スペオペ世界でモンスターを専門に狩っている狩人の話   作:アスピラント

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宇宙版ハンターみたいな話もあっていいかなって


序章
宇宙の狩人


 この宇宙には数えきれない怪物が沢山いる。

 街や都市を潰す怪物なんかまだマシな方で、星1つなんか軽く滅ぼすような奴も探せば沢山いる。そいつらはただの軍隊ではどうにもならないぐらい強く、逃げざるを得ない場合も多々ある。

 

 ならどうするか――答えは単純だ。

 怪物を普通に倒せるぐらい強い、同じ怪物を向かわせればいい。

 

 幸いこの宇宙は広い。

 そんな怪物退治を専門に扱う怪物も、同じぐらい沢山いるのだ。

 

 その名もイェーガー。

 宇宙を蔓延る怪物達を退治し、富と名声を得る一騎当千の狩人だ。

 

 ◆

 

 ラナ・クォーレは生命の星とも呼ばれるほど、自然豊かな星だ。広大な熱帯雨林が覆い尽くす豊かな自然環境を持ち、独特の生態系が育まれている。住み着く原生動物の種類も多彩で、学者も注目しているほど。

 

 夜になれば木々の隙間から満天の星々が、蒸気を纏った空気の向こうにぼんやりと輝き、その光を受けて無数の昆虫たちが舞い踊る。巨大な樹木がそびえ立つこの森は、古来からここに暮らすゾナ=エリドと呼ばれる異星人にとって神聖な地であり、生と死を循環させる生命の揺籃でもあった。

 

 外見は人型で、薄緑色の皮膚と頭部に葉のような模様が特徴。体内に特殊な菌を持ち、それを使って植物を成長させたり、自然のバランスを保つ能力を持っているのだ。

 

「聖なる神よ……我々に恵みを」

「「「恵みを」」」

 

 その夜――彼らは焚き火を囲んで静かに宴を開いていた。獲れたての果実の甘い香りが漂い、焚き火の炎が踊るように揺れている。村の長老である老女……オア=メザルが奏でる古代の弦楽器の音色は、森の奥深くまで響き渡り、虫たちがその調べに合わせるように羽音を刻んでいた。

 

「どうか……皆が健やかに過ごせるように……」

 

 若き狩人のリオ=タリナが、焚き火を見つめながら呟く。彼は部族の未来を背負う若者で、森の恵みを狩りながら部族を支える重要な役目を担っていた。

 

 その時だった。

 

 森の奥、暗闇の向こうから、奇妙な音が響いた。

 低く湿った音――まるで何か巨大な生き物が粘り気のある地面を踏みしめているかのようだった。その音は次第に近づき、森の夜鳴きが次々に途絶えていく。不安そうな部族の者たちは顔を見合わせ、焚き火の周りに集まる。

 

「何だ……?」

「……いかん……!!」

 

 オア=メザルが呟くと同時に、それは姿を現した。

 まず見えたのは、ぬらぬらと光る半透明の塊。月光を反射し、粘性の体が不気味に揺れ動く。続いて、闇の中から突き出したのは鋭利な牙だった。牙は体のあらゆる部分に生え、音もなく森を引き裂いていく。

 

「ロロロロッ!!!!」

 

 悍ましい怪物が不気味な咆哮をあげた。

 

「「「うわぁぁぁ!!!」」」

「逃げろ!! 逃げるんだ!!」

 

 リオ=タリナが部族の皆に向かって逃げるよう呼びかける。しかし怪物の進行速度は、見た目からじゃ想像出来ないほど早かった。

 

「うわ!」

 

 最初に犠牲となったのは、見張りをしていた青年だった。一直線に伸びた触手が一瞬で彼を捕らえ、悲鳴すらあげる暇もなくその体を飲み込む。次々に伸びる触手が木々を倒し、焚き火を蹴散らし、逃げ惑う部族の者たちを貪り始める。

 

「走れ!森の奥へ逃げるんだ!」

 

 リオ=タリナは叫びながら、幼い子供たちを抱えて走り出す。しかし、アニポエントの進行は止まらない。その巨体は森の木々を容易く倒し、地表に染み込むように進んでいく。

 

「くそ!!」

 

 リオは毒を塗り込んだ弓矢を引き、怪物の身体に向かって放つ――が粘性の身体の中に取り込まれるだけで、怪物は全く反応を示さない。

 

「化け物……!!」

 

 手持ちの武器でこの怪物を倒すことは無理だと判断し、リオは逃げていく。最後に聞こえたのは、木々の倒れる音と、怪物の牙が森を喰らう音だけ。

 

 数分間怪物が暴れると森は漸く沈黙した。かつてゾナ=エリドの村があった場所は、ラナ・クゥオーレの森の一部に還るように、跡形もなく消えていた――。

 

 ◇

 

 光がリボンのように漂うワープ空間の中を、一隻のスターシップが疾走していた。

 鏃を思わせる鋭利なシルエットは、速度を追求した流線形の設計で、黒金の装甲が星明かりを鈍く反射する。船体には「ヴァラク」という名前が刻まれていた。その名の通りこの船はまるで獲物を狩る狩人の矢そのもののように、虚無の海を突き進んでいた。

 

 そんな船の操縦桿の前で、星図やセンサーの情報を横目に、端末に表示された依頼書(クエスト)を見ている一人の青年がいた。

 

 青年の名はガルダ――若手イェーガーの1人だ。

 

 黒髪が無造作に揺れ、鋭い眼差しが端末の画面を見据える。野生味を帯びた端正な顔立ちは、どこか獣じみた気配を漂わせている。彼の身体はラフな装甲服に包まれていたが、その袖口や襟元から覗く金属的なラインが、彼の肉体が普通の人間ではないことを物語っていた。

 

「――正体不明の怪物、一夜にして村を飲み込む……ね」

 

 ガルダは低い声で呟きながら、スクロールする情報に目を通した。

 

「肝心の怪物に関する情報はなし?」

 

 その声に応じたのは、彼の隣に浮かぶ少女――アポロニアだった。彼女はプラチナブロンドの髪を揺らしながら、白と黄色を基調としたカラーリングの装備を着た彼女は、片手を腰に当ててガルダの見ていた端末を覗き込む。勝気な笑みを浮かべた顔には、どこか挑発的な雰囲気が漂っていた。

 

「それが全くだな、急に襲われた上に……夜中だったから全貌がよくわからなかったらしい」

「ふーん……」

 

 アポロニアは何やら釈然としない様子で、ガルダの隣に座る。しかし前情報が少ないというのは、よくある事なので珍しくはない。

 

「熱帯雨林の惑星ラナ・クゥオーレか。村全体が一夜で消えたって話だけど……怪物はある程度痕跡を残してはいるようだ」

「クエスト依頼者は……ラナ・クゥオーレ付近の星系国家から派遣された環境保護団体か……ふーん」

「だからある程度は調べてはくれてそうだな」

 

 ガルダが端末を操作すると、モニターに村の地図と事件の概要が映し出された。赤くマークされた被害区域は広範囲に及んでおり、そこには「生存者5名」の一言が記されていた。

 

「痕跡ってどんなの?」

「酸性物質の残留、異常な湿度と粘液が残されてるとか」

「遺体は?」

「骨ごと溶けてる」

「溶かしてくるタイプねぇ」

 

 ベトベトの奴とかくせーんだよなぁとアポロニアは嫌そうな顔をする。まぁ匂いは慣れだが、慣れてても不快なものは不快だ。

 

「いずれにせよ単なる野生生物の仕業じゃなさそうだな」

 

 ガルダは端末の画面を閉じ、椅子に深く腰を下ろす。目的地である星が近くなってきたからだ。

 

「どんな奴かはそこに行って確かめるしかない、面倒な奴じゃないといいがな」

「ま、どんな怪物だろうと片付けるわ。それにぃ? こいつ片付けたら後少しで新米イェーガーから脱する事ができるしね!」

 

 アポロニアはシュッシュっと拳を振り抜く素振りを見せつける。気合いは充分……あとは結果を出すだけ。

 

「着陸するぞ、備えておけ」

「はいよー」

 

 ワープ航行を終え、漆黒の宇宙の中を浮かぶ緑の惑星が目に入ると、ガルダは操縦桿を握りしめて大気圏へと突入していった。

 

 ◆

 

 スターシップヴァラクは、熱帯雨林の惑星ラナ・クゥオーレの薄緑色の大気圏を突き抜け、狩猟者の獲物を狙うように密林の中へと降下していった。船体のシールドが熱をはじき、炎の尾を引きながらゆっくりと高度を下げていく。目指すは森の中にある、小さな平地。そこには村の生存者たちとクエストの依頼者が待っていた。

 

 着陸脚が地面に触れ、周囲に舞い上がる土埃の中、ハッチが開いた。ガルダは真っ先に降り立ち、密林の湿った空気を深く吸い込む。その後を追うようにアポロニアが軽やかに跳び降りた。

 

「ここがラナ・クゥオーレか……」

 

 ガルダは視線を巡らせた。

 蒸し暑い空気と共に、巨大な木々の茂みが圧迫感を与えるように覆いかぶさっている。だが、目の前には自然の美しさよりも悲惨な現実が広がっていた。

 

 平地の片隅、集まった生存者たちは疲労困憊した様子で肩を寄せ合っていた。粗末なテントや包帯が急造された野営地の様子を物語っている。負傷者を介抱する者、警戒の目を森の奥に向ける者、そして生存者を指揮しているらしき中年の男性が一際目を引いた。

 

「被害は甚大そうね……」

「そうだな……」

 

 ガルダとアポロニアが神妙な顔をしていると指揮を執る男性が歩み寄った。深緑色の布で包んだ独特の装束を身にまとい、精悍な顔立ちをしている。彼の背後には、部族出身の狩人と老女と思しき二人の姿が見えた。狩人は右肩を負傷しており、辛うじて立っている状態。老女は額に包帯を巻きながら、周囲に視線を走らせていた。

 

「ああ! よく来てくれた! 君たちがイェーガーだな?」

 

 中年の男性が声を上げる。

 声は低く落ち着いているが、その目には疲労と不安が見て取れた。

 

「ああ、ダスク級イェーガーのガルダとアポロニアだ。お前が依頼主か?」

「そうだ、私はクレイトだ。よろしく」

 

 ガルダは簡潔に名乗り、彼に視線を向けた。

 ダスク級はイェーガーの中でも1番多く、見習いから昇格してちゃんと1人でも狩猟が出来る実力を持つ。これだけ聞けば大したことないように見えるが、イェーガーになっている時点で普通じゃない事を知っているクレイトは、少しばかり緊張していた。

 

「あの怪我をしてる原住民が生存者?」

 

 アポロニアはじっと彼らを見つめる。

 

「そうだ、つい2日前村を謎の怪物が襲ってきた。ここら近辺では見なかったタイプの生き物らしくてな……彼らも初めて見たとか」

「初めて……つまり、外部から持ち込まれたかもしれない?」

「突然変異――と見ているが、森の中でずっと生きてきた彼らでさえ、見当がつかないと」

 

 長く森に暮らして来た彼らでさえわからないなら、かなり出所は怪しい。何にせよ……サンプルは必要になる。討伐したら身体の一部を採取すると2人が決めていると、部族の長であるオアが目に涙を浮かべながらやってきた。

 

「どうか……狩人殿……我らの家族の……仇を……!」

 

 涙ながらの訴えを聞いたガルダとアポロニアは揃って答えた。

 

「「任せろ」」

 

 ◆

 

 ラナ・クゥオーレの熱帯雨林は、蒸し暑さと濃密な湿気に満ちていた。頭上では巨大な樹冠が空を覆い隠し、薄暗い薄緑の世界が広がっている。無数の植物の香りが鼻を刺し、湿気でべっとりとした空気が肌にまとわりつく。

 控えめに言っても探索するだけで過酷な環境だ。

 そんな中、ガルダとアポロニアは涼しい顔をしながら慎重に足を進めていた。

 

 ガルダは手にした小型スキャナーを操作しながら、熱帯雨林の地面を見つめる。黒金のスーツに覆われた彼の体は、葉や泥を弾くように設計されている。スキャナーからは時折「ピッ」という電子音が響き、モニターには視覚化されたデータが次々と表示されていた。

 

「……酸性成分の反応も確認。ここは間違いなく奴が通った痕跡だな」

 

 ガルダがスキャナーを覗き込みながら呟いた。

 その視線の先には、地面に広がる異様な粘液の痕跡があった。淡い緑色を帯びたその粘液は、腐敗臭を漂わせながら土壌や植物を溶かしている。

 

「匂いがきついわね」

「だな……」

 

 アポロニアは顔をしかめながら、スキャナーとは別の装置を手に取った。それは放射線の異常を感知するツールだ。ガルダの足元にしゃがみ込み、粘液の一部を専用の小型カプセルに採取する。

 

「放射線の影響は無さそうね」

「気を抜くなよ、アポロニア。粘液の成分だけじゃなく、周辺の痕跡も確認しろ」

「はいはい、わかってるっての。」

 

 アポロニアは片手で髪をかき上げながら、スキャナーを使って付近の温度変化をチェックする。数値は不自然な上下を繰り返し、怪物の残した熱反応が消えかけていることを示していた。

 

「こっちは進行方向が絞れそうよ。ほら……這いずったような痕がある」

 

 彼女が指さした先には、茂みの奥へと窪みが続いている。泥が部分的に溶け、焦げたような匂いが漂っているのがわかる。

 

「戦闘準備」

「はいよ」

 

 ガルダが少し屈み込み、指先で泥を掬うようにして注意深く確認する。その際、彼のナノテクノロジーによる感覚が微細な振動を捉えた。

 

「何か動いてるな」

 

 ガルダは手を握りしめると、駆動音が鳴る。今にも何かが出そうな雰囲気を出していると、茂みの中で不自然な動きがあった。

 

「待って、振動が違う……怪物じゃない!」

 

 アポロニアが彼の肩を叩くと同時に、茂みの中から小動物のような生物が飛び出してきた。茶色い体毛を持つそれは、怯えたように二人を横目に逃げ去っていく。

 

「ビビらせるなよ……」

 

 ガルダは息をつき、再びスキャナーを確認して――叫ぶ。

 

「アポロニア!!」

「!!」

 

 その瞬間――複数の触手が飛び出し、2人は一気に後方へ跳躍して避ける。茂みがザワザワと蠢くと、いきなり悍ましい怪物が叫びながら現れた。

 

「ロロロロロロ!!!!」

 

 その異形は粘液にまみれ、光沢を放つ表皮と無数の触手が不気味に蠢いている。触手の先端からは液滴が垂れ、周囲の植物をジュッと音を立てながら溶かしていた。

 

「うわ、見た目キモッ!!」

 

 アポロニアが叫びながら後方へ軽々と跳躍する。その顔には露骨な嫌悪感が浮かんでいた。

 

「ったく、いきなり出てくんなよ。心臓に悪い!」

 

 ガルダも舌打ちしながら、怪物の触手を紙一重でかわしつつ地面に滑り込むように移動する。触手が激しく地面を叩きつけるたび、泥と粘液が弾けて周囲に散らばった。

 

「おいアポロニア、コイツ意外と手が早いぞ!」

 

 ガルダは軽く地面を蹴り、再び触手の一撃をギリギリでかわす。

 

「知ってるわよ! ていうか、匂いもひどいし最悪!」

 

 アポロニアは鼻をつまむように片手を挙げながら、怪物の攻撃範囲から絶妙なタイミングで跳び退いていた。

 

「だいたいこういう粘液系の奴って、後始末が大変なのよねー。洗浄作業するの私なんだから、もうちょっと考えてくれない?」

「俺のせいにすんな!」

 

 ガルダは苛立ちを隠せない声を上げながら、怪物を見据える。触手の動きを見極めるようにその目が鋭く光った。

 

「こいつの正体を見極めさせてもらおうかな――っと!!」

 

 ガルダは右腕を迷いなく怪物の肉体に突き刺す。

 

「ギィィィ!!!」

 

 怪物は悲鳴をあげながらも酸をガルダに浴びせる。

 普通なら一瞬でぐずぐずの肉塊になるが、酸をとっぱらったガルダに傷は1つもなく、ニヤリと笑うとそのまま身体の一部を引きちぎる。

 

「おらぁぁ!!」

「――――!!」

 

 つんざく悲鳴をあげながら触手を繰り出すが、ガルダは簡単に避けてサンプルを回収――ついで()()()した身体に備わっている解析システムで生体組織分析し、怪物の正体を導き出す。

 

「アポロニア!! こいつの正体わかった!!」

「なにー!!!」

 

「こいつ……変異した真性粘菌だ!」

 

ガルダが叫ぶと同時に、アポロニアが怪物の攻撃をかいくぐりながら驚いた表情で返した。

「はあ!? 真性粘菌って、あの分裂と増殖を繰り返す微生物のこと?」

「そうだ!」

 

 真性粘菌は多くの惑星で見られる単細胞生物の一種だ。本来はごく小さな微生物として森林や湿地帯で腐敗物を分解する存在なのだが、何らかの外的要因や特殊な放射線を浴びたことで異常な進化を遂げ、集合体として怪物じみた存在に変貌しているようだ。

 ただこの怪物に限らず、こうした「変異体」は、一度誕生すると急速に増殖し、生態系を破壊する厄介な脅威となる。

 

 今回ガルダたちが遭遇している怪物もまさにそのケースであった。見た目は一見、単体の巨大な生物のようだが、実態は数え切れないほどの粘菌細胞が一塊となり、意志を持つかのように動き回っている。酸性の粘液は防御と攻撃を兼ねた武器であり、宇宙船の装甲すら溶かす。

 

「つまり、こいつはただの生き物じゃなくて、寄り集まって動き回る粘菌の塊ってわけね!」

「そうだ!」

 

 アポロニアは納得したように頷きながらも、顔をしかめて武器を構え直した。

 

「しかも厄介なのは、倒しても分裂して逃げ出す可能性が高い事だな」

 

 ガルダは怪物の触手をかわしながら、分析結果をアポロニアに説明する。その間も、ナノテクノロジーで強化された身体が次々と飛んでくる攻撃を軽やかにさばいていく。

 

「増殖を抑える方法は?」

「こいつを完全に焼き払うか、活動を止める化学物質で細胞レベルから無力化するしかない」

「そう……なら」

 

 アポロニアはガルダの方へ目を向けてニヤリと笑う。

 何をするかはお互いに決まっている。

 

「完全に焼き払うわ!!」

「お前の得意分野だしな」

「あんたもだろ!!」

 

 サンプルは回収、正体と倒し方はわかった。

 あとは消し飛ばすだけである。

 

「ボルトチャージ……20%」

 

 ガルダは自分の身体にエネルギーを充填する。背部から放電しながら溜めたガルダは、そのまま右腕を変形させる。

 

「はぁぁぁ……!!!」

 

 するとガルダの右腕は巨大なキャノン砲へと変わり、空間が歪むほどのエネルギーを溜め込む。しかし溜めているのはガルダだけじゃない。

 

「恒星の炎を我に……」

 

 アポロニアの髪が鮮やかに光り輝き、瞳から炎が漏れ出す。

 アポロニアは人の形をした高次元エネルギー生命体だ。いわばその身体自身が強大な星の力を宿しており、少し力を出すだけで周りを焼き尽くす。

 

「――!!」

 

 尋常じゃない恐怖を感じた粘菌の怪物は逃げようとする――だがもう遅い。彼らにとってぶっ放しは得意分野だ。

 

「あいにくなぁ、怪物さんよぉ!!」

「私らは3秒ありゃ全開だぜ!!!」

 

 2人は同時に駆け出すと、飛び上がって怪物の頭上から地上に向かって狙いを定め、勢いよくエネルギーを解放した。

 

「「BLAST(ブラスト)!!!!」」

「!!!!」

 

 赤と青のエネルギービームが放たれ――怪物の肉体は一瞬で雷光と紅焔によって蒸発、すぐに起爆したのち……爆発のエネルギーが中心へと収束していき、燃え広がらないように掻き消えた。

 

「――っと、雑魚で助かったな」

「ね」

「何はともあれ……クエストは完了だ」

 

 ガルダとアポロニアは難なく爆心地たるクレーターに着地すると、2人してハイタッチをする。蓋を開ければ大したことない怪物だったなと不敵な笑みを浮かべた。

 

 ◆

 

「……今のが……狩人殿の力……」

「すごい」

 

 2人の狩人の力を見て、リオとオアはあんぐりと口を開けていた。対するクレイトの方はもはや呆れ笑いを浮かべていた。

 

(イェーガー……宇宙のあらゆる星々……または銀河にて猛威を振るう怪物を退治する大英雄たち。1人1人があらゆる文明で特異点やら特記戦力、最終兵器と呼ばれてきた異常な者達の集まり……)

 

 まさに噂に違わぬ力だ。

 しかも彼らは本気じゃなかった。

 イェーガーはそのあまりにも強大な力を持つが故に、どの国にも深く干渉はせずに、独立した立ち位置にいる。

 しかし無実の人が怪物や災害によって命を脅かされている時は別だ。

 

 彼らは人命……ひいては文明の未来のために絶大な力を振るうのだ。

 

「本当……大したものだ、全く」

 

 森からふざけながら戻ってきたガルダとアポロニアを見て、クレイトは思う。

 

 彼ら狩人がいれば何が起きても大丈夫だと。




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