シャニPとアイドルがいちゃいちゃするだけの話   作:馬鹿とオタク

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美琴と冬を感じる話

静まりかえった廊下にコツコツがさがさとビニール袋の音が反響する。

日が沈んでからしばらく経った。事務作業に区切りをつけ、今はレッスン室に向かっている。

 

小窓から唯一明かりが漏れている部屋のドアを開けると、鏡に向かってステップを踏んでいる一人のアイドルがいた。

 

 

P「美琴ー、お疲れ様」

 

美琴「はっ...、はっ.........あ...プロデューサー。来てくれたんだ」

 

P「ああ、アイドルの体調管理もプロデューサーの仕事だからな。はい、これ差し入れの水とおにぎり。まだ夕飯食べてないだろ?軽いものだけど、少しでもお腹に入れておかないと倒れちゃうよ」

 

美琴「え...もうこんな時間だったんだ。......ふふっ、そうだね。プロデューサーが来てくれなかったら倒れてたかも」

 

P「いやいやいや......冗談だぞ!?」

 

 

冗談だぞ、とは言ったものの...完全に無いとも言い切れないのが美琴の怖いところだ。

今は前ほどではないが、美琴は一度集中し始めたら止まらない。

それこそ俺の声なんて全然届かなかったし、食事も食べずに動き続けていた。

 

それに比べて今は、......食事についてはまだ改善が必要だけど、声には気付くようになった。

これは大きな一歩だと思う。

 

P「......レッスンの調子はどうだ?」

 

美琴「そうだね...まだ納得できてないところはあるけど、前よりかは少し良くなったかも...?」

 

P「え......疑問形なのか?」

 

美琴「うん。...だって、決めるのは私じゃなくて見る人だから」

 

P「あー...そうだよな。...ごめん」

 

美琴「ううん、大丈夫」

 

美琴「プロデューサーにも、最高のパフォーマンスだったよって言わせて見せるから。ちゃんと見ててほしい...かな」

 

P「...!!ああ、絶対に美琴から目を離したりしないよ」

 

美琴「あはは...!ごめんね、試すようなこと言って」

 

美琴「実は、プロデューサーがそういってくれるだろうなと思って意地悪したの」

 

P「な、なんだ...。信じてもらえてないのかと思ったよ...」

 

美琴「大丈夫。プロデューサーだけは...何があっても私を信じてくれてるって信じてるから」

 

 

最近、美琴がこういう冗談をよく言うようになった気がする。試すというか...確認してくるというか。

にちかとかには言ってないようだが、ものを手作りするのと一緒で最近の美琴のブームなのだろうか...。

 

美琴の中での流行りに思いをふけていると、美琴がストレッチをしているのに気が付いた。

 

P「お、今日はもう終わりか?」

 

美琴「うん、実は今日プロデューサーが来てくれたら終わろうと思ってたの」

 

P「え......それ、俺が来てなかったらどうするつもりだったんだ?」

 

美琴「あ......確かにそれは考えてなかったかも」

 

......これからもレッスンは毎日見に行くようにしよう...。

朝までレッスンしてぶっ倒れるなんてことにはさすがにならないだろうけど......。

 

P「と、とりあえず、帰るなら送って行くよ。どこか寄るところあるか?」

 

美琴「ありがとう。特に寄りたいところはないかな」

 

ふと、この前灯織から晩御飯について注意されたことを思い出した。

 

P「...美琴。今日の晩御飯はあるのか?」

 

美琴「え...どうだろう。あると思うけど...」

 

P「......帰る前に俺の家に寄ってもいいか?」

 

美琴「...?うん、わかった」

 

 

今日たまたま気づいたからよかったものの...美琴は普段からちゃんと食べているのだろうか。

なるほど。灯織が俺を心配してくれる気持ちがわかった気がする...今度からは気を付けないとな...。

 

帰宅する準備を終えて、事務所を出ると冷たい風が吹いてきた。

冬ももうすぐ終わろうかという季節ではあるが、まだ寒いものは寒い。

 

P「うおっ...少し冷えるな。美琴は寒くないか?」

 

美琴「...うん。大丈......やっぱり少し寒いかも」

 

P「本当か?......美琴の家に着くまで手袋貸そうか。」

 

美琴「いいの?...ありがとう、暖かいね」

 

 

 

 

 

 

美琴「ここが...プロデューサーの家?アパートなんだね」

 

P「ああ、ついたぞ。......そういえば、アイドルが男の家に入るのはマズイよな...。ちょっと待っててくれ」

 

 

実は最近、灯織がお弁当と他にタッパーに入れたおかずをくれた。なんでも、晩御飯は作りにいけないから、自分で作るのが難しい日はこれをおかずにしてほしい。とのことだった。

さすがに灯織が作ってくれたものを美琴にあげるわけではない。灯織のくれたおかずから着想を得て、時間がある時に自分で作り置きしておいたものがある。

料理自体は上手いわけではないが、食べられないほど下手ではない...と思う。

 

 

P「よし。あんまり待たせると行けないしな。......ただいまーっと」

 

美琴「お邪魔します」

 

後ろから聞きなれた声がした。

 

P「えっ、み、美琴!?来ちゃったのか」

 

美琴「ごめんね、プロデューサーは待っててって言ってたのに。...でも、プロデューサーの家が気になって来ちゃった」

 

P「そ、そうか...。とりあえず、玄関前に長く居るのを見られるのも良くない、早く入ろう」

 

 

 

アイドルを部屋に入れてしまった...。

誰にも見られてないことを祈るが、明日事務所に写真が...なんてことになったらどうしよう。

 

P「適当に座ってくれていいよ。紅茶で良いか?」

 

美琴「うん、ありがとう」

 

P「......あんまり片付いてなくてごめん、誰かに見られると思ってなかったからさ......」

 

美琴「ううん、気にしないで。私が急に押し掛けただけだから」

 

部屋に入るやいなや、辺りをキョロキョロと見回し始めた。そんなに珍しいものは置いてないと思うけど、なんだか恥ずかしいな。

 

美琴「.........プロデューサーの部屋って意外とものが少ないんだね」

 

P「え?......あー、確かに言われてみるとあんまりものを置いたりしてないな。まあ、家にいることの方が少ないし...」

 

美琴「そうなの?」

 

P「基本的に朝起きたら支度してすぐ事務所に行って...帰ってきたらご飯食べてお風呂に入って寝るから、そうなる...かな」

 

美琴「オフの日とかは?」

 

P「あー...オフ、か。最近色々と忙しくて...いや、忙しいのはいいことなんだけど」

 

美琴「......ちゃんと休まないとダメだよ」

 

え......それ美琴が言うのか...?

 

P「美琴もな。たまにレッスンに精が出すぎてて心配だぞ」

 

美琴「別に私は............私たち、似てるかもね」

 

P「......俺はできることをしてるだけだよ」

 

美琴「ふふっ...!やっぱり」

 

美琴「さっき私もそう言おうと思ってたの。『別に私はできることをしてるだけ』って」

 

P「ははっ...!考えてることは一緒だな。...っと、すまん、まだ暖房付けてなかったな。」

 

美琴「......それで、プロデューサーはどうして家に寄ったの?」

 

P「ああ、それはだな。ちょっと待っててくれ......はい、どうぞ。インスタントだけど」

 

美琴「ありがとう。...あったかい」

 

 

美琴に紅茶で温まってもらっている間に、冷蔵庫から作り置きしておいたおかずを取り出す。大根と鶏ひき肉の...なんだっけ、灯織が作ってくれたものに近いのを軽くネットで調べて再現してみたやつだ。味は美味しくできた...と思う。

 

 

 

さて、どうしようか...。本当ならおかず渡して美琴を家に送り届けて、って思ってたけど、家に入れちゃったしここで食べてもらって送ってった方がいいかもな。

 

 

P「美琴」

 

美琴「どうしたの?」

 

P「ご飯...うちで食べてくか?おかず渡して終わり、のはずだったんだけど...こうなってしまったのは仕方ないし、短い時間に何度も出入りするのもよくない気がする。あ、もちろん美琴がいいならだけど......」

 

美琴「.........うん、いただいていこうかな」

 

 

とはいってもおかずをレンジで温めるだけだ。ご飯は炊いてないが...パックご飯があったはず。

一通りの処理を終え、おかずが温まるまで美琴の正面に座る。

 

そして一息つく間もなく、隣に座ってきた。

 

P「み、美琴...?隣はさすがに...」

 

美琴「ごめんね。暖房付けてもらったんだけど...あまり暖かくなくて...」

 

P「え、嘘!?」

 

急いで暖房を確認すると23度だった。もしかして、風邪を引いてるのか......とも思ったけど、よく見ると着ていたダウンとその下に来ていた上着も脱いでいた。美琴も熱いんじゃないのか...?

 

P「暖房23度なんだけど...」

 

美琴「.........あれ」

 

P「美琴...疑うようで悪いんだけど、嘘ついてないか?」

 

美琴「......バレちゃった?」

 

P「さすがにな...ダウンはわかるけど、上着も脱いでるし。寒かったら上着くらいは着るだろ?」

 

P「...念のため確認だけど、熱っぽいとかではないよな?」

 

美琴「うん、そういうのは特にないかな」

 

どうして嘘をついたのか聞く前に、ピーッとレンジの音がした。

 

P「ん、温め終わったみたいだな。持ってくるから待ってくれ」

 

 

 

 

P「どうぞ、召し上がれ。ご飯はパックご飯だし、おかずは口に合うといいけど...」

 

美琴「ありがとう、いただきます。......うん、美味しい」

 

P「おお...美琴にそう言ってもらえてよかった」

 

美琴はかなり食が細いから、普段どのくらい食べるのかよくわかってない。

あまり多い量を盛り付けたわけじゃないけど......。

 

小さい口で黙々と食べ続ける美琴を見ていたら、思ったよりも早く食べ終わった。

 

美琴「...ごちそうさま。すごく美味しかったよ」

 

P「お粗末様。あまり長くいるのも明日に響くし、一息ついたら送っていくよ」

 

美琴「ありがとう、......プロデューサー」

 

P「どうした?」

 

美琴「......今日、よかったらなんだけど」

 

P「............」

 

美琴「プロデューサーの家に「ダメだぞ」...そっか」

 

P「まず、美琴は今日もメイクしてるだろ?うちにはメイク落としなんてないし、他にも女性が使う化粧水やら何もかももない。それに、明日も仕事だ。美琴には万全の状態で挑んでほしいと思ってる」

 

美琴「じゃあ...次の日がオフの時はダメ?」

 

P「...ダメだ」

 

美琴「今、少し間があったけど?」

 

P「そう言うのはずるいぞ...!そもそも、アイドルをプロデューサーとはいえ、男の家に入れるところなんか誰かに見られたら美琴のアイドル人生に関わる。それに...その...俺も男だから、何かあってからじゃ遅いんだ」

 

美琴「......プロデューサーと私で何かあるの?」

 

P「わかって聞いてるだろ...!これ以上言わせないでくれ......!」

 

しばらく見つめ合う。涼しげな美琴とその一方でテンパりまくっている俺、この場の主導権は完全に握られている。

 

美琴「......ふふっ...あはは!ごめんね、からかうようなこと言って。本当はちゃんと帰るつもりだったの。でも、どんどん顔が赤くなっていくプロデューサーの反応が面白くって...」

 

どっと疲れがでた。面白がるのはいいが、こっちの身にもなってくれ...。

 

P「......そうか、美琴が楽しんでくれたようで何よりだ...。...もうこんな時間か、明日も早いし送っていくよ」

 

 

その後、出入りに細心の注意を払いながら美琴を家まで送り届けた。

 

 

 

 

 

美琴「個人的な理由があればもう少し...あっ」

 

P「あの調子だと理由をつけられると不味いな...あっ」

 

「「手袋返し忘れてた(返してもらってなかった...!)」」

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