三ヶ月も空いてしまいました…書いていて本当にこれで良いのか?とか考えてしまうのは良くない癖ですね、躊躇いは先延ばしを産み、結局こうなってしまったので。
本当にごめんなさい。
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【早く来過ぎたから先に席、取っておくね】
【ホント?助かる!こっちもそろそろ着くよ!】
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「はぁ……」
時刻は昼頃、周りには店員さんの応対の声、カランカランと別のお客さんの入る音。ファミレスには多くの雑多な声が入り混じる、だけどそんな音は僕にとって環境音以上の意味は無く、注意は手にあるスマホに注がれている。
うっかり来るのが早過ぎた、そんな言っても言わなくても変わらない文言の後、瑞希の返答を認めてスマホをテーブルの上に置いた、すぐ横にはドリンク、予定の時間まであと数十分。
「…何?ため息なんて」
「一気に疲れた気がしたから」
ほんの些細なそれらにやり切ったとため息を吐いて、背を丸め顔を覆った。それが気になったのか、向かい側に座れば良いのに、何故か隣に居座ったまふゆは、疑問の視線を向けた。
瑞希に了承の返事を返して数日、元より本意じゃない…と言うより、どうしたら良いかわからなかったからこうやって直接会う事にして、己の逃げ道を狭くする事にした……それでも逃げてしまうなら、そもそも最初から存在していなかった事の証明だろう、人を救う資格も、自覚も。
「……そう」
こうならない為に、知りたいって思ったのに、進みたいって思ったのに、情けない事だ……自分が何で、他人の目を恐れているのか、それだってまだ分かってもいないのに。
「……ねぇ」
救いたいって思って、手を伸ばして、払いのけられて。乗り越えたって、結局振り出しだし……まふゆは僕がいなくても、結局はあの三人がいたら救われていたのではないか?そう考えてしまう。
何回も考えて、結局考えつくのは、あの時あの灰色の場所でまふゆにぶつけた……僕は必要なのかと言う問い。
「……要るとは、思えない」
「聴いてるの?」
呟きをかき消すようにまふゆの少し苛立った声が耳に入る、その方向を向けば声と同じく苛立った顔を直すように溜め息を吐いた彼女の姿があった。聴かれて無いよね?
「何が要らないの?」
「……あの三人と人形展に行った事、聴いたんだ」
「そう。それが何?」
「それを聴いて、僕は本当に必要なのかって、改めて考えて…」
「そう、わかった…」
僕の応答を聴くと何度か見たような、まふゆが考えるように目を逸らした……この時間、なんなのだろうか。親に詰められる子の気持ちと言うのは、こんな感覚なのだろう、思った事や考えた事を言っているだけなのに、目の前いる彼女の一挙一動に萎縮してしまう。
誰かと、目を合わせ相対する時の恐怖とは、また違う。
「私には、貴方が必要。そう言った」
「そう、だね」
「貴方が私以外の、顔も知らない誰かの影に怯えてるのが…苛立つ、必要でも無いそれに気をやる貴方が」
わかってる、何もせずに長い時間をそのままに過ごし、君を苛立たせたのは身に染みて、わかってるつもり。だけどそれは…
「…ごめんね、僕自身の事、何も知らない、知れないんだ。昔の自分の事を知れるもの、全部無くなったから」
「そう、なんだ」
角も波も立たない…そんな落ち着いた場で初めて言った気がする、不安を煽るような現状を。態度に出ても、今までは言わなかった事、だってそれはただまふゆを追い詰める文言で、失望の烙印を一つ増やす行いだから。
「…ありがとう、言ってくれて」
「こちらこそ、疑問に応えれなくて、ごめん」
それでも何かを抑えるように彼女は礼を述べ、こともなげに誰もいない向かいの席に目を向けた。
ふと、彼女の横顔から視線を外す時、聞きたいことが一つ浮かんだ。
「まふゆは、僕の昔の事、何処まで知ってるの?」
「…」
聴こうとしても聴かなかったこと、聴けなかったこと。だってそれは彼女のこれからに不要だって感じた物…僕を勘定に入れていなかった結論。
幼馴染なんだから知っているだろう、当然だ。
何処までとそう口にしたのは、何を趣味にして、何が好きで、どんな性格だったか…欲張るなら、なんでこうなったかを知りたくなったから。
「歩の事は…歩のおかあさんが、知っているんじゃないの?」
「それはそう、だけど…今まではぐらかしてきた事を聴くのは、違う気がしたから」
「そういうものなの?……わかった。
関わり合いが趣味な子だったと思う、ずうっと私と居たから…それ以外の時だって、公園に行けば貴方は大抵、誰かと一緒に遊んでた」
僕のくだらないプライドを孕んだその返事に、まふゆは逡巡するように机を指で数回叩き、暫くするとポツポツと僕について話し始めた。
誰かとずっと居たんだ。今の僕とは全く違う自分に困惑する、絵や曲制作ばかりにかまけて、人の関わり合いなんて学校外では、指折り数えて片手ほどだろう。
「はは…真逆だね、笑えてくる」
「何が?……ううん、やっぱりいい。」
応答を聴いたって要領を得ない、ならまた苛立つだけ、そう考えたのか、彼女は僕に対する質疑を撤回し、持て余し気味にメニューに目をやった。
店内のBGMの音が耳に入る。手持ち無沙汰で窓を眺めた……瑞希達は、いつ来るのだろうか?
「……あ」
間の抜けた声が聞こえた。
僕ではない。すぐ側からだ、呟きとも取れない小さな声は確かにまふゆが漏らしたものだ、何かあったのだろうか?それとも話の続きだろうか。
「……何か興味のある物でも見つかった?」
「…分かってて言ってるの?」
「あったら良いなって。話の続きなら、ごめんね」
「…家に行った時に、ピアノを聴かせて貰った事があった。思えば…それが切っ掛けだったのかな」
ピアノ?そんなのあったら気付くと…母さんの部屋に、在るのかな。あの部屋だけは、探したこと無いし、無くなったものも見つかるかな…アルバム、とか。
「ピアノ?そんな事もあったんだ…それに、きっかけって?」
「歩には関係無い」
腑に落ちたと呟き、手持ち無沙汰の指で爪を撫でるまふゆに聴いてもピシャリと関係が無いと除けられる。
…無いのかな、無いのだろう。きっと僕が関係する切っ掛けとやらが無くたって、まふゆその何かに出会える気がするし。
「そう。ごめんね」
「あっいたいた!やっほ〜まふゆ!それと夜毎…でいいんだっけ、今は」
見知った声に体が跳ねる、変わらない、だけど恐怖を隠すの事は簡単だった…また自分が嫌になる。
「……こんにちは、瑞希。そうだね、正直どっちでも構わないけど、様式は大事だし」
「はは!様式って、大袈裟だなぁ〜」
どちらでも構わないのは本音なんだけどな、全員が僕の事を知ってる中で改めて名乗るって構図は変わらないから。
それに。様式を経る事で何となく、それらしくは…何を言ってるんだろう。自分で考えてて何故かこんがらがる。
「…それと奏さんに、東雲さんも。ごめんね?いきなり」
「えっ?!ああいえ、その、私も光栄…です?」
「?そう、なら…嬉しいんだけど…」
「絵名ってば焦り過ぎ〜!」
「は、はぁ!?」
瑞希のからかう声に東雲さんが心外だと訴えるように声を上げる、クラシックしか耳に入らないファミレスが俄かに騒がしくなる、嬉しいかどうかはわからない。騒がしい二人をまふゆは咎めないのだろうか?横目で見ればやり取りに呆れたのか、向かいの席に座る奏に何を頼むのかとメニュー表を手渡していた最中だった…それに奏は妙に驚いてる気がする。
「…何?」
「ううん、奏に用があるだけだよ。」
「え……わたし?」
「うん……ありがとう、まふゆの事…僕も出来る限り、手伝うから」
「…ありがとう」
何となく感じる違和感、このやり取りに何の違和感を感じたんだろう?疑問、返答。そもそも、雰囲気が変わった奏に対しての、違和感だろうか。
違う気がするけど埒が開かない、そんな気がする。
「……これから、よろしくね?」
無駄な思考は打ち切り改めてよろしくと奏に伝える、何も分からない癖に違和感の内容を考えたって、抱え切れる理由もないんだから。
「…二人とも、静かにして」
「…あ。ごめん…なさい」
「あ〜…ごめんね?三人とも」
まふゆの言葉で一瞬コチラを見た二人は続けて謝罪の言葉を口にした、知らない誰かがいるから気まずい…のかな?
瑞希の誘いを受けたまでは良いけど、この様子を見るに本当に受けてよかったのかな。居心地が悪くなり誤魔化すように指先を弄る――ミクの癖、移ったな。
「ま、まぁ!ともかく自己紹介だよね!ほらほら夜毎さんどうぞどうぞ!」
「うん。わかった」
瑞希に名指しに従って既に見知った、向かい合う二人に対して自己の紹介をする。名前と、趣味と、後は何を言えば良いんだろう?…言いながら考えよう。
奇異の視線が絵名さんから感じる、そんなに興味を惹くのかな、瑞希も『絵名が一番面白い反応するだろうな〜!』と言ってたけど。
「えっと改めて、
「ハハッ!なんかお爺ちゃんみたい!」
「ちょっと、失礼でしょ」
「いいじゃ〜ん、僕と歩の仲なんだし?」
そう言って調子良くこちらを向いてニコニコと笑う瑞希に不快感は無い、茶化す事はありがたいし、ただ不愉快なのは自分からくる恐怖の感情だけ。
理解のできないことは不愉快だ。
「そうだね、気にしてないよ。むしろ、茶化してくれるのが嬉しかったり?」
「こやつめ〜!ほほほ」
「…邪魔」
そう返すと嬉しそうに僕に向かって手をひらひらと振る瑞希、その間にいるまふゆは目の前で動く手が鬱陶しいのか短く退けろと彼女に要求した。
「ともかく、これからお世話になるからよろしく…うん?」
よろしくお願いします。そう言おうとした時にふと僕は疑問に思ったことが一つあった。
言葉に詰まる僕に三者は不思議そうに、一者は事もなげに水で喉を潤していた。
「ねぇ、奏」
「えっ…どうしたの?」
唐突に切り出されたそれに驚いたように跳ねた小さな肩は、それでも真っ直ぐと真摯にこちらに向かい合った……イヤ、正直改まって言うべき事でもないけど…
「四人ってそれぞれの役割を持ってるんだよね?大体は予想付くけど…」
「え?…うん、それがどうかしたの?」
「………あ」
「えっ、何なのいきなり」
僕の勿体ぶった言い方に少し顎をなでて、思い至ったのか、瑞希は間抜けた声を漏らした。絵名さんは何がなんなのか分からず声を上げた瑞希に視線を向けた。
「うん、その…」
「何をするかじゃないの?歩が」
その場でお流れになって、迷った挙句にその誘い乗ってしまい、決める事もまともに決めれずに気付かないままここまで来てしまった。それを分かってて言わなかったのか。まふゆは僕の声を遮るように本題に切り込んだ。
「…そういえば、そう…だね、ごめん、歩」
「え?いや奏が謝る必要なんて…僕だって断ったくせに手のひらを返して了承したから…えと、一先ずスケジュール管理とか、しようか?」
と言うか思い付く物がそれしか無い、奏は言わずもがなだろうし、まふゆは歌詞以外もできるだろうけど歌詞担当、瑞希は分からないがガヤなんてことはないだろうしミックスとかかな?絵名さんは…絵だろう、そう言ってた筈だし。
「えー折角だし絵とか見て見たかったなー」
「見たければ曲を聴けば良かったのに…」
「こう言うのは風情なんですー」
「はは、君も大概大袈裟だね?」
「うーん?かもね!」
様式がどうのと言ってた割に君も大袈裟に言うんだね、そう言うとケラケラと笑いながらそうかもと瑞希は首肯した。
何となくこのやり取りが自然に出たものだと感じて、嬉しく感じる。
「えっちょっ…ちょっと?本当に絵を描くとかじゃ…ないです、よね?」
「?ううん、無理を言ってしまったから。何をやるかは任せるよ…その為にすり合わせとか、するつもりだから」
僕に向けて言っているのか、瑞希に向かって言っているのかどっちつかずの彼女の問いに対し任せると答えた。
彼女の表情は妙に青褪めていて、何かに怯えてるように見えた…よくわからないな、絵を描くだけで怖がられるのは。
……いいや。それがわかったところで、僕に出来ることなんて一つも無い、あるにしてもやらないだろう、そんな人間なんだから。
「それで擦り合わせ何だけど――」
そう割り切ってそのまま四人に僕がこの集団の中で何をすべきか、何を考えるべきか切り出した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
不定期。自分で言っててなんですが開ける期間にも限度と言うものがありますね、本当に走り切れるんだろうかと自身でも思います。