P「ちょっと気になっててさ...」
いつもはにちかの冗談なんかも軽く聞き逃せていたが、いよいよそうも行かなくなってきた。
無視できないほどに腹回りがもちっとしてきたことに対して、若干相談のような形で甜花に愚痴をこぼす。
甜花「...?プロデューサーさん、太ったの...?」
P「ぐ...、い、いや、体重はほとんど増えた訳じゃないんだ」
P「筋肉が落ちてきて、それでお腹の周りに脂肪がな...」
甜花「プロデューサーさん...太ったんだ...!にへへ...」
P「は、はは...。そう、だな...。受け入れるよ。俺は太ったんだ...」
なんとか自分の中で言い訳を考えて受け入れまいとしていた事実を、甜花によって無理に受け入れさせられた。
甜花「でも...あんまり変わってない...よ?」
P「服越しだとあんまり目立たないかもな。ちょっと気になってきたくらいだし、おもむろに見た目に出てきてたら今頃夏葉にしごかれてるよ」
夏葉にトレーニングを頼むのも悪くないんだが、できるだけ負担を掛けたくない。いや、本人はなんとも思わないだろうし、なんならノリノリだろうけど...。
甜花「あう...有栖川さんのトレーニング...大変そう」
夏葉のトレーニングを想像してへにゃへにゃになっていた甜花だったが、顔をばっと上げた。何かを思い出したようだ。
甜花「そうだ...!甜花、いいもの持ってる...!」
P「本当か!」
甜花「うん。明日、持ってきましゅ...!」
P「あー...!これ、少し前に流行ってたなぁ。甜花も買ってたのか!」
甜花が持ってきたのは、家で楽しく運動ができるコンセプトで大流行したゲームソフトだった。専用のコントローラーを使って、体全身を鍛えることができるというものだ。
甜花「うん...流行ってたから甜花も買ったけど、すぐやらなくなっちゃったから...プロデューサーさんに貸してあげる...!」
P「ありがとう!これでなんとかしてみるよ!」
甜花「プロデューサーさん...頑張って...!これでプロデューサーさんもむきむき...!にへへ...」
とりあえず今日から時間のある時にやってみよう。ついでにスーツの邪魔にならないように筋肉もつくと良いな...。
と、意気込んでからしばらくが経過した。
正直に言うと、ゲームだからと最初は少し舐めていたが、実際に初めて見ると効果は絶大だった。
想像よりもしっかりトレーニングでどこの部位を鍛えられるかまでしっかりと教えてくれるため、気になる部位を重点的に鍛えることができた。それに加えて、ちゃんとトレーニングがキツイ。最近ではだいぶ運動できる時間が増えたが、最初なんて10分運動するだけでもひいひい言っていた。なんとかゲームの面白さでカバーできないものかと思ったが、やはり身体的な労働には敵わず、継続は意外と大変だった。
だが、その成果もあって予定通りだった腹回り以外の部分も鍛えることに成功した。
傍から見たら小さな変化だが、こういうのは突き詰めると限度が無いし、後はこれを維持することを目標にしよう。
それに、そろそろ甜花にソフトを返さないといけないしな。
摩美々「お疲れ様でーす」
咲耶「お疲れ様です」
P「二人ともお疲れ様」
P「あ、そうだ」
「「?」」
別に二人とは顔を合わせていなかったわけでもないけど、誰かに気づいてもらいたい...!
気付いてもらえてなかった時点であまり変わってないことは明白だが、改めて見ると違いに気づいてもらえるかもしれないし...!
P「最近、何か気付かないか?あいや、仕事のとかではないんだけど...」
摩美々「...?いまいち話が見えてこないんですけどー...」
咲耶「すまない、プロデューサー。私も摩美々と同じでいまいちどういうことか...」
P「あー...その、ほら、な、何か気付かないか?」
それとなく筋肉をアピールするも、二人とも?と言った様子だ。
あの摩美々ですら本当に困惑しているような表情になってきて、なんだか辛くなってきた。
諦めて事情を話した。
摩美々「と言われましてもー...ねー咲耶ー」
咲耶「そうだね...。気づけなかったことはとても申し訳なく思っているのだけれど、今回はプロデューサーにも非があると思うな」
P「え」
摩美々「だってー、いつもの恰好じゃ筋肉なんてほとんど見えないしー」
咲耶「そうだね。それに、プロデューサーは元から体のラインが細くないから、ジャケットの上からだと筋肉量を想像するのは難しいね」
P「確かに...言われてみればそうだな。鍛えたのも腹筋とかが中心だし...うーん、鍛えた成果を誰かに見てもらいたかったんだが」
スーツがパツパツになってたりしたら流石に分かるんだろうけど、そこまで過剰には鍛えてないしな...。
摩美々「で、成果はどうなんですかー?」
P「え?いや、だから鍛えはしたんだけど見せられなかったな...って話で...」
咲耶「おや、それは話が違うじゃないか。プロデューサーは私たちに努力の成果を見せてくれるんだろう?」
摩美々「そこまで言ったのに見せてくれないなんてー、いじわるじゃないですかー?」
P「うーん...見せるって言ったって、肩とかはほら...服着てるし」
今の恰好はジャケットにシャツだから、正直腕以外見せるところは考えてなかった。
もちろん下半身も鍛えてはいるが、見せるとなったら論外だ。
摩美々「まだあると思いますけどー、こことか」
摩美々に腹を小突かれる。確かに、一番鍛えた場所ではあるが...。
P「ここ、って...!流石にちょっと恥ずかしいぞ」
咲耶「おや、普段私たちの衣装ではさんざんお腹を出させているというのに...摩美々もそう思わないかい?」
摩美々「そうだそうだー。プロデューサーも腹を出せー」
P「別に、みんなにお腹出させてる衣装は俺がデザインしたわけじゃないからな!?」
P「じゃ、じゃあいくぞ...?」
改めて考えると、おかしなことをしている気がしてきた。
...いや、でも夏に水着になってたりしたし...今更か。
女子高生二人にまじまじと見られながら服をたくし上げ、腹筋を見せつけるという異様な光景に眩暈がしそうになる。
摩美々「なんかー...ゆっくりだとえっちな感じなんですけどー」
咲耶「そ、そうだね...プロデューサーの恥じらいが伝わって来るよ」
P「お、おかしい...。こういう展開になるはずじゃなかったんだが...!」
ボタンをいくつか外し、みぞおちの辺りまで服を上げたところで止める。
咲耶「...っ男性らしい体つきだね。アナタの努力の成果が良く見えるよ。」
顔を赤らめながら言う咲耶をよそに摩美々はというと────。
カシャ、カシャ
P「って、流石に写真はやめてくれないか...!?」
摩美々「いやー、これは抜き打ち検査のためなんでー。定期的にプロデューサーのお腹がぽよぽよになってないか検査しないとー」
と、スマホで口を隠しながら笑っていた。頼むから変なことに使わないでくれよ...。
あれから、定期的に摩美々の抜き打ち腹筋検査が始まった。
サボり始めたギリギリくらいの時期にいつも検査されるため、おかげで腹筋の割れ目は保たれている。
検査のたびに記録として写真を撮られてはいるが、ちゃんと変なことには使わないでいてくれているようだ。
ところで、最近アイドルと話すときの視線が目線より下、みぞおちの辺りを見ているような気がするのだが、気のせいだろうか────。