「芸能プロダクション『
両手を合わせ、とびっきりの笑顔で説明を行うラヴ。彼が意気揚々とセリフを口にしている間も、オフィスで待機していた3名の美女はこちらに熱い視線を向けていたものだ。
恵まれた美貌を我が物とし、それを自覚しているが故の自信ありきな魅力をオーラとして醸し出す彼女達。今も縄張りに紛れ込んだ1匹のオスへと無言アピールで見つめ遣ってくる中、ラヴは数歩と進んで前に出ながらウキウキと言葉を続けてきた。
「それじゃあ1人ずつ自己紹介でもしていきましょうか! まずは、はい! “ラミアちゃん”から!」
ラヴの提案を受けて最初に反応を見せたのは、ちょこんとソファに座ってスマートフォンを弄っていた可憐な美女だった。
158cmほどの背丈であり、小柄で華奢な体格をしていながらも悟ったようにどこか大人びた雰囲気を纏う人物だ。髪型は、前髪をぱっつんに切り揃えたヴァイオレットカラーのセミロングヘアーであり、今も被っている猫耳がついた黒色キャスケットとは親和性バッチリで彼女のチャームポイントとも言えるだろう。
ヴァイオレットカラーの大きな瞳は宝石のように輝いており、きゅるんとした可愛らしい印象を与えてきた。また、丸みを帯びた顔の輪郭やおねだりするような自然な上目遣いからは愛嬌という言葉がひしひしと伝わってきて、男の
その幼げながらも上品な容貌には無機質な印象も感じられて、
「どーも、“ラミア”と言いますー。今日は社内見学というコトでコチラにいらっしゃったみたいですけど、まーそんな気張らずに、テキトーに見学していただければそれでイイと思いますよー?? ウチの名前は別に憶えてもらっても、憶えてもらわなくてもイイです。そんなトコですかねー。そーいうワケで、よろしくお願いしまーす」
「よ、よろしくお願いします」
適当な調子で紹介を終えた可憐な美女ラミアは、セリフを終えると共に手元のスマートフォンへと視線を戻した。なんともクセがありそうな人物に半ば困惑していたこちらを差し置いて、ラヴは変わらぬ様子で自己紹介を進めていく。
「じゃあ次は、“メーちゃん”お願いね!」
彼の促進で次に反応を見せたのは、テーブルの上に大量のファッション誌を散らかしながらラミアの向かいにあるソファでマニキュアを塗っていたイケイケな美女だった。
身長163cmほどである彼女は健康的な体格を有する人物であり、キラキラと鮮やかに光るメイクやカールさせた長いまつ毛などが非常に煌びやかな印象を与えてくる。髪型は、ウェーブがかかった
ネイビー色の瞳がこちらの姿を興味深そうに捉えており、溢れ出す好奇心や相手に抱く一方的な理想などが目の輝きとなって表れていた。また、圧倒的『陽』を醸し出す彼女のオーラからは一種のカリスマ性を感じさせ、この光にあてられた男は間違いなく恋に陥るだろう。服装は、膨らみのあるダボッとした袖や裾がストリート系の印象を与えてくる大きなシルエットの紺色ロングマウンテンパーカーと、ショート丈のへそ出し白色トップス&黒色キャミソール、落ち着いたアイボリー色のワイドパンツに、光沢のあるミント色のヒールサンダルと、所有物であるグレーの2wayショルダーバッグ。
悪戯な視線と生意気に吊り上げた口角が自信満々とばかりに勝気な表情を生み出しており、そんなある意味での楽観的な純粋さはまさにイマドキ風の小悪魔ギャルとも言えた。そんな、今も挑戦的に見つめてくる彼女は目をぱちくり瞬きさせると、次にもお気軽な調子で自己紹介を行ってきた。
「ウェーイ! “メー”でーす。よろ~! てかさ、ボディガードって聞いてたからさ~、もっとこう、がっちりした感じの人が来るって思ってたよね。そしたらなんか優しい感じの人が来たから、え~意外~ウケる~、みたいな? やっぱ草食系? それとも隠れ肉食だったりする的な? あはっ、どっちでもイケるな~。まぁそんな感じで? 今日はよろ~」
「よ、よろしくお願いします」
一通りのセリフを終えて、ギャルピースをしながらこちらの反応を悪戯に観察してきた美女メー。彼女からの視線が痛いほど突き刺さる空間の中、ラヴは引き続き自己紹介を進めてきた。
「じゃあ最後に、“レダちゃん”お願いね!」
トリとして自己紹介を頼まれた人物は、大人の佇まいで窓際の観葉植物に水やりをしていた妖艶な美女だった。
167cmはあるだろう背丈の彼女は、服越しでも分かるほどのグラマラスボディを誇る非常に魅惑的な人物だった。髪型は、胸元辺りまで伸ばしたもみあげが特徴的である
オッドアイの持ち主であるらしく、彼女の右目は水色、左目はピンク色というパステルカラーが主張を強めていた。フェロモンを帯びた肉付きは頬の輪郭や体型のシルエットを形作り、それでいて全身から溢れ出す色気が相手の平常心を掻き乱す。服装は、医者が身に着けている白衣のような軽やかさでなびく黒色のロングチェスターコートと、黒色のウエストベルトでスタイルアップしたベビーピンク色のミニAラインワンピースに、魅惑の太ももに食い込む黒色オーバーニー&チャンキーヒールの黒色ミドルブーツを着用している他、付近には札束なんかが入っているイメージが強いジュラルミンケース風の黒色ドクターバッグが置いてある。
自他共に認める天賦の色気は男の視線を虜にし、釘付けとなった対象を彼女は捕食者のような眼差しで捉えていく。
「初めまして、“
「よ、よろしくお願いします」
腹部に沿えた左手と、その甲に右肘を掛けた佇まいで、口元に右手をあてがいながら艶めかしく微笑む美女レダ。居合わせた3名が自己紹介を終え、このガールズグループ『
「さぁ、これでメンバーの自己紹介は済んだわね! 彼女達をまとめるリーダーが今日不在なのが心残りだけれども、まずは揃った面々で親睦を深めるところから始めていきましょうか! そういうわけで、今日のレッスンが始まるまでは自由時間! それまではみんな、彼と好きなようにお話ししてもいいわよ~!」
まるで、学校の行事で自由時間を言い渡されたかのような感覚を覚えたものだ。急に与えられたフリータイムに自分が困惑していく最中にも、ラヴの宣言と共にギャルな美女メーとサキュバスな美女レダは待ってましたと言わんばかりにこちらへ近付いてきものだ。
真っ先に話し掛けてきたのは、ソファから飛び出すように接近してきたメーだった彼女は初対面にも関わらず密着するように距離を詰めながら言葉を掛けてくる。
「ヤバ~!
「えっと、俺は
「マ~!? 雰囲気は草食系なのに名前めっちゃパリピでウケるんだけど! じゃあカンキくんって呼ぶわ! っつーワケで今からあたしらズッ友な~!」
「お、俺でよろしければ……」
「てか敬語じゃなくていいって! その方がお互いラクでいいっしょ?」
「そ、そう? じゃあ」
勝気な笑みを浮かべていたメーが煌びやかなオーラを放ちながら喋ってくる一方で、次に近付いてきたレダは艶めかしい手つきでこちらにボディタッチしながら色っぽく声を掛けてくる。
「あら、とってもイイカラダしてるじゃない……。カンキくんって優しそうな顔をしているのに、体つきは誰よりも男らしいのね」
「あっ、ちょ」
「ウフフ、可愛らしい反応。オンナの人に触られてビックリしちゃった? もしかして緊張してる? 大丈夫よ。だってわたし、あなたのようなウブなオトコの人……大好きだから」
「いや、その」
「年齢は? わたしは28。カンキくんは?」
「えっ。22、です。が……」
「可愛い~。それじゃあ今日から、わたしがあなたのお姉さんってことかしら? これからよろしくね。年下のボディガードくん」
「わァ、ぁ……」
美女に近寄られ、しかも今までに体験したことの無いようなリップサービスを受けて思わず語彙を失っていく。しどろもどろというか、もはやどろどろな思考で何をどうしたらいいか分からなくなっていた傍らで、ふとメーが悪戯に笑みながらレダとそんなやり取りを交わし始めた。
「ププッ、その歳でお姉さんとかキッツ~。あたしらからすりゃあ、レダは十分おばさんだって」
「は?? ぶつわよ??」
「うわ~、大人げな~。ついでにあたしとラミアはぴちぴちの20だから、そこんとこよろ~」
「ラミアはともかく、あなたは精神年齢が実年齢と釣り合ってないじゃない。ウフフ、まだまだ年齢が若いメーにはまさに、アダルトチルドレンって言葉がお似合いねェ~~~~???」
「はあああああああ~~~~~~~~???? 意味わかんね~~~~~~が????」
なんか始まった。
途端にバチバチと火花を散らすメーとレダ。ただ2人の掛け合いにはどこか冗談っぽいノリが感じられ、これも信頼しているチームメイトだからこそできる言葉のキャッチボールなのかもしれないとも思わされた。とにかく、メーのグレた表情とレダの地声を知れたことで彼女達への理解が一層と深まったような気がする。
そんなやり取りをしている間、ソファへと移動したラヴはその背もたれに両手をつきながらスマートフォンを弄るラミアへと話し掛けていった。
「最近の活動で何か困った事は無いかしら? 気になる事があったらどんどん教えてちょうだい」
「そーですねー。……デビューしてから間もないグループにも関わらず、有難いコトにファンの方々がウチらを布教してくださっているみたいです。ウチらのアカウントのフォロワーも増え始めておりますし、最近ですと移動中なんかにファンと名乗る人物から声を掛けられたコトもありました」
「ふ~む……知名度が上がった以上は仕方の無いことではあるけれども、やっぱり声を掛けられる場面が増えたとなると移動時間も気が抜けなくなってくるわね」
「ウチらの事情が事情ですから、襲撃や拉致目的で接近されてもおかしくありません。ですけど、このよーな事態を見越した上でのカンキさんのスカウトだったんですよね??」
「人員を増やしておくに越したことはないでしょうから。特に今回は、貴女達が甘えられるような真面目で優しい
「いつもありがとーございます。ホントによく適材を見つけてきますよね。ラヴさんの見立て通り、メーさんやレダさんが喜んでいるよーで何よりです」
ラヴは腰を下ろしてソファの背もたれに両手と顎を乗せ、ラミアは顔を上げた視点のまま首を曲げてラヴを見つめていく。可憐で淡々とした面持ちのラミアが瞳をくりくりっとさせながら彼を見遣る中、ラヴは面妖でありながらも神妙な様相で続きを喋り出した。
「……それで、さっきの懸念点は他の人にも伝えてあるのかしら?」
「プロデューサーにはお伝えしてあります。ウチらグループメンバー4人とボディガードのカレが、泉楽町内の移動中にその場面と出くわしました」
「一応、事務所全体で共有しておきましょうか。通達は私の方でやっておくから、ラミアちゃん達は気にしなくてもいいわよ!」
「お気遣いありがとーございます」
「ひとまず、こんなところかしらね。ありがと! また聞かせてちょうだい!」
自分の目の前では未だにメーとレダがガミガミやっていたため、ラヴとラミアの会話はよく聞き取れなかった。だがラヴは納得したような清々しい顔で立ち上がると、手を叩いて甲高い音を立てながら歩き出し、次にも張り切った様子で周囲の面々へとそれを呼び掛けたものだった。
「さぁ! 予定通りこれからレッスンするわよ~! 特に今日は頼れるボディガード候補の子が見学に来てくれているのですもの。彼をここに引き入れるためにも、みんなの頑張る姿でたくさん魅了するわよ~!! そういうわけで、レッスンの開始は10分後! 場所は3階のレッスン室! さぁ、ラミアちゃん、メーちゃん、レダちゃん。練習着に着替えてらっしゃ~い!」