トリガーの王子様   作:ワシの煩悩は百八式まである

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第5話

 

「やぁ、太刀川さん。風間さん。おかえり」

 

「迅か……」

 

「トリオン体に換装してなにしてんの?」

 

 空閑が持つ黒トリガー奪取及び空閑の討伐を命じられたボーダーが誇るA級1位太刀川隊、2位冬島隊、3位風間隊、7位三輪隊。

 玉狛支部に向かっていると道中にバッタリと迅に遭遇する。太刀川を先頭に立ち止まる面々

 

「近界民から黒トリガーを奪いに行くんだよ」

 

「残念だけどそいつはもううちの可愛い後輩だよ……幾ら太刀川さんでもボーダーの規則ぐらいは知ってるでしょ?」

 

「ランク戦以外での私闘禁止だろ?確かにボーダー隊員を襲うのは規則違反だ……ただし、後輩ならな」

 

「……」

 

「ボーダーの入隊日、1月8日にならないと正式なボーダー隊員にならない。今の段階で書類を突っぱねれば無かった事に出来る……つまりは今はまだボーダー隊員じゃない」

 

「ああ言えばこういうね」

 

「それはお前の専売特許だろう?」

 

「迅、そこを退け……俺達は」

 

「そうはいかないよ……はぁ、ここで太刀川さん達が帰ってくれるのが1番なんだけどな……」

 

 風間がどくように言うが退く気配が無い迅。太刀川達が帰らない、それが1番良いことだがはいそうですかは言えない。

 

「俺達とやるってか?……遠征部隊に選ばれる部隊がどんなレベルか知らないわけないだろう……黒トリガーを倒せる……それが3つもだ」

 

「ああ、確かにオレ1人じゃ太刀川さん達の相手は厳しいよ……オレ1人じゃね」

 

「嵐山隊、現着した!」

 

「っ、嵐山!」

 

 同じくA級5位の嵐山隊の嵐山、木虎、時枝が現れた。

 嵐山隊を抱き込んだのかとここで風間が理解する……

 

「オレ1人じゃ厳しいけど嵐山達が居れば、勝てるよ……オレのサイドエフェクトがそう言ってる」

 

「面白い、お前の予知を覆したくなった」

 

「……迅、人にこういうのをやらせるな……プリッ」

 

「なっ!?」

 

「誰だ、お前!?」

 

「迅じゃない!?」

 

「いや〜スゴいな。ホントにオレを再現してるよ」

 

 迅がプリッと言えば仁王のイリュージョンが解除された。太刀川達が会話をしていたのは迅にイリュージョンした仁王だった。

 十字路の右側から出てくるのは本物の迅、一夜漬けとは言え自分を再現することが出来ている。仁王のイリュージョンのクオリティの高さに思わず拍手を送った。

 

「……お前が近界民か?」

 

「風間さん違います、俺達が戦ったのは別のやつで……迅、そいつは誰だ!まだ近界民が居たのか!?」

 

「オレは迅に頼まれたから迅をイリュージョンしたけん。人生トロッコ問題じゃからあんましたくないっちゅうのに」

 

「オレがもう1人居たら便利とか思う時が多いけど、実際マジで1人居たらスゴく便利なのが分かった……いや、ホントに便利だ。他人から見たオレってこんなに便利なんだな」

 

「迅、コイツは誰だ?」

 

「近界民以外にも新人を入れてね……コイツが居れば例え今から天羽がやって来ても勝てるよ」

 

「まったく……迅、流石に相手は予知ありのおまんをスキル無しでタイマンで倒す奴じゃ。一夜漬けじゃ勝てる可能性は低い」

 

「ああ、だからアレをしてくれるんだろ?」

 

「はぁ……コレは割と非効率なんじゃがの……能力共鳴(ハウリング)する気配が無いし」

 

 迅をイリュージョンしたが迅の予知を掛け合わせた戦闘を完全に再現出来ない。

 如何に仁王のサイドエフェクト、強化モノマネ細胞が強いと言えども精神性までは完全にイリュージョン出来ない。

 しかし、ある一定のレベルまでは迅を再現する事が出来ている。もっと練度を積めば完全に迅を再現する事が出来る日も来る。だが、その日が来る前に太刀川達ボーダー最強格の隊員と相手をすることになった。予知能力があっても互角の領域の太刀川は100%の完成度でない迅のイリュージョンでは勝てない、タイマンでそうならば混戦では更に難しい。混戦に加わるのが弱い奴ならいくらでもあったが、加わるのが個人総合3位で攻撃手2位の男、風間だ。それだけでもイリュージョン迅ではキツい。

 

「なっ、じ、迅!?」

 

「うぉ!?玉狛の新しいトリガーか?」

 

 仁王は再び迅にイリュージョンした。

 迅のそこそこの完成度のモノマネをしてもこの面々には勝てない。しかし仁王には奇策があった。迅にイリュージョンする事で迅を再現する……その上で迅と同調(シンクロ)する。新テニスの王子様で跡部にイリュージョンし跡部と同調する事が出来たのだから他の人物でも可能、迅をイリュージョンし迅と同調する。

 

「仁王が言うにはコイツは同調(シンクロ)、テニスのダブルスのトップクラスの実力者のみ使うことが出来る奥義……成る程な……このレベルだと鋼クラスまではいけるが風間さんや太刀川さんは厳しいか」

 

「一夜漬けでここまでしたことを褒めてもらいたいのぅ」

 

 天羽の様にオーラ的なのを見るサイドエフェクトを持っていないにも関わらずオーラを見ることが出来る。

 どうなってんだと驚くA級の面々、嵐山隊ですらこんなのは聞かされていない。迅は仁王と同調し、仁王が自分をどれだけ再現しているのかを理解する。攻撃手4位の村上鋼に余裕で勝ち越すことが出来るが、それより上の猛者達には勝てない。

 それだけでも充分脅威的だが相手が相手なのでもっと上を見ないといけない。

 

「大丈夫だ、このレベルならオレが補正すれば勝てる」

 

「嵐山隊来た時点で勝ち確定なのに欲張りじゃの」

 

 迅が補正すれば勝つことが出来る……が、嵐山隊が来た時点で勝ちが確定だ。

 迅が見たことも無い後輩を引き連れ見たことも無い新しい技を使っている、強い奴と戦うことが大好きなバトル脳の太刀川は笑みを浮かべる。

 

「んじゃ、やらせてもらうよ」

 

 迅が黒トリガー、風刃を抜いた。迅にイリュージョンした仁王が地面から壁が生えるトリガー、エスクードを使って太刀川達の前に生やす。迅は風刃の斬撃を伝播する能力を使う。いきなりのエスクード、驚くがそこはA級の冷静な判断で動こうとするがそこに風刃の伝播する斬撃が飛んできた。それと同時に三輪隊が動くがそれに合わせて嵐山隊も動く。

 

「菊地原が飛んでいった……先にやっとかないと後で痛い目に遭うからよかった」

 

「……迅、2名ほど透明化してきちょる!」

 

「ああ、聞こえる!」

 

 倒されたのは菊地原だったのでよかったとなる迅。

 エスクードで前が見えない状況で太刀川がジャンプしてエスクードの壁を越えようとする。必然的に太刀川に視線が向く。

 太刀川が厄介な存在だがそれに隠れて風間と歌川が透明化するトリガー、カメレオンを起動するが仁王がそれに気付く。同調を経由し、そしてサイドエフェクトを経由して風間と歌川がカメレオンで隠れているのを見抜いて迅は風刃を太刀川の孤月を迎え撃つ

 迅にイリュージョンしている仁王はスコーピオンを使う。透明化していて何処に居るのかが分からない筈の歌川を切り裂いた。

 

「っ……」

 

「流石にレベルが違うか」

 

 見えない筈の歌川をどうやって斬ったのか? 何かしらの仕掛けがあるのだろうが、それを考えている暇は無かった。

 歌川に続いて風間も切り裂こうとするのだが風間はカメレオンを解除してスコーピオンで受ける。歌川は余裕だったが風間は別格、カメレオンを解除してスコーピオンを構えるまでの行動の速さ等が違うと迅にイリュージョンしている仁王は感じ取る。

 

「太刀川さんと風間さんだけ……いやぁ……コレ、スッゴい便利……読み逃しとか無くすし」

 

「おまんに合わせてるオレの身にもなれよ……風間さん倒したらOKかの?」

 

「風間さんを倒してくれたら後は問題無い……初手に噛ましてくれたおかげで盤面をスゴくこっちに傾けれた」

 

「なら、同調(シンクロ)とイリュージョンを解除させてもらうぜよ」

 

「ああ、頼んだ」

 

 イリュージョンしていた仁王は迅の姿から元に戻る。使っていた同調も使わなくする。

 風刃の能力があれば迅は単騎で太刀川を倒せる。厄介な歌川と菊地原は倒せた。攻撃手の連係は殆ど潰した。

 

「随分と啖呵を切ったな……情報もなにもない鋼レベルならば実力者、油断はしていたがもうない」

 

「せやなぁ……ホンマ、厄介やで」

 

「っ……誰だ?」

 

 迅は太刀川に集中した。迅を確実に倒さなければならないので風間は太刀川の応援に行きたいが、眼の前に居る厄介な謎の男、仁王をどうにかしないといけない。まるで口裏を合わせたかのような洗練された高度な動き、歌川が斬られたのを見て何処となく迅と似ているのは見抜いた。迅のモノマネをしていて迅の言っている事が確かならば村上鋼クラスの実力者、加勢されればお互い厄介。

 ならば弱い奴を先に倒す、極々自然な考えに至り風間は仁王と向き合えば仁王はイリュージョンを使った……が、風間が見たことも無い人間だった。

 

「日本の高校生でテニスが2番目に強い男、種ヶ島や……悪いけども、あんたを倒させてもらう」

 

「…………」

 

 迅のモノマネをしていて迅の動きを再現した……が、全く見知らない男になった。

 なんでその男になったのか何者なのか仁王の口から語られる。日本の高校生で2番目にテニスが強い男、そう言えばさっき使ってたよくわからないのもテニスがどうとか言っていた……どういうことかは分からないが少なくとも迅よりやりやすい筈だと風間はカメレオンを使って透明化した。

 

「奇遇やな、俺も透明になれるんや……不会無」

 

「っ!?」

 

 透明化して真正面以外に回り込んで相手を切る、カメレオンを使った定番戦術だが普通に強い。

 それで行こうとするのだが……種ヶ島にイリュージョンしている仁王は消えた。

 

「カメレオンを搭載しているのか」

 

 迅のモノマネをしているから迅と同じトリガー構成をしていたかと思ったがカメレオンを搭載しているのかと風間は判断する。

 相手の姿が見えない。見えない敵に対して強い菊地原は既に落とされてしまっている。だがカメレオン同士の対決ならば百戦錬磨の王者の風間隊だ。菊地原依存ではない。

 

「三上、何処に奴は居る?」

 

『……無いです……』

 

「なに?」

 

『さっきまでそこに迅さんと新しい子のトリオン反応がありましたが急に消えました』

 

「なに!?」

 

 カメレオンは見た目が透明になるトリガー、人間は視界に写るものを頼りに動く生き物なので透明になって見えないは普通に強い。

 しかしカメレオンを使用すれば透明になれるが透明になれるだけで足音等はしたりする。当然レーダーにも映る。だからオペレーターの三上に仁王の位置を聞くが……仁王は消えていた。

 

「…………レーダーに映らない強化カメレオンか?」

 

 玉狛支部は独自のトリガーを持っている。その内の一種でカメレオンを強化したレーダーに映らないカメレオンを搭載したのかと考え……口にするのだが風間は右腕を斬り落とされた。

 

「……っ!」

 

「ダメだよ風間さん、オレを忘れて立ち止まったら」

 

 斬撃を伝播する風刃の能力を使って風間の腕を切り落とした。

 どうなっているのか思考がフリーズ、声を出したのでサイドエフェクト等を用いて逆算して風間の位置を割り当てる。と言ってもざっくり計算なので倒すにまでは至らなかった。

 

「っ……」

 

 右腕からトリオン漏れの煙が出る。流石にカメレオンでもトリオン漏れの煙は消すことが出来ない。

 カメレオンを使用し続けても無駄だとカメレオンを解除する……そして首を斬り落とされた。

 

「すみませんね、コレは存在を無の状態にする技でトリガーや無いんですよ……プリッ」

 

 日本の高校生で2番目に強い男、種ヶ島の技、自分の存在を無の状態にする不会無。

 トリガー技術ではない種ヶ島の純粋な技能、カメレオンの透明化とは完全に異なるトリガー技術というテクノロジーを使っていない。

 故に透明になったままでスコーピオンを使う。当然スコーピオンも透明で風間は自分が倒されたのを首が斬り落とされたのを直ぐに理解し、敗北を理解した。

 

「迅、太刀川さんはおまんに任せてもよかか?」

 

「ああ、太刀川さんは任せてくれ」

 

 種ヶ島のイリュージョンを解除する仁王は太刀川に対して助っ人に入らなくていいのかを聞いた。

 太刀川は自分が倒す、その未来まで数手ぐらいかかるのだがそれでも確定だ。太刀川は任せろと言い

 

「嵐山達を頼む……出水がややこしい」

 

「おまん、人使い荒いのぅ……念の為にラケット持ってきて正解じゃった」

 

「……ツッコミはしないからな!」

 

 嵐山隊が三輪隊+出水+当真が戦っている。

 相手が中々に手強くて苦戦している、特に射手の出水が手厳しいところ。出水を倒せば色々と楽になる。

 風間だけを倒せばいいと思っていたが予想外の仕事が増やされた。万が一の有事の際を備えてテニスラケットを持ってきていた。

 普通はもっと色々とあるだろうがテニスプレイヤーにとってコレぐらいは常識、迅にイリュージョンし嵐山隊達が戦っている位置を割り当てて現場に急行する。

 

「苦戦しちょるみたいじゃの」

 

「仁王くん……君がここに来たって事は」

 

「迅の奴が太刀川さんとのタイマンを望んだからの……それよか時枝先輩、出水先輩を倒したら状況ひっくり返ると聞いとるが」

 

「撃ち合いになってるから……出水先輩相手に弾の勝負は厳しい」

 

「なら大きな隙を作るからそれに合わせてくれんかの?」

 

 時枝と合流した仁王。仁王がここに来たということはと嫌なことを連想するがそんな事は無かった。

 迅がタイマンで太刀川を倒すからこっちに来た、出水を倒すことで状況がひっくり返るか聞けば撃ち合いを突破できればいいと言う。

 トリガー構成は迅をイリュージョンする為のトリガー構成、メインとサブにスコーピオン、シールド、エスクードを入れている状態で銃撃戦はとても出来ない……だがしかし、仁王には弾がある……そう、テニスボールだ。

 

「……木虎を飛ばした時みたいに2kmぐらい飛ばされたら困るから」

 

「安心せい、まだトリオン体になれとらんからダッシュ波動球までしか打てん……俺のこの黒色のオーラを使う」

 

「うぉ!?なんだ!?また変わった!?」

 

 仁王は黒色のオーラを出現させてテニスボールをトスしてラケットにボールを当てる。

 

「何処に向けて打ってるんだよ」

 

 よく分からない黒色のオーラを纏う真田にイリュージョンした仁王が打ったテニスボール。

 出水が居る方向には飛んでいったが出水には当たらない、見掛け倒しかビビらせるだけのブラフかよと思っていると

 

「フゥン!!」

 

 仁王はテニスラケットを振った。

 既にテニスボールは打ってるにも関わらず、第二のボールがあるわけでもなくラケットを振った。

 

「へゔぁ!?」

 

「今だ、時枝先輩!」

 

 テニスボールが曲がった。

 出水の頬に当たって出水はフィードバックで大きな隙が生まれた。完全に意識外のところからの攻撃で思考がフリーズしている。

 銃を持っている時枝に今がチャンスだと言えば時枝は出水を撃ち抜いた。撃ち抜かれた出水は緊急脱出機能で脱出した。

 

「……ボールが直角に横に曲がったんだけど」

 

「コレこそが中学テニス最強と言われる学校で副部長を務めてる男、真田の奥義、黒龍一重の斬じゃきぃ……」

 

「……テニスの技なのか?」

 

「テニスの技じゃよ」

 

 俺の知っているテニスとは全く違うんだけど……と時枝は思ったが口にはしなかった。

 残っている三輪や米屋を倒すべく嵐山に加勢に行くがここでは仁王は大人しくし、エスクードを地面から生やして行動を制限するだけにした。

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