トリガーの王子様 作:ワシの煩悩は百八式まである
「川の上の施設か」
「そう、ここはボーダーの支部の1つ玉狛支部だ」
「……成り行き上で来たけどおれが来ても良かったの?」
「ああ……忙しい今がある意味チャンスだ」
ボーダー総動員でトリオン兵退治をしている。
そんな中でオレと空閑が連れて来られたのは玉狛支部、迅がついてきてくれ言うちょるから来たけど、空閑は成り行き上でついてきた感じで来ていいのかを疑問に持つ。ある意味今がチャンスじゃと抱き込む算段……
「……あんまり良い未来は視えんのぅ」
「そうなのか?」
「三雲の奴がヘマやらかしておまんが撃たれる未来なんかが視える」
「あ〜……メガネくんがやらかしたからな……あん時ついたの、調べれば嘘だった事は簡単に分かるからな。三輪隊張り付いてたし」
迅のサイドエフェクトをイリュージョンした……イリュージョンを解除しようと頑張っとるが空閑が視界に入っとるせいで良い未来が視えん。空閑がボーダーの連中に撃たれとう、なしてこんなもんを見んといかんのじゃい……人生トロッコ問題なんぞしたないぜよ。
「む、しんいりか?」
「残念ながら違うぜよ……オレはキッパリと断る」
「まぁまぁ、一応はさ……陽太郎、ボスは居るか?」
「いるぞ」
カピバラに乗っている子供が居た。しんいりかどうかを聞いてくるが違うと否定しておく。
ここのボスが居るかどうかを聞けば居ると言い奥に進む。ボーダーの支部というよりはシェアハウスな感じがする……。
「お前が木虎をぶっ飛ばした奴か」
「……迅、お前さんオレの説明をどういう風にしたんじゃい?」
「ありのままだけど?……いや、ホントに……木虎がテニスボールを受けたら2kmぐらい吹き飛ばされたって」
「もっと他にあんじゃろう、おまんの能力コピーしたとか」
「いや〜インパクトの具合で言えば木虎を2km吹き飛ばした方の印象が強いってば」
木虎を2kmぐらい先に吹き飛ばしたことについて言ってくるここのボス。
もっと他に色々とある。特にお前さんの代名詞をコピーしたというとんでもなかぁのがある。
「空中を舞う木虎がちょっとボーダー内で話題になってるんだ」
「言っておくが、同じ事が出来る奴は中学生に何名か居るぜよ。高校生にもプロにもじゃ」
「…………嘘は言ってないな……」
「まぁ、どんな奴なのか気になるか気にならないかで言えば気になるけどもトリガー持ってない完全な一般人だったのはマジだった……で、話は終わってる。近界民相手に怖じけずにテニスボールをぶつけて時間稼いだってのは中々に優秀な奴って事で……迅がスカウトする価値はあるかどうかを見た。んで、迅が連れてきたって事は物凄く優秀ってことか……」
「優秀ってレベルじゃないですよ。コイツ、オレの代わりを出来る」
「お前の代わり?」
「ちょい待つぜよ」
迅が自分の代わりを務める事が出来る奴が現れたと言う。
ここのボスが何を言うとるんかワケワカメな感じじゃから迅が説明をしようとするけども、その前に待ったをかける。
「オレはボーダーに入隊するつもりは無い、今回はそれをキッパリと言いに来た……おまんがトロッコ問題を挑んどる。それが出来る奴が増えればより良い方向に向かうかもしれん。けどの、オレの時間はオレの時間ぜよ。トロッコ問題を他人に押しつけるのはやめい。オレはプロのテニス選手になる。中学の大会で全国行って日本代表入りして世界大会を優勝した。ここから電車で1時間ほどのところにある三門市の外にあるプロを何人も出したテニススクールから費用等免除のスカウトが来たんじゃきぃ。自分がホントにやりたいことがある。それなのに悲劇の未来を知ってしまったから自分がやりたいことを諦めろ?……ふざけるな」
このままなぁなぁの流れに乗ってボーダーに入隊すると言う話はさせん。
向こうがトロッコ問題挑んで本当に優秀なOTONAが勢揃いしとるから先に潰さんと。無理は無理、嫌ならば嫌じゃとハッキリと言う。今のうちにハッキリと言っとかんなならんぜよ。
「…………迅、才能があるからって嫌がってる奴を連れてくのは流石に、良い未来が視えたとしてもやり過ぎだ」
「そう言うと思ってたよ……けど……コイツがオレと同じ予知能力を持っていたら?」
「なっ!?……お前のサイドエフェクトは超感覚のサイドエフェクトだ、五感を強化したものでもない……予知夢辺りの能力の延長線上にあるもんだろうがトリガー技術でも再現は不可能だぞ」
「トリガー技術、じゃなくてサイドエフェクトをもコピーするサイドエフェクトがあるとすれば?」
「まさか……お前が?」
「…………オレは人よりモノマネ細胞、ミラーニューロンに優れとる。余程高度過ぎる技術やメンタルが関係しとる技術以外じゃったら大抵は見ただけでそっくりそのままモノマネが出来るぜよ」
「……今から俺は財布を取り出す。財布の中にあるものが入ってる……分かるか?」
「……野口英世じゃのうて夏目漱石の千円札かの?」
「……マジみたいだな……」
迅のサイドエフェクトをイリュージョンする。
ここのボスは財布に野口英世の千円札だけじゃのうて夏目漱石の千円札が入っとる。夏目漱石の千円札は自動レジで使えんところもあるから迷惑じゃから使用せずに両替してくれと叔父が言うとったのぅ。
「迅と同じサイドエフェクトが……」
「同じじゃなか、コピーしとるんじゃ……モノマネ技術じゃからモノマネしないと思えばオフに出来る。じゃが、迅が視界に入っとるせいで勝手にモノマネをしようとしとる……オレのミラーニューロンも厄介ぜよ」
「……オレだって嫌がる奴はスカウトしないよ……でも、オレと同じ事が出来る奴が居る……今回の一件でさえ、遊真が居てくれなかったら原因が分からないままイレギュラー門が発生し続けていた。オレ1人で出来る限りは頑張ってるけど、オレ1人ではこれから先フォローするのに限界がある。いや、限界が来た。昔ならともかくボーダーは大きくなった。未来の大筋はコントロール出来るけども、オレはそれにだけ集中しないといけない。他が疎かになって何処かで詰んじゃう。そりゃトロッコ問題を他人に押しつけるのは良くないってのも分かっている……それを踏まえた上でもオレと同じ事が出来る奴が1人増えるのは物凄く大きな事なんだ」
「じゃからオレにテニスを辞めてトリガーを手にしろと?おまんらは民間組織、入隊するのは自分で決めるか決めんかじゃ。例え才能があろうとも入隊しないと決めたのならば入隊はせん」
その辺りはキッパリとしとかんと気が済まん。
やれやれとか言いながらやるつもりは無い、最初は仁王雅治だからテニスをやってたが面白いっちゅうんは分かった。
「う〜ん……迅にかかる負荷が軽くなるのはスゲえ魅力的だ。有事の際に迅以外の意見を聞けるってのも強い。本部の奴等に知られたら自分達にとって都合の良い未来を持ってきてくれる迅にさせようとしてくる可能性が……いやでも、迅が見てるのはトロッコ問題なんだよな、迅にかかる負担が軽くなる代わりに他の誰かが……迅が2人居るってのはボーダーにとってスゲえ価値になるしより良い未来になる……」
「その為にオレに犠牲になれと?ふざけるな……オレの家は普通の家じゃ、姉、オレ、妹の兄弟姉妹、親父は市役所の職員、公務員じゃ……特別に裕福じゃない、学費が高い私立中学高校大学には全員同時に通えん。三門第三中学には硬式テニス部があっとうが、顧問はただの教師じゃ。プロじゃなかぁ。テニスの知識をつけた。テニスに必要な筋肉の勉強もした。どうすれば良いのか指導方法も自力で学んだ。じゃけんどもテニスはやればやるほど金がかかるスポーツ、金が無いのを何度悩んだことか。全国大会に出ることが決まって学校内やOBに寄付も募った。結果をコツコツと積み上げてオレは世界大会にまで出た。中学卒業したらテニスが強い高校にスポーツ推薦で行くんやのうて普通の高校に通ってテニススクールを通う。プロを出した名門のテニススクールからテニスに掛かる費用をスクール持ちの好待遇の話が舞い込んどるんぜよ。オレの3年間を、世界大会に出て世界の強豪と戦った激闘を無かったことにしろと言っとるも同然じゃ……学費免除にしてくれる三門市どころか県外の私立のテニス名門校のスカウトを蹴った、テニス費用を持ってくれるテニススクール通いを選んだ。それを蹴れと?」
この世界がワールドトリガーなのは分かっとる。これから様々な厄介な事が起きる。
それは見たことも会話したことも無い奴等に被害が及ぶ、それを防ぐためにオレはオレのやりたいことを辞めないといけない?
「……ざけんなよ……ざけんじゃねえよ……」
神様がなにを思ってオレをこの世界に転生させたかは知らん。
じゃがオレは悲劇的な過去があるわけでもなんでもない一般人、衛宮士郎みたいな偶然にも才能があった一般人とかでもない。
この世界に転生した時点で一般人じゃなくなっとるが、それでもやりたいことの1つを見つけた。将来に備えて学ばんといかんことも学んどる。
「ん〜……迅、お互いが落ち着く形になる方法はあるか?」
「ここで仁王がうんと首を振ってくれれば1番良いんだけど……それは無理か……」
「グダグダと時間は掛けさせんぜよ」
「え?……え?」
迅が2人居れば嬉しいんじゃろう、傍観者視点でもそれはいいことじゃ。
じゃがオレはその為に犠牲になるのはまた話が違う、自分がやりたいことがなんなのか分かってるしそれに向かう為の道標も見えとる。自分の実力で未来を掴み取った。迅悠一はトリックスター、趣味で暗躍をしとる。使える手は使うタイプじゃ。オレを取り込もうとするのは目に見えとる。
「……予知能力者相手じゃと才気煥発の極みは厳しいのぅ……」
「お前、なんかキラキラ光ってない?」
「コレは才気煥発の極み、無我の境地の領域の奥にあるテニスの世界に伝わる三大奥義の1つじゃきぃ……クソッ……」
才気煥発の極みを発動し、この話を終わらせる方法を思考する。
じゃけんども、相手は予知能力者。物凄い演算能力な才気煥発の極みもあくまでも予測するだけでホントに結果が視える複数の未来が見える予知能力には勝てん。才気煥発の極みも才気煥発の極み同士の対決になったらより腕が立つテニスプレイヤーの才気煥発の極みが勝つ。迅は才気煥発の極みは会得しとらんが、才気煥発の極みを超える予知能力を持っとる。才気煥発の極みとまだ使いこなすことが出来とらん予知能力を駆使してこの場を切り抜ける方法を探ろうとするが、向こうの方が年季が違うぜよ。見つからない。
「百錬自得の極みを頭に集中させて才気煥発の極みのパワーを上げるか……」
ムーンセル・オートマトンぐらいの演算能力があれば予知能力を突破できるかの?
「ニオー……ボーダーに入りたくないのか?」
「オレはプロのテニスプレイヤーになる、その為の努力もして成果も上げとう」
「……迅、木虎をぶっ飛ばした奴が印象強すぎて気にしてなかったけど、コイツは?」
「空閑遊真……オレよりもボスの方がよく知っている人の息子……形式上は近界民かな?」
「空閑……空閑ってまさか」
「……おまん、卑怯な真似を」
世間では近界民=トリオン兵で通しとる。
ここで空閑が近界民であることをバラすことでオレを共犯者に仕立て上げようとしとる。
近界民に関する情報を握っとる、牛耳っとるのはボーダーで不都合な事は記憶処理をしとる。
「はぁ……もう1人のオレが居てくれたら色々と便利だけど……仕方がないか……唐沢さんに話を持ちかけよう。ボス、仁王の入隊用の書類を用意しといて」
「だから、オレはボーダーに入らん言うとるじゃろう」
「迅、流石にコレは……今回の一件が緊急事態だったから危機感を感じるのは」
「……近い未来で大規模な侵攻がある。何時もの防衛任務の面々でどうにもならないどうしようもない壁が……そこに遊真やここに居ないメガネくん達が必要でより良い未来にする為に何処かの段階で確実に仁王は必要だ。大丈夫だ、仁王も納得が行く形で纏めるから」
「……この野郎、テニススクールを抱き抱える気か」
「いやぁ、唯我のところの系列のテニススクールでよかった……おめでとう仁王、プロテニス選手になれるぞ」
「スポンサーが付く=プロテニス選手じゃなか、ランキング上げたりして正式に公式から自称じゃないプロテニス選手の称号を貰わんと」
「そうなのか?まぁ、アマチュアからスポンサーが付くから良いことだ」
「っち……」
才気煥発の極みと真似したばかりで使いこなすことが出来ん予知能力じゃ迅は突破出来ん。
ここに居ると嫌なもんばっか視えるからとっとと帰る……スポンサーを逆手に取るんじゃったらボーダーが不要になるぐらいにランキングを上げる。そうすれば色々な企業がスポンサーについてくれる。そうなったらボーダーと縁を切っちゃる。
ボーダーに入隊する正式な書類は今ここには無い。作ってもらっても書くつもりはなくこれ以上は話し合う気にはなれんと玉狛支部を後にする。
「やぁ、はじめまして。私はボーダーの唐沢、所謂営業マンって奴さ」
後日、テニススクールにボーダーの営業担当の人が来た。
テニススクールと話し合い、ボーダーがスポンサーになるスポンサー契約をする……ご丁寧に逃げ道は封じている。断ればテニススクールに通えなくなる。
一体どういう口説き文句を使ったんじゃい。とは言えテニス関係はしっかりと保証してくれて……ボーダーの玉狛支部に入隊が決まった。
一応補足しとくけど迅だってホントは関わらせたくないとは思ってるよ。
でも、大規模侵攻とかが若干視えてるし敵側も手口を変えてきてこれから色々と大変で1人でトロッコ問題をし続けるのが限界を感じているので同じ事が出来る奴を求めた。緊迫した状況じゃないとしないからホントのホントに仕方なくやってて、極力仁王には負担を掛けないようにはしようとは思ってますよ。