仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー W×獄王×カラーズ NOVEL大戦トリニティ   作:アカミツ書庫

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 疾風呼び込む
 緑の螺旋

 切り込む切り札
 黒の螺旋


第一話 Wの始動/妖怪戦争

 どことも知れぬ暗闇の中。

 《ソレ》は己の中に宿るドス黒い感情に目を向けていた。

 例え幾度の時間が経とうとも、決して薄れぬことはないだろうと確信できる程の強い感情――《復讐》という名の怒りに。

 自らの野望を打ち砕き、更には人としての器すら奪われた。《ソレ》にとって、耐え難い屈辱であった。

 無論、その野望は万人を不幸にするものであったし、器代わりにされた人間は、人としての最低限の尊厳すら汚された。客観的に見れば《ソレ》は滅ぼされて当然の存在であった。

 だが《ソレ》にとっては、そんなことはどうでもよかった。己の望みを叶えることこそが何よりも優先されることであり、他者の語る倫理など、心底どうでもよいことであった。

 ゆえに、《ソレ》は復讐する。自分をこんな目にあわせた連中全てを、皆殺しにしてやろうと決めた。そのための力は、既に手に入れていた。

 

「いよいよだ――俺はこの力を使い、お前達に復讐してやる」

 

 闇の中でうごめく《ソレ》は、静かに、だが狂気に満ちた声で笑いだす。

 

「お前達の理想も、希望も、信念も、全てを壊してから殺してやる。待っていろ、仮面ライダー……!」

 

 ☆

 

 ここは水都市(すいとし)歩色町(ぼいろちょう)

 その名の通り、歩くたびに色づいて行くカラフルな景色が美しい街。

 海に隣接しているこの街は、風車や水車など自然エネルギーを基軸としたエコロジーな街として有名で、特に街中に張り巡らされた水路に繋がる街の中心に存在する巨大な風車《水都タワー》が観光名所としてそびえ立っている。

 そんな街の一角で、私は探偵事務所を構えている。

 私の名前は結月(ゆづき)(ゆかり)。周りからはゆかりさんと呼ばれることが多い。

 今日も事務所の奥にある自分のデスクで、窓から見える水都タワーを眺めていた。窓から入り込む風が、いつもと変わらぬ心地よさを与えてくれる。

 

「フッ、今日もいい風が吹きますね」

 

 そう一人で呟き、デスクの上に置かれたマグカップを手に取り、中に入っているコーヒーを口に含む。

 

(あつ)ッ!?」

 

 口に入れた瞬間、あまりの熱さに吹き出してしまう。信じられないくらいに熱いんですけど!?

 

「何やってるんですかゆかりさん? 熱いから気を付けてくださいって言ったじゃないですかぁ」

 

 そう言う声のする方へ視線を向けると、白髪の低身長巨乳が呆れ顔で立っていた。

 彼女は紲星(きずな)(あかり)、私の後輩にして、この探偵事務所――《紲星探偵事務所》の所長だ。

 何故後輩が事務所の所長なのか、それについては追々説明するとしよう。とにかく今は、そんなあかりが淹れてくれたコーヒーを飲んだところ、思い切り吹き出してしまった。

 

「いやぁ、すみません。ちょっと考え事をしてまして、聞いてませんでした」

「考え事って、何か気になることでもあるんですか?」

「そういうわけではないんですけど……」

 

 あかりの純粋な疑問に、正直に答えるのもなんとなく気まずい。どうしたものかと考えていると、また別の声が届いた。

 

「ゆかりさんのことです。大方、またカッコつけたことを考えていたというところでしょう」

 

 部屋の奥にあるベッドの上で、大きな本を抱えて読んでいた少女が、こちらに目線も向けないままそう言った。

 少女の名前はきりたん。一見小学生にしか見えないが、我が探偵事務所の優秀なブレインである。

 私は口元をハンカチで吹きながら、きりたんへと声をかける。

 

「またとはなんですか、またとは。私はただ街に対して思いを馳せていただけですよ」

「それがカッコつけてるってことですよ。ゆかりさんはハーフボイルドなんですから、そんなことを考えてもカッコつきませんよ」

「んなっ!? 相変わらず口が悪いですね、きりたんは!」

 

 きりたんの辛辣なツッコミに、思わず私は声を大きくしてしまう。仮にも相棒とはいえ、随分遠慮なく言ってくれますよね!?

 そんな私を、近くにいたあかりが落ち着かせるように抑えてくる。

 

「まあまあ、ゆかりさん。それよりも依頼人との約束の時間ってそろそろじゃないですか?」

「えっ? あっそうでした」

 

 あかりに言われて時計を確認すると、確かに依頼人との約束30分前だった。そろそろ出発しないと遅れてしまうだろう。

 私は近くにかけていたジャケットと帽子を素早く身にまとい、鏡でスタイルチェックしてから玄関へと向かう。

 

「それじゃ行ってきます、事務所の方は任せましたよ」

「はい、いってらっしゃい」

「気を付けて」

 

 あかりときりたんの見送りを受けて、私は事務所から出る。

 建物から出ると、すぐ前に停めてある愛車のバイクに乗り、エンジンをふかして出発する。

 全身で風を感じると、やはりこの街は良い街だと、改めて確信するのだった。

 

 ☆

 

 依頼人との話を終えた私は、事務所への帰路についていた。

 特に問題もなく話も終わり、他の予定も無いので今日はもう早めに事務所を閉めるか――そんな風に考えていた時、私の耳に何かが聞こえてきた。

 それは巨大な爆発音だった。同時に強い爆発による強風がこちらまで伝わってくる。

 

「爆発……!? 一体何が……」

 

 突然のことに驚きながらも、私はバイクを爆発の起こった方へと走らせる。

 探偵として、この街で起こる事件には首を突っ込まずにはいられない。特にあれほどの爆発を起こせるような存在がいるとするなら、尚更私が出張らなければならない。

 少しバイクを走らせると、すぐに爆心地らしき場所が見えてきた。その光景を見た時、私は思わず絶句した。

 黒煙を上げてくすぶっている塊が、地面にいくつも転がっている。よく見るとそれは人間の形をしていた。爆発で収縮したのか、サイズはかなり小さくなっている。さらにそれには部位の欠損が見られた。

 腕や足、さらには頭が食い千切られたかのように失われている。爆発ではなく、何か鋭いもので噛みつかれたようだ。

 そんな惨状の中心で、一人の女性が立っている。美しい金髪を持ち、紫色の着物を着ている。その胸元は大きくはだけており、大きな谷間が堂々と晒されている。腰の辺りからは狐のような尻尾が一本生えている。

 女性は口元に真っ赤な血を付けたまま、周囲を見回す。

 

「ふうん、やはり殺した後では味が落ちるのう。逃げられると面倒だから先に殺してしまったが、あまり意味はなかったかのう」

「まさか、この惨状はあなたがやったんですか!?」

 

 女性の言葉を聞いて、私は思わずそう叫んだ。

 対する女性は、ようやくこちらに気付いたように視線を向けてくる。

 

「ふむ? 小娘が一匹か。だが何か奇妙な気配を感じるのう。それなりに美味そうじゃな」

 

 女性がそう言うと、右手に何かを握って取り出した。それは黒く染まった弾丸のような物だった。正面には九本の尻尾を持った狐のようなものが描かれている。

 

《キュウビノキツネ!》

 

 女性が弾丸の側面に付いたボタンを押すと、電子音声が鳴り響く。それを確認した女性は、弾丸を自らの胸の中心に突き刺した。

 すると、女性の身体が赤黒いエネルギーのようなものに包みこまれる。すぐにエネルギーが霧散すると、女性の姿が変わっていた。 

 全身が金色の毛皮に覆われて、胸元と腰には着物を模したような薄布が巻かれている。腰から生えていた尻尾は、九本にまで増えている。それはまさに九尾の狐と呼ぶべき怪物だった。

 その姿を見た時、私の全身に戦慄が走った。

 

「まさか……ナインテイルフォックス!? そんな馬鹿な、確かにあの時倒したはず……!」

「ん? 妾の姿に見覚えでもあったか? あいにくと妾は貴様に覚えはないがのう!」

 

 驚く私を尻目に、怪物は尻尾の一つにエネルギーを溜める。それはすぐさま球状に集まり、私に向かって飛んできた。

 私は咄嗟に前方へと転がって、エネルギー球を避ける。先程まで私が立っていた所が、爆発で吹き飛ぶ。あのままでは私も被害者と同じように黒焦げの死体になっていただろう。

 私は立ち上がると、上着の裏側に付けたポケットに手を伸ばし、そこから赤い機械を取り出す。

 

「ドーパントではない……? いや、とにかく今はコイツをなんとかしないと。きりたん!」

 

 私は赤い機械――ダブルドライバーを腰に装着して、相棒へと呼びかける。すると、私の脳内にきりたんの声が響いてくる。

 

『どうしました、ゆかりさん。依頼人との話は終わりましたか?』

「それは終わりました、それよりもちょっと奇妙なことになってまして!」

『奇妙なこと? とにかく私を呼ぶってことは、非常事態であるみたいですね。分かりました』

 

《サイクロン!》

 

 きりたんがそう言うと、続けて電子音声が鳴り響く。

 私も上着の裏側から一本のメモリを取り出して、スイッチを押し込む。

 

《ジョーカー!》

 

 そして、私ときりたんは、別々の場所に居ながらも同じタイミングでメモリを掲げて、とある言葉を叫ぶ。

 

「『変身!』」

 

 その直後、私の付けたドライバーの右側に緑色のメモリ――サイクロンメモリが転送されてくる。 

 私はそれを左手で押し込み、右手に握った黒いメモリ――ジョーカーメモリを左側に差し込む。

 そして、両手でドライバーを押し広げて、両腕を左右に広げる。

 

《サイクロンジョーカー!》

 

 ドライバーから電子音声が鳴り響くと、私の身体が変化していく。それと同時に風が巻き起こり、私の周囲で吹き荒れる。

 顔に模様が浮かび上がり、足先から顔に向かってスーツが形成されていく。右半身が緑、左半身は黒色になり、最後に複眼が赤く染まって光り輝く。

 変身が完了した私の姿を見て、怪物が驚いたように声をあげる。

 

「貴様、何者じゃ?」

「――ダブル、仮面ライダー(ダブル)

 

 私は左手を相手に突きつけて、意識が一体化してきたきりたんと共に、お決まりの言葉を叫ぶ。

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」

「――クククッ、罪と来たか。人間の尺度で妾の存在を測ろうとは笑わせる!」

 

 怪物はそう言うと、九本の尻尾を大きく広げて、その全てにエネルギーを溜め始める。

 

「我が名は妖怪・九尾の狐! 貴様ら人間の命を、喰らい尽くす者である!」

「『ハアアアッ!』」

 

 怪物――九尾の狐が放ってくるエネルギー弾の嵐の中を、私は駆け抜ける。

 この戦いが、これから起こる水都最大の危機の幕開けになるとは、この時の私は思いもしなかった。

 

 ★

 

 仮面ライダーダブルと妖怪・九尾の狐。二者の戦いは激しい火花を散らすものとなった。

 

「ハアッ!」

 

 ダブルが素早い身のこなしで接近、風を纏った蹴りを叩き込む。連続の回し蹴りで的確にダメージを与えていく。

 最後の一撃が九尾の狐の顔面にヒットし、大きく吹き飛ばす。

 

「グウッ!? おのれ、人間風情が!」

 

 立ち上がった九尾の狐は、尻尾を再び広げるとエネルギー弾を乱射していく。

 ダブルもこれには足を止めて、防御に回ることになる。

 

「くっ、このエネルギー弾が厄介ですね。まだ防げるから良いですけど」

『ゆかりさん、こういう時は――』

「ん?」

 

《ルナ!》

 

 左腕で防御するダブル、その右腕が勝手に動き、新たなガイアメモリを取り出す。

 そして、ドライバーのライトスロットにあるメモリと入れ替える。

 

《ルナジョーカー!》

 

 すると、ダブルの右半身が緑から黄色へと変化する。そして右腕を突き出すと、まるでゴムのように腕が伸び、九尾の狐の顔面を掴む。そのまま腕を振り回して、何度も地面に叩きつける。

 

「グウッ、ガアッ!?」

『よっ、ほっ!』

「ちょっときりたん! 勝手にメモリ変えないでください!」

 

 右半身を勝手に動かされることに、身体を司るゆかりが文句を言う。

 仮面ライダーダブルは、ドライバーを付けた肉体側と、そこに精神のみを宿すブレイン役がいて成り立つ二人で一人の仮面ライダー。

 今のゆかりは、相棒であるきりたんの意識が身体に宿っている。そのため、きりたんの意志で身体を動かすことができるのだ。

 

「貴様ぁ……いい加減にせよ!!」

 

 何度も地面に叩きつけられたことで、九尾の狐はついに怒り狂う。

 顔面を掴む腕を振り払い、尻尾から無数のエネルギー弾を連射する。先程までよりも威力も速度も上がっているようだ。

 ダブルは右腕を一度戻すと、今度はムチのようにしならせて飛んでくるエネルギー弾を弾き飛ばしていく。

 

「もう、変に煽るようなことするから怒らせたじゃないですか!」

『仕方ないでしょう、私もあんな見た目の怪物には良い思い出がありませんから』

「まあそれはそうでしょうけど、ね!」

 

 エネルギー弾をあらかた弾き終わると、ダブルは再び右腕を伸ばす。

 それは九尾の狐の身体に何重にも巻きつき、ロープのように縛り上げる。

 

「ぬうっ!? 離さぬか!」

「そんなに離してほしいなら、そうしてあげますよ!」

「グオッ!?」

 

 ダブルは右腕を勢いよく引き戻す。それと同時に拘束を解除する。

 九尾の狐は抵抗することも出来ずに、回転しながらダブルの眼前まで引き寄せられる。

 すかさずダブルは、再び右側のメモリを入れ替える。

 

《ヒート!》

《ヒートジョーカー!》

 

「ハアッ!!」

「グオオオオオオッ!?」

 

 右半身が赤く染まった姿ーーヒートジョーカーになったダブルは、炎を纏った渾身の拳を土手っ腹に叩き込む。

 真正面から無防備に受けた九尾の狐は、悲鳴をあげながら数メートルは吹き飛ぶ。地面に落ちた後もなんとか立ちあがろうとするが、相当なダメージを受けたことで中々立ち上がれない。

 その隙にダブルはサイクロンメモリを取り出し、ドライバーに装填する。

 

《サイクロンジョーカー!》

 

「さあ、メモリブレイクです」

『アレはドーパントではなさそうですから、メモリブレイクと言うのは正しくない気もしますが、まあ良いでしょう』

「一々細かいんですよ、きりたんは」

 

 そんなやり取りをしながら、ダブルはドライバーからジョーカーメモリを抜き取る。そのまま右腰に付けられたマキシマムスロットに装填する。

 

《ジョーカー! マキシマムドライブ!》

 

 すると、ダブルの周囲に強い風が巻き起こる。それはダブルの身体を宙に浮かせて、頂点に到達したところで止まる。

 そこでダブルはマキシマムスロットを一度叩き、キックの体勢に入る。

 

「『ジョーカーエクストリーム!』」

 

 ゆかりときりたんの声が同時に技名を叫ぶ。

 するとダブルの身体が正中線から真っ二つに分裂、まず左半身が蹴りを打ち込み、続いて右半身が蹴りを炸裂させる。

 やっと立ち上がった九尾の狐は、その二段キックを受けて更に大きく吹き飛んだ。その身体には多量のエネルギーを流し込まれたことによるスパークが走る。

 分裂した身体を元に戻したダブルは、ゆっくりとその場に着陸。相手の様子を眺めていた。

 

「ば、バカな……妾が人間ごときに……!? 話が違うぞ、酒呑童子ィ!!」

 

 九尾の狐はそのような断末魔を残し、全身を爆散させた。

 残ったのは街を守る戦士の姿のみであった。

 

 ☆

 

「奇妙な相手でしたが、なんとか倒せましたね」

『ええ、ドーパントとの経験が通じる相手で良かったです』

 

 妖怪・九尾の狐を名乗る相手を倒し、私――結月紫は一息吐く。これまで戦ってきた相手とは何か違う存在との戦いに、少々緊張を覚えていた。

 私は変身したまま、九尾の狐が爆散した場所まで歩み寄る。そこには誰も倒れていなかった。

 

「変身した人間がいない……やはりドーパントではなかった、ということですかね」

『もしくはマスカレイドのように証拠隠滅のために消滅させられるのか。ですが、アレほどの力を持った存在が、そのようなリスクを背負わされるとも思えませんね』

「そうですよね、ん? これは――」

 

 私はその場に落ちていた物を拾い上げる。

 それは真っ二つに割れた黒い弾丸のような物であった。先程の妖怪が変身する際に使っていた物だと、すぐに気が付く。

 

『これを使って変身していたと。ガイアメモリ以外にもこんなものが存在していたとは。興味深いです、ゾクゾクしますね』

「検索欲はまだ抑えててくださいよ、きりたん。とりあえずこれを持って帰りますから」

『分かってますよ……っ!? ゆかりさん!』

「っ!」

 

 きりたんの言葉と同時に、とてつもない殺気を感じた私は、その場から飛び退く。

 すると、先程まで私が立っていた場所に、巨大な銀色の斧のような物が飛んでくる。もしあのまま立っていれば、胴体に突き刺さっていたかもしれない。背筋に寒気が走ってくる。

 

「今度は何なんですか!?」

 

 思わずそう叫ぶ私、その目前で斧がひとりでに動き出して地面から抜かれる。回転しながら元の場所へと戻っていく斧を目で追いかける。

 そこには銀色のアンダースーツに茶色の鎖かたびら、その上に茶色のコートを羽織ったような姿をした人物が立っていた。白く輝く複眼をこちらに向けながら、戻ってきた斧を片手で受け止める。

 どうやらあの人物が、私に斧を投げてきたらしい。

 

「妖怪の気配を感じたから来てみれば、随分と変なのがいるな。緑と黒の半分こ怪人ってか? あんなのは初めて見たぜ」

 

 謎の人物は男性の声でそう喋る。

 こちらからも何か言おうとした瞬間、斧を両手で握りしめてこちらに向かってきた。

 

「ちょっ!?」

『ゆかりさん!』

 

 容赦なく振り下ろされる斧を、両手で受け止める。

 とてつもない力がかけられているのか、踏み締めた地面が陥没してしまう。馬鹿力なんてもんじゃないですね……!

 

「なんなんですか、貴方は!」

「妖怪の出た場所に居た変な奴、だったらテメェも妖怪だろう? 色々聞きたいことがあるぜ……!」

「聞きたいこと……?」

 

 どうやら目の前の相手は私のことを妖怪だと勘違いしているらしい。こちらが弁解する間もなく、相手が一方的に言葉を続ける。

 

「オレのダチがこの街で居なくなっちまった。妖怪の仕業に違いねえ、テメェらが何かやったんじゃねえのか!」

「ぐうっ……!?」

 

 押し付けられる斧の力が、更に重くなる。このままでは押し負ける……!

 

「くっ、ハアッ!」

 

 私は斧の刃先を地面へと受け流し、態勢を崩した相手の腹に蹴りを叩き込む。

 さすがに耐えられないのか、相手は数メートルは吹き飛んだ。しかし、斧の柄を地面に突き刺してすぐに態勢を立て直した。

 

「チッ、妖怪のくせにやるじゃねえか!」

「いや、待ってください! 私達は妖怪じゃありませんよ!」

『むしろいきなり襲いかかってきた貴方の方が、妖怪みたいに見えますよ』

「何……?」

 

 私ときりたんの言葉を受けて、相手の動きが止まる。冷静になってくれたか――そう思った私の思考はすぐさま裏切られる。男の身体がまるで炎のように見えるオーラに覆われているように見えたからだ。

 これはどう考えても――怒っている。

 

「……こちとらダチが居なくなってイライラしてんだ。その上妖怪モドキにとぼけられた上に、オレのことを妖怪呼ばわりか。――ぜってぇ殺す!」

 

《ファイナルジャッジメント!》

《クルセイド・トマホーク・ブレイク!》

 

 男が右腕に装備していた銀色の腕輪をベルトにかざす。すると、握っていた斧――トマホークにブラウン色のエネルギーが溜まっていく。

 男はそれを思い切り振りかぶり――

 

「そうらっ!!」

 

 全力でこちらに向かってぶん投げてきた。

 今までの経験から分かる。これを喰らえば死ぬ――!

 

「くうっ!?」

 

 その場で上半身を全力で後ろに倒す。まるでブリッジをするような態勢になると、鼻先をトマホークがかすめて背後に飛んでいく。

 

「あ、危ないですね……肝が冷えましたよ」

『ゆかりさん、まだです!』

 

 そう言われて正面に向き直ると、男はどこからともなく取り出したSMG(サブマシンガン)を構えて、銃床を3回引いていた。

 

《ファイナルバレット!》

《クルセイド・ウリエル・ガトリング!》

 

 その電子音声が鳴り響くと、SMGにブラウン色のエネルギーが溜まっていく。

 やがてそれは、巨大なガトリング銃の形になってこちらに銃口が向けられる。

 

「なっ、そんなのアリですか!?」

『ゆかりさんマズイです、後ろからも来ます!』

 

 またきりたんに言われて振り向くと、先程避けたトマホークが猛スピードでこちらに戻ってきていた。どうやら軌道を自在に操れるらしい。

 前方にガトリング、後方にトマホーク。横に避けようにもすぐに追いつかれてしまうだろう。どうするべきか。

 

「こうなったら、一か八かですね!」

 

《メタル!》

《サイクロンメタル!》

 

 私は左のスロットにメタルメモリを装填、左半身が銀色に染まったサイクロンメタルへと姿を変える。背中に生成された棍棒状の武器――メタルシャフトを引き抜いて構えると、ドライバーから抜いたメタルメモリをマキシマムスロットに装填する。

 

《メタル! マキシマムドライブ!》

 

 メタルシャフトを頭上に掲げて高速で振り回す。すると緑色の風が私の周りを包み込み、一つの竜巻のようになっていく。

 

「『メタルツイスター!』」

 

 そのままシャフトを回し続けて竜巻を大きくしていく。そうしていると男が引き金を引いて、大量の弾丸を放ってくる。

 同時にトマホークも接近、竜巻と弾丸とトマホークがぶつかり合い、大きな砂煙を起こして私の視界を閉ざした。

 

 ★

 

 ガトリングから銃弾を全て撃ち切ると、男――赤獅子ダイヤは構えを解く。

 二方向からの同時攻撃。並の相手なら全身を蜂の巣にした上で、胴体を真っ二つにしている。生半可な防御でどうにかなるようなものではない。

 だが、ダイヤは仮面の下で正面を見据えていた。仮面ライダークルセイドとして戦ってきた経験からして、目の前の相手はそう簡単に倒せる相手ではないと、そう直感していた。

 しばらく見ていると、煙が一気に晴れる。そこにはやはり、攻撃を防ぎきったダブルが立っていた。

 

「ふう……なんとかなりましたね」

『ダブルの中でも防御に優れたサイクロンメタルでなければ、危なかったですね』

 

 メタルシャフトを両手で握りながら、ダブルはそう呟く。

 予想通りの展開に、ダイヤは仮面の下で笑みを浮かべた。

 

「ハッ。妖怪モドキの割にはやるようだな。それくらい歯応えがないと面白くねえ!」

 

 ダイヤは戻ってきたトマホークを構えると、ダブルに向かって突きつける。

 これにはダブルも呆れたように肩をすくめる。

 

「人の話を聞かない人ですね、妖怪じゃないって言ってるじゃないですか」

『もう完全に頭に血が昇っているようですね。倒さない限り話が通じないかもしれません』

「……仕方ないですか」

 

 ダブルもメタルシャフトをいくらか振り回してから、正面に構える。

 お互いに十分な距離を取った上でのにらみ合い、やがて同じタイミングで一歩踏み出そうと――

 

「そこまでですよ、ダイヤさん」

 

 ――したところで、突如女性の声がしたことで動きが止まる。ダイヤに至っては思わず前によろける。

 声のした方を見ると、紫髪をツインテールにした眼鏡をかけた女性が立っていた。ダブルは警戒をするが、ダイヤは気の抜けたように、女性に歩み寄る。

 

「なんだよ、レイ。今良いところだったんだけど?」

「何言ってるんですか。勘違いで人を襲うなんて、馬鹿なことをしてるから止めに来たんでしょう」

 

 女性――レイ・キリエは眉を寄せて少し怒っている素振りを見せる。

 そんな彼女の言葉に、ダイヤは首をかしげる。

 

「勘違い? コイツ妖怪じゃねえのか?」

「違いますよ。彼、いや彼らは仮面ライダーダブル。この街を守っている正義のヒーローです。つまり、私達の同業者ですよ」

「……マジ?」

 

 レイの言葉に、ダイヤは少し焦ったように言う。

 見かねたレイは、スマホを取り出し、その画面をダイヤに見せる。

 

「ほら、これです。この街で活躍しているってニュースが、あちこちで見られますよ」

「…………マジか」

 

 ダイヤはスマホの画面と、ダブルの顔を何度も交互に見る。やがて、バツが悪そうに頭を掻くと、SMGから弾丸を取り出して、変身を解除する。

 生身の姿、額に赤いバンダナを巻いた茶髪の青年へと戻ったダイヤは、ダブルに向かって頭を下げる。

 

「悪い、完全にオレの思い違いだった。アンタのことを妖怪だと思い込んじまった。許してくれ」

「え……ま、まあ、勘違いは誰にでもありますから……」

 

 そう言うと、ダブルもドライバーからメモリを引き抜いて変身を解除、結月紫の姿に戻る。

 やがて頭を上げたダイヤは、新たな弾丸――アヤカシバレットを取り出してから、口を開く。

 

「本当に悪かった、ちょっとこっちもゴタついててな。イライラしてたんだ。次に会う時があったら、ちゃんと埋め合わせさせてもらう」

「本当にウチの人がすみませんでした。このお詫びは必ずさせてもらいますので」

 

《モンスバレット!》

《ペガサス・フラッピング!》

 

 ダイヤがSMGに弾丸を装填して引き金を引くと、銃口から放たれたエネルギーがバイクの形になって実体化する。シルバーセンチュリオンと呼ばれるダイヤの愛車であった。

 ダイヤとレイは、それに乗り込むとすぐにエンジンをふかして走り去っていった。

 

「あっ、ちょっと! ……なんなんですか、全く」

 

 一人置いてけぼりにされたゆかりは、思わず天を仰ぐ。 

 空にはあちらこちらに雲がかかっており、綺麗とは言いにくいものになっていた。

 まるで今の自分の頭の中みたいだと、ゆかりは思うのだった。

 

 ★

 

 ゆかりとダイヤ達が対峙していた時、物陰からその様子を伺う者がいた。

 純白の髪を持ちながら、その前部には赤・橙・黄色、後髪には青・紫・水色のメッシュを入れ、眼鏡をかけた中性的な人物。男とも女ともわからない人物は、誰に言うでもなく呟く。

 

「久々に画材を仕入れに来てみれば、随分と物騒なことが起きているね」

 

 彼はそう言うと、去っていくダイヤ達の背中に目を向ける。

 

「――彼の《色》は随分と珍しいね。それにあの力、もしかしたらボクも動くべきなのかもしれないね」

 

 そう呟くと、彼は近くに停めていたバイク――白いボディとペン先を模した各部の装飾・虹色で描かれたラインとCOLORSの文字・筆で大きくCと描かれた様なシンボル・インクボトルめいた形のブースターが特徴的――にまたがると、エンジンを入れて走り出す。

 三者三様の運命――本来なら交わらないはずのそれらが、今一つに混ざり合おうとしていた。

 

 




☆キャラ紹介

 結月紫…『ボイロ探偵W』の主人公。仮面ライダーダブルの左側。
 左翔太郎ポジ。
 きりたん…『ボイロ探偵W』の主人公。仮面ライダーダブルの右側。 
 フィリップポジ。
 紲星燈…『ボイロ探偵W』のヒロイン。紲星探偵事務所所長。
 鳴海亜希子ポジ。

 赤獅子ダイヤ…『仮面ライダー獄王』の2号ライダー。戦闘狂で荒々しく、頭に血が昇りやすいタイプ
 レイ・キリエ…『仮面ライダー獄王』のヒロイン。ダイヤの恋人。ヤンデレ。

 メッシュの人物…『仮面ライダーカラーズ』の登場人物。何に変身するのかは謎だ。

『ボイロ探偵W』…仮面ライダーWの登場人物をボイスロイド、ボーカロイドなどに置き換えたパロディ物。ストーリーはオリジナル展開。
『仮面ライダーカラーズ』…オリジナルライダー物。モチーフはペン。

 ここまでお読みくださりありがとうございます。

 既にお伝えしたとおり、今作は三つの作品がコラボした作品となっております。 
 『仮面ライダー獄王』『ボイロ探偵W』『仮面ライダーカラーズ』
 この三作品のキャラクター達が一堂に会するクロスオーバーものです。公式で言うところのMOVIE大戦を意識しております。冬映画もしばらく無いみたいなので、その代わりという感じで。
 また、今回は『ボイロ探偵W』のリスペクトとして、ゆかりさん視点の一人称を導入しています。
 ☆の時はゆかりさん、★の時は三人称視点と使い分けていく所存です。読みにくかったり分かりにくかったら、ごめんなさい。

 色々長々と書いてみましたが、とりあえずこんな感じで進めていこうと思います。
 もちろん、獄王本編も連載していくつもりなので、そちらの方も読んでいただけたら幸いです。
 それでは、また。
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