久しぶりにライブに出る。
今回は複数事務所からエース級が出る大型イベントで。このイベントが数日続く大きなプロジェクトだ。
総合観客人数は四日で八十五万人を予想しており。
現在この業界がどれだけ活発に動いているかをよく示している。
なおスターリットシーズンプロジェクトの最後にこけら落としが行われた大規模ステージを使うので。
箱としては最大級であり。
故にこれだけの人数を捌ける、というのもあった。
玲音と現地で待ち合わせ。
相変わらずというか。
玲音は、周囲を見回して。
戦って楽しそうな相手がいないか、見定めているようだった。
年が一回り離れた、文字通り忘年の交わりを結んだ親友、玲音。
今回のクーデターに関して、玲音は利害が一致したから協力してくれたのであって。友人だから協力してくれたのでは無い。
友人であると同時に。
玲音にとっては、詩花は多分美味しそうな獲物に見えているはず。
もっと育ったらその時は、と言うわけである。
獅子王らしい考えであり。
友人としての玲音と、アイドルとしての玲音は別。
そう考えて、詩花は接している。
勿論、玲音もそれを隠すつもりもない。
「アタシ達は今日のトリか。 さっき亜夜と心白を見たけれど、息がぴったりで中々よかったよ。 そろそろ勝負できるかな……」
「いずれすぐに勝負出来る時が来ます」
「そうだね。 その時はセッティングを頼む」
「はい」
玲音は女性ではあるが、とんでもなく好戦的だ。
勿論相手を物理的にどうこうしたい、というわけではなくて。相手と真正面からの勝負をして、ねじ伏せたいと考えているだけ。その戦いの方法が、アイドルとしての力量勝負である。
この人はその気になればスポーツでも格闘技でも何でもトップクラスになれるはず。
あの765プロの飯島さんと似たような存在であって。
生態系の頂点である。
詩花ですら、現時点では本気を出した玲音には遠く及ばない。
それは分かっているからこそ。
この不可思議な関係が継続しているとも言える。
待ち時間の間に、詩花も体を温めたり。会社の人間から来た連絡などをさばいたりしておく。
それを見て、目を細めている玲音。
恐らくだが、今回の件で、更に詩花が成長するのも見越していたのだろう。
だから気前よくスタッフを貸した。
そういうわけだ。
「ではZWEIGLANZさん。 出演をお願いいたします!」
「よし。 いくよ詩花」
「はい」
再結成したZWEIGLANZ。詩花と玲音のユニットである。961プロを大躍進させた最強のユニットの一つだ。
ディアマントを結成したとき、一旦解散したのだが。
亜夜が961プロを出て行ってから、再結成したのである。
なお殆どZWEIGLANZとしての活動はできておらず、これが久々のZWEIGLANZとしてのライブになる。
既に箱は温まっていて。
充分に戦う事が出来そうだった。
玲音は完全に戦闘態勢に入っている、と言いたいところだが。
目を細めているところをみると、まだ若干物足りないらしい。
マイクパフォーマンスなどは、詩花が行う。
そして、見せる。
社長になったからと行って、別にレッスンを疎かにしていないと言うことを。
実際問題、スターリットシーズンプロジェクトで最後にルミナスに破れた時。これなら負けたのは当然だとも思いつつ。悔しいとは感じたのだ。
だから次は勝つ。
こういう所は、きっとパパの性格が遺伝したのだと思う。
心の中にある闘志を燃やしつつ。
三曲を、順番に歌っていく。
歌もダンスも、パフォーマンスも超一流である所を見せる。
何しろ隣にいるのは世界最高。
恥ずかしいところ何て絶対に見せられない。
体力だって落ちていない。
三曲連続で歌って踊って見せても、息など上がらない。
暑いステージの上だから汗は掻くが。
その程度、どうということもない。
今日のトリは、ZWEIGLANZがいただいた。
観客の興奮は最高潮であり、ステージから退屈している観客がいないことが見渡せる。
笑顔で手を振りながら、思う。
やはり、この道で間違っていなかった。
今後も、この道を行く。
パパがどうしても出来なかった事は。
私が成し遂げるのだ。
方法論は違ってくる。
パパのように歪むことだって絶対にしない。
だけれども、最高を目指した所だけは間違っていなかった。
それは、詩花にだって分かっている。
アンコールのコールを、勿論受ける。
最後に一曲歌って、締めである。
詩歌はまだまだ上に行ける。
そう、自分に言い聞かせながら。最高潮に盛り上がっているステージを。更に盛り上げる。
(終)
完全に方法論の問題から父と袂を別った娘の話。
ifの世界ではありますが、961プロで社内クーデターが起きたらという話を。黒井社長では無く、クーデターの発起人の視点から描写してみました。
楽しんでいただければ何よりです。
よろしければ黒井社長視点の「黒井社長の受難」もあわせてお楽しみください。
感想評価等いただければ喜びます。