ユウスケはハンマーを再度振り下ろすも、今度は奇襲ではないため、簡単に鬼に防がれ、ハンマーを奪われてしまった。
「遅い遅い。人間の振りじゃダメだな。武器ってのはな、こうやって使うんだよ!」と鬼は笑いながらハンマーを振り上げた。
ユウスケは慌てつぶやく。「"生成プレートアーマー"!」
鎧を身に着けるが、鬼のハンマーの威力はそれでも凄まじく、鎧を凹ませ、ユウスケはあばら骨が折れた痛みを感じた。「このままじゃ不味い。」
鬼は再度ハンマーを振り上げて叫んだ。「おらっ!もう一丁!!」
ユウスケは必死で思い付く。「生成"唐辛子スプレー"!」
今度は防御ではなく、唐辛子スプレーを相手の顔面に浴びせた。その効果は絶大で、急な攻撃に鬼は目を痛め、手で顔を覆った。
「目が、顔が、、、痛てぇ。」と鬼が苦しむ。
ユウスケはチャンスを逃さないよう、すぐにパルスィを連れて逃げようとした。しかし、あばら骨の痛みにより膝をついてしまう。
見かねたパルスィは急いでユウスケの元に駆け寄り、彼を引きずりながらその場を後にした。
「助けに来たのに、何私に助けられてんのよ。」とパルスィは少し苦笑いを浮かべつ、ユウスケを支えながら言った。
二人は急いでその場を離れ、鬼の怒声が遠くに聞こえる中、裏路地を進んでいった。
パルスィに支えられながら、ユウスケは自宅の居間まで帰り着き、布団に下ろされた。疲れや痛みが一気に襲ってきた。
「大丈夫?」と心配そうにパルスィが尋ねる。
「めっちゃ痛い。」とユウスケは答え、呻く。
「狙われていたのは私なのに、どうして助けに来たのよ。」とパルスィが不思議そうに訊ねる。
「理不尽な目にあってるのに助けない訳ないですよ。」ユウスケは真剣な表情で言った。
「私は嫌われ者の妖怪よ。他人の嫉妬を力にしているし、尖った耳にこの目だって嫌われているわ。」パルスィは少し悲しげに言う。
「嫉妬を力にしているとしても、他人を不幸な目にしている訳では無いですよね。あなたがくれた引っ越し祝いの花を見れば分かります。」ユウスケは彼女の優しさを思い出しながら続けた。
「同情なら結構よ。」とパルスィは冷やかに答えた。
「それに、、、」ユウスケが言葉を続けると、彼女の興味が引かれたようだった。
「それに?」とパルスィが期待を込めて尋ねる。
「あなたが嫌っているその目と耳もキレイじゃないですか。目はルビーのようで耳は貝殻のようだ。」ユウスケは正直な気持ちを伝えようとした。
「ルビーに貝殻、、、例えが下手ね!」とパルスィは笑顔を見せ、少しだけ緊張が和らいだ。
ユウスケはパルスィに尋ねた。「ごめん、ちょっと聞きたいんですけど、地底に治療施設はありますかね?」
パルスィは首を振りながら答えた。「ないわよ。妖怪は大抵のことなら自己回復するからね。痛む?」
「そうですよね。ちょっとだけ痛みます。痛みが引くまで寝ているので、水橋さんも家に戻ってていいですよ。」とユウスケは言う。
「パルスィよ。下の名前そっちで呼んで。」彼女は少し怒ったように言った。
「分かりました。イタ。意識が、、、」ユウスケはその言葉を残し、意識を失ってしまった。
目の前でその様子を見ていたパルスィは、ため息をつきながら呟く。「何がちょっとだけ痛むよ、嘘つき。」
ユウスケが目を覚ますと、体の折れた箇所を固定するように包帯が巻かれていた。頭がぼんやりとしている中、彼は周囲を見回した。
「起きた?」とパルスィが優しい声で尋ねる。
「この包帯はパルスィが?」とユウスケは少し驚きながら聞く。
「包帯だけわね。」とパルスィはにっこりと答えた。
「他に何かされたの、俺?」とユウスケは不安になりながら尋ねた。すると、横に座っていたお燐が話しかけてきた。
「私がお腹を掻っ捌いて、臓器に刺さっていた骨を治してあげたんだよ。」とお燐が、自分の役割を誇らしげに言った。
「あっ、お燐。ありがとう。医者なの?」ユウスケは感謝の意を表す。
「死体を運んでいるうちに覚えたの。医者はいないから私で我慢するニャ。」お燐は少しふてぶてしく答える。
「それにしても無理するね。いくら能力があるとはいえ、ユウスケは人間だよ?」お燐が心配そうに言った。
「次は気を付けるよ。」ユウスケは反省の念を込めて返した。
「次があったら、多分死んでると思うけどね。」お燐が冷淡に続ける。
「大丈夫、次はもう来ない。私がいる限りはね。」パルスィが力強く言った。
「橋姫が?珍しい事もあるもんだね。」お燐は驚いたように返した。
「怪我をしたのは私が原因でもあるからね。治るまでは面倒見るわよ。」パルスィはきっぱりと宣言した。
お燐は「あ〜、感謝するんだよ。地霊殿に珍しく橋姫が来たかと思えば、頭を下げたんだからね。」とコソコソ話して、ユウスケを楽しませる。
「そこ!余計な事言わない。」とパルスィは焦って言った。
「はいはい。後はご勝手に。あっ、治療代はマタタビ3日分だよ。」お燐が冗談のように言った。
ユウスケはマタタビを生成し、お燐に渡すと、彼女は大きく喜んでいた。