トリガーの王子様   作:ワシの煩悩は百八式まである

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第2話

 

「あ、出てきた!」

 

「仁王!三雲!空閑!」

 

 地下のシェルターに避難をしている筈の三好達が居た。

 なんで表に出とるんじゃ……まだボーダー隊員が来とらんのに……

 

「ニオーとオサムに助けられました」

 

「オレは時間稼ぎをしただけじゃい、ホントに頑張ったのは三雲じゃ」

 

「なに言ってるんだ、仁王がやってくれたからなんとか……」

 

「嵐山隊、現着した……コレは!?」

 

 オレは倒す決定打は持っとらん、仮にちゃんとした試合用のラケットを持っとってもトリオン兵を破壊できなかった。

 三雲の奴が決定打を持っておるからなんとかなっちょう。大体逃げていいならオレも逃げとったわい。

 

「今頃になって来るとか何様のつもりじゃい!」

 

「そうだ!どうして学校に門が開いたんだ!」

 

「警戒区域外に門が開くだなんて聞いてないよ」

 

「……近界民は?」

 

「三雲と仁王が倒してくれました!」

 

「じゃから、オレは時間稼ぎしただけじゃって」

 

「君達が?」

 

「オレは仕方なくの時間稼ぎの一般人、そっちのメガネは……本人の口から聞いてくれ」

 

 嵐山隊の嵐山が現場に到着した。近界民を倒すと意気込んでいたら騒動が既に終わっており一先ずは文句は言っておく。

 それに釣られてボーダーに対してあんまり良く思ってない奴等が抗議をしてくるが嵐山は冷静に対応しオレに視線を向けてくるのでオレは仕方なくの時間稼ぎ。嘘は言っとらんからの。

 

「C級の三雲です……クラスメイトの仁王雅治と協力して倒しました」

 

「そうか…………ありがとう!!」

 

「え?」

 

「この学校には弟達が通っていたんだ!ボーダー隊員が1人も居ないから心配していて全速力で駆けてきて……よかった。君のおかげで副達を守れた!ありがとう!」

 

「っちょ」

 

「止めろよ、兄ちゃん」

 

「シスコンブラコンじゃのう」

 

 自分の弟と妹を抱き寄せる嵐山さん。

 見事なまでのシスコンブラコンで煙たがれている。女性ならばいいが男ならば汚点に見える属性よぅ。

 

「この感じからしてレイガストで斬ったのか……スゴいな。C級のトリガーは訓練用のトリガーで出力が低いのに……君みたいな子が居てくれて」

 

「嵐山さん、それ以上はダメです」

 

「木虎、お礼ぐらいは言わないと!」

 

「確かに訓練用のトリガーでモールモッドを倒したのは充分な功績でしょう。ですがC級はボーダー内でしかトリガーを使ってはいけません。例え如何なる理由があろうともC級は……貴方も貴方よ!」

 

「なにが?」

 

「トリガーを使わずに近界民を倒す時間稼ぎをしただなんだ、嘘をおっしゃい。貴方もC級かなにかなんでしょ?」

 

「いや、オレはテニス部の元部長でC級でもなんでもなかよ。このラケット使ってボールを当てて近界民を足止めしてたんね」

 

「嘘おっしゃい!そんな十字のラケットではなにも出来ない、ていうかなんなのそれ!?」

 

「なに言ってんだ!仁王クラスなら可能だ!」

 

「そうだ!学校で1番運動神経抜群で体育が学年1位仁王なら出来ておかしくない!」

 

「部長はその十字ガットのラケットでテニスをしてたのを何度も見たことがある!」

 

「俺、そのラケットの仁王部長と練習試合したことあるぞ!それで普通に試合をしてた!」

 

 オレもC級の1人かなにかだと木虎は言う。十字ガットのラケットで守っていたと言えばそんなラケットではなにも出来ないという。

 じゃけんども学校の面々は知っとる。オレはこの十字ガットのラケットでテニスを実際にやっていたのを。仁王はC級じゃなくて生身でやったのだと。

 

「……学校の人達はそう言ってるけど実際は?」

 

「何度も言うようにオレは生身で足止めや時間稼ぎしてた」

 

「それを証明することが出来るのは?」

 

「そうじゃの……おまんらは近界民を倒せる、だったらそのおまんらが実際にボールを受けるちゅうんは」

 

「部長、まずいっすよ!」

 

「そうだ!仁王の本気はちゃんとテニスが出来る奴じゃないと耐えられない!」

 

 嵐山隊の時枝がオレがトリガーを持っているか持っていないかを聞いてくる。

 実際のところはどうなのかと聞けば持っとらん、時枝はそれを証明できるものは無いのかを聞くけど証明できるものはオレのテニスしかなかぁ。実際にオレのテニスを受ける、それ以外に証明をする事が出来る方法が浮かばん。それを言えばテニス部の奴等がちゃんとテニスが出来る奴以外は耐えられんとする。

 

「大丈夫じゃろ、ボーダーが誇るA級なんじゃ……サラッと受け流して終わりになる……先生、授業のテニスで使うラケットを貸してくれませんか?」

 

「……そのラケットじゃないの?」

 

「阿呆が。この十字ガットのラケットはスーパースイートスポットの練習用のラケットで試合で使うもんじゃなか。試合でちゃんと使うラケットはあるがオレはもうテニス部を引退して次の奴に部長を譲った。今は受験シーズン真っ只中、腕が鈍らん様に練習用のこのラケットを持ってきとるし重りもつけとんね」

 

「……いいわ。口から出任せもそこまでにしておきなさい。時枝先輩、嵐山さん、彼のボールは私が受けます」

 

「じゃ、話は決定で」

 

 学校の体育の授業のテニスで使う用の整備が全くされとらんテニスラケットを体育倉庫から出す。

 現場検証を嵐山さん達は進めてる中で木虎は納得はいかんとなっとるけん……まぁ、言うたからにはやるしかないぜよ。

 

「空閑、軽くボールを投げてくれ。ブレない球だ、ブレ球だとスーパースイートスポットに当てる事が出来ん」

 

「そのスーパースイートスポットってなに?」

 

「分かりやすく言えば、あの十字の部分は打ち返せば1番パワーもスピードも出る場所なんよ……野球のバットで言うところの芯じゃ」

 

「おれ、やきゅうを知らないんだけど……まぁ、分かった」

 

「どうしたの!怖気づいたの!!」

 

 空閑にボールを投げてもらうことにしてもらい、ブレ球を投げるなと忠告する。

 スーパースイートスポットに当てれないんは割と厳しいからの。空閑は真っ直ぐに投げればいいのかと納得してくれれば木虎が吠える。

 

「……先に言うておく、先ほどのガットは練習用のガットでスーパースイートスポットの感覚を極める為のもの。今使っとるんは学校の備品でメンテナンスを全く行ってないとは言えちゃんとしたラケットや……」

 

「え?え?」

 

「また……いや、ニオーか」

 

「故にスーパースイートスポットを用いて使う究極の波動球、(きわみ)波動球を打つことが出来る。当然この波動球も百八式まである……極百八式波動球!」

 

 イリュージョンを使って別の奴になれば木虎は誰なの?となる。空閑は2度目でよく見ればオレだと気付く。

 テニスでそんな事が出来るわけがないとテニスをバカにされた。コレはテニスプレイヤーとしてバカにされたと同時に挑戦状でもある。ならば全身全霊をもって答える。

 

「っ、ぁあああああ!!」

 

「き、木虎ぁあああああああ!!」

 

「うちの学校、仁王部長クラスの実力者仁王部長しか居ないから……あの打球は……」

 

 極百八式波動球が木虎に当たった。木虎は遙か上空を飛んでいく。この学校の塀を軽々と越える。

 近くの民家以上の高さを飛んでおり嵐山さんは飛んでいく木虎を見て叫ぶんじゃが2年の奴があの打球を相殺できる奴はこの学校にはおらん。そういうのはテニスエリート学校とかにおるからと呆れていた。

 

「副!なんなんだ彼は!?」

 

「兄ちゃん、前に言っただろう。硬式テニス部で世界大会に出て団体戦で日本を優勝に導いた人の1人が居るって。仁王先輩は団体戦3位個人シングルス優勝個人ダブルスベスト8のテニス部を全国大会に導いた人って」

 

「彼がか!?……いや、と言うか彼、なのか?俺の目には筋骨隆々のスキンヘッドの男に見えるんだが」

 

「プピーナ」

 

「あ、元に戻った……どうなっているんだ!?」

 

「仁王先輩のスタイルは色々な選手の模倣、イリュージョンとまで呼ばれるぐらいの高性能なモノマネなの!あんまりにも上手に真似ているから最初見た人は仁王先輩じゃなくて仁王先輩が真似してる人が見えるんだってば!」

 

 こん学校の奴等は慣れとるからオレのイリュージョンに驚かない、と言うか芸術的なテクニックじゃと思ってる。

 嵐山さんの弟が嵐山さんに説明をする。オレは決して筋骨隆々のスキンヘッドじゃなか。ちゃんと髪の毛もあって年相応じゃい。

 オレのことを見てくるがちゃんと仁王雅治なのが分かる……

 

「じゃあ、つまり……仁王くんが打ったショットは元となった人物が居るのか……」

 

「まぁ、そうなりますな……それで、オレがトリガーを持っていないって証明は出来たじゃろ?コレを今言い出せば身も蓋も無いけどボーダーの隊員のリストを洗いざらいすればオレがボーダー隊員かどうか分かる……ん……耐えきれんかったか」

 

 学校の備品であるテニスラケットを極百八式波動球で壊してしまった。

 もともとメンテナンスもなんもしとらんしグリップもしっくりとこんから本来の極百八式波動球の三分の二ぐらいの威力しか出とらんか。

 

「学校が倒壊したからそれの修繕費用は当然ボーダー持ち……このラケットもおまんらにテニスで対抗したと証明した証じゃからガットの張り替え代金はボーダー持ち……それいいぜよ?」

 

「あ、ああ……上に言っておく……テニスのラケットのガットってこんなに穴が開くんだな……今度柿崎に聞いてみるか」

 

「……嵐山さん。木虎は2kmほど先に飛ばされたらしいです。道路に落ちたそうです」

 

「3km以上は飛ばせるからやっぱり思ったより威力が出とらんか」

 

「アレで理想通りじゃないだと……」

 

「表の波動球ですら3kmは飛ばせるんじゃから当たり前じゃい」

 

 そんなこんなでオレの無実が証明された。一応はオレがボーダーの人間かどうかを調べたがオレはボーダーの人間じゃない。

 調べたところでなんにも出てこんから無駄じゃ。

 

「ニオー、なんか秘密があるの?」

 

「どうした?」

 

「……人間があんなに吹っ飛ぶのはじめてみた」

 

「本格的なテニスの世界じゃコレぐらいは当たり前ぜよ。オレは他人の技をモノマネしとるが、中には完全に再現出来んのもある……2m以上の身長から打つ反応出来ないサーブとかの」

 

 空閑はなにかトリガー的なのを使っているのか、この世界独自の技術を使っているのかと疑問を持ったが本格的なテニスじゃコレぐらいは当たり前。オレも何度か吹き飛ばされたことがあるから当たり前。

 

「先生、こんな事があったから授業は無しじゃろう」

 

「ダメよ、今は受験シーズン真っ只中なんだから」

 

 事件は終われば、何故か授業が再開した。

 某じっちゃんの名にかけてと言っている死神高校生が通っている学校ですら全校集会に次ぐ全校集会、保護者説明会を何度も行っておるとスピンオフ漫画で言っておった。学校が物理的に破壊される出来事が起きた、明らかに異常な事じゃと言うのに何事もなく授業再開。先生は受験シーズンなんだから授業そのものは休めないと言うがおかしいじゃろう。

 

「っ……」

 

「なんだ、あの程度の事でビビったのか?球技系の競技はボールが当たるのが怖いかもしれんがビビってたら出来んぞ?バレーなんぞむしろ当たりに行かんと怒られるぜよ」

 

 授業が終わったので校門に向かえば木虎が居た。

 オレを見ればビクリと反応した。ボールが当たるのが怖いという思いは分からなくもないが、球技系は当たるのが怖くては遊ぶことすら出来ん。聖書(テニプリ)でも言っていた、ボールが怖くてテニスが出来るかと。

 

「まぁ、オレにはおまんはもう関係無いからの……」

 

 一般市民に起きる学校関係のトラブルはコレで終わった。木虎がオレに対して怯えているところがあるがオレはもう関係無い。

 三雲を待っている。空閑が一緒についていく。家に帰れば市街地で爆撃があったという結構洒落にならん事がニュースになっとう。

 ネットを検索すれば学校以外にも幾つかイレギュラーな門が出てくる。家にあるメモを見ればこのイレギュラー門は直ぐに事件が解決すると書かれとる。ならば大丈夫じゃろうと意識を切り替えれば翌日の昼過ぎにイレギュラー門の原因が判明した。

 コイツがイレギュラー門を開いている……外側から開けばボーダーが誘導している区域に、じゃが内側ならば門誘導装置を無効化出来る、恐ろしいのう。

 

「君が木虎をぶっ飛ばした奴か」

 

「なんだ、あの一件はもう終わりで今色々と処理してるだろう」

 

「いやいや、どんな奴か顔は見ておきたいからさ……」

 

「ニオー、すまん。ジンさんがどうしてもって言うから。テニス部の奴にランニングコースを聞いたんだ」

 

 ゴタゴタが起きて騒動が終わりを迎えようとしていると空閑が1人の男を引き連れた。

 迅悠一、コイツは覚えとる。目の前の人の未来を視る能力を持っててボーダーで重宝されとるボーダーの要。

 

「オレはボーダー隊員じゃないし、テニスで人が吹き飛ぶのはよくあること……」

 

「いや、柿崎に聞いたけどありえないって」

 

「そいつは本気でテニスをしとらんからじゃろう。遊び程度のテニスではその領域に……うぐっ!?っが……」

 

「ど,どうした!?」

 

「頭が痛い……」

 

 テニヌな日常に関してありえないと言うがオレにとっては日常茶飯事。

 コレ以上の関わり合いは持たない、コレで終わりにする、コレで決着をつける。例えボーダーに誘われたとしても断る。

 そう思っていると激しい頭痛に襲われた…………

 

「な、なんじゃいこりゃ!?」

 

「え?なんか変わった?……今のところ君がボーダーに来るとか滅茶苦茶誘われてるって言うか確定で入隊させられる未来が見えてる……」

 

「すまんが、そのサングラスを貸してくれんか?」

 

「ええ、これ大事な形見なのに……ほらよ」

 

 迅からサングラスを借りる。借りたサングラスをかける。それで分かる。

 

「ニオー、どうしたんだ?」

 

「なんか……ワイプ画面が見える」

 

「っ!?」

 

「ワイプ画面?どういう事だ?」

 

「……グラサンのあんた、なんか変な能力持っとらんかの?」

 

「ああ、持ってるよ……オレは眼の前に居る人間や見たことがある人間が未来が見えるよ」

 

「……ジンさん?」

 

「やっぱおまんが原因か……」

 

 オレはそんなつもりは無いが体が勝手に覚えやがった……

 

「お前……オレと同じで未来を視る能力を持ってるのか?」

 

「んなチートな能力持ってなかった……今、覚えた……」

 

「ニオー、どういうことだ?」

 

「空閑、おまんは学校の奴等や三雲からオレのテニスのスタイルを聞いちゃじゃろう」

 

「一流選手の動きを完璧にモノマネする、体格とかが関係している技とか余程高度過ぎる技じゃない限りはイリュージョンって呼ばれるぐらいの高度なモノマネをするテニスだろ?」

 

「……オレのこのイリュージョンには仕掛けがある……オレは人よりもミラーニューロンに優れとるんじゃ」

 

「ミラー……なんだそれ?」

 

「分かりやすく言えば細胞レベルで他人の動きなんかを真似ること………………迅さんの予知能力をオレの常人よりも遥かに優れたモノマネ細胞、ミラーニューロンが働いてモノマネした……」

 

「……嘘だろ、サイドエフェクトだぞ?」

 

「人体に関係してるものなら大体は真似れる……コピーじゃから真似をしないと意識すればオフには出来るが」

 

「オン・オフ出来る予知って卑怯じゃん……君に会わないといけないってサイドエフェクトが言っていた、まさかオレのサイドエフェクトをコピーするなんて……とりあえず、玉狛支部に来てくれ」

 

「……………分かったぜよ」

 

 他人よりもミラーニューロンことモノマネ細胞に優れているとはいえ、まさか公式チートをコピー出来るとは……とりあえず言うべきことはハッキリと言わなきゃならないから頑張らんと。グダグダするよりもそれがええぜよ。

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