地底スタートの幻想郷生活 修正版   作:四国の探索人

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第18話 回復

パルスィ(寝た……ふふ、今のうちに買い出しかしら)

 

ユウスケを起こさぬよう、そっと扉を閉めると、パルスィは旧都へと足を運んだ。

 

市場に着くと、彼女は迷いなく二人分の食材を選び始める。普段は一人で持て余す量も、今日は自然と手が伸びていた。

 

(……一人じゃない。たったそれだけで、こんなにも気持ちが違うなんて)

 

そんなささやかな幸福を抱きしめながら、街道を歩いていると――

 

「あら、パルスィさん。お買い物ですか?」

 

声の主は、第三の眼を静かに揺らす少女、古明地さとりだった。彼女の隣には、猫車を押す火焔猫燐の姿もある。

 

「ええ。ちょっと食材をね」

 

「あの件、聞いていますよ。宮出口瑞霊を撃退してくださって、ありがとうございました」

 

「……なんとか、ね。でもあれは本当に放っとくと危ないわよ。意識も身体も乗っ取るし、しかも……能力まで使えるなんて」

 

「亡霊でありながら、他人の能力を模倣できるとは驚きでした。かなり危険な存在です」

 

お燐が不安そうに眉をひそめる。

 

「で、その……被害に遭ったユウスケはもう大丈夫なのかニャ?」

 

「意識は戻ってる。でも……やっぱり右腕を失ったショックは大きかったみたいね」

 

「そりゃそうだろうねぇ。人間って脆いし、回復もしないもん。いきなり片腕なくなったら、そりゃ心も折れるって」

 

さとりが一歩前に出て、静かに尋ねる。

 

「私たち、後でお見舞いに伺ってもよろしいかしら?」

 

「えーっと……いいんだけど、あの、ちょっと……誤解しないでね」

 

「誤解?」

 

「説明するの面倒だし……読んでちょうだい」

 

パルスィはさとりと目を合わせ、黙って了承の意思を伝える。

 

さとりの第三の眼が静かに開き、パルスィの心を覗く。

 

「……あらまあ。やっちゃいましたね、パルスィさん」

 

「ちょ、ちょっと待って。でも、彼も納得してるのよ。嫌がってないわ」

 

お燐が怪訝そうに目を細める。

 

「……何があったんですか、さとり様?」

 

さとりは軽く息をつきながら答えた。

 

「どうやら、ユウスケさん……今はパルスィさんの地下室で暮らしているようですね」

 

「……いや、それはもうマジで監禁じゃないですかニャ」

 

「一応、本人もある程度納得しているようですし……外を歩かせるよりは、よっぽど安全だと思いますよ」

 

「なるほど……で、さっきの食材が多かったのは、そういうことだったわけだニャ」

 

「……そ。まあ、ちゃんと食べさせないといけないから」

 

パルスィはややそっぽを向きつつ、でもどこか嬉しそうだった。

 

 

 

 

同じ頃、静まり返った地下室ではユウスケがゆっくりと目を覚ました。

 

「……パルスィは、出かけてるか」

 

薄暗い天井を見上げながら、身を起こす。部屋の中には誰もいない。聞こえるのは、自分の呼吸音と、時折軋む木の音だけ。

 

ユウスケはため息をひとつついて、残された左手で右肩を触った。そこには、もはや存在しないはずの右腕の断面があった。

 

(……助かったとはいえ、片腕を失ったまま地底で生きるのか。義手も治癒魔法もない世界で、これは地味に詰んでる気がする)

 

自嘲気味に笑いながら、ふと思い出す。

 

「“知識を具現化させる能力”……か」

 

呟きながら、ふと冗談半分に右腕の存在を想像してみる。

 

「生成、新しい腕……なんてな」

 

自分でもその言葉の馬鹿馬鹿しさに苦笑しながら、ふと右肩に視線を落とした瞬間、目を見開いた。

 

「……え?」

 

そこには――腕があった。右腕が、生えていた。

 

驚愕のまま、そっと動かしてみる。指が、肘が、関節が――まるで元通りだ。

 

「マジか……動く、普通に」

 

掌を開いたり閉じたりしてみる。筋肉も神経も感覚も、かつての自分の腕そのままだ。

 

「まさか、体の一部まで再現できるなんて……。これ、もっと応用効くんじゃないのか?」

 

驚きと興奮が入り混じる中、ふとパルスィの顔が脳裏に浮かぶ。

 

「パルスィ、帰ってきたらビビるだろうな……」

 

少し笑いながら、ユウスケは生成された新しい右腕を見つめた。

 

(この力……本当に何でもできるんじゃないか?)

 

その能力の可能性が、少しずつ彼の中で現実味を帯びて広がっていくのだった。

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