Repeat after me 「ラミ☆エル」!!   作:妖怪「キラキラ様」

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紆余曲折あってなぐり書きしました。
お目汚しですが、楽しんで頂ければ幸いです。


PROLOGUE

 

 ある日、「彼」は天使の噂を聞いた。

 

 曰く、天使は空に在られる。

 曰く、天使は高らかに歌う。

 曰く、天使は何物をも通さぬ鏡を生み出す。

 曰く、天使は全てを貫く光の矢を放つ。

 

 

 

 曰く、天使は美しい青い結晶の姿をしている。

 

 

 

 まことしやかに囁かれる噂に興味を持った「彼」は、その天使に会いにいった。

 

 確かに天使は美しかった。

 

 空に浮かぶ全長十メートルに及ぶかという、正八面体の美しい「青」。

 

 確かに天使は美しかった。

 

 だから、「彼」は欲しくなった。

 

 天使のあの美しさは、自分にこそふさわしい、と。

 

 だが、天使は美しいだけではなかった。

 

 「彼」は注意深く観察して、「矢」も「鏡」もどれほどのものか理解しようとした。

 

 結果、とてつもなく危険な力だと思ったが、なおさら「彼」は天使が欲しくなった。

 

 あれだけの力があれば、弟を奪った愚か者にどれほどの恐怖を刻んでやれるだろう。

 

 だから「彼」は天使を奪った。

 

 注意深く観察して、無害を装って、時間をかけて、じっくり腰を据えて、天使の力を手に入れた。

 

 何故か最初から随分と警戒されていて、当初の予定よりずっとずっと時間も手数も掛かってしまったが。

 

 それでも「彼」は天使を手に入れた。

 

 天使の死体を足蹴にして、優越感と達成感に酔いしれて 。

さあ、早速天使の力を使ってみよう、と考えて。

 

 

 

 「彼」は腹を下した。

 

 

 

 わけがわからなかった。

だが、事実として「彼」は腹を下した。

 

 一日が経った。

 

 二日が経った。

 

 三日目になって、ようやく天使の力を抑え込む事に成功して、「彼」はトイレの住人ではなくなった。

 

 「彼」は天使とは壊滅的に相性が悪かった。

 

 だが、それでも「彼」は、これも何かの嫌がらせに使えるだろうとほくそ笑んでいた。

 

 体重がすっかり軽くなり、痩けた頬で、萎えた体で。

自身の内に蓄えていた筈の数多くの力の二割ほどが消失、または変質している事に気付くまでは。

 

 ただの腹痛ではなかった。

 

 「彼」の体内に宿る「個性因子」をただの「個性」でしかない筈の天使が、体内からズタボロにした、その副作用としての腹痛だった。

 

 「彼」は憤った。

そもそも天使を殺して「個性」を奪ったのは自分なのに、「彼」は理不尽にも怒り狂った。

 

 自分にこんな屈辱を与えるなんて。

 自分から力を奪うなんて。

 

 今まで散々奪って来た側の「彼」は奪われる側になった事に、殊更怒り、周囲に当たり散らした。

 

 あんな青く光る不気味な石ころ如きが。

 

 もう、「彼」は天使を美しいとは思わなかった。

 

 「彼」は自分の狂信者に、天使を与えた。

 

 自分の内から無くなれば、もうこの不愉快を味あわなくて済む。

 

 幸い、「彼」は力を奪う事も与える事も得意としていたので、天使を得た狂信者を前にこれで全てが終わったと、ほくそ笑んでいた。

 

 

 

 目の前で、狂信者が膨れ上がって爆散した。

 

 

 

 わけがわからなかった。

だが、その一瞬の、茫然自失とした瞬間に。

 

 狂信者だった肉塊から光の矢が飛んできた。

 

 

 

「彼」はまた、トイレの住人になった。

 

 また三日かけて天使の力を抑え込んだが、お気に入りの「個性」を始めとした幾つもの有用な「個性」が、更に一割使えなくなった。

 

 ただ、使えなくなったのなら良かった。

 

 なんだ、この「灼熱の火球を生み出す個性」が「レトルトパックを温める事にしか使えない」って。

 

 レトルトパックを温める以外、今までの様に火球が出る事は無くなったし、レトルトパックを温めるには火力が強すぎて消し炭になる。

 

 しかもどうにかしようと他の「個性」と繋ぎ合わせ、混ぜ合わせて使おうにも「〜にしか使えない」という制約が残り続けてまともに使えない。

 

 その上混ぜ合わせた個性がもとに戻せない。

 

 「彼」は生まれて初めて後悔した。

 

 天使を問い詰めたくても、彼を殺したのは自分だ。

 

 死んだ人間は生き返らない。

 

 天使は、ただ天使の「個性」を持った人間だった。

 

 「彼」は考えた。

 

 考えに考えを重ねた。

 

 答えは出ない。

 

 そんなおり、「無個性」の人間に、「個性」が欲しいと相談された。

 

 話自体はこれまでもよくあった事だ。

 

 「個性」を望むものに「個性」を与えて、自身の信奉者を増やしていく。

 

 だが、今は他人にかかずらってはいられない。

 

 「彼」は煩わしそうに断ろうとして、コイツに天使をくれてやったらどうだろうと考えた。

 

 先に死んだ狂信者は元々「個性」を持っていた。

 

 ならば「無個性」のコイツなら?

 

 「彼」は思い付きに思わずほくそ笑んだ。

 

 

 

 結果として、「個性」を望んだ者は爆散はしなかった。

しなかったが、即座に腹痛を訴えた。

 

 「彼」はとぼけて、「身体に馴染むまで時間が掛かるのだろう」と相手にせずに、さっさと帰ろうと踵を返した。

 

 腹痛に苦しむ者は「これほど苦しいなら、個性など要らない」と言った。

 

 その者の腹痛は唐突に治まった。

 

 その者の腹から光の矢が飛び出て、さっさと帰ろうとした「彼」の背中を撃ち抜いた。

 

 

 

 「彼」は脱糞した。

 

 

 

 「彼」は天使を手放せなかった。

 

 三度三日かけて天使を抑え込み、またも一割の「個性」が使えなくなった。

 

 これで四割。

実に半数近くの「個性」が天使に無茶苦茶にされた。

 

 「彼」は生まれて初めて恐怖した。

 

 天使を身の内から追い出す事が出来ない。

 

 その方法がわからない。

 

 常に腹痛の恐怖に怯え、見えない筈の天使の視線に頭を悩ませる。

 

 「彼」は憔悴していった。

 

 

 

 ところで、巷で「彼」は魔王などと呼ばれていた。

魔王である「彼」は傲岸不遜、傍若無人、自由気ままに奪い、喰らい、辱め、あらゆる「個性」を蹂躙していた。

 

 そんな魔王が唐突に姿を消した。

 

 人々は歓喜した。

理由はわからないが、魔王とその手下、それに便乗して悪事を働いていた連中が、その動きを鈍らせた。

統制を欠いた、散発的になった連中の動きに、民衆を守る自警団は俄然勢いを増し、民衆の安全が、平穏が守られ始めた。

 

 人々は喜びを口にする。

 

 人々は、魔王は誰かが倒してくれたのだと口にする。

 

「そんな筈はない」

 

 男が言う。

 

「まだ、終わりじゃない」

 

 同士達の前で口にする。

 

「「アイツ」が、まだ終わっていないと囁いている」

 

 男は、「後継者」だった。

 

 「彼」の弟の、弟を助けた男の、彼らの「意志」を継いだ男だった。

 

 男とその同志達もまた、人々を助け平和の輪を広げていく。

その間に「彼」の状況を調べ、自らが受け継いだ「意志」を調べ続けた。

 

 わかった事は少なかった。

 

 

 

 「彼」には天使の呪いがかかっている。

 

 「意志」を十全に扱う力は自分達にはない。

 

 

 

 「後継者」達は「意志」を繋ぐ事に決めた。

 

 紙にしたため口伝で伝え、「彼」に「意志」が見つからぬように最大限の注意をはらって。

 

 

 

 

 

 時が経った。

 

 「後継者」の前に「彼」がまた、現れた。

 

 「彼」は言う。

 

「やっと、やっと!!!」

 

「天使は我が元を去った!!!」

 

 窶れた頬で、窪んだ眼窩で、変わり果てた姿の「彼」は歓喜のままに当代の「後継者」を殺し、「意志」は女に引き継がれた。

 

 魔王の時代が戻って来るのかと、誰もが恐怖したその瞬間はしかし、女から「意志」を受け継いだ弟子「オールマイト」に阻止された。

 

 長い時が経ち、多くの者が知らぬまま倒された魔王。

 

 ほんのごく一部だけが記憶に残した「オールマイト」の勇姿。

 

 

 

 だが。

 

 誰も。

 

 勇姿を見届けた者も。

 

 魔王の信奉者も。

 

 「オールマイト」も。

 

 「彼」でさえ。

 

 決戦の際、どこからともなくひっそりと飛来した小さな「光の矢」が。

 

 「彼」のくるぶしを撃ち抜き躓かせ。

 

 それが決定的な隙となり。

 

 「オールマイト」に致命的な深手を負わせる事無く、「彼」が倒される切っ掛けとなった事に気付く事は無かった。

 

 

☆☆☆

 

 

 決着の直前、とある邸宅で、一人の少年が腹痛を訴え、トイレで唸っていた事も、踏ん張った瞬間に「光の矢」が飛んでいった事も。

 

 誰かに見咎められる事は無かった。

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