ブリューヌ王国 アルサス
ブリューヌの北部にある16の若き伯爵が治める偏狭の地である。
自然が多く山を隔て隣国のジスタートがある地。
そのアルサスのとある森にて一人の青年が「地竜(スロー)」と対峙していた。
青年の武器は不思議な形の短剣のみであり鋼鉄の武器ですら傷つかない地竜に勝てるとは到底思えない光景であった。
しかし青年はまったく怯まずにむしろ笑みを浮かべていた。
青年「さぁ・・・きやがれ、ノロマ竜!」
青年は殺気と共に挑発をする。
地竜は殺気を感じ雄たけびをあげ青年に対して威嚇行動をとる、
地竜「グォォォォ!!」
青年「おーおー、やっぱ竜の雄たけびってのはでかいな」
青年は余裕そうに短剣を逆手持ちから順手持ちに変えた。
青年「行くぜ・・・「
青年の言葉と共に短剣から赤白い光が放たれる。
そしてその光は短剣に集まっていき刃の形になっていった。
その瞬間に地竜が青年に向かって突撃する。
地竜「ギシャアアア!!」
その突撃を青年は後転し間合いをとり、
青年「終われ・・・「
青年が言葉を放ち短剣を下から上へ薙ぐと地竜は鳴き声すら上げず「真っ二つ」になる。
青年「・・・よっしゃ、これでOKだな」
青年が安心した瞬間に短剣の光は四散した。
青年の名前は「アラシ」
アルサスの伯爵「ティグルヴルムド=ヴォルン」の親友である傭兵である。
アラシはアルサスのとある村にて「竜退治」の依頼を受けそれを完遂した。
といっても彼は報酬目的で依頼を受けたのではなかった。
理由は親友であるティグルの為である。
かつて救われた恩を返すため彼は無償で(といっても食料やら生活用の部屋やらは貸してもらってはいるが)傭兵の仕事をしていた。
アラシ「んじゃ、依頼どおり地竜は倒したぜ」
村長「おお!ありがたい、いつ地竜がこの村を襲うか分からずとても村の者が不安がっていたのです」
アラシ「ああ、そりゃ分かるがよ、竜ってのは基本関心が無い存在については襲うことはほとんどないはずだが、まさか竜を怒らせるような事をしたんじゃないだろうな?」
村長「まさか!そんなことをすればどうなるかを知らない人間などいるはずがない!」
アラシ「まぁ・・・そうだよな、それじゃ俺はこれで」
村長「待ってください!せめて一晩泊まっていかれては?簡単な宴を催しますのでそれに参加いただきたいのです」
アラシ「わりぃな、ちょっと急いでるんだわ」
村長「そうですか・・・それならばしかたない・・・ですがまたこの村にいらっしゃってください」
アラシ「・・・ああ、分かった」
アラシはすぐに村を出てアルサスの伯爵であるティグルの屋敷がある場所に急いでいた。
アラシ「・・・(ジスタートとの戦争、ブリューヌが負けたことを知ったのが二日前・・・ティグルが戻っていると良いが)」
アラシは木々を飛び移り馬よりもさらに早いスピードで向かった
アラシ「(頼む・・・無事で居てくれ・・・ティグル!!)」
アラシは全速力で走った。
体力なんて気にせず何時間も・・・そして一日走り目的地についた。
アラシ「はぁ・・・・はぁ・・・・ついた・・・ティグル!!」
アラシはさらに急ぎティグルの屋敷に入る。
アラシを迎えたのはティグルの従者である少女「ティッタ」とティグルの父の時代から使える側近の「バートラン」とティグルの父「ウルス」の親友である「マスハス=ローダンド伯爵」だった。
ティッタ「あ、アラシさん・・・」
アラシ「ティッタちゃん、ティグルは!?」
ティッタ「・・・ティグル様は・・・」
アラシ「戻って・・・ないのか?」
ティッタの様子でアラシはそれを察した。
バートラン「・・・アラシ殿、これを」
バートランはアラシに手紙を渡した。
アラシ「これは・・・ジスタートからの手紙か?」
アラシは手紙を読む。
アラシ「・・・・・・・・は?」
眼を丸くした。
そこに書かれていたのはティグルが捕虜になったという事と保釈金の値段が書かれていた。
その値段はおおよそアルサスの税収の3年分であった。
アラシ「・・・ジスタートに行って来る」
マスハス「・・・何をしに行く気だ?」
アラシ「ティグルを取り返しに行くんですよ・・・ライトメリッツだっけか?、そこに行きます」
マスハス「アラシ、いくら強いからといってそれは自殺行為だ、・・・お前にも分かっているはずだ」
アラシ「・・・けれどアルサスにはそんな金はない・・・ましてやティグルのためにそんな大金を払ってくれるような人間なんているはずがない・・・この国の風習のせいで!」
ティグルは弓の天才であった。
300アルシン(300メートル)もの距離を正確に狙撃ほどの腕を持っていた。
けれどブリューヌは弓に対してのイメージは最悪であり弓以外の特技といった特技を持たないティグルはとてもとても下の存在に見られる。
アラシはブリューヌの生まれではなくその弓の腕を尊敬していた。
マスハス「・・・知り合いの貴族に頼んでみよう・・・だから早まった真似はするな」
アラシ「・・・わかり・・・ました」
アラシの腕は震えていた。
怒りに・・・無力な自分への怒りに。
主の怒りに呼応するようにアラシの短剣「
アラシ「・・・父上・・・貴方ならこんな時どうしたのでしょうか・・・」
アラシ「・・・いや、今ここで悩んでたってしかたねえ、俺は俺にできる事をする・・・あいつが居ない間・・・なにがあるか分かったもんじゃねえし」
アラシはそっと竜翼刃に手をかける。
アラシ「相棒・・・これから忙しくなるかもしれねえが、頼むぜ」
アラシは決心を固めた。
親友が居ない間・・・いつも以上にアルサスを守る必要がある・・・その覚悟を。
そして後に戦う事になるフェリックス=アーロン=テナルディエに対する無意識の憎悪も。
第一話終了です。
ちなみに竜翼刃は竜具ではありません、性質が似ているけれど別物です。
次回ヒロインの登場です。
エレン「私の出番か?作者よ」
作者「すいません、ティグル側のヒロインではないんですよ・・・まあ登場はしますけど」