ユウスケはパルスィに謝るため、頭を抱えていた。
「直接行くのは気まずい、、、かといってこのまにしておくのは不味い気がする。」
時を同じくして、水橋パルスィも自宅にて頭を抱えていた。彼女の表情は険しく、悔いが募っているようだった。
「殴っちゃった。正確には叩いたんだけど、、、お隣さん。仲良くなれるかと思ったのに、、、いつもの癖でしちゃった。」
ユウスケは先に家を出て、旧都へと向かう。街を歩きながら、通りすがりの住人に話しかけた。
「すみません、星熊勇儀は何処にいるかご存知ですか?」
その住人の妖怪は、ユウスケを見て少し驚いたように声を返す。
「お前、勇儀とやり合ってた奴じゃねえかよ。またやるのか?そこの居酒屋にいる。」
「どうも。」
ユウスケは軽く会釈し、急いで居酒屋へと向かう。妖怪は彼の後ろ姿を見送りながら、興味津々な表情を浮かべていた。
「やるからには勝てよ。」
ユウスケは振り返り、苦笑いしながら答える。
「今回は喧嘩じゃないよ。」
「なんだ、つまんねぇの。」
居酒屋の扉を開け、ユウスケは中を覗くと、一人で飲む星熊勇儀の姿が目に入った。勇儀はカウンターに座り、笑顔で彼を迎えた。
「ユウスケじゃねぇか。飲みに来たのか?」
「いや、相談があって。」
勇儀は少し興味を示して、手に持った酒の杯を置く。
「それって真面目な奴か?」
ユウスケはしっかりと頷き、彼の真剣な表情を見た勇儀は、何かが起こりそうな予感を感じ取った。
勇儀は店主に向かい、大きな声で言った。
「店主、お代はここに置いておくぞ。」
そう言って、彼は代金をカウンターに置き、店を出た。外に出ると、人通りのない裏路地に足を進め、立ち止まる。
「それで、どうしたんだ?」
ユウスケは少し躊躇いながら、言葉を続けた。
「最近引っ越したんだが、お隣さんに失礼な事を聞いて怒らせてしまったんだ。」
勇儀は呆れた表情を浮かべた。
「謝りにいきゃいいじゃねえか。」
ユウスケは頭を下げながら、頼み込むように言った。
「気まずいから一緒に行ってくれ!」
勇儀は明確に拒否し、身を引く。
「やだよ!お前が滅茶苦茶に悪い事したなら、何処でも行ってやるが、それ位なら一人で行けよ。」
ユウスケは肩を落とし、素直に謝る。
「そうだよな、、すまない。」
彼は一人、トボトボと帰ることにした。勇儀は彼の後ろ姿を見送りながら、ぶつくさと呟く。
「全く。怒らせた謝罪くらい、一人でやれよ。飲み直しだ、飲み直し!」
勇儀は別の居酒屋に入ろうとしたが、ふと疑問が浮かぶ。
(あの姿勢の低い人間が誰を怒らせたんだ?まあ、いいか。)
居酒屋の暖簾を潜ろうとしたその時、別の人物に声をかけられた。
「勇儀、ちょっと。」
振り向くと、水橋パルスィが立っていた。
「パルスィじゃねえか。どうしたんだ。」
彼女は緊張した面持ちで続ける。
「何も知らないお隣さんを叩いちゃったの。謝りたいから一緒に来て、、、。」
勇儀はユウスケの相談内容を思い出し、察する。
「ユウスケが言ってた相手はお前かよ。」
パルスィは少し顔を赤らめて言った。
「人間なのに何も知らないのに、何故嫌われているのか聞かれて…」
勇儀は優しく頷きながら返した。
「自分の嫌いな所を言わされているので、怒っちゃったんだな。」
パルスィはため息をついて返事をする。
「、、、うん。」
勇儀は彼女の肩を叩きながら励ます。
「俺もあいつも言い過ぎたのは分かったみたいだから、お互いに頭下げな。それで解決するよ。」
パルスィの表情が明るくなる。
「本当?」
「本当だよ。」
彼女も、少し気が楽になった様子でトボトボと帰っていった。勇儀はその背中を見送りながら、静かな裏路地に佇んだ。
ユウスケはパルスィの家の前で扉をノックするが、返事は返ってこなかった。
「無視、、、ではなくいないのか。一度家に帰るか、いや、パルスィが帰ってから尋ねたら、それはそれでストーカーみたいだ。探しに行こう。」
そんなことを考えながら、ユウスケは再度旧都の方へ向かう。そこで驚きの光景を目にした。水橋パルスィの周りにいる妖怪たちがわざとらしく彼女の噂話をしたり、子どもたちが石を投げたりしている。
「やだ来た。嫌われ者の嫉妬の妖怪が。」と妖怪Aが言い放つ。
「多分私たちが誰かに嫉妬するのもあの子が原因なのよ。」と妖怪Bが続ける。
パルスィはなぜか反撃しない。陰口を言われても、石を投げられても何も言わなかった。
ユウスケは思った。「なんであんな扱いをされているんだ。嫉妬を操ると言っても、パルスィが何かをしている訳では無いじゃないか。」
その時、トボトボと帰るパルスィの前に現れたのは一人の鬼だった。
「星熊様に気に入られているからっていい気になるなよ。お前は害しか持たされない嫉妬の妖怪だ。」と鬼が冷たく言った。
「、、、別にいい気になってなんかない。」とパルスィが反論する。
鬼はさらに挑発を続ける。「どうせ俺が抱くお前への嫉妬も糧になるんだろ。"ありがとうございます"と言えよ!」
「もういい。」とパルスィは静かに呟く。
その瞬間、彼女は懐から五寸釘とハンマーを取り出した。状況がまずいと思ったユウスケは先に身体を動かした。
「生成"ハンマー"!」と叫びながら、ユウスケは鬼の頭を後ろから殴った。
「痛ってぇな。なんだテメ?人間じゃねえか。先日噂になってた奴だな。」と鬼は驚きの声をあげる。
「この子が何をしたんだ?」とユウスケは鬼を睨みつけた。
「コイツのことか?存在が迷惑なんだよ。妖怪でありながら人としての未練を持ち、嫉妬を操ってる。」鬼は笑いながら答えた。
「俺たちが争うのは全部そいつが悪い。」と妖怪Aが加勢する。
ユウスケは険しい表情を浮かべながら言った。「そんな様子はなかったですよ。」
しかし、鬼は聞く耳を持たず、「そんな事より今はお前を殺す方が先なんだよ。」と刃を向けてきた。
緊迫した空気が周囲に漂い、ユウスケは状況を打破するための策を考え始めた。どうにかしてパルスィを守り、鬼たちを何とかしなければならなかった。