ちょっとやりすぎ283プロ   作:馬鹿とオタク

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P「家が無くなった!」

 

家が焼けていた。

長年住んでいた賃貸のアパートが。この前夏葉に買い取られ、ひと騒動あった俺の部屋が。

いつものように仕事を終え、いつものように帰宅して、いつも通りではない光景。

家に到着した時、狭い路地には所狭しと消防車と野次馬が敷き詰められていて、タイミングとしてはちょうど盛り上がり時、もう少しで最後の大花火というところ。まるで、火の持つ使命とでも言わんばかりに、須らく全てを燃やすべきだと言わんばかりに、燃え広がっていた。

 

そうして人間の抵抗むなしく火は完全に仕事を終え、燃えカスだけを残して人とともに去って行った後、やっと事は進んだ。

 

 

 

 

一通り手続きを行い、とりあえず今日は事務所からそう遠くないビジネスホテルに泊まった。幸いにも、家が燃えても仕事に支障は出ていない。

とりあえず明日から考えることにしよう。今日はさすがに疲れてしまった。

 

 

 

 

翌日。

 

P「おはようございます...って言っても、まだ誰も居ないよな」

 

それもその筈、まだ朝の5時半だ。自分でも驚くほど眠れなかった。ほぼ確実に家が燃えたということがメンタルに来ているのだろう。事務所だって家の様に思っているが、それはどこまで行っても「様」の域を外れることはできない。そこまで家に思い入れは無かったつもりなんだが、心の底では意外とそうでも無かったらしい。

 

 

さて、普段の行動でも普段より余裕ができた時、何かと普段とは違うことをしたくなるのではないか。

そんなことを考えた当の本人も例に漏れず、早く来たからと言って仕事をするわけでも無くて、ただ外を眺めたり、事務所に飾ってある花に話しかけてみたり、ラジオ体操をしたりしていた。

そうして1時間が経ったくらいだろうか、まだ7時にもなっていないというのに事務所のドアが開いた。

 

こんな早い時間から誰だろうと思っていると、ドアが開いてまず、銀色の綺麗な髪が隙間から顔を覗かせる。

 

霧子「プロデューサーさん...おはようございます...!」

P「おはよう、霧子!今日は朝早いな」

霧子「はい...コデマリさんたちにお水を...あげたくて...」

 

そうして慣れた手つきで事務所に飾ってある花たちに話しかけながら、一つ一つ丁寧に水をあげていく。

そんなゆったりとした霧子の姿を見ていると、睡眠不足と軽度の運動のせいもあり眠気が襲ってきた。

 

霧子「プロデューサーさん...?」

P「......あ、ああ、どうかしたか?」

霧子「いえ...その、プロデューサーさんが何だか元気が無いように見えて...私の気のせいだったらいいんですけど...」

P「は、はは...やっぱりそう見えるか」

 

自分でも自覚があるぐらい疲弊していると、霧子相手には隠せないな。

俺の反応を見て明らかにいつもと違うのを感じ取った霧子は、ぱたぱたとスリッパの音を立てながら駆け寄ってきた。

 

霧子「どうか...されたんですか?...少し、失礼しますね...」

 

額に霧子の手が当たる。少しひんやりとしていて気持ちいい。俺に熱はあるわけでは無いのだが、外から来たばかりの霧子の手は気持ちよかった。

 

霧子「熱は...無いと思いますけど...一応体温も計ってください...。それと...何か心当たりがあるなら話して欲しい...です...!」

P「...はは。そんな目で見つめないでくれ。実は────」

 

普段は話すかもう少し迷うところだが、今日は少し違った。なぜか次から次に、果てには昨日の出来事をすべて話してしまった。

 

霧子「そう...だったんですか...。プロデューサーさんのお家が...ごめんなさい...私にはどうすることもできなくて...」

P「いや、話を聞いてくれるだけで少し楽になったよ。ありがとな」

 

それでも霧子はまだ考え込むような仕草を見せていた。おそらく、俺に何かしてやれることは無いかと模索しているのだろう。

話を聞いてくれるだけで十分だというのに。

 

霧子「え、と...少し...待っていて下さい...!紅茶を淹れてきます......。私にできることは...それくらいしかないので...」

P「ああ、そんなに気を使わなくても...」

P「いや、ありがとう。ありがたくいただくよ」

 

そうして霧子が淹れてくれた紅茶を飲んでいると、緊張の糸が完全に切れたのか、先ほどとは比べ物にならないくらいとてつもない眠気が襲ってきた。

 

P「あ...すまん、霧子。少し仮眠を取るな...ちょっと...眠気が...」

霧子「はい......おやすみなさい...ふふっ...」

 

その後、どんな体制で眠りについたかは覚えていない。寝た。というより、気絶したという方が正しいか。

 

 

P「......ん...」

 

目が覚める。どのくらい寝ていただろうか。体にはブランケットが掛けられていて霧子はすでにいなかった。

 

夏葉「あら、おはよう」

P「な、夏葉!?霧子は...」

夏葉「霧子ならすでに事務所を出たわよ」

P「そうか...。今の時間は...」

夏葉「ちょうど8時半ね」

P「ってことは...1時間くらい寝ていたのか...ありがとう。早速仕事に戻るよ」

夏葉「あら、待って頂戴」

P「...?どうかしたか?」

夏葉「...ええ、その言葉、そっくりお返しするわ。プロデューサー」

夏葉「アナタが寝ている間、かなりうなされていたわ。そして霧子に原因を聞いたところ、直接アナタから聞いて欲しいと言っていたの。もちろん...聞かせてくれるわよね?」

 

家が燃えた。なんて大きな出来事、夏葉が気づくのは時間の問題だ。ここではぐらかすより、正直に話してしまった方がいいだろう。

 

夏葉「...ありがとう。そんなに辛いことをアナタの口から話させてごめんなさい」

P「いや、いいんだ。色々あって疲れてはいるけど、辛くはないんだ」

夏葉「そう......。それと、ごめんなさい。実は、あなたの家が燃えたことは知っていたの。火事がニュースになっていて...そこで」

夏葉「でも、アナタの口から話してほしかった。パートナーとして...信頼されているか確かめたかったの...。きっと私は、ここではぐらかされていたら深く傷ついていたと思うわ。でも、そうじゃなかった。アナタはちゃんと話してくれた。ありがとう」

P「い、いやいや!そんな大げさにいう事じゃないし、夏葉に隠し事は通じないと思ったから...。それに...夏葉が傷つくようなことなんてしないさ」

夏葉「ありがとう...。私もこれ以上アナタを悲しませたりしないわ」

P「ははっ...そういってくれて嬉しいよ」

夏葉「とりあえず、昨日のことについては安心して頂戴!」

P「......へ?」

 

少ししっとりしていた夏葉だったが、突如として立ち上がると、いつもの自身満々な夏葉に戻った。

ただ、安心して頂戴。とはどういう事だろうか。

 

P「安心して...ってどういう...?」

夏葉「あら、そのままの意味よ。その調子だと、まだ次の住所は決まっていないんでしょう?」

P「あ、ああ...その通りだけど...まさか...」

夏葉「そのまさかよ。でも安心して、私の家に...なんてことは流石にしないわ」

 

家を買うなんて暴走っぷりを見た後だと何を言い出しても可笑しくなかったので、少し理性的になっていてくれて助かった。

 

夏葉「有栖川グループの持つマンションがそう遠くないところにあるの。プロデューサーの次の家が決まるまで...もちろんいつまでだって居てくれていいわ。わかりやすくメリットから説明するわね。まずは────」

 

そうして、半ば説き伏せられるように夏葉の紹介してくれたマンションに住むことを決めた。

あんなことが待っているとも知らずに────。

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