テレビ『本日4月1日はエイプリルフールですね。エイプリルフールの由来はいくつか説がありますが、主にヨーロッパが起源とされており────』
P「そういえば今日はエイプリルフールか。一年に一度だし、せっかくだからちょっと嘘をついてみようかな」
P「とは言っても、どんな嘘をつこうか。あんまり過激なのも良くないし...俺に関する嘘にしよう。これだったら何かあってもすぐにネタばらしすればいいし」
P「その上でちょっとインパクトがあるのがいいよな...。うん、俺がプロデューサーを辞めるっていうのでいこう。突拍子もなさ過ぎて信じてもらえないかもしれないが、それもそれでいいだろう」
Case1:風野灯織
灯織「おはようございます」
P「おはよう。灯織」
...灯織は結構しっかりしてるし、この嘘は通じ無さそうだな...。でも他に嘘を思いつかないし、当たって砕けろだ!
P「そうだ。灯織、ちょっといいか?」
灯織「?はい、お仕事のお話ですか?」
P「ああいや、仕事の話じゃないんだけど...大事な話なんだ。聞いてくれるか?」
灯織「はい......?」
デスクから立ち上がって、ソファに座っている灯織の対面の椅子に座る。洞察力の高い灯織に少しでも嘘と悟られないように、表情から気を付ける。
P「...聞いて欲しい。俺、実はプロデューサーを辞めようと思うんだ」
灯織「......えっ」
その言葉を聞いた灯織は固まってしまった。瞬きすらしていない。おそらく思考を巡らせているのだろう、察しのいい彼女ならすぐに気づいてしまいそうだ。
灯織「そう...ですか。......あの、いつ頃退職されるのでしょうか」
考えてなかった。そうだな...適当に近い内とでも言っておくか。
P「ああ、近いうちに退職する」
灯織「......!!......ど、どうして黙っていたんですか?」
P「その...黙っていてすまん」
灯織「真乃とめぐるは......」
P「...二人にはまだ話していない」
灯織「......私たちは、それほどに信頼されていなかったのでしょうか」
P「えっ」
灯織「...っ!すみません、失礼します...!」
部屋を出ていく灯織の頬に、涙が見えた気がした。これはまずい...!早くネタばらししないと!
P「ひ、灯織!待ってくれ!」
急いでドアを開けると、すぐそばで立ったまま泣きじゃくっている灯織が居た。
P「灯織...」
灯織「す、すみません、プロデューサー...。私、どうして、相談してくれなかったんだろうって、思って、プロデューサーに考えがないはずがないのに、相談してくれなかったことに勝手に感情的になって、すみません」
P「灯織...すまん!嘘なんだ!」
灯織「......へ?」
ここでネタばらし。考えうる限り最悪の状況だが、これ以上黙っていると考えられないほど最悪な状況になってしまいそうなので、すべてを話した。
灯織「もう、いくら今日がエイプリルフールだからと言って、言っていいことと悪いことがあります」
P「すみません...」
灯織「そもそも、どうして辞めるなんて嘘をついたんですか」
P「いや...インパクトがあると思って...」
灯織「インパクトありすぎです!怒りますよ!」
P「(もう怒ってるような...)」
灯織「いいですか!何度も言いますけど、こんな嘘は絶対にやめてください!言っていいことと悪いことがあります」
P「はい...すみません...」
灯織「でも...本当に、辞めなくてよかった...。私、プロデューサーに辞めるって言われて、プロデューサー以外のプロデューサーで、今までと同じようにアイドルを続けられるかを考えていたんです」
灯織「でも、考えているとどうしても途中で涙が止まらなくて...本当に、辞めなくてよかった...」
P「すまん...こんな嘘をついたあとで信じてもらえないと思うんだが、俺は灯織のプロデューサーを辞めない。信じてくれ」
灯織「......ちゃんと、聞きましたからね。約束ですよ、プロデューサー」
P「...ああ、約束だ!」
Case2:有栖川夏葉
夏葉「プロデューサー、おはよう。今日もいい朝ね」
P「おはよう、夏葉は元気そうだな」
夏葉「あら、プロデューサーは元気ではないのかしら?」
P「いや、元気だよ。でも...」
夏葉「...?」
P「夏葉、少し時間あるか。今から大事な話がある」
夏葉「ええ、大丈夫よ」
P「...落ち着いて聞いてくれ。実は俺、プロデューサーを辞めるんだ」
夏葉「......嘘ね」
う...さすがに夏葉には通じなかったか。仕方ない、ここまで見通されているとこれ以上粘っても仕方なさそうだし、早々にネタばらしするか。
P「......さすがに夏葉には通じないか」
夏葉「ええ、だって、プロデューサーはずっと私のプロデュースをしてくれるって約束してくれたでしょう?」
P「ははっ、それもそうだな」
夏葉「それで、次はどこの事務所に行くのかしら?」
P「......え?」
夏葉「?だって、プロデューサーは私の相棒ですもの。私に相談するってことは、そういうことでしょう?」
おや...?何かおかしいな?
P「すまん夏葉、これは...」
夏葉「あら、てっきりプロデューサーはそのつもりで話してたのだと思ったのだけれど、違ったかしら?」
夏葉「プロデューサー、アナタと私は相棒。そうよね?」
P「あ、ああ」
夏葉「つまり、私のプロデューサーはアナタ以外にあり得ないということ。そのアナタが他の事務所に行くというなら、私もついていくわ」
仕事を辞める=別の事務所に行くということになっているようだ。どうやらプロデューサーを辞めるという選択肢は夏葉の考えにはないらしい。
夏葉の勢いに気圧されながらも、おそるおそる質問する。
P「その...放クラのみんなは...」
夏葉「もちろん説得はしてみるわ。仲間が離れ離れになってしまうのは寂しいもの。...でも、いずれ来るその時が、今になってしまうのかも知れないわね」
ほ、本気だ...。流石にこれ以上夏葉にこれからのことを思考させてはいけないと直感が告げている...!
P「...っ!な、夏葉!すまん!実は嘘をついてたんだ!」
焦ってネタばらしをする俺に対して、夏葉は驚いた顔一つせずニコリと笑った。
夏葉「ふふ、もちろん分かってたわ。今日はエイプリルフールでしょう?」
P「あ、あはは...なんだ、最初から分かってたんじゃないか」
夏葉「ええ、でも、いくらエイプリルフールとはいえ今日の嘘はあまり良いものではないわ。嘘も方便と言うし...少し、プロデューサーに反省してもらおうと思ったの」
P「はは...俺は軽い嘘だと思ってたんだが、夏葉にとってはそうではなかったんだな...すまん」
夏葉「当たり前じゃない。でも、こんなに分かりやすい嘘も無いわ」
P「そうだったか?」
夏葉「ええ、だって、もしも何かある時は私に相談してくれるでしょう?」
P「まあ、誰にも言わずに去るなんてことはしないだろうな。夏葉はこういう時に頼りになる筆頭だし、辞めるなんてことは少しでも脳裏にちらついた時点で相談してたと思うよ」
夏葉「そうでしょう?」
と彼女は自信満々に胸を張っていた。
P「ところで...」
夏葉「何かしら?」
P「俺に仕返し中のあれは...嘘だよな?」
夏葉「..................もちろん嘘よ」
P「..................」