Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
「今度は紅茶を用意して待っているよ☆」
アデューーーー!!☆と、元気良く手を振る優雅の後ろ姿に衝撃を受ける峰田。
(本当にあの数追い返しやがった!?)
にこやかに、和やかに、優雅に、上品に。
派手派手しく、喧しく、煌びやかに、忙しなく。
人の話を聞いているようでのらりくらりとはぐらかす、そんな優雅の勢いにどんどんと引いていった生徒達は三々五々去っていき、残っているのは女子生徒に励まされている五体投地状態の硬そうな男子生徒と、何故か優雅にガッチリと握手され逃げるに逃げられない様子の、オールバックの髪を逆立てた、死んだ魚の目と隈が特徴的な男子生徒。
他にも数人残ってはいるが、おおむねスッキリしたいつもの廊下が峰田の目の前に広がっていた。
「計画通り」
「ウッソだろ疫病がっちゃん」
「誰だ変な合体事故起こすんじゃねえ!!」
峰田の背後から顔を出した爆豪のドヤ顔は、即座に誰か*1のツッコミによって殲滅された。
背後の喧騒に呆れる峰田に、男子生徒を慰めていた女子生徒が近寄る。
「悪いんだけど、そっちのクラス委員長、いるかな?」
(じょ、女子〜!!)
目の前の女子生徒に興奮して固まる峰田の代わりに、クラスメイトが「緑谷〜」「緑谷ちゃん」「デクくん!」と各々声を掛けて緑谷を呼び出す。
「ぼ、僕ですけど、何かありました?」
あ、僕A組委員長の緑谷出久です、とオドオドした様子の緑谷が現れ、「何緊張しとんだ」と爆豪にツッコまれている。
「アタシB組のクラス委員長の拳藤一佳って言うんだけどさ、体育祭について相談があったんだ」
「相談、ですか?」
キョトンとした表情の緑谷の周囲にクラスメイト達が何だ何だと近付いてくる。
気弱そうな彼に気安い彼らの態度に、オドオドしている割にちゃんとした人望ある委員長なんだなと思いながら、拳藤は続ける。
「そう、体育祭って基本個人技だけど、親睦を深めるついでに合同で組手とかのトレーニング、どうかなって」
というか、ウチのクラスに急にA組に対抗心持ち出した奴がいてさ、ソイツの言いなりもしゃくだから声掛けてみようって感じ、と説明する拳藤に「何をやってるんだ拳藤!!」とB組の方から声が聞こえる。
が、まるで聞こえなかったように返事を待つ素振りをする彼女に、緑谷はひとしきり彼女とB組の方を見比べた後、「どうしようか?」とクラスメイトの方へ振り返った。
「良いんじゃね?」「女子!」「B組とは交流がまだ無いものね」「女子!」「共にトレーニングを通して交流を深めるのは良い手段だと思う!」「女子!!」とみんな好き好きに自分の感想を述べていく、あと峰田うるさい。
「僕は反対だな☆緑谷君◇」
「あ、おやま、君⋯⋯」
優雅の言葉に思わず振り向いた緑谷は、死んだ魚の目の男子生徒が優雅にガッチリ手を握られたまま連れて来られる様子を見て言葉が詰まる。
「ええっと、どちら様?」
「ヒーロー科に入りたい心操人使君さ☆」
「神隠しか」
「まさか◇売り込みだよ☆」
ナチュラルにぶっ込まれる爆豪の発言に平然と対応する優雅に、口元を押さえ撃沈する者が増える中、違う違うという様に首を振る男子生徒、心操人使を巻き込んでカオスとなる空気を無理やり整えるように、緑谷は話を続ける。
「そ、それで、合同訓練に反対っていうのは?」
次の犠牲者を憐れむ様に心操を見やる爆豪を極力無視し、尋ねる緑谷に優雅は言う。
「手の内が分かっちゃったらつまらないだろう☆」
サプライズさ☆と優雅は続ける。
「この後きっと、嫌でも合同訓練は授業になるよ☆仲良くなれるのはいつでも出来るけど、手の内の分からない真剣勝負は今だけさ☆」
どうだい◇と聞き返す優雅に、緑谷は隣の爆豪と顔を見合わせる。
(面白れーのは⋯)
(かっちゃんなら⋯)
「「断る一択」」
「幼馴染みで通じ合ってんなよ〜」との野次を無視して、緑谷は拳藤に断りを入れた。
余り残念そうにしていない拳藤は、面白いモノを見る様な表情でA組の面々を見た後、手を振ってB組へと帰っていった。
その際五体投地のまま放っておかれた男子生徒、鉄哲徹鐵の肩を叩き、「守秘義務も思い至らず軽率に事情を聞こうとするなんざ」と嘆き続ける彼を回収するのを忘れない。
俺はヒーロー失格だ〜、だの、ほら見ろ拳藤!諸悪の根源A組に鉄槌を!だのの叫びを最後にB組のドアは閉められ、何も聞こえなくなった。
(((カオス⋯⋯!!)))
しばらくB組の方を見つめていたA組一同だが、やおら気を取り直して心操に改めて向き直る。
「ええと、売り込み、という話だったけど、心操君?」
あ、僕、委員長の緑谷です、と挨拶を兼ねて聞き直す緑谷をまるで救世主が来たかの様に見つめながら、心操は答える。
「あ、ああ、いや、売り込みじゃなくて宣戦布告のつもり⋯⋯、イヤ、いい。こんなじゃカッコつかねえし」
心操人使、普通科だ。
真面目な空気を醸し出して自己紹介する彼だが、未だ右手を優雅に握られた半分連れ去られた宇宙人状態である事を忘れてはならない。
早く離して上げて欲しい。
そんな彼にのっそり近付き肩に手を置くのは爆豪である。
一通り心操の全身を検分する様に見た後、彼にしては優しげな瞳で語る爆豪に緑谷が慄いて震える。
「とりあえず体力と筋力付けて来い」
こういうのに絡まれると思った以上に疲れんぞ、と優雅に視線を向ける爆豪に釣られる心操だが。
「お前は自滅しただけだろ爆豪!」
「そうだ!そうだ!」
「現実逃避位させろや!!」
「爆豪くんトラウマなん?」
「言うな丸顔「麗日な、犬ッコロ!」すまん」
という直後のやり取りで感じ取るものがあったのか、
「アンタも苦労してんだな」
アドバイスありがとう、と穏やかに答えて、心操は帰っていった*2。
☆☆☆
「なんかドッと疲れた」
あの後多少グダグダとしたものの、現在帰宅中である。
いつメンである麗日、飯田の他、今日から爆豪が加わっているのが改めて不思議な気持ちになる緑谷だった。
(厄除け妖怪かぁ、意外と効能あったりして)
冗談混じりにそんな事を考えていた緑谷は麗日に声を掛けられる。
「デクくん」
「何、麗日さん」
「今日も爆豪くんと特訓、するん?」
ほら、体育祭近いし、と尋ねる麗日の言葉に爆豪の方を見た緑谷は、頷く彼を見て肯定を返す。
「じゃあ、ウチも参加、とか出来へんかな?」
「麗日さんも?」
思わず再び爆豪を見た緑谷に、
「テメェはまず基礎体力とか辺りじゃねえのか?」
と、爆豪が答えを返す。
「いや、その取っ掛かりにアドバイス欲しいんよ」
ウチのクラスの女子で格闘出来そうな子居れへんし。
そう話す麗日に男子達は思案顔になる。
「どう思う?」
「まあ反対だな。俺らあくまで素人、体系立てた技術でも無きゃ癖付いちまう」
「しかし基礎的な事なら問題無いのでは無いか?」
「それならテメェのが環境的には上だ」
俺とデクは基本喧嘩殺法みてえなもんだしな。
そう締める爆豪に、
「おおぅ、丸くなった爆豪くんこんな話せるんやね、意外やわあ」
「調子乗んなようららかサンよぉ」
物怖じせずツッコむ麗日にキレ始める爆豪を、飯田と二人で緑谷は慌てて抑える。
「で、でもどうしようか?せっかく麗日さんが相談してくれてるのに、出来ませんだけじゃあ申し訳ないし」
「誰か別の、相澤先生やクラスメイトに相談するのはどうだろう?」
「半分却下。イレイザーは教育方面で適任だが基礎までだ。あの人のスタイルは『抹消』からの道具を伴う捕縛技術であって、麗日は至近で、直接手で触れる工程を考える必要がある以上、最終的には相容れねえ」
「クラスの奴なら尻尾の⋯「尾白君?」のスタイルはキチンとした拳法に見えたが、アイツ尻尾の分我流入るしな」
「メッチャ考えて貰ってアレやけど、思った以上に複雑なんやね」
簡単に頼んで恥ずかしいわ、と頬を両手で抑える麗日に、何事も突き詰めりゃ複雑になんだよ、と爆豪がツッコむ。
なんとなく否定的な空気になってしまったが、「勿体ないな」と飯田が呟く。
「せっかくの提案を、何とか形にしたいものだが」
「そういえば何で麗日さんは急に格闘を?」
緑谷のふとした疑問に、麗日は照れた様に答える。
「ウチ、『USJ』でデクくんに言われるままやったやん?爆豪くんは自分で後ろ守るし、デクくんはちゃんとみんな引っ張って偉いなあって」
「そしたら今日になってデクくん、個性のコントロールして苦手な戦闘もちゃんと考えて」
不得意を埋めただけ、仲直りついでの勢い、とは口に出さないが微妙に目を逸らす幼馴染みには気付かず、
「ウチも置いていかれん様に何か考えな思って」
と、内心を吐露した。
「素晴らしい!」
ブラボー!ブラボー!と拍手する飯田に一同ビクリとする。
「友人と切磋琢磨して自身を成長させたいと言うその向上心!素晴ら⋯⋯!そうだ委員長!」
「は、はひっ!?」
勢いそのままに振り向いた飯田に驚く緑谷に構わず飯田は、
「クラス全員で訓練場を借りられないか提案してはどうだろう!」
全員からアドバイスも貰え、鍛錬の場所も借りられる。
この方法なら気兼ねなく色々と模索出来ると思うがどうだろうか、と提案したのだった。