仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー W×獄王×カラーズ NOVEL大戦トリニティ   作:アカミツ書庫

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 暗闇に溺れてしまったあなたの
 ただ手を取りたいと願う
 その手が決して
 届くことはないと知りながら


第三話 歪められたG/悪鬼羅刹

 水都の外れにある墓地。

 東堂健児は、そこにやって来ていた。

 その手には水の入った桶と柄杓が握られていた。

 健児はしばらく歩くと、目的の場所へと辿り着く。

 そこは虚音威風の墓であった。

 

「久しぶりだな、イフ。まさかこんな形でまた会うとは思わなかったが」

 

 墓の前に立ち、健児はそう語りかける。

 手に持った柄杓で水をすくい、墓石にかけた後に布で拭いていく。

 しばらくそれを行い、あらかた綺麗になったところで手を止めて、線香を立ててから手を合わせる。

 

「今日、お前の孫と弟子達に会ってきた。みんな良い子で、微笑ましいよ。お前が面倒を見ていただけのことはあるな」

 

 健児はそう言うと、ポケットから缶コーヒーを取り出し、墓石に向けて一度掲げてから蓋を開ける。

 そして、中のコーヒーを一気に飲み干すと、再び口を開く。

 

「俺にも弟子、というよりは後継者と言うべき者が出来た。こうして似たような形になるのは、何かの因果かな? お前に言わせれば、運命というやつなのかもしれないが」

 

 そこまで言ったところで、健児は立ち上がる。

 最後に墓石に向かって手を合わせ、笑顔を浮かべる。

 

「俺達が何度も共に戦ったように、俺達の後輩も、共に戦うことになるだろう。アイツらの道のりが少しでも輝くことを祈りたい。お前もそうであってくれ」

 

 そうして、健児は墓から去っていった。

 残された墓石で燃える線香が、穏やかな風を受けて揺らいでいた。

 

 ☆

 

 私――結月ゆかりは、妖怪・餓鬼の大群を片付けた後、依頼人の東堂早苗さんと共に、とある喫茶店に来ていた。

 彼女から色々と話を聞くために、場所を移す必要があったからだ。

 一緒に戦ったついなさんは、警察として現場検証を行うために別れた。

 運ばれてきたコーヒーを一口飲んでから、私は早苗さんに問いかける。

 

「さて、色々詳しいことをお聞かせいただきたいところですね。妖怪という怪物が何なんのか、桜井カズキは本当はどういう人物なのか、などを」

 

 向かいの席に座る早苗さんは、運ばれてきたハーブティーを無言で見つめた後、一口飲んでから話し始める。

 

「――そうね、まず妖怪とは、この世界に千年前から存在する邪悪な怪物。人の肉を食らい、人の魂を乗っ取り、人を殺す。人間を絶滅させて、自らが支配する世界を築くことが目的、そんな怪物よ」

「千年前から存在する怪物……そんなものが居たとは」

「知らなくても無理はないわ。妖怪の存在はずっと隠されてきたものだから。人間社会に余計な混乱を招かないためにね」

「なるほど、それは分かりました」

 

 私はコーヒーを再び飲むと、更に話を進める。

 

「では次です、桜井カズキについて教えてください」

「カズキは――アタシ達の仲間。仮面ライダー獄王(ゴクオー)として、妖怪と戦っている男よ。アイツはこの街に、妖怪の存在があることを知って、倒すためにやってきた。そしてそのまま行方知れずになってしまったの」

「彼が仮面ライダー……私達と同じ人間を守る戦士……」

 

 早苗さんの説明を聞いて、私は椅子にもたれかかる。

 水都以外にも仮面ライダーがいた。そのことには驚いた。そして、そんな彼と私達がこうして巡り合うことになる。そこに何か運命的な物を感じる。

 あの時、おやっさんと共にきりたんと出会った時のように――

 

「それで?」

「ん?」

「アタシは話すべきことを話したわ。次はアンタの番よ。本当にカズキを見つけられるの?」

「ああ、そうでしたね」

 

 私は姿勢を戻して、早苗さんに真っ直ぐと向き直る。

 

「カズキさんが妖怪と戦って消息を絶ったと言うのなら、彼が戦った場所を探すのが良いでしょう。おそらくは人目に付きにくく、戦闘を行えるほど広い場所でしょうか。そういう場所はこの街にはそこまで多くありません、すぐに特定して痕跡を発見できると思いますよ」

「なるほど、さすが探偵ね。情報が揃えば、すぐに推理をしてくれる」

「まあこれが私の仕事ですからね。それに、この街は私の庭です。この街で私が見つけられない人や物はありませんよ」

 

 褒められたことに気をよくして、私は帽子に手を当ててキメ顔をしてみる。この絵面、完璧に決まってますね。

 その直後、ポケットに入れている携帯電話が鳴り響く。私はその音に驚いて、体勢を崩した。

 

「わっと、なんですか?」

「あっ、アタシの方も」

 

 私が携帯を取り出すと、早苗さんもスマホを取り出していた。どうやら二人同時に電話がかかってきたらしい。

 早苗さんがスマホを起動するのに合わせて、私も携帯電話ーースタッグフォンの受信ボタンを押す。

 

「もしもし?」

『おう、ゆかりか。今大丈夫か? 大丈夫だな」

「リリィ? どうかしました?」

 

 電話の相手は、リリィ金堂(こんどう)

 私と同じ紲星探偵事務所の探偵だ。まあそれまでに色々ありはしたが、今回は割愛する。

 電話口のリリィは、いつものように豪快で自信に満ち溢れた口調で、用件を伝えてくる。

 

『なに、あかりから新しい依頼を受けたと聞いてな。オレの方でも調べてたんだ。そしたらその桜井カズキとかいう男が最後に向かったかもしれない場所を見つけてな。それで連絡したんだ』

「本当ですか!? よく見つけましたね」

『ハッ、元《エル・ドラーゴ》のボスを舐めるなということだ。メールで場所を送るから、すぐに来いよ。桜井カズキの仲間とかいう女もこっちにはいるからな』

「えっ? あっ、ちょっと!?」

 

 最後の言葉に聞き返そうとしたところで、電話を切られてしまう。

 その直後に、リリィのアドレスからメールが届いた。開いてみると、添付ファイルに地図が載っていた。そこに示されているのは、町はずれの廃工場だった。

 私が地図を確認していると、早苗さんの方も通話を終えて、スマホをしまう。

 

「アタシの方も仲間から連絡があったわ。カズキがいるかもしれない場所を見つけたって。アンタの仲間も一緒にいるらしいわ」

「そちらもですか? なら向かう場所は同じみたいですね。行きましょう!」

 

 私達はすぐに立ち上がり、喫茶店を飛び出して、教えられた場所へと向かうのだった。

 

 ★

 

 ゆかり達が連絡を受ける少し前。

 水都の外れにある廃工場。そこにやってくる三人の人物がいた。

 金髪のロングヘアーをたなびかせ、露出の多い服を纏って自らのスタイルを誇示するかのように立つ女性――リリィ金堂。

 彼女は目の前にある廃工場を眺めて、口を開く。

 

「ここか、例の桜井カズキとかいう男が最後に目撃された場所は」

「はい、その通りです」

 

 リリィの呟きに答えるのは、彼女の背後に控えている男性だった。

 ダークブルーのスーツに金色のネクタイ、青いサングラスをかけた男――西友蒼司(にしともそうじ)。彼は主人に仕える執事のような態度で、リリィに説明する。

 

「我々の情報網によれば、桜井カズキはここに訪れたのを最後に、どこでも目撃されていません。リリィ様」

「西友、あんたこんなところでまで、そんな仰々しくしなくて良いでしょ」

 

 そう呆れた声を出すのは、西友の隣に立っていた三人目の人物。

 深紅のロングヘアーに般若の面をかけて、ラフなシャツとズボンを履いた女性――呪怨(じゅおん)キク。

 やれやれと首を振るキクに対して、西友は鋭い視線を向ける。

 

「黙れ、キク。いつどんなところでもリリィ様への敬意を忘れることなどあり得ない。貴様とは違うのだ」

「はあ〜? 時と場合を考えられないのが頭おかしいって言ってんですよ。大体、あんただってリリィさんのこと裏切ったじゃないですか、それが敬意なんですかぁ?」

「貴様がそれを言うか! リリィ様を手にかけようとした貴様にだけは言われたくない!」

「忠誠心が行き過ぎて裏切っちゃうような人よりはマシですよ! なんならそこら辺の人にどっちがヤバいか聞いてみますか!?」

「落ち着け、二人とも」

 

 言い争いがヒートアップしていく二人を、リリィがなだめる。その視線は別の方向に向けられていた。

 その視線の先には、茶髪のセミロングでスーツを纏った女性が立っていた。

 女性はリリィ達のことを見ると、驚いた表情を浮かべる。

 

「あなたは、マフィア《エル・ドラード》のリリィ金堂!? なんでこんなところに……」

「ほう、よく知ってるな。お前の方こそ何者だ? わざわざこんなところに来るのは、物好きだな」

 

 リリィは笑顔を浮かべてそう答える。その背後では西友とキクが、警戒心をあらわにする。

 その光景に、女性は慌てて両手を振る。

 

「ちょ、ちょっと待って! 私は別に怪しい人間じゃない! あなた達を知ってたのは、記者の仕事柄知ってただけ! ここに来たのは仲間を探しに来ただけなの!」

 

 その言葉に、リリィは片眉を上げる。

 

「仲間? もしかしてそれは、桜井カズキという名前か?」

「えっ、なんでカズキ君のことを……」

「やはりか。安心しろ、今のオレ達は探偵だ。依頼を受けてその桜井カズキを探しにここに来たんだ。そうだろお前達?」

 

 リリィが背後に振り向くと、西友達も頷く。

 それを見て、女性は少し警戒を残しながら、さらに問いかける。

 

「……信用していいの?」

「信用してもらうしかないな。紲星探偵事務所にやって来た、東堂健児と東堂早苗からの依頼だ。オレ達は今、その事務所で探偵をやっている。なんなら確認してもらっても良いぞ」

「……分かった」

 

 そう言うと、女性は持っていたカバンからスマホを取り出して、どこかに電話をかける。

 それを見て、リリィもスマホを取り出した。

 

「おう、ゆかりか。今大丈夫か? 大丈夫だな」

 

 そうしてリリィがゆかりへの電話を終えると、女性の方も電話を切った。そして深く息を吐くと、リリィ達へと向き直る。

 

「今早苗ちゃんに確認したよ。どうやらあなた達が言ったことは本当みたいだね。なら一緒に、カズキ君を探して欲しい」

「ああ、構わないさ。だがその前にお前の名前を聞かせてもらわないとな」

 

 リリィがそう言うと、女性は微笑を浮かべて答える。

 

「私は、南文香(あやか)。しがない新聞記者だよ」

 

 そう言って女性――南文香は、リリィ達と合流したのだった。

 

 ★

 

 しばらく経って、ゆかりと早苗がバイクに乗って廃工場へと到着した。

 二人がバイクから降りると、入り口前に立っていたリリィ達が合流した。

 

「遅かったな、ゆかり。その女が依頼人か?」

「ええ、そうですよリリィ。こちらが東堂早苗さんです。そちらの方は?」

「南文香。その早苗って女と、桜井カズキの仲間だそうだ」

 

 二人がそう言うと、早苗と文香も言葉を交わした。

 

「文香、アンタも探偵と合流してたのね」

「たまたまここでね。でもまさか、水都一のマフィアが探偵をやってるとは思わなかったよ」

「らしいわね。まあでも、今はどんな奴の手も借りたいところだから、構わないわ」

 

 早苗がそう言うと、リリィが豪快に笑い出す。

 

「ハハハ! 中々言うじゃないか! それに美しい風貌もしてる。なんなら二人ともオレと一緒に来ないか? オレは美しい奴が好きなんだ」

「お断り。アタシにはもう決めた人がいるの」

「私も良いかなぁ。元マフィアはちょっと」

「そうかい、残念だ」

 

 苦笑を浮かべたリリィは、首をすくめる。

 そんな彼女らのやり取りを見て、ゆかりは一つ咳払いをする。

 

「皆さん、ここに桜井カズキさんがいるかもしれません。これから中に入って調べます。慎重にお願いしますよ」

 

 ゆかりがそう言うと、全員が真剣な表情になる。

 ゆかりは納得したように頷くと、入り口に目を向ける。

 

「よし、では行きましょう」

 

 ゆかりが先頭に立って、廃工場の中に入る。その後に早苗達が続いていく。

 廃工場の中は、特に何もなく大きな空間が広がっていた。

 

「本当にここにいるんでしょうか?」

「さあな、とにかく探してみるしかないだろう」

「そうですね、何か痕跡でもあれば――」

 

 ゆかりとリリィがそう話していると、工場の奥から誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。

 その音は何もない工場の中でよく響き、こちらに近付いてくるのがすぐに分かる。

 やがて、足音が止まる。それと同時に暗闇の中から出てくる人影が見えた。

 

「あれはーー」

「……カズキ?」

 

 ゆかりと早苗はその人物を知っていた。知らないはずがなかった。

 工場の奥から出てきたのは、黒髪の青年――桜井カズキだったからだ。

 

「あれが桜井カズキか? なんだか様子がおかしいみたいだが」

「ええ、写真とは随分と雰囲気が違います」

 

 リリィが疑問を口にすると、ゆかりもそれに同意する。

 目の前にいるカズキは、どこか虚ろな目をしていて、こちらを見ているのかどうかも分からない。写真で見た快活な印象とはかけ離れていた。

 ゆかりは後ろにいる早苗へと視線を向けるが、早苗もその様子に動揺していた。

 

「どうしたのよ、カズキ。なんだかいつもと違うわよ? なんとか言いなさいよ」

 

 不安を押し殺したような声音でそう問いかける。

 だが、カズキは早苗の疑問に答えることはなく。懐から何かを取り出した。

 それは、赤と黒で彩られた機械ーーゴクオードライバー。

 カズキはゴクオードライバーを腰に当てると、自動でベルトが巻かれて装着される。

 

「っ! 何を――」

 

 驚くゆかり達を無視して、カズキは手を動かす。

 ドライバー上部右側のボタンを押すと、側面から扇のようにマガジンが現れる。

 さらにカズキは、銀色の弾丸ーーアヤカシバレットを取り出す。それには赤黒い鬼の絵が描かれていた。

 

《アッキラセツ!》

 

 アヤカシバレットのボタンを押すと、電子音声が鳴り響く。

 カズキはその弾丸を、マガジンに備えられたスロットに装填する。そしてマガジンを閉じると、今度はドライバー上部中央のボタンを押す。

 すると、ドライバーから漆黒のスパークが光り、カズキの全身を包み込む。それはやがて、カズキの左手へと収束していく。

 カズキは左手を銃の形にすると、自らのこめかみに当てる。

 そしてあの言葉を静かに呟く。

 

「――変身」

 

 その言葉と同時に、自らの頭を撃ち抜く。

 左手から解き放たれたエネルギーは、カズキの全身を包み込んでその姿を変えていく。

 その姿は獄王と同じ、だが全く異なる色合いをしていた。

 銀色のアンダースーツの上に、次々と漆黒のアーマーが装着されていく。全てが黒く染まり禍々しさを感じさせる。

 やがて変身が完了すると、複眼が黄色く染まる。そして電子音声が鳴り響く。

 

《シッコク・アンコク・ドウコク!》

《ゴクオー・アッキラセツ!》

 

 禍々しいエネルギーを吐き出して変身したのは、仮面ライダー獄王・悪鬼羅刹バレット。

 本来持つ輝きを一切感じさせない漆黒の姿。

 その有り様に、早苗と文香は非常に強く動揺した。

 

「黒い……獄王……!?」

「なに、あれ……あんなの見たこともない……!」

 

 驚愕の声をあげる二人。その二人を見て、ゆかりとリリィも一層気を引き締める。

 

「どうやらあまり良い状況ではなさそうですね。行けますか、リリィ」

「ハッ、愚問だな。いつでも行けるさ」

 

 ゆかりとリリィがそう話し合っていると、カズキ――獄王がゆっくりと動きだす。

 左腰のホルスターに装着された刀――ヘルソードを右手で引き抜く。ゆったりとした動作でそれを行い、無造作に構える。その動きも、普段の獄王とはかけ離れたものであった。

 次の瞬間、獄王は地面を蹴り、ゆかり達の元へと走り出す。

 

「ーーっ!?」

 

 ゆかりとリリィはすぐに左右に分かれて、その場から飛び退く。

 一瞬で距離を詰めてきた獄王は、ヘルソードを全力で叩きつける。

 先程までゆかり達が立っていた場所が、粉々に砕け散り周囲に破片を撒き散らす。

 ゆかりとリリィは地面を転がると、すぐに上体を起こして懐からアイテムを取り出した。

 

「きりたん!」

 

《サイクロン!》

《ジョーカー!》

 

「『変身!』」

 

《サイクロンジョーカー!》

 

 ゆかりはダブルドライバーを取り付けて、ダブルに変身。

 リリィもまた、青いダブルドライバー――ダブルドライバーNEOを取り出して、更に二本のガイアメモリを起動する。

 

「全く、いきなり切り掛かるとは失礼な奴だ!」

 

《ゴールド!》

《パイレーツ!》

 

「変身!」

 

《ゴールデンパイレーツ!》

 

 リリィはメモリをドライバーに装填すると、両腕を胸の前で交差させるポーズを取ってからドライバーを展開する。

 リリィの全身に装甲が展開される。それはダブルによく似ているが、色が違う。複眼は青で全身の色は眩い黄金に染まっている。

 更にその上に紅いコートとキャプテンハットを模した装甲が装備されると、変身が完了する。

 

「仮面ライダーエルドラゴ。ただいまここに見参だ!」

 

 水都の三人目の仮面ライダー、仮面ライダーエルドラゴ。

 悪魔の名を冠するそのライダーは、専用武器であるパイレーツカリバーを手に持つと、獄王へと向かって走り出す。

 ダブルとエルドラゴ、二人のライダーに挟まれる獄王。

 

「とにかく、まずは彼を止めますよ。どう見ても正気ではなさそうなので!」

『まさかこんなことになるとは。仮面ライダー同士で戦いたくはありませんが、仕方ありませんね』

「とりあえず動けなくなるまでぶちのめせば良いだけだな!」

 

 まずはダブルが回し蹴りを放つ。それを獄王は後ろに飛び退いて避ける。

 その動きに合わせてエルドラゴがパイレーツカリバーで切り掛かる。獄王もまた、それをヘルソードで受け止めて鍔迫り合いになる。

 

「こんな形になるとは予想外だったが、面白い! 噂に名高い獄王の力、見せてもらおうか!」

「……」

 

 ハイテンションで叫ぶエルドラゴに対して、獄王は無言を貫く。

 獄王は剣を勢いよく弾き飛ばすと、ガラ空きになった胴体に蹴りを叩き込む。

 エルドラゴは防御することもできず、大きく吹き飛ばされた。

 

「ぐおっ!? くっ、やるな!」

 

 なんとか倒れることは避けたエルドラゴは、腹を押さえてそう叫ぶ。

 獄王はこれにも答えることはなく、ヘルソードを向けて迫ろうとする。

 だが、その直前に獄王の身体に光弾が命中する。

 獄王は足を止めて、光弾が飛んできた方向に視線を向ける。

 

《ルナトリガー!》

 

 そこには右半身を黄色、左半身を青のルナトリガーに姿を変えたダブルがいた。ダブルは右手に握った銃――トリガーマグナムを構えて、獄王に向けている。

 

「ハアッ!」

 

 ダブルが引き金を引くと、銃口から黄色の光弾が一発放たれる。それはすぐに複数に分裂して、獄王に迫る。

 対する獄王は、右腰のホルスターに収まった大型拳銃――ヘルガンを抜き、片手で構える。そして光弾に向かって引き金を引く。

 ヘルガンから放たれた弾丸と、トリガーマグナムから放たれた光弾。それらは空中で正面からぶつかり合い、相殺される。

 

「なっ……!? このっ……!」

 

 その光景に驚くも、ダブルは更に光弾を放つ。

 だがそれらも、獄王の撃つ弾丸に次々と相殺されていく。

 

「ルナトリガーの誘導弾をこうも簡単に……自信を無くしそうですよ」

『これは想定外ですね。マズイかもしれません』

 

 思わずそんな弱音を吐くダブル。

 そんな彼女らの戦いを見て、早苗と文香も不安を吐露する。

 

「なんだか……いつものカズキ君と全然違う……あんな無言で人間味を感じさせない人じゃなかったよね?」

「ええ……アイツは戦いの中じゃ凄く感情的だったわ。まるでカズキじゃないみたい……」

 

 カズキをよく知る二人が感じる不安。

 そんなことを知ってか知らずか、獄王はただ無言で剣を振るう。

 

《ルナメタル!》

《ゴールデンサンダー!》

 

 ルナメタルに変身したダブルと、ゴールデンサンダーに変身したエルドラゴが、それぞれの得物で殴りかかる。

 それはまとめて、獄王の持つヘルソードに受け止められる。

 

「全く、こちらは一応二人がかりなんですけどね! ここまで容易く受けられますか!」

「コイツは人間技って感じじゃないな、何かカラクリがあるんだろう!」

「……」

 

 ゆかりとリリィの言葉にも反応することはなく、獄王は左手をドライバーに伸ばす。

 上部中央のボタンを二回押すと、電子音声と共に獄王の全身にエネルギーが溢れ出す。

 

《ファイナルバレット!》

《獄王悪鬼羅刹破壊脚!》

 

「あれはまさか……! 二人とも逃げて!」

 

 思わず早苗が叫ぶ、だがその直後に獄王が動き出す。

 剣を振り払い、二人の体勢を崩す。それと同時に獄王の右足に漆黒のエネルギーが収束する。

 獄王はその場で回し蹴りを放つ。それはダブルとエルドラゴに命中し、二人を大きく吹き飛ばした。

 

「『うわぁ!?』」

「ぐうっ!?」

 

 必殺技の直撃を受けて、二人のライダーは地面を転がる。変身解除までには至らないが、それでも大きなダメージを受けてしまった。

 立ち上がれない二人に向かって、獄王がゆっくりと迫る。振り上げたヘルソードを二人めがけて振り下ろそうとする。

 だがその時、二人の前に早苗が走り出てくる。

 

「やめなさい、カズキ! アンタはこんなことしないはずでしょ! 一体どうしたって言うのよ!?」

 

 必死の形相で早苗は叫ぶ。

 しかし、獄王は動きを止めることなく、剣を振り下ろそうとする。

 

「ッ!!」

 

 瞬間、獄王の左手が剣を握る右腕を掴む。そのまま動きを抑えようとするが、右腕もまた剣を振り下ろすために力を込める。

 それはまるで、二つの意思がせめぎ合っているようだった。

 

「カズキ……?」

「ッ!!」

 

 心配そうな表情を浮かべて、早苗が声をかける。

 獄王はそれに答えることもせず、ひたすらもがく。

 やがて、獄王は両腕を大きく広げて、立ったままうなだれる。

 顔を上げると、先程までの殺意がこもった視線を早苗に向ける。

 

《ファイナルバレット!》

《獄王悪鬼羅刹滅却斬!》

 

 更にドライバーから取り出したアヤカシバレットを、ヘルソードの柄に装填、禍々しい漆黒のエネルギーが刀に宿ると、それを振り上げて早苗を切り裂こうとする。

 

「させるかぁ!!」

 

《ヒートメタル!》

 

 獄王が刀を振り下ろした瞬間、早苗の後ろからダブルが飛び出してくる。

 早苗をかばったダブルの左肩から胴に至るまでが、鋭い刃で切り裂かれる。

 激しい火花が散り、右手に握ったメタルシャフトも地面に落としてしまう。

 

「ゆかり……!」

「ガハッ……!! ううっ……!」

『ゆかりさん、しっかりしてください!』

 

 その場に片膝をつくダブル、肉体を担当するゆかりにも大ダメージが入り、早苗ときりたんが心配の声をあげる。

 だが、ダブルは左手で獄王の右腕を掴んでいた。更に右手も、ドライバーからメタルメモリを取り出し、メタルシャフトのスロットに装填する。

 

《メタル! マキシマムドライブ!》

 

「相棒……予定通り、少し無茶しますよ!」

『ああもう、分かりましたよ!』

 

 傷ついた身体を無理矢理動かして、メタルシャフトを獄王の脇腹にぶつける。その瞬間、シャフトの先端に赤い炎が灯る。

 

「『メタルブランディング!!』」

 

 その掛け声と共に、メタルシャフトを振り抜く。

 当然、直撃した獄王は大きく吹き飛ばされた。立ったまま後方に飛ばされるが、なんとか着地して刀を構える。

 対するダブルはここで限界が来たのか、変身が強制解除される。生身のゆかりの左肩から血が滲み出す。

 

「くうっ……! 流石にキツかったですね……」

「ゆかり! アンタなんでこんな……」

「依頼人を守る、それが私の、いや私達の流儀ですからね……」

 

 片膝をつくゆかりは、そう言って笑って見せる。脂汗が滲み出ながらも、依頼人を不安にさせたくないと思っている。

 早苗はその姿に言葉を失った。

 その背後では、エルドラゴもなんとか立ち上がった。

 

「すまん、ゆかり。オレも動けていれば……」

「大丈夫ですよリリィ。それよりも彼を早く――」

 

 ゆかりがそう言おうとした時、甲高い拍手の音が聞こえてくる。それはまさに場違いな陽気さを感じさせ、この場にいる者達の不快感を煽るようであった。

 

「いやいや、流石は仮面ライダー。自らの身体を犠牲にすることになんのためらいも無い。全くくだらん英雄意識なことだ」

 

 人を見下したような、馬鹿にしたような、そのような声音で語りかけてくる人物が現れる。

 それは線の細い、どこか病弱そうな雰囲気を持った男性であった。しかし、その目には隠しきれない野心と悪意が感じられる。

 ゆかりとリリィは、その男性に見覚えがあった。否、忘れられるわけがなかった。

 

「お前は……!」

「東北……外道(そとみち)……!?」

 

 水都を守る仮面ライダーにとって、因縁の巨悪。

 東北外道がその場に現れたのだ。




☆簡単なキャラ紹介

・リリィ金堂…『ボイロ探偵W』の3号ライダー。
 派手好き、傲岸不遜、ナルシスト。
 元ネタは、VOCALOIDのlily

・呪怨キク…『ボイロ探偵W』の登場人物。
 リリィの部下で、主に生活面で活躍している。
 元ネタは、呪音キク(初音ミクの亜種)

・西友蒼司…『ボイロ探偵W』の登場人物。
 リリィに心酔しており、彼女のためなら殺人や裏切りも辞さない。

・南文香…『仮面ライダー獄王』の登場人物。
 新聞記者であり、その情報収集能力を活かして、様々な情報をカズキ達に提供している。みんなを見守るお姉さん。

・桜井カズキ…『仮面ライダー獄王』の主人公。
 今回はなぜか黒い獄王に変身し、ゆかり達に襲いかかったが……?

・東北外道…『ボイロ探偵W』のラスボス。
 かつてダブル達に倒され、この世から消滅したと思われたが……?

 どうも、アーニャです。
 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
 NOVEL大戦トリニティ、三話目となりました。

 今回で登場人物は大体出揃いました。
 ボイロ探偵がメインということもあり、ゆかりさん達の活躍が多いですが、もちろん他のキャラクターも活躍する予定です。
 特にうちの子と言える桜井カズキが、なにやらとんでもないことになっております。一体何があったのか、それは次回で判明することでしょう。

 それでは今回はこの辺で。
 次回もお楽しみに。
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