仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー W×獄王×カラーズ NOVEL大戦トリニティ   作:アカミツ書庫

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 怨み深淵虎視眈々
 故に我が身は魑魅魍魎
 いずれ来たるその時まで
 我が身は果てることなし


第四話 歪められたG/蘇る亡霊

 水都の外れにある廃工場。

 今ここには、三人の仮面ライダーとその仲間達が揃っていた。

 仮面ライダーダブルとエルドラゴ、そして漆黒の姿となった獄王。

 更にそこに、もう一人の乱入者が現れる。

 その姿を見て、結月紫は驚愕の声をあげる。

 

「東北外道(そとみち)……何故あなたがここに!?」

 

 肩から血を流しながら、ゆかりはそう問いかける。

 対する東北外道は、他者を見下しきった笑みを浮かべて、口を開いた。

 

「久し振りだな、結月紫。それにリリィ金堂。お前達に敗北してからというもの、こうして再び相まみえることを待ちかねていたぞ」

 

 外道は笑みを浮かべたまま、ゆかり達を見据えてそう語る。この状況を心底待ち望んで、ようやく叶ったことに喜びを感じているようだ。

 そんな男を見て、ゆかり達の後方に立つ東堂早苗が口を開く。

 

「ねえ、アイツは何者なの?」

「アイツは、東北外道。かつてこの街に存在した組織《ミュージアム》の首領。この街にガイアメモリをばら撒き、自らの野望を果たそうとした男だ」

「じゃあ、悪人ってことね」

 

 エルドラゴの返答に、早苗も納得して頷く。

 すると、外道が不愉快そうに眉を寄せた。

 

「ふん、《ミュージアム》のスポンサーだった女が偉そうに。お前がそこに立つ資格があると、本気で思っているのか?」

「ああ、オレはこの街を愛している。街を守るために、戦うのは当然だろう。それに、お前のことをぶん殴るのは気分が良かったからな」

 

 リリィがそう言うと、外道は更に不愉快そうな表情になる。

 その後ゆかりは傷の痛みに呻きながら、口を開く。

 

「何故、あなたが生きているんですか……あなたは確かに、あの時消滅したはずですよ」

 

 その問いに、外道は邪悪な笑みを浮かべてから答えた。

 

「確かに、俺はかつてお前達に敗れた。至子の身体から追い出され、惨めな霊魂となり消滅するはずだった」

 

 外道はその場から左右に歩き回りながら、語り出す。それはまるで、ゆかり達を見下して余裕を見せているようで、彼女達に不快感を与えていた。

 

「だが、消滅寸前の俺の元に、ある男が現れてな。俺達はすぐに友達になり、新たな力を与えてくれた。そのおかげで俺はこうして蘇ったわけだ」

「ある男、それは一体……?」

「そこの女達ならよく知っているだろう。妖怪・酒呑童子さ」

 

 その名前を聞いた瞬間、早苗が息を飲んだ。隣に立つ文香(あやか)も同様であった。

 

「酒呑童子……!? なんで奴がアンタのことを助けたの!?」

「言っただろう、俺達は友達だ。友達同士は助け合うものだろう?」

 

 嘲笑するように外道はそう言った。その言葉は、とても本心で言っているようには見えなかった。

 

「酒呑童子とは、何者ですか?」

「妖怪達をまとめる上級妖怪よ。アタシ達にとっては因縁の深い相手なの」

 

 ゆかりと早苗がそう話すと、外道は続きを話し始めた。

 

「彼から与えられた力、すなわち妖怪の力だ。おかげで俺は蘇り、肉体も取り戻した。生前も、至子の中に居た時にも、これほど生の実感を得られたことはない。全身に生命の力が溢れるのを感じるのだ、素晴らしいものだよ、妖怪という奴は!」

 

 両手を広げて、高々と叫ぶ外道。人ならざるものへと成り果てたことを誇る男の姿は、ゆかり達に嫌悪感を与えた。

 ゆかりは不快なものを感じながらも、話を続ける。

 

「それであなたは、何故ここに現れたんですか。そこにいる桜井カズキさんをおかしくしたのも、あなたなんですか?」

 

 その問いかけに、外道は再びニヤリと笑う。

 

「ああ、その通りだ。この男、桜井カズキは俺の操り人形だ。お前達を殺すために差し向けたのだ」

「操り人形ですって……!? カズキに何をしたの!!」

 

 早苗が悲痛な叫びをあげる。

 その様を見て、外道は心底愉快そうにしてみせる。

 

「こいつの心は闇に染められている。本来の人格を封じ込めて、俺の命令に従う都合の良い人格を植え付けた。おかげで実に都合の良い奴隷が出来上がったよ」

「アンタ……!」

 

 外道の言葉に、早苗は怒りを露わにする。

 そんな彼女を制して、ゆかりが口を開く。

 

「何故彼を巻き込むんですか。あなたが恨んでいるのは私達のはずでしょう」

「そんなのは決まっているだろう? 同じ仮面ライダー同士で殺し合わせる方が、よりお前達に屈辱を与えられる。俺がお前達に受けた屈辱を晴らすには、これくらいはやらないとな?」

 

 そう言って、外道は獄王に合図を出す。

 獄王はヘルソードを握り、ゆかり達に向かって歩き出す。

 それを見たエルドラゴが、ゆかり達を庇うように立ちはだかる。

 一色即発という空気の中、静寂を破ったのは彼方からの電子音声だった。

 

《ファイナルバレット!》

《クルセイド・ウリエル・フィニッシュ!》

 

 その音声と共に飛び込んできたのは、茶色のコートを羽織り、背中から同じ色の翼を生やした人物だった。

 高密度のエネルギーを纏ったその人物は、飛び蹴りの態勢で獄王に向かい、その胸部を蹴り抜いた。

 そんな攻撃を受ければ、当然獄王は大きく吹き飛ばされる。地面を激しく転がると、変身を解除される。

 蹴りを放った人物は片膝をつきながら、地面に着地する。その姿にゆかりは見覚えがあった。

 

「あ、あなたは……!」

「よう、また会ったな、お嬢さん」

 

 それは今日ダブルに襲いかかった男――仮面ライダークルセイドだった。

 クルセイドは、ゆかりの方に振り向くとその後ろに立つ早苗達の方にも視線を向けた。

 

「よう、早苗ちゃん、文香ちゃん。君達も来てたのか」

「アンタも来るとはね。でもちょうど良いわ、カズキがあの男に操られてる。アンタならなんとかできる?」

「まあ、そのつもりで来てるよ」

 

 クルセイドは軽く笑いながらそう言うと、カズキと外道の方へと振り返る。

 

「ったくよ。彼女をほったらかしてそんないけ好かない野郎の言いなりとはな。テメェはそんな奴じゃなかったろ、カズキ!」

 

 クルセイドはそう言うと、右腕に装備された銀色のリングを掲げる。

 すると、そこから身の丈程のトマホークが出現、クルセイドの右腕の収まる。その切っ先を外道へと向けて、クルセイドは言う。

 

「とりあえず、テメェをぶっ殺せば、カズキは元に戻るってことで良いのか?」

「倒す? この俺を? 舐めた口を叩くじゃないか。仮面ライダークルセイド。それが実現できるかどうか、試してみるか?」

 

 外道はそう言うと、懐から黒い弾丸を取り出す。

 それは数多くの妖怪達が描かれたアヤカシバレット。外道はそれを起動し、自らの首に突き刺した。

 

《チリヅカカイオウ!》

 

 すると、外道の全身を赤黒いエネルギーが包み込む。やがて、その大きさがどんどん膨れ上がっていく。

 まるで肉塊が増殖するように、身体が膨れ上がっていく。その大きさは三メートルに届くかというところだろう。

 やがて、エネルギーが霧散するとその姿があらわになる。

 それは複数の妖怪がつぎはぎにされたような姿だった。

 妖怪の胴体、腕、脚、頭部、それらが無理矢理結びつけられたかのようにまとわりつき、肉体の形を成している。

 全体の頭部にあたる部分には、三本角の鬼のような形相が現れ、さらにその額には巨大な鏡のようなものが現れる。

 変身を完了した外道は、その巨大な口を開いた。

 

「これが、俺の新たな力、妖怪ーー塵塚怪王(ちりづかかいおう)の姿だ!!」

 

 そう叫ぶと、雄叫びをあげる外道ーー塵塚怪王。

 その叫びは、強烈な衝撃波となってクルセイド達に襲いかかる。

 

「ウオオオオオオッ!!」

 

 更に、塵塚怪王は全身の妖怪の部位を光らせると、そこから無数のビームが放たれる。そのビームはクルセイド達をめがけて向かっていく。

 

「おっと!」

 

 クルセイドは背中から翼を出現させると、すぐに飛び上がってビームを避け始める。

 ビームはクルセイドを追尾していくが、素早い動きに追いつけず、全て避けられていく。

 無数のビームの合間をかいくぐり、クルセイドはトマホークを構えて塵塚怪王に接近する。

 

「オラァ!」

 

 気合いの叫びと共に、トマホークが力いっぱい振り抜かれる。狙いは塵塚怪王の首である。

 しかし、その攻撃は首に通ることなく弾かれる。非常に頑強で刃を通さないようだ。

 

「何ッ!?」

「その程度か? なら今度はこちらから行くぞ!」

 

 驚くクルセイドを尻目に、ニヤリと笑う塵塚怪王。

 

 次の瞬間、全身が赤黒いオーラに覆われると、より多くのビームが放たれ、クルセイドを吹き飛ばした。

 

「ぐおっ!? ちくしょうが!」

 

 地面に落ちたクルセイドは、すぐさま立ち上がって塵塚怪王を睨む。

 そしてすぐに背後に振り返り、ゆかり達の様子を見た。

 他の面子はともかく、肩から血を流しているゆかりは、放置していると危険だろう。このまま戦闘を続けていれば、直接的に巻き込まれる可能性も高くなる。これ以上は危険だ。

 そう考えたクルセイドは、一つ舌打ちをしてから叫ぶ。

 

「仕方ねえ、これ以上は無理か。出番だ、白いの!」

 

 クルセイドがそう叫ぶと、廃工場の天井に穴が空き、一つの人影が落ちてくる。 

 それは純白のアンダースーツの上に、同じ色の装甲を纏っている。また、その上から虹色のラインが引かれ、一際目立っている。

 頭部は絵の具筆の筆先を模した形をしており、複眼も虹色の輝いている。

 突然現れた純白の戦士に、ゆかり達と塵塚怪王は驚く。唯一、クルセイドだけが仮面の下で笑みを浮かべていた。

 純白の戦士は、腰のホルスターからペンキブラシによく似た形の剣を取り出す。その剣を縦に構えて右手を添える。

 

「ハアッ!」

 

 純白の戦士が叫ぶと、剣の刀身が強烈な光を放つ。それはその場に居る全ての存在の視界を奪う。 

 塵塚怪王とカズキも、思わず目を閉じ光を見ないようにしてしまう。

 塵塚怪王が目を開けると、そこには誰も居なかった。

 

「フン、逃げられたか。だが、奴らは必ず戻って来る。お仲間を見捨てることはできないだろうからな」

 

 そう呟くと、塵塚怪王は身体からアヤカシバレットを取り出す。すると、東北外道の姿に戻る。

 そして外道はその場から歩き去っていった。

 カズキはしばらくの間、ゆかり達が居た場所を見つめていたが、やがて踵を返して外道の後に着いていった。

 

 ★

 

 強烈な光に包まれたと思った直後、ゆかり達は紲星探偵事務所の前に居た。

 そのすぐ側では、クルセイドと純白の戦士が、大きく息を吐いていた。

 彼らの背中を見て、ゆかりは問いかける。

 

「あなた達は、何者ですか?」

「ああ、そういや自己紹介がまだだったな」

 

 クルセイドはそう言うと、SMG(サブマシンガン)から銀色のアヤカシバレットを取り出す。純白の戦士の方も、腰に装着したベルトから一本のペンのような物を取り出した。

 すると、二人の身体からスーツが消滅し、人間の姿になる。

 一人は明るい茶髪に赤いバンダナを巻き、赤いジャケットを羽織った背の高い男。

 もう一人は髪に七色のメッシュを一本ずつ入れて、眼鏡をかけた中性的な人物。

 変身が解けると、茶髪の男が口を開いた。

 

「オレは赤獅子(あかじし)ダイヤ。《教会》所属の仮面ライダー、仮面ライダークルセイドだ。でこっちが――」

「ボクは染谷色希(そめたにしき)。仮面ライダーカラーズ。君達と志を同じくする者だよ」

 

 そう名乗った二人に、ゆかりは内心驚きを隠せなかった。

 その後、すぐに探偵事務所の中に入る一同。そこにはきりたんと紲星あかりとミリアル・ボルコフ、如月追儺と、もう一人の人物が待っていた。

 紫色の髪をツインテールにまとめ、眼鏡をかけたスタイルの良い女性だ。女性はダイヤの姿を見ると、すぐに駆け寄ってきた。

 

「おかえりなさい、ダイヤさん、やっぱりここに来たんですね」

「ああ、そこの探偵さん達と合流できたからな。お前の読み通りだったよ、レイ」

 

 ダイヤはそう言って、女性――レイ・キリエに笑みを返す。

 その横で、リリィに肩を借りたゆかりがソファに座り、きりたんとあかりの介抱を受けていた。

 

「ゆかりさん、大丈夫ですか!?」

「大げさですね、きりたん。この程度なんともありませんよ……」

 

 心配するきりたんを安心させるように強がるゆかり。それを見かねて、ダイヤがSMGとアヤカシバレットを取り出した。

 

「待ってろ、今治してやる」

 

 ダイヤはそう言うと、不死鳥の絵が描かれたアヤカシバレットをSMGに装填、銃口をゆかりに向けて引き金を引いた。

 

《モンスバレット!》

《フェニックス・リザレクション!》

 

 銃口から放たれた緑色の光が、ゆかりの全身を包み込む。すると、肩口の傷がみるみるうちに塞がり、血が完全に止まった。

 

「これは――」

「治癒能力だ。とはいえ傷くらいしか治せないけどな。痛みはしばらく残るからじっとしときな」

「ええ、ありがとうございます」

 

 先程よりはマシになった痛みに眉を寄せながら、ゆかりは礼を言う。

 それを受けたダイヤは、周りに居る者達に視線を巡らせる。

 

「さて、色々聞かせてもらおうか。オレ達のダチに何があって、あんなことになってるのかを」

 

 そうして、ゆかり達はこれまでに何が起こったのかを説明した。

 全て聞き終わると、ダイヤは渋い表情を浮かべていた。

 

「なるほど、つまりはゆかりちゃん達が倒した野郎が、酒呑童子のせいで蘇った挙句、カズキを洗脳しやがったと。全く、胸糞悪い話だぜ」

 

 ソファに座り込みながら、ダイヤはそう言った。

 その隣に、レイも座りながら口を開く。

 

「そうですね、まさに過去からの亡霊というわけですか。早苗さんは大丈夫ですか?」

 

 レイの言葉を受けると、早苗は壁に背を預けながら答える。

 

「正直、ショックは受けてるし、色々と不安な気持ちはあるわ。でも、カズキがあんな目に遭ってるなら、アタシはなんとしても助けたい。その気持ちの方が強いの。今落ち込んでたりしてる場合じゃない」

 

 あくまでも気丈に振る舞う早苗。その様子を見て、皆がホッとしたように笑みを浮かべる。

 

「よし、ならまずはカズキを元に戻す方法を探すところからだな」

「それについてはボクから話すよ」

 

 ダイヤの言葉に答える形で、色希が口を開く。

 色希は一つ咳払いすると、説明を始める。

 

「彼が操られている原因、それはリライントペンと呼ばれる物が関わっていると思う。彼の身体からは、そのリライントペンの気配が感じられたよ」

「リライントペン? それはなんですか?」

 

 疑問を持ったきりたんが、途中で質問を挟む。

 色希はそちらに視線を向けてから、話を続ける。

 

「リライントペンは、ペンの形をしたアイテムで、人の持つ魂色(ソウルカラー)を利用して、超常の力を与えるんだ。その中でもネガラーリライントペンと呼ばれる物が、人を異形の存在であるネガラーに変えてしまう。ボクはその気配を追って、この街に来たんだ」

 

 そう言うと、色希はポケットから白色のペン――ホワイトリライントペンを取り出し、テーブルの上に置く。

 それをきりたんが興味深そうにそれを見つめる。

 

「ボクは彩虹町(さいこうちょう)という街で、このリライントペンを悪用する歪色衆(ネガラーズ)と呼ばれる集団を相手にしている。恐らく彼らもあの東北外道という男に関与していると思う。彼らが持ち込んだネガラーペンが、カズキ君をおかしくしてしまったんだ」

「なるほど、桜井カズキが怪人化していないのは、ライダーの力で殺し合わせたいという東北外道の狙いでしょう。嫌らしい男です」

 

 色希の説明を聞いて、きりたんは苦い顔をしてそう呟く。それを見た早苗がその妙な反応に気付く。

 

「ねえ、もしかしてアンタはアイツのことを知ってるの? ただ戦った相手というだけでなく、もっと深い形で」

「それは……」

 

 早苗の質問にきりたんは口ごもる。ゆかりとあかり、ついなやリリィなども気まずそうに沈黙する。

 やがてきりたんは意を決した様子で、口を開いた。

 

「……東北外道は、私の父親です。私や母や姉弟達を自分の目的のために利用し続けた、本物の外道(げどう)。それがあの男です」

 

 きりたんが口にしたことに、早苗は何も言えなくなった。それはダイヤや色希達も同様である。

 しばらくの間、重苦しい空気が流れる。やがて、ゆかりが口を開いた。

 

「きりたん、彼が蘇った以上、もう一度戦うことになります。また戦えますか?」

「――ええ、もちろんです。一度はこの手で倒したんです。二度も三度も変わりません。あの男は絶対に倒さなければいけない存在なんです、躊躇ってはいられません」

 

 そう言って微笑みを浮かべるきりたん。ゆかりにはそれが強がりのように見えた。だが、それを指摘するのは酷に思えた。

 そんな中、大きく手を叩いてダイヤが大声で言う。

 

「さて、これでやるべきことはハッキリしたな。まずはカズキを元に戻す。そんで、東北外道の野郎をぶっ飛ばす。それで全部解決だ、良いよな?」

「ええ、それで構わないですよ」

「ボクも同じだね」

 

 ダイヤの提案にゆかりと色希が同意する。他の面々も同じようだった。

 

「なら、奴の元に殴り込むのは明日だな。ゆかりちゃんにも休んでもらわないといけねえし、オレ達も準備が必要だ」

 

 その提案も皆に同意される。

 そうして、ダイヤ達は探偵事務所を離れて、それぞれの拠点へと戻っていく。

 事務所に残ったのはゆかり、きりたん、あかり、ミリアルだった。

 

「ゆかりさん、その傷で本当に戦えるんですか?」

 

 ゆかりの隣に座ったあかりが、心配そうに聞いてくる。

 ゆかりは胸を叩いて、安心させるように言う。

 

「大丈夫ですよ、あかり。これくらいで倒れるような私では、イテテ……」

「さっき言われたことを忘れたんですか? 痛みは残ると言われたじゃないですか。ゆかりさんはしばらく寝ててください。戦いは私が出ます」

 

 呆れたような表情で言うきりたん。

 ゆかりはバツが悪そうな顔になり、頭をかく。

 

「そうでしたね、仕方ありません。でも、きりたん。絶対に無茶をしないでください。あなたが苦しむのは、相棒として嫌ですからね」

「分かっています、無茶はしません」

 

 そのような会話を交わした後、ゆかりはベッドに入り、きりたん達は戦いの準備を進めていくのだった。

 

 ★

 

 ついなとリリィ達は、街中を歩きながら話し合っていた。

 

「しかし、まさか東北外道が蘇るとはなぁ。いろんなことを経験してきたけど、こんなことは初めてやわ」

「全くだな、まさに過去からの亡霊というわけだ。厄介なことだな」

「まあ、やることは変わらへん。妖怪になったというなら、退治するまでや。方相氏としての力を見せたるわ」

「そいつは頼もしいな。オレもアイツをぶちのめすために、全力を出すとするか。お前達にも働いてもらうからな」

 

 リリィはそう言うと、後ろに控えるキクと西友の方に振り返る。

 キクは軽く、西友は大仰な振る舞いで、それに答える。

 

「もちろん、しっかり働きますよ。リリィさんのためですからね」

「お任せくださいリリィ様! 東北外道も桜井カズキも、この俺が!」

「そこまでしろとは言ってないぞ」

 

 リリィは苦笑しながら正面に向き直る。ついなもその隣で笑う。

 やがて、それぞれに分かれて戦いに備えるのだった。

 

 ★

 

『それじゃあ、今日は帰れそうにないんですねぇ?』

「ああ、少なくとも明日まではかかりそうだよ」

 

 同じ頃、別の場所では色希が電話をかけていた。 

 電話の向こうの相手は、親しい相手のようで優しい口調で話していた。

 

『むきゅ、分かりましたぁ……必ず無事で帰ってきてくださいよぉ?』

「ああ、分かってるさ。紫織(しおり)

 

 そう言って、色希は電話を切る。

 

「誰と話してたんだ?」

 

 そう声をかけてきたのはダイヤだった。

 色希は微笑を浮かべながら答える。

 

「まあ,そうだね。大切な人かな」

「ふ〜ん。女か? 恋人ってのは良いよな」

 

 楽しそうに言いながら、ダイヤも笑う。

 

「君の恋人は一緒じゃないのかい?」

「ああ、レイには早苗ちゃんの方に付いてもらってる。アイツは強えから、何かあっても対応できる」

「なるほど、信頼してるんだね」

「お前の方も、随分信頼されてるみたいだな。良い関係だって、見なくても分かるぜ」

「ありがとう、紫織も喜ぶよ」

 

 しばらくの間、ダイヤと色希は互いのパートナーの話をしながら歩いていった。

 

 ★

 

 雑貨屋『東堂』に戻った早苗、側には文香とレイも居た。

 早苗はマグカップを握り、少し不安そうにため息を吐く。たまらず文香が口を開いた。

 

「早苗ちゃん、もし辛いならなんでも言ってくれて良いんだよ。私達が受け止めるからね」

 

 その言葉に続いて、レイも頷く。

 

「そうです、私達は仲間ですから。どんな些細なことでも力になります」

 

 二人の言葉を受けて、早苗が軽く微笑んだ。

 

「ありがとう、二人共。アタシは大丈夫。カズキを取り戻すまで、折れるわけにはいかないから」

 

 あくまでも気丈に振る舞う早苗に、文香とレイも閉口する。

 そうして、それぞれが戦いの前に、英気を養い時間を過ごしていく。

 その日の夜は、嵐の前の静けさと言える穏やかなものとして過ぎていった。

 

 




 どうも、アーニャです。
 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

 コラボ小説も四話目となりました。楽しんでいただけたでしょうか。
 今回で本格登場した東北外道、塵塚怪王。今作のラスボスとなります。その全貌は近いうち明らかになることでしょう。コラボ小説のラスボスですので、それなり以上に強大に描けるように頑張りたいと思います。
 三作品のキャラが絡み合う本作、中々大変なことではありますが、いい感じの化学反応を起こせるようにも頑張りたいです。

 それでは今回はこの辺で。
 次回もお楽しみに。
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