最果ての決断   作:dwwyakata@2024

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本作シリーズの765プロのプロデューサーは13人のアイドルをトップまで育て上げた超人です。原作でもステータスは見えるわモチベを如何に保つか把握しているわ時間を巻き戻すわで、最近では超人ぶりが凄まじいですね(笑)

少し前の出来事でこの女性プロデューサーと知り合っていたからこそ、手を借りることにしたのです。

これほど実績も能力も信頼出来る相手はいなかったので……


2、再起を開始

765プロのトッププロデューサー、飯島さんが来る。

 

961プロに足を運んで貰ったのは別に初めてではない。最近961プロは詩花と玲音の稼ぎで一気に大きくなったが。

 

それ以降にも、何度か足を運んで貰っている。

 

スターリットシーズンプロジェクトの時も。パパが色々難癖をつけて、実力勝負なども此処でした。

 

多分あの時は、珍しく不正はなかったと詩花は思う。

 

というのも、パパは確信していたようだからだ。

 

当時詩花が所属していたディアマントの実力を。

 

現在、業界随一の名物プロデューサーである765プロのトッププロデューサーは記憶力が凄まじく。

 

一度入った建物は、構造などを完全に把握しているという話である。

 

大したものだなと驚かされるが。

 

今回も、予定通り数人の不安そうなアイドルを引率して、此方に来てくれた。

 

「久しぶりだな詩花」

 

「グリュースゴッド。 飯島さんも久しぶりです」

 

「ああ。 腕は鈍っていないだろうな」

 

「勿論です」

 

社長になってからも、レッスンを欠かした事は無いし。

 

最前線で仕事を続けている。

 

これからもそうだろう。

 

詩花は社長であると同時にアイドルでもある。

 

ただし、ワンマン体制ではそれは無理だ。

 

今後は玲音との緻密な連携が必要になってくる。

 

玲音が楽しめそうなアイドルを育て上げる事。

 

それが協力の最低条件。

 

わざわざ契約はしていないが。

 

懇意にしているから分かるのだ。

 

あの人は獅子も同然。

 

強者と戦う事が大好きで。

 

その戦いが、たまたまアイドルとしての力のぶつけ合いだった、というだけである。

 

飯島さんには、スターリットシーズンプロジェクトの前に参加したステラステージプロジェクトで、随分とお世話になった。

 

その時はまだ玲音とは懇意にしておらず。

 

独力では限界があると判断していた詩花に対して、非常に科学的かつ理論的なレッスンをしてくれた。

 

頼んでみたところ、あっさり引き受けてくれたときには驚いたが。

 

持論を聞いて納得がいった。

 

その時に飯島さんは言ったものだ。

 

今のうちの子達なら、ステラステージプロジェクトだったらさほど苦労せず突破することができる。

 

だが、それでは成長が伸び悩む。

 

君もそれについては同じ筈だ。

 

業界というものは、どんなものでもそうだが。一強状態ではどうしても限界が出てくる。

 

多数の強力な存在があってこそ、火花を散らして互いに高め合う事が出来る。

 

君は私の育てている子達と比肩するかそれ以上の素質の持ち主だ。

 

だから敢えて手を貸す。

 

ライバルがいればいるほど、業界の熱量があがり。

 

更に皆の力が上がるからだ。

 

それを聞いて、本当に感心したし。

 

詩花自身の実力も文字通り跳ね上がった。

 

そして、何より自信もついた。

 

今まで暴虐を悲しい目で見ることしか出来なかったパパに対して、意見を初めてすることができたのも。

 

確かステラステージプロジェクトの後だった。

 

その時は一時的にショックを受けていたらしいパパだったけれど。

 

残念な事に変わることはなかった。

 

もう変わることは無理な年だ。

 

そう、飯島さんは言っていたっけ。

 

詩花が連れてきていたアイドル達と、飯島さんが連れてきていたアイドル達が合流。961プロの広い社内レッスン場で、顔合わせをする。

 

殆ど、互いに知っている者達ばかりだ。

 

苦笑いをするもの。

 

寂しく笑うもの。

 

皆、反応は様々だった。

 

それはそうだろう。

 

みんなパパに潰されて此処を出ていったか。愛想を尽かして出ていったのだ。

 

それを、体制が変わったことで何とか連れ戻したのである。

 

また無茶苦茶をさせられるかも知れない。

 

そう思えば、怖がるのも当たり前だった。

 

レッスン場で用意したジャージに着替えて貰った後、まずは謝罪をする。

 

詩花として、最大限の誠意は見せなければならなかった。

 

社長が頭を下げることは恥じゃない。

 

パパは外では普通に営業周りで頭を下げていたし。

 

幾らでも卑屈になる事が出来た。

 

社員達には見せなかった。

 

恐らくだが、部下は全部イエスマンであるべきだと思っていたから、なのだろう。

 

悲しい話だ。

 

挨拶を終えた後、リハビリを兼ねた初期のレッスンは全て飯島さんに一任する。

 

飯島さんは頷くと、まずは体力をはじめとした各自のスペックの測定を始める。

 

これは最初、詩花もやられて驚いたが。

 

どうやら飯島さんは、Sランクになった事があるアイドルを過去も含め全員。

 

現時点でBランク以上のアイドル全員を把握しているらしく。

 

此処にいる全員も、経歴から何まで知っているそうだ。

 

その上で。自分の知っている状態からどれくらい変わったのかを測定し。

 

以降どうやってレッスンをすれば良いかの指標を立てる。

 

そういう事であるらしい。

 

詩花も同じ事をさせられて。

 

961プロのトレーナーが何も言えなくなるくらいの的確なレッスン方針を指導してくれ。

 

実際それで、飛躍的に力が上がった。

 

玲音が面白がって、目をつけるほどには。

 

一通り測定を終えると、以降は具体的なレッスンに入る。

 

最後まで見届けられないのが残念だ。

 

詩花も忙しい。

 

此処で突っ立っているだけなんて暇は無い。

 

今日は収録だけで三件あるし。

 

社長業もある。

 

勿論本来なら物理的にこなせないので、今までのワンマン体制を崩してしっかり仕事を会社で回している。

 

パパは無能だと思っていたスタッフだが。

 

まがりなりにもこの厳しい世界で鍛え抜かれた精鋭達だ。

 

イエスマンを強要していたが。

 

その枷を外して軽く再教育しただけで、充分なスペックを発揮するようになっていて。

 

詩花は少なくとも困る事はなかったし。

 

監視に当たっている玲音のスタッフ達からも、苦情が上がる事はなかった。

 

「よし、ダンスの腕は退社前から衰えていないようだな。 しかし体力がかなり衰えてしまっている。 筋力もだ。 故にしばらくは持久力をつけ、インナーマッスルを回復させろ。 具体的には……」

 

飯島さんが、一人ずつ丁寧に指針を示している。

 

更に具体的な方法を丁寧にレクチュアして、それをメモに書き起こして渡している。

 

無能なトレーナーだったらこんな風に言うだろう。

 

ただ一言「努力しろ」。

 

そんな言葉は何の意味もない。

 

努力は人を裏切らないと言うが、それは大嘘だ。

 

的確に方針を決めて、明確な戦略の下に努力しないと、全てが無駄になる。

 

飯島さんは、それを全部知っている。

 

少しだけ聞いたが。

 

この人も、アイドルとしての才能だけがないと自嘲している。

 

要するに、昔はアイドル志望だった事に対してコンプレックスを持っている。

 

つまり挫折を経験していると言う事だ。

 

恐らくダンスにしても歌唱力にしても、今いるどのSランクアイドルでも真似できるか怪しい実力の持ち主なのに。

 

アイドルとしての素質がない。

 

それが原因であるらしいのだが。

 

逆に言うと、素質がないとこの人レベルでも駄目だと言う事を、体でもって知っていると言うことだ。

 

故に、何もかも試したことがあって。

 

それ故に、的確にアドバイスができるのだろう。

 

短期間で、13人ものアイドルをSランク、それも不動のSランクに押し上げた実力は伊達では無いと言う事だ。

 

玲音が貸してくれたスタッフに一礼すると、その場を離れる。

 

後は任せてしまって大丈夫だろう。

 

961プロに以前から残ってくれていた、わずかなアイドルと共に収録に出る。

 

玲音とは、今の時点では一緒に収録には出ない。しばらくは一緒のライブをすることはないだろう。

 

勿論スマホを使って連携はしているが。

 

それはそれ、これはこれだ。

 

スタジオで収録する。幾つかの番組を持っている詩歌だが、まとめ取りをしてもらう。

 

社長になったからと言って、いきなり周囲への態度を変えるつもりは無い。

 

少しだけ冷や冷やしていた様子の961プロのアイドル達だが。

 

皆、詩歌が変わっていないことを悟って、安心したようだった。

 

また、今まで無理矢理着せられていたらしい黒系の衣装もそれぞれの好みや特性に応じて変えたいと言ってきたのなら変えさせる。

 

黒は孤高にて絶対の色。

 

それがパパの持論だったっけ。

 

確かに黒が格好良く映える人もいる。

 

だけれども、それは全員じゃあない。

 

それにパパはそもそも、詩歌には黒を強要しなかった。

 

この辺り親の甘さが出ていたと言うよりも。

 

単にパパが衰えてきている証拠だったのだろうと、詩歌は考えていた。

 

幾つかの曲の撮影を終える。

 

テレビ収録に来ていた人達は、今まで以上に生き生きしていると皆喜んでいてくれた。

 

また、トークにも応じるが。

 

意図しているのか、或いは番組の要望なのか。

 

かなりきわどい質問も飛んできた。

 

主にクーデターについての質問が多かったが。

 

それについても、全て丁寧に捌いていく。

 

そういう質問が飛んでくるのは既に想定済だったので。別に何の問題にもならないからである。

 

番組の収録が終わった後は、会社に戻る。

 

デスクワークはもう随分前からやり方を練習していたし。もう今ではすらすらとこなすことができる。

 

一通り終わった頃には、八時を過ぎていた。

 

もっとスケジュール管理を上手にやっていかないと潰れてしまう。

 

今後は無駄な作業を極力廃して。

 

更に効率化を進めないといけないだろう。

 

そういえば、パパからメールが来ていた。

 

レッスンをすると聞いて。様子が見たいと言う事だ。

 

恐らくだけれど。初期レッスンで来た飯島さんがパパに顔見せにいったのだろう。

 

あれだけ嫌がらせをされたのに、飯島さんはなんとも思っていないようだった。文字通り痛くも痒くもなかったのだろう。

 

あの人は、玲音と同じ。

 

生態系の絶対王者だ。

 

だからこそ、圧倒的余裕を持って構えていられる。

 

故に、元からパパの嫌がらせなんて、何でも無かったのだろう。

 

もうあの年で変わるのは難しい。

 

その言葉を思い出す。

 

玲音にも言われた。

 

黒井元社長は、隙さえ見せれば、すぐに社長に返り咲こうとするはずだ。それはもう体に染みついた病気のようなものだから。

 

それは分かる。詩花も、パパがそういう人だと言うことは分かっている。

 

だけれども、娘だから信じたいのだ。

 

昔のパパが、どれだけ真摯に業界に向き合っていたか知っているママから話だって聞いているのだから。

 

少しでもいい。

 

良い方向に、わずかでも良いから代わってほしいと。

 

レッスンの映像は保存してある。

 

詩花が抜けた後の映像を見たが。

 

窶れていたり荒んでいたりしたアイドル達が。

 

みんな憑き物が落ちたようにして、かぶりつきでレッスンに集中していた。

 

それはそうだろう。

 

飯島さんの話は聞いたことがあっただろうけれども。それでも此処までのレッスンを受けられるとは思わなかったのだろうから。

 

目を細めてその様子を見終えると。

 

少しでも、昔を取り戻してくれることを願って、パパに映像を送る。

 

詩花は、まだ全て何もかもを諦めたわけじゃあない。

 

パパが元に戻ってくれたら嬉しい。

 

それは本音としてあるのだ。

 

作業を全て終えて、九時を過ぎていた。

 

家に戻って、休む事にする。

 

かなり遅い時間だが、多分70年前のターニングポイント。世界中の政治家達が努力して、世界大戦を回避しなければ。

 

もっと酷い労働が、皆を蝕んでいただろうなと詩花は思う。

 

疲れはさっさと取って眠る。

 

無理に労働しても、効率なんて上がらない。

 

芸能事務所だと、深夜まで人がいるのが当たり前だけれども。

 

それも仕事のやり方をどんどん変えて行って、定時には上がれるように最終的にはしたい。

 

残業は効率を落とすだけだ。

 

残業をしている人間が偉いという風潮がそもそもおかしい。

 

それらを浸透させつつ。

 

実際に残業なんてしなくても帰れるように、職場の調整をしていく。

 

いずれにしても、詩花は風呂に入って夕食をとった後。

 

ママにも連絡は入れておく。

 

ママもクーデターの事は知っていた。

 

寂しそうだったけれども。

 

それでも、仕方が無い事だと言う事は、理解してくれていたようだった。

 

それだけで詩花には充分。

 

後は眠って、明日に備える。

 

まだまだ、始まったばかりなのだから。

 

 

 

数日すると、パパが新人アイドル発掘のために動き出した。

 

また、自分が知っている有望そうなアイドルを発掘したいらしい。

 

色々と要求してきたので、玲音のスタッフと軽く協議した上で、手を打つ。

 

どうやらパパも、恐らく飯島さんが発破を掛けたことでやる気になったらしい。

 

昔のプロデューサー時代の魂に、火が点ったのだろう。

 

良い事だと思う。

 

ただ、やはりパパは根本的な所ではもう変わらないとも思う。

 

だから、油断だけはしてはならなかった。

 

契約書などを書き、スタッフに目を通して貰った後決済。

 

961プロは少数精鋭と称した、一部の人間だけが滅茶苦茶に働いて稼ぐ体制を変えなければならない。

 

今、一気に気力を取り戻して、凄まじい勢いで再デビューに向けてレッスンしているアイドル達が仕上がってきたら。

 

彼女ら彼らと一緒に、社内ですら競いあえる状況を作り。

 

飯島さん曰くの熱量を上げる。

 

勿論陰湿な足の引っ張り合いが起きないようにも気を付けなければならないが。

 

ともかく、熱量を上げなければ、全体的な質が上がらない。

 

それは確かだった。

 

デスクワークを終えると、レッスンに出る。

 

厳しいメニューを自分に課すが、それが社長業でデスクワークが増えたからだ。短時間で効率よくレッスンをしなければならない。

 

休むのは移動をするときなど。

 

それ以外は、誰もが引くほどのレッスンをして。

 

自身を高めることに尽力する。

 

社長が自らきっちりレッスンしている。

 

それを見て、他のアイドル達も気力が俄然上がる。

 

それはそうだろう。

 

偉そうに構えているだけのワンマン社長なんて、誰がまともな存在だと思うか。

 

基本的に詩歌は口出しをしない。

 

皆、飯島さんが残してくれたメモの通りに、リハビリとなるレッスンに夢中になっている。

 

それを邪魔するのは良い事では無い。

 

ともかく、仕上がるまでそう時間は掛からない。

 

仕上がった子から順番にユニットを組んだりソロでだったり、再デビューをしてもらって。

 

961プロの再生を印象づける狙いがある。

 

レッスン修了。

 

流石に鍛えている詩歌でも意気が上がる。

 

信じられないくらいまずい栄養ドリンクを飲んで、そして次。収録だ。

 

社用車なんてものは使わない。

 

維持費だの何だので、結局タクシーより高くつくからだ。

 

社用車内部で、秘書からスケジュールを聞きつつ、十分、或いは二十分と移動中に休憩を取る。

 

眠っている詩歌に対して、誰も何も声を掛けない。

 

静かだ。

 

だけれども、パパの目指した間違った孤高では無い。

 

そう信じたい所である。

 

無言でいるうちに、テレビ局に。

 

気を切り替えて。目を覚ます。

 

楽屋でメイクなどをセッティングし直すと、既に来ていた961プロのアイドル達と合流。

 

無駄に時間を掛けず、最低限の時間でミーティングをする。

 

今回は全員でのライブとかはないので、それぞれに仕事に行って貰う。

 

プロデューサーの再教育も急ピッチで進めているが、足りない分は玲音から借りたスタッフに対応して貰う。

 

皆厳しい訓練で鍛え抜かれたスタッフだ。

 

この程度の仕事は、むしろぬるい様子だった。

 

詩花自身は、バラエティ番組に出る。

 

前はパパの方針で、共演NGの会社。特に765プロとは共演を禁止されるケースが多かったが。

 

今はそれもない。

 

収録所で、765プロのエースアイドルである天海春香さんと会う。

 

挨拶すると、向こうも快く挨拶を返してくれた。

 

笑顔が素敵な優しい人だ。

 

昔から、飯島さんを通じて時々接点があったが。嫌な思いをしたことは一度もなかった。何しろパパがああだったので、実は腰を据えてゆっくり話せたことは殆ど無い。今後は相手をもっと良く知りたいと詩花は思っていた。趣味にお菓子作りがあるので、その点でも話があうことは多い。だが、それ以外の話もしたい。

 

軽く話しながら、収録所での打ち合わせに参加する。

 

もう前の961プロでは無い。

 

よりにもよって765プロと共演している。

 

そう驚くスタッフもいるが。

 

それこそが、どんどん共演をしていく目的だ。

 

話題性である程度は稼ぐ事も出来るし。何よりも前と変わった事を、鮮烈にイメージさせる事も出来る。

 

料理番組だったので、得意のオーストリア料理を作る。

 

春香さんはどちらかというと家庭的な日本料理が得意なようなので、互いに分野を分担。メインディッシュは譲って、食後のお菓子に注力した。

 

番組の評判は上々。

 

収録が終わった後、すぐにまた一緒に出てほしいと言われたので。

 

玲音の貸してくれたスタッフに頼んで、ネゴは任せる。

 

春香さんに挨拶すると。向こうも挨拶を返してくれた。

 

「まさか一緒の番組に出られるとは思わなかった。 今後も一緒に頑張ろうね」

 

「はい。 それではダンケシェ」

 

礼をして、その場を離れる。

 

会社に戻ったときは、もう夕方。

 

駄目だな。もっと仕事のやり方を改革していかないと。

 

そう思いながら頬を叩く。

 

パパが、何人かの目をつけていたアイドルをスカウトしてくれるらしい。どうやら有言実行してみせたようだ。

 

勿論パパとしては、詩花に対してアピールもしているのだろう。

 

仕事はできるぞ。

 

だからもっと権限を寄越せと。

 

だけれども、それは駄目だ。

 

パパ自身も分かっているだろう。

 

それはもう病気だ。

 

だから、パパにはずっと、新人の発掘だけして貰う。それだけが、今のパパに残ったものなのだから。

 

新人のリストに目を通して。その後飯島さんに連絡を入れる。

 

軽く見て欲しいとお願いする。

 

勿論、その分の見返りも用意する。ずっとただでお世話になっていては悪いから、である。

 

飯島さんはああいう人なので、無言で寡黙ではあっても。業界の健全化と熱量を上げる事に関しては、本当に全力で取り組んでいる。

 

故に給料にはあんまり執着を見せないらしい。

 

961プロが使っているレッスン場の利用契約や、専属契約だったトレーナーの契約についての話を軽く持ちかける。

 

これらについては、所帯が大きくなってきている765プロにとっても美味しい話になる筈だ。

 

勿論利害を一致させるとか、そういう目的じゃない。

 

単なる恩を返すつもりの行動である。

 

飯島さんから退社直前にメールが来る。

 

それでかまわない、ということだった。

 

今まで、排他的だった961プロは。いいレッスン場やトレーナーを囲い込んだりすることがあった。

 

今後はそういう事はどんどんなくしていきたい。

 

そう告げると、良い事だと答えてくれたので、嬉しかった。

 

あの人は、あまり面と向かっては言えないが。

 

詩花にとっては年の離れたお姉さんのように思える。

 

一人っ子で、事実上片親も同然。

 

どんどん冷え込んでいく家庭を見て育った詩花からして見たら。

 

本音だったら、961プロに来て欲しいくらいの気持ちはあった。

 

勿論引き抜きなんてするつもりはない。

 

だけれども、受けた恩は正直返しきれないとも思っている。

 

返信のメールをしばらくぼんやり見つめた後。

 

詩花はさっさと仕事を終わらせるべく。

 

頭を切り換えて、社長としての業務に没頭。それが終わった後、軽くレッスンをした。

 

アイドルとしても。

 

社長としても。

 

今後やっていく覚悟に関しては。何処の誰にも負けるつもりはなかった。

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