シャニPとアイドルがいちゃいちゃするだけの話 作:馬鹿とオタク
あれから、時々真乃が朝ごはんを作ってきてくれるようになった。
ただ少し問題もあった。アイドルが食事を作ってくれるという夢のような体験をしているのに一体何が問題だったのかというと、それは作ってくれるアイドルが真乃だけではなかったことだ。
真乃が初めて作ってきてくれた日に限っては、日程が被っていたために朝ごはんを2回いただくことになってしまったりもした。
あれから少し経ってわかったことは、アイドル同士お互いの行動を認知していないようで、日程を被らないようにするために表向きには自分が持ってこない日は俺が自分で済ませていることになっている。少し駄々をこねるアイドルもいたが、そうでもしないと胃が破裂してしまうので説得は命懸けだった...。
P「今日は、霧子の迎えと円香のレコーディング、後は灯織と次のオーディションの打合せだな。あぁ...そうだ。午後は美琴のレッスンにも顔を出した方がいいか......」
なんて考えていると、事務所のドアが開いた。
...灯織かな。まだ打合せまで1時間くらいあるけど、早いに越したことはない。
灯織「お疲れ様です」
P「おはよう、灯織」
灯織「おはようございます、プロデューサー」
P「コーヒー淹れようか。座っててくれ」
灯織「あ、いえ。自分で淹れるので大丈夫です。...プロデューサーの方こそコーヒーが無くなっているようなので、ついでに淹れてきますね」
P「え?あ、ああ、ありがとう。すまん...逆に俺がやってもらっちゃって...」
灯織「大丈夫です。1人も2人も対して変わらないですし、それに私がやりたくてやってるので」
そして俺のマグカップを素早く奪って、コーヒーを注ぎに行ってくれた。
やりたくて...と言う言葉に俺が少し甘えてしまっているのもあり、最近色々と世話を焼いてくれている。本人にその自覚はないのかもしれないが、今度何かお返ししないといけないな...。
灯織が席に着くのを確認してから話を始める。
次のオーディションは灯織の実力なら十分行けると思うが、油断はできない。
P「少し早く来てもらったけど、もう仕事の話を始めちゃっていいか?」
灯織「はい。あ、すみません。少し待ってもらえますか。先に渡しておきたいものがあって...」
そういうとすぐに、持ってきていたバッグからそこそこの大きさの包みを出してきた。
この美味しそうな匂いは...。
灯織「これ、今日のお昼のお弁当です。プロデューサーは目を離すとすぐ簡単なもので済ませようとしますから...」
P「灯織にはいつも迷惑かけるな...。ありがとう、いただくよ」
灯織には、週に3回ほど弁当を作ってもらっている。
もちろん2回目からは断ろうとしたんだが、俺の食生活に対するずぼらさが心配のようで、断っても『プロデューサーの食生活がまともになるまでは作ってきます』と持ち前の頑固さで押し切られた。
なんなら最初は週7で作ってこようとしてたので、何とか説得して週3で納得してもらったところである。
灯織「いえ、これも好きでやってることなので。それに、プロデューサーがもし倒れられたりでもしたらと思うと......」
P「そ、そこまで心配かけてたのか...すまん。ちゃんと食べるように気を付けるよ」
灯織「本当なら夕食も...い、いえ、なんでもありません。......ところでプロデューサー、今日の朝食は食べられましたか?」
P「え、ああ。今日の朝ごはんはちゃんと食べたぞ!えーっと...ツナサンドとカツサンドと...」
灯織「......それって、どこかで買ってきたものですか?」
ついにこの質問が来た。誰かに聞かれたら正直に答えようとは思っていたが......灯織だったか。
P「いや...違うんだ」
灯織「それでは...プロデューサーが朝食を作られたんですか?」
P「それも違くて...」
P「実は、今朝真乃がサンドイッチを持ってきてくれたんだ」
灯織「真乃が...?今日真乃はオフだったと思いますが...」
P「ああ、そうなんだけど、多分公園に行った後に気が向いたとかで事務所に寄ってくれたんだろうな。それで、サンドイッチを多く作りすぎてたみたいだったから、分けてもらったんだ」
灯織「そうだったんですね」
灯織「............美味しかったですか?」
P「?うん、美味しかったよ」
少し考えこむ仕草をして、覚悟を決めたような表情で切り出してきた。
灯織「.........すみません。一つお聞きしてもいいですか」
P「なんでも聞いていいぞ」
灯織「真乃のサンドイッチと私のお弁当、どちらが美味しかったですか?」
P「え」
灯織「あ、違うんです!いえ、厳密に言えば違わないんですけど、これは嫉妬とかではなくてただ単純に気になっただけと言うか、真乃の方が美味しかったなら真乃から作り方を教えてもらったりできるかもと思ったので...」
P「あ、ああ、もちろん分かってるよ。灯織はもっと美味しい料理が作りたいんだよな」
灯織「あ...」
P「え?」
灯織「い、いえ何でもありません。それで、話を戻しますが...教えていただいてもいいですか」
そんなまっすぐな目で見られても...。
正直...味は灯織の方が研究しているだけあって美味しいんだけど、真乃のサンドイッチも負けないくらい美味しかった。でも...もし真乃に似たようなことを聞かれたときに同じような答え方をして八方美人になるのは良くないよな...。
P「サンドイッチも美味しかったけど、俺は灯織のお弁当が好きかな。一つ一つのおかずに灯織の努力を感じられるし、何より灯織の気持ちがこもってるのが伝わるよ」
無理だ、八方美人の俺を許してくれ...。こういうのは上下をつけたくはないけど、変に濁した回答をするのも灯織に悪い...それに美味しかったのは本当だ。
ただ...万が一にもこれが真乃の耳に入ったら問題だ。まあ、灯織は真乃に自慢したりなんてことは絶対にないだろうし大丈夫か...。
灯織「ほ、本当ですか!?」
P「うん。食べる相手を想って作ったんだなってわかるよ」
灯織「あ、そそ、そうですよね!あ、あはは...」
少しの沈黙があった。灯織は悩んでいるようだが、何に悩んでいるかわからない...。答え方を間違えたか...?
灯織「実は...」
灯織「実は...薄々気づいていたんです」
P「へ?」
灯織「きっかけは少し前のことでした。前はプロデューサーの朝食も私が作っていたのに、最近お昼だけでいいと言い出したのはなぜなのか...。その時あまり詮索はしませんでしたが、プロデューサーが誰も見ていないのに進んで食生活を改善されたようには見えなかったですし、色々考えてみた結果...もしかしたら私と同じことをしている方がいるのかも知れない、と」
P「ば、バレてたのか...」
灯織「はい。プロデューサーは隠し事があまり上手ではありませんから」
灯織が小さく笑う。なんとか説得が上手くいってると思っていたが、思い違いだったのかも知れない...。
灯織「私以外にも同じような説得をされているのでしたら、おそらく他の方にも気づかれていると思います」
マジか...。
P「マジか...」
灯織「はい。ですが...まさか真乃だったとは思いませんでした」
P「真乃にも食生活がずぼらなのを見つかってな。実は...」
と、真乃が朝ごはんを作ってきてくれた日のことを話す。もちろん詳しい日程は伏せて、灯織と被ったことは伝えないようにだ。
灯織「なるほど...。プロデューサー、一つ気になったことがあるのですが...」
P「なんだ?」
灯織「どうして真乃は、サンドイッチを残していたんでしょう。プロデューサーの話を聞く限り、真乃が一人で食べる量にしては多い気がします...」
P「え、うーん...あ!もしかして、朝起きた時にはすっごくお腹が空いてて、いざ朝ごはんを食べるときには入らなかったとか!」
灯織「ですが、プロデューサーの話を聞く限りサンドイッチは元々6,7個ほど作っていたと予想できます。それって、かなり多いと思いませんか?プロデューサーのような大人の男性ならまだ納得できますが...」
P「確かに少し多いかもな...でも、もしかしたらお昼の分も兼ねてたとか?」
灯織「そうかも知れません...。ですが、こう考えることもできないでしょうか?」
P「......まさか...!!」
灯織・P「最初からプロデューサー(俺)に食べてもらうために作ってきた...!」
P「......いやいや、まさか!さすがに考えすぎだと思うぞ!......じゃあ、仕事の資料取ってくるから少し待っててくれ!」
灯織「本当に考えすぎなのかな...。もしかして...真乃も私と同じ...。いや、もしかしたら他にも...」
P「お待たせ。これ、今度のオーディションの資料だ。今から説明するな」
灯織「......プロデューサー」
P「どうした?」
灯織「私、負けませんから......!」
P「そ、そうか。よし!オーディション一緒に頑張ろうな!」