願いの物語シリーズ【飯塚美月】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第1話『『才能』とは何か、最近よく考える。』

『才能』とは何か、最近よく考える。

 

子供の頃から可愛い可愛いとチヤホヤされてきた。

 

ただ話をしているだけで、みんなが喜んでいて、ただ歌を歌っただけで上手いと褒められ、美月は才能があると言われた。

 

アイドルがスターなんて呼ばれている事を知って、空に浮かぶ星になれば天に手が届くかも、なんて思った。

 

それから何となくアイドルを目指し始めて、すぐにそこそこ人気グループに参加して、レッスンの先生からもダンスの才能があると言われた。

 

だから私は今までの様に、すぐこのグループでもトップに立って、他のグループも圧倒して、誰よりも人気者になるって、そう思っていた。

 

でも現実はそこまで甘くは無かった。

 

当然だけど、私が参加しているグループはそこそことはいえ、人気のアイドルグループだ。

 

元からいるファンの数は多い。

 

新参である私を応援してくれる人はそこまで多くはなく、人気もあまり得られない状況だった。

 

それでも努力して、努力して、努力して!

 

私はファンに媚を売って、愛想笑いに見えない笑いを研究して、好きな物も我慢して、レッスンして、練習もして。

 

ただひたすらにトップを目指して走り続けていた。

 

そのお陰か、ファンは少しずつ増え、私はようやく人気投票で三位になる事が出来た。

 

残るは二人だ。

 

一人は天然系で売ってる『古宮ひかり』

 

そしてもう一人は……同じアイドルの私ですらたまに目が離せないくらい綺麗で、いつも誰よりも遅くまで練習してて、誰よりも朝早くから来ている『加藤沙也加』だった。

 

正直な所、私が出来る事は限界だ。いや、限界以上にやっている。

 

それでも、この二人を抜いてトップに君臨するのは不可能だと思う。

 

理由はそこまで難しいものじゃない。

 

まず古宮ひかりだが、彼女のファン層は独特だ。アイドルグループであっても、古宮ひかりしか推さないのだ。

 

確かにアイドル一人を推すファンはそれなりに居る。私にだってそういうアピールをしてくるファンはいる。

 

しかし、そういう次元じゃない。古宮ひかりを推し始めたファンは誰も彼も、もう彼女しか見えないとでも言わんばかりに、古宮ひかりだけを推すのだ。

 

どこまで計算なんだか分からないが、彼女の独特な雰囲気は誰にも真似出来る様な物ではなく、天然で甘えた様な仕草がファンの心を掴んで、まるで依存性の強いクスリでも嗅がされているのでは無いかと疑いたくなる程に、心を掴んで離さない。

 

こういう独特な相手に勝てる気はしない。

 

いつかどこかで彼女がスキャンダルでも起こせば別だろうが、生憎と彼女は異性に興味が無いらしく、もしスキャンダルを起こしたとしても、彼女のファンの殆どを占めている男性ファンの心は離れないだろう。

 

最近ではそういう百合営業なるものをファンは喜ぶらしく、私が人気投票の為にちょっと古宮ひかりと深めに絡んだだけで、人気投票の数が増えたのだ。

 

正直意味が分からない。

 

しかし、どんな形であれ一票は一票だ。

 

どんな気持ち悪いオッサンの汚い妄想にまみれた一票だろうが、キラキラした爽やかな青年の一票だろうが、私から見える票に違いは無いのだ。

 

ならば集めやすい方から集めるのが上策だ。

 

ならその新しい営業も極めてやろうじゃないか。と私は意気揚々とそれを繰り返したが、よくよく考えるとこれは古宮ひかりの票も増えていく事になるので、結局勝てないのではないかという事に気づいたのは人気投票が終わってからだった。

 

しかし、人気投票の最中も、その前からも地道な活動は繰り返していたし、アピールだってした。

 

でも変わらないのだ。彼女との間にある得票の差は。

 

まぁ、でもこれは当然と言えば当然だった。

 

だってこれは私と彼女のファンの票を行き来させているだけ、別に私が見たい訳ではなく、私の票があがると古宮ひかりが喜ぶから入れてやるか。程度のものだ。

 

何かそう考えると心が荒んできたな。次回からは止めよう。

 

まぁ、という訳で古宮ひかりの票を奪う事は難しいし、やるにしても新規層を開拓しないといけない。

 

とは言っても、それなりに長く活動してきたアイドルグループで新規層というのも難しいものだ。

 

それこそ大型新人でも入れば別だが、そんな風に外から簡単にファンを集める事が出来るアイドルが居たら一人でデビューさせる方が効率良いし、そもそもここにそんなのが入ったら確実に私の票が奪われる。

 

下手したらグループ崩壊だ。

 

それだけは勘弁してほしい。

 

ただ、このままで良いのかという疑問はある。

 

だって、私の上には古宮ひかり以上の強者が居るのだ。

 

そう……加藤沙也加。

 

クソが付くほど真面目で、でも誠実で。

 

クール系アイドルなんて言われてるけど、私から言わせればただの堅物だ。

 

それでも不快感を感じないのは、彼女の言葉は常に相手を想って言っている物ばかりだからだ。

 

それに、彼女は他人に無理な事を要求しない。

 

自分に出来るのだから。なんて言わないし。出来る人が出来る様にやる。

 

出来ない人はみんなでフォローする。

 

誰かを責めるのではなく、みんなで一つのグループだ。

 

そう、彼女は常々言っていた。

 

実際、これは本当に本心なのだろうが、彼女は自分が人気投票のトップになれたのはみんなで一緒にやっているグループが評価されているからだと言っている。

 

リーダーの位置に居るから票が集まるだけで、これはみんなで得た、みんなのファンなのだと。

 

加藤沙也加はこのグループを愛しているのだ。

 

同じ苦しみを乗り越え、同じ喜びを分かち合い、家族の様に過ごした人たちの事を。

 

多くの卒業していったアイドルの名前と思い出を彼女は覚えている。

 

新しく入ってきたアイドルの名前を、その夢を彼女は知っている。

 

ただひたむきに、真摯に、アイドルという名の夢をファンに見せている。

 

彼女はどこまでも誠実だ。

 

私たちのグループだけじゃなく、業界全体で見ても、彼女を嫌う人は本当に少ない。

 

まぁ嫉妬から嫌っている別グループのアイドルもいるが、その殆どが人気を集められないアイドルばかりだ。

 

だから、私は彼女を見ていると思うのだ。

 

才能とは何だろうかと。

 

彼女だって私と同じ様に、容姿を、歌唱力を、表現力を、褒められてきただろう。

 

トークはそんなに上手くないから、そこは私の方が上かもしれないけど。

 

でも、私と同じように幼い頃から褒められて、そこに才能を感じて生きてきたハズだ。

 

ならば私と彼女の違いはなんだ?

 

アイドルをやっていた長さか? デビュー時期か?

 

いや、違う。

 

彼女はそうなれる様にと努力し続けているのだ。

 

私がもう駄目だと諦めてしまったその先に彼女は走り続けている。

 

私が今日くらいはと休んでしまった日に、彼女は明日の事を考えている。

 

正直、適わないなと思う。

 

世界は才能だけが全てじゃない。なんて言う人間は本当に何も分かっていないなと私は思う。

 

だって、こんなにも私と彼女の才能は違うじゃないか。

 

こんなにも彼女は私よりも才能に溢れているじゃないか。

 

そうだ。才能とは、『努力すること、努力し続けること』

 

それこそが才能なんだ。

 

私はいつだって私たちの中心に立って、一番前に立って、苦しい事も悲しいことも辛い事も飲み込んで笑う加藤沙也加を見て思う。

 

彼女こそが本当のアイドル。トップスターという奴なんだろうと。

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