最果ての決断   作:dwwyakata@2024

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4、不動の

久しぶりにライブに出る。

 

今回は複数事務所からエース級が出る大型イベントで。このイベントが数日続く大きなプロジェクトだ。

 

総合観客人数は四日で八十五万人を予想しており。

 

現在この業界がどれだけ活発に動いているかをよく示している。

 

なおスターリットシーズンプロジェクトの最後にこけら落としが行われた大規模ステージを使うので。

 

箱としては最大級であり。

 

故にこれだけの人数を捌ける、というのもあった。

 

玲音と現地で待ち合わせ。

 

相変わらずというか。

 

玲音は、周囲を見回して。

 

戦って楽しそうな相手がいないか、見定めているようだった。

 

年が一回り離れた、文字通り忘年の交わりを結んだ親友、玲音。

 

今回のクーデターに関して、玲音は利害が一致したから協力してくれたのであって。友人だから協力してくれたのでは無い。

 

友人であると同時に。

 

玲音にとっては、詩花は多分美味しそうな獲物に見えているはず。

 

もっと育ったらその時は、と言うわけである。

 

獅子王らしい考えであり。

 

友人としての玲音と、アイドルとしての玲音は別。

 

そう考えて、詩花は接している。

 

勿論、玲音もそれを隠すつもりもない。

 

「アタシ達は今日のトリか。 さっき亜夜と心白を見たけれど、息がぴったりで中々よかったよ。 そろそろ勝負できるかな……」

 

「いずれすぐに勝負出来る時が来ます」

 

「そうだね。 その時はセッティングを頼む」

 

「はい」

 

玲音は女性ではあるが、とんでもなく好戦的だ。

 

勿論相手を物理的にどうこうしたい、というわけではなくて。相手と真正面からの勝負をして、ねじ伏せたいと考えているだけ。その戦いの方法が、アイドルとしての力量勝負である。

 

この人はその気になればスポーツでも格闘技でも何でもトップクラスになれるはず。

 

あの765プロの飯島さんと似たような存在であって。

 

生態系の頂点である。

 

詩花ですら、現時点では本気を出した玲音には遠く及ばない。

 

それは分かっているからこそ。

 

この不可思議な関係が継続しているとも言える。

 

待ち時間の間に、詩花も体を温めたり。会社の人間から来た連絡などをさばいたりしておく。

 

それを見て、目を細めている玲音。

 

恐らくだが、今回の件で、更に詩花が成長するのも見越していたのだろう。

 

だから気前よくスタッフを貸した。

 

そういうわけだ。

 

「ではZWEIGLANZさん。 出演をお願いいたします!」

 

「よし。 いくよ詩花」

 

「はい」

 

再結成したZWEIGLANZ。詩花と玲音のユニットである。961プロを大躍進させた最強のユニットの一つだ。

 

ディアマントを結成したとき、一旦解散したのだが。

 

亜夜が961プロを出て行ってから、再結成したのである。

 

なお殆どZWEIGLANZとしての活動はできておらず、これが久々のZWEIGLANZとしてのライブになる。

 

既に箱は温まっていて。

 

充分に戦う事が出来そうだった。

 

玲音は完全に戦闘態勢に入っている、と言いたいところだが。

 

目を細めているところをみると、まだ若干物足りないらしい。

 

マイクパフォーマンスなどは、詩花が行う。

 

そして、見せる。

 

社長になったからと行って、別にレッスンを疎かにしていないと言うことを。

 

実際問題、スターリットシーズンプロジェクトで最後にルミナスに破れた時。これなら負けたのは当然だとも思いつつ。悔しいとは感じたのだ。

 

だから次は勝つ。

 

こういう所は、きっとパパの性格が遺伝したのだと思う。

 

心の中にある闘志を燃やしつつ。

 

三曲を、順番に歌っていく。

 

歌もダンスも、パフォーマンスも超一流である所を見せる。

 

何しろ隣にいるのは世界最高。

 

恥ずかしいところ何て絶対に見せられない。

 

体力だって落ちていない。

 

三曲連続で歌って踊って見せても、息など上がらない。

 

暑いステージの上だから汗は掻くが。

 

その程度、どうということもない。

 

今日のトリは、ZWEIGLANZがいただいた。

 

観客の興奮は最高潮であり、ステージから退屈している観客がいないことが見渡せる。

 

笑顔で手を振りながら、思う。

 

やはり、この道で間違っていなかった。

 

今後も、この道を行く。

 

パパがどうしても出来なかった事は。

 

私が成し遂げるのだ。

 

方法論は違ってくる。

 

パパのように歪むことだって絶対にしない。

 

だけれども、最高を目指した所だけは間違っていなかった。

 

それは、詩花にだって分かっている。

 

アンコールのコールを、勿論受ける。

 

最後に一曲歌って、締めである。

 

詩歌はまだまだ上に行ける。

 

そう、自分に言い聞かせながら。最高潮に盛り上がっているステージを。更に盛り上げる。

 

 

 

(終)







完全に方法論の問題から父と袂を別った娘の話。

ifの世界ではありますが、961プロで社内クーデターが起きたらという話を。黒井社長では無く、クーデターの発起人の視点から描写してみました。

楽しんでいただければ何よりです。

よろしければ黒井社長視点の「黒井社長の受難」もあわせてお楽しみください。

感想評価等いただければ喜びます。
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