルはオレンジ色、ボタンとプリムが水色の光となり、フィールドに現れたエクシーズの渦へ吸い込まれた。

 

「恵み深き大地の騎士よ。歯向かう敵を一掃し、この地に豊穣を甦らせよ! ランク6、《妖精騎士イングナル》!!」

 

 そのエクシーズの中から姿を見せたのは、妖精弓士同様にファンタジーな服装の騎士。樹のような形状の剣を左手に携えていた。

 

妖精騎士イングナル

ATK2200 ランク6

 

 ラベンダーはまだ《潤いの風》の効果を使わない。どうやら、スノードロップがどう動くかによって、サーチするモンスターを決めるつもりだろう。

 だが、ここで使わなかったのは敗因だ。

 

「イングナルの効果発動! オーバーレイ・ユニットを2つ取り除くことで、フィールドの他のカードを全て持ち主の手札に戻す!」

「!《潤いの風》の効果――」

「残念ながら、イングナルの効果発動に対し、相手は効果を発動できない!」

「!?」

 

妖精騎士イングナル

ORU:3→1

 

 驚くラベンダーの前で、イングナルのオーバーレイ・ユニット2つがその剣に吸い込まれ、虹色の光をともし始める。その剣をイングナルが大きく振ると、ライトグリーンの嵐がフィールドに発生し、フィールドのカードを全て吹き飛ばす。

 後に残っていたのはイングナルだけだ。

 そして、手札にはエリカがいる。

 

「バトル。イングナルでダイレクトアタック! そしてこの瞬間、手札のエリカをリリースして効果発動! 戦闘する自分の植物族の攻撃力を1000ポイントアップ!」

 

 手札のカードをリリースすると、フィールドのイングナルの背後にエリカの幻影が現れ、勇気づけるように傘を広げた。

 

妖精騎士イングナル

ATK2200→3200

 

 そしてイングナルは、樹木のような剣を構えてラベンダーへと突撃する。

 ラベンダーは、諦めたように笑っていた。

 

ラベンダー LP3000→0

 

 

「いや、いいデュエルだったな」

 

 戻ってきたラベンダーとスノードロップを迎えて、ベルガモットが軽く拍手をする。皮肉ではないのは分かった。さっきのデュエルは、見応えがあるものだったと俺も思う。

 

「ラベンダーさんもお見事でした」

「いえ……やっぱりスノードロップさんの方が一枚上手でした」

「そう言わずとも、とてもお強かったです。最後のドロー次第では、私も負けていましたよ」

 

 戦った者同士、ラベンダーとスノードロップも穏やかに会話をしている。

 デュエルを観ていた俺からしても、最後のラベンダーのターンは奇跡の連続と言っていいほどだ。手札ゼロの状況から、大型モンスターを2体並べ、その過程で障害となるスノードロップのカードを2枚除去。少し違えば、あのターンにラベンダーが勝っていたかもしれない。

 そして、ラストターンに《ローンファイア・ブロッサム》を引き当てたスノードロップ。お互いにドロー力は申し分ないと言えるだろう。

 

「彼女も中々、不屈の精神を持ち合わせているようですね。デュエルでよく分かりました」

「スノードロップさんは……冷静沈着って感じでしたよ。なんだか、どれだけやっても全然優位に立った気がしなくて」

「買いかぶりすぎです。私も内心ハラハラしてましたよ」

 

 このデュエルは、お互いを深く知るためだと最初に言っていた。だからこそ、2人とも相手の精神をデュエルを通じて理解できたらしい。

 和やかに微笑み合うラベンダーとスノードロップを見つつ、俺はハーブティーを飲む。

 

(相手を知る手段……)

 

 実際に、2人は分かり合えたらしい。

 そこで、今までの俺のデュエルを思い出す。大半が、何か譲れないもののため、守るべきもののため、命をかけたものが多かったように思う。

 

「バトレアス、どうかした?」

「え? あ、いや……」

 

 クーリアに話しかけられ、振り返ろうとしたのを止める。他のみんなからも視線を集めてしまい、何か弁明しなければと頭を働かせた。

 

「その、2人のデュエルがすごかったなって、改めて思って」

「それはどうも。よろしければ、あなたもいかがかしら?」

 

 嘘ではない感想を述べると、スノードロップが自然に誘って来る。他のみんなも、どことなくそれを期待しているのは見て取れたけれど。

 

「……すみません、今日は遠慮しておきます。体調が万全ではないので」

「あら……残念です」

 

 理由を伝えると、ヘレボラスが肩を落とす。

 今日はマグノリアの診断を受けるためにここへ来た。ネイロスの一件で身体に蓄積したダメージも踏まえ、最後の自衛手段としてディスクは持ち歩くにしても、それ以外でデュエルは控えた方がいいとクーリアから言われている。何せ、精霊界のデュエルはそれなりにエネルギーを消費するから。

 

「また、あなたと戦える日を待っていますよ」

 

 ラベンダーに言われ、俺は曖昧に頷く。

 今日の2人がしたようなデュエルが、自分にもできるだろうか、と考えながら。

 


 

《罰》

 

ベルガモット「マグノリア様、確かに俺はクーリアさんたちに悪いことをしたと思ってるよ。それは反省してる」

マグノリア「……」

ベルガモット「けど……罰がメイド服で写真撮影ってのは方向性がおかしくねぇか!? もっとこう、他になかったのか!?」

ラベンダー「ベルガモット様! とっても可愛いですよ! 目線こっちに下さい!」

ベルガモット「こんな格好だと微塵も嬉しくないわ!」

カナンガ「……無駄に似合ってて逆にコメントに困りますね、これ」

ベルガモット「褒めてんのか貶してんのか分かんねぇコメントはやめろ!」

ローリエ「何あれ?」

マジョラム「見ちゃいけません」

ベルガモット「教育に悪いモノ扱いすんな!」

ローズマリー「実際悪いですよ……主に、脳に」

ベルガモット「俺からしてもな!」

ジャスミン「……うわぁ」

ベルガモット「シンプルで逆に無茶苦茶傷つく反応!」

ラベンダー「ベルガモット様、今度はダブルピースお願いします!」

ベルガモット「お前は本当ブレねぇなぁ!!」

 

カナンガ「……実際、あの罰には何の意味が?」

マグノリア「尊厳破壊」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

多分遊戯王世界に転生したんだけど事件にも巻き込まれずアラサーになってしまった(作者:道長(最近灯に目覚めた))(原作:遊戯王)

 推定遊戯王世界に転生して約30年。海馬コーポレーションも武藤遊戯も見たし、カイザー亮もプロとして活躍しているから多分そう。噂こそあれど特に事件にも遭わなかったため、普通に就職して趣味でDMをしていた。▼ あるとき、派手な髪型をした少年とカードショップで出会った。▼ 突然書きたくなっただけ投稿。暇つぶしにどうぞ。▼追記▼ 5月29日▼ 読者様のおかげでとりあ…


総合評価:10374/評価:8.34/短編:12話/更新日時:2026年05月14日(木) 11:11 小説情報

遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』(作者:ふわ×フワ)(原作:遊戯王)

 遊戯王ZEXALにたった一話、回想でのみ登場する少年『築根優也』の、語られるはずの無かった物語が今、幕を開け……? いや、何かが違う…。▼「どうしよ待ってこの展開知らない俺」▼これは、前世の記憶を持ち、本来在るべき彼とは異なる彼が、この世界で築き上げるもう一つの物語。▼※こちら遊戯王ZEXALの二次創作でございます為、ルールはアニメ放送当時のものになります…


総合評価:240/評価:7.62/連載:30話/更新日時:2026年06月06日(土) 20:00 小説情報

俺ん家の閃刀姫(作者:猫好きの餅)(原作:遊戯王)

▼ 俺はただ閃刀姫が好きなだけの新米デュエリスト。▼ だから閃刀姫たちのイラストを眺め、イラスト違いの為にジェムを燃やしてパックを回し、レムニスゲートのイラストカッケェってニヤニヤしていればそれで満足だったんだ。▼ なのに。▼「あっ、おかえりなさいっ!…ご飯できてるよー?」▼「…おかえり。…この前買ったゲーム一緒にやるぞ?」▼ ………俺のデッキからレイとロゼ…


総合評価:2953/評価:8.81/連載:23話/更新日時:2026年05月25日(月) 23:53 小説情報

遊戯王ワールド(初代)で閃刀姫に愛された転生者の話(作者:ホーネットビットの残骸)(原作:遊戯王)

遊戯王DMの世界に転生した男がその時代には早すぎるテーマを持たされて四苦八苦しながら生き抜いていくお話。


総合評価:587/評価:8.45/連載:2話/更新日時:2026年04月16日(木) 12:51 小説情報

ウマ娘恋愛相談掲示板 約束の絶景(作者:アマシロ)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

『異次元の寂しがり屋』のセルフ三次創作です。


総合評価:3541/評価:8.85/完結:8話/更新日時:2026年03月02日(月) 21:42 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>