P「よし、今日の仕事はひと段落つきましたね」
はづき「そうですね~...んっ...」
座りっぱなしで体が固まっていたのか、気持ちよさそうに伸びをする。
事務作業がかなり溜まっていて、二人で対応していてもこんな時間になってしまった。
俺も肩をほぐしていると、「あっ」と何かを思い出したかのような声を漏らした。
はづき「...そういえば、プロデューサーさん、知ってます~?」
P「...?何をですか?」
はづき「最近、女の子たちの間で異性の膝の上に乗るのが流行ってるらしいですよ~」
P「そうなんですか?不思議なことが流行ってるんですね」
はづき「そうなんです~...えいっ」
掛け声とともに、椅子に座っている俺の上にはづきさんが乗ってきた。
椅子ごと後ろに倒れそうになるが、何とか踏ん張ることができた。
P「うわっ!ちょっと、危ないですって!」
はづき「とか言いながら、ちゃんと受け止めてくださってるじゃないですか~」
P「受け止めないとはづきさんが怪我しちゃうじゃないですか...!」
はづき「う~ん...でも、私にはいまいちよくわからないですね~」
P「ははっ...そ、そうですか...」
はづき「そうですね~」
...なかなか降りようとしてくれない。
いまいちよくわからないと言いつつ、困っている俺を見て楽しんでいるようにすら感じる...。
あれこれ言いつつも、しばらくすると満足したのか降りて行った。
その日はそれ以外これといって変なこともなく、普通に帰り支度をして帰宅した。
透「お、いたいた。ねーねー、プロデューサー」
次の日の朝、事務所で書類を整理していると、透が部屋に入ってくるなり話しかけてきた。
P「おはよう透、何か用か?」
透「今、大丈夫?」
P「ああ、なんだ?」
透「最近さ、流行ってるんだって」
嫌な予感がする。昨日の今日だ。おそらく膝の上に乗りたいとかだろうが、別のことかもしれないので知らないふりをする。
P「...何がだ?」
透「膝...枕?あー...なんだっけ、なんか、膝に乗るやつ」
P「そ、そうなのか」
透「そーそー。だから貸してよ、プロデューサーの膝」
P「はは...」
冷汗が垂れる。昨日のはづきさんはほぼ不可抗力だったとはいえ、こう頼まれて了承してしまうとまた話が変わってきそうだ...。
透「え、ダメ?」
P「いや、だめじゃないけど...」
透「じゃあほら、こっちきて。ここ」
そう言ってソファをぽんぽんと叩く。
P「今日だけだからな...?」
透「あー...大丈夫大丈夫。じゃ、失礼しまーす」
とす...と勢いよく膝の上に乗ってきた。軽すぎる。ちゃんと食べてるのか心配になるくらいだ。
ただ昨日のはづきさんと違って、かなり寄りかかってくる。椅子になったみたいな気分だ...椅子?なんか流行ってるのとは少し違う気がする...。
透「うーん、ぐーですねー」
P「はは...そうか。やっぱり透たちの間でも流行ってるのか?」
透「え...」
P「え...って、異性の膝の上に乗るっていう...あれ、違うのか?はづきさんが流行ってたって言ってたけど」
透「あー...うん、流行ってる流行ってる。樋口とかもやってたし」
P「ま、円香がか?」
あの円香が...?同性にすらさせなさそうなのに、異性とするのが流行ってるんだよな...?
P「そ、その相手って言うのは...」
透「あれ、樋口じゃなかったかも。委員長だったかな」
P「え...ど、どっちなんだ?」
透「うーん、どうだったっけ」
今度さりげなく円香に聞いておこう...。円香がこういうことをやるのが全く想像がつかないが、相手が誰だったかによるからな...。
透「でもこれ、動けないね」
P「まあ...動いたら降りちゃうしな」
透「あー...わかった。はい、プロデューサー」
何かを思いついた透が、膝に対して横向きに座り両腕を広げてきた。
ま、まさか────
透「プロデューサー、ほら」
P「いやいやいや!だめだってそれは!」
透「えー、どうしてもだめ?」
P「駄目だ。落として怪我したりしたら大変だし、俺も抱えられる自信が無い」
透「えー、じゃあだめか」
横向きのまま少し何か考えた後、膝の上から降りて行った。
透「じゃー、今度。はい、約束」
P「えっ...いや、約束できるかはわからないからな?...透、どこに行くんだ!?まだ仕事の話してないから!帰ってきてくれ────!」