Repeat after me 「ラミ☆エル」!!   作:妖怪「キラキラ様」

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本文中のウンチク、解説等は捏造設定です。


閑話:猛るクソナードと馴染むかっちゃん

 

 体育館γ、通称『TDL(トレーニングの台所ランド)』。

 雄英教師の一人であるプロヒーロー『セメントス』の考案した施設があるという事を、緑谷はここ『体育館ε』でトレーニングを始める段になって聞かされ、うっかり話した相澤に掴みかからんばかりに詰め寄っていた。

 

「何ですかその『セメントス』ファンへのご褒美みたいな場所は!授業で利用出来るんですか!まさかまた相澤先生の合理的虚「落ち着け」ギンッ!!」

(顔、怖)

 

 そして案の定というか、相澤の捕縛布で雁字搦めにされていた。

 

「通常の体育の授業で使われるα、βに特別な設備は無し。セメントス考案のγと、その設立に併せて他のヒーローが実験的に利用する目的も兼ねて作られたδ*1は個性使用が前提。残るここεと隣のζはほぼ部活専用でアスレチック用の設備なども完備されている。体育祭を目標に訓練するならば最適な施設と考えての合理的判断だったが」

 

 ここまでで何か質問は?という相澤の冷徹な視線に緑谷は「あ、ありません」とだけ答えて捕縛布から解放された。

 

(デクくん攻めたなあ)

(緑谷君は急にどうしたのだ?)

(アホが、急に暴れんな委員長だろうがクソナード!)

 

 だいたいこうなるだろうと予測出来た麗日は相澤先生に突っかかる緑谷に感心し、時間は有限なのに何をしているのだろうと純粋に疑問を浮かべる飯田、久々のアレな部分にウンザリしつつ、これからアレのストッパーやんの?とダウナーな気分となる爆豪と、三者三様に先生と生徒のじゃれ合いを眺める三人は、ひとまず彼らを無視する事に決め、後ろを振り向く。

 

「麗日〜見てみて〜!」

「いやこれスゲーわ、見ろこれスパイ◯ィ!」

「瀬呂それは止めとけ、似合うけど!」

「わはは、そっくり!」

「難度別に障害物の配置も考えられているわね、いい訓練になるわ」ケロ

「うおお、私まず走るね!」

「葉隠さんガムシャラじゃなくてフォーム意識して!」

「皆さん!無軌道に遊び過ぎですわ!あくまで訓練だという事をお忘れなきよう!」

「は~い!」

 

 クラスのグループメッセージにて招集を掛け、速やかに相澤から許可をもぎ取った爆豪*2の尽力により、A組のほぼ全員が集合し、体育祭に向けたトレーニングを行っていた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「いや〜、アタシら頑張ってるくない?」

 

 数日経った昼休み、芦戸は机に寝そべる様に上半身を倒し、放課後の訓練の努力を続ける自分達を褒め称えていた。

それに対し周囲から賛同の声がいくつも上がる中、

 

「イヤ〜、ウチはちょっと行き詰まってる感が」

 

 芦戸の言葉を否定する気は無いんだけど、と芦戸と似たような体勢で耳郎が愚痴を溢す。

 

「え、耳郎さん頑張ってるじゃん」

「いや、芦戸さん。私も耳郎さんの気持ちわかるよ」

 

 芦戸の言葉に被せる様に服だけが浮いて見える個性『透明』を持つ女子生徒、葉隠透が呟く。

 

「何か、上手く身になって無い、みたいな感じが」

「わかる!何かウチ、がむしゃらに走ってるだけじゃない?って疑問が出てきて」

 

 みんな真剣にサポートしてくれてるのにちょっとヘコむ、と耳郎が続けて、周囲の生徒達も顔を見合わせる。

 

 この数日、『体育館ε』を利用しての放課後訓練は、『格闘訓練』をメインを尾白、サポートがまさかの爆豪という布陣で、砂藤や口田、常闇といったメンバーが主に参加し、飯田をメインに据えた『走行訓練』組は基本的な気力、体力、筋力増強を目的にランニングを中心に励み、体育館に備え付けられたアスレチックコースを利用した『機動訓練』はメインがこれまたまさかの緑谷で、クラスメイトはその日初めて彼の『フルカウル』を目の当たりにし、その性能に驚愕したものだった。

 

「緑谷の成長が著しいのも、焦るよね〜」

 

 あ〜僻みっぽくてゴメン、ただ自分に愚痴、と耳郎はすぐ側の席の緑谷に謝りつつへこたれるが、当の緑谷、そんな高評価は生まれて初めてなので、「あ、いや、僕は気にしてないし」としどろもどろ、あたふたとしながら大いに照れていた為、それどころでは無い様子だった。

 

「あ!でも!私一つ良いことあったよ!」

「え、何?」

 

 そんな時葉隠が思い出した様に叫ぶので、思わず耳郎も顔を上げる。

 

「あ、ゴメン耳郎さん。訓練とは関係ないけどね。スーツ!サポート科に行って相談してみた!」

 

 作ってくれるって!と喜びを表現する様に蠢く葉隠の制服に、周囲も良かったと声を上げる。

 

「良かったじゃん葉隠、例の、なんだっけ。『個性』に反応するスーツ?」

「そうそう!なんか先輩にも『個性』で服脱げる人がいて、その時の技術の応用で最初から良いの作れるかもって!」

 

 いや〜、ありがとう爆豪君!と喜色に塗れた声を上げる葉隠に、後ろの爆豪は「おう」と素っ気なく返す。

 

「いいなぁ葉隠。爆豪、ウチにも何か、アドバイスとか無い?」

 

 いやほら、体力とかの基礎が重要なのはわかるんだけど、モチベーションが、さ、と困った様に話す耳郎を、腕で顔を支える様にして気のない様子でしばらく眺めていた爆豪は、

 

「デク」

 

とおもむろに後ろの幼馴染みに声を掛けた。

 

「うん、耳郎さんの個性『イヤホンジャック』は有効射程内のイヤホンを挿した場所を起点に周囲の音を拾ったり、挿した対象に心音を響かせて気絶、破壊を起こして攻撃する個性だね」

 

 緑谷の流れる様な解説、コスチュームの足のスピーカーの話まで出てきていつの間に解析したんだと戦慄すれば、「見た目の形状から予測した」との返事が返る。

 

「え、ウチらの個性分析してるの?」

「僕、ヒーローオタクなもんで、将来のヒーローになるみんなの事はノートに残しとかなきゃって」

 

 迷惑だったらゴメンね、と照れる緑谷だが、『将来のヒーロー』というワードにちょっと心ときめいてしまったクラスメイトは、誰も反対する事なく話の経過を見守るのだった。

 

「あ~、耳郎。耳のそれ、切れても再生とかすんのか?」

 

一通り緑谷の解説を受けた後の、爆豪の第一声である。

 

「え、ええ!?た、試してないけど多分無理」

 

 「ゴメンちょっとグロいの想像して変な声出た」「悪い」と互いにちょっと謝った後、

 

「ヘッドホンに個性内蔵、ヘッドホンに複数イヤホン設置しといて個性因子の反応で伸縮可能にする。他にヘッドホン自体に集音機能、脚部以外に腕部にもスピーカー、辺りか?」

 

 どうよデク、とひとしきり喋った内容を緑谷に確認する爆豪と、ガリガリとメモを取りブツブツ呟き始める緑谷に耳郎はちょっと本格的っぽい雰囲気に背筋を伸ばし始める。

 

「うん、いけると思う。取り回しの関係でヘッドホンから腕と脚にサポートアイテムのイヤホンをAIとか意思だけで操作して接続したいんだよね?十年少し前に個性『念動』のヒーローとサポート会社でコラボしたグッズがあった筈だから、探せばノウハウから再現出来るだろうし、雄英のロボのAIレベルなら代用は出来るだろうからそっちのアプローチでも充分耳郎さんの動きの再現は期待出来るよ!」

 

 何やら立て板に水の如く爆豪の発想が緑谷の知識で再現可能らしいと分かっていく様だが、思わず耳郎は口を挟む。

 

「ちょ、ちょっとゴメン、ウチ、超基本的な事聞くけど、こんな細いイヤホン狙われたりする?」

「相手の弱点狙うのは基本だ。俺なら両腕もぎ取りゃ個性は使えねえ。テメェの耳も同じ、弱点の保護、補強から入んねえと痛い目じゃすまねえぞ」

「ご、ゴメン」

 

 間髪入れずに返って来る答えに首をすくめるしかない。

いや、耳郎もなんとなくそうだろうとは思うのだが、想像するだけで痛いので考えたくなかった事をあっさり言われて恐いというのもあるのだ。

 

「後は近接格闘だな。テメェの得意は中距離で音波使って沈めんだろうが、つまり組み付かれた時に動けなきゃ詰みだ」

 

 至近距離だからってイヤホンでカウンターはさっき言った理由で却下、使うにせよ最終手段だ、と続けた爆豪はおもむろに視線を耳郎から外す。

 

「尾白」

 

「⋯え、俺!?」

 

 いきなりの使命に成り行きを見守っていた尾白は素っ頓狂な声を上げるが、

 

「合気やカウンター主体の心得は?」

「!、多少はあるけど、本格的になら道場とか探した方がいい。教えるにも俄仕込みの俺じゃ危険だし、一から覚えるなら専門的なアドバイスを貰える環境はあった方がいいと思う」

 

 本気で探すなら手伝うけど、という尾白にそうか、と返し顎に手を添え思案顔になる爆豪に、もうクラス全員が注目している。

 

「合気って手払ったり技返して逃げる感じのアレだよね?ウチはそれで逃げろって事?」

「逃げるっつーか距離取んだな。テメェが近接苦手なら得意距離で戦える様に手札を増やす、格闘技術は殴り合う為じゃねえ、テメェの有利を相手に押し付ける為の手段だ」

 

 元から殴れんならそっち方面で伸ばすんだが、と続ける爆豪に、耳郎も思案顔になる。

 

「有利を押し付ける、か。言われてみればそうだよね。わざわざ殴り合いに付き合う必要無いんだし。じゃあ腕、てか手にスピーカー追加も殴り合いより護身から距離取る感じで考えてくれたの?」

「いや、そっちは⋯、そうだな。耳郎、心音で攻撃するまで何秒掛かる?」

「え?「殴り合いにカウンター掛けられるか、でもいい」どう、だろう。多分今のウチは格闘自体ダメだから難しいかも」

 

 プラグ挿しちゃえば一秒も無いとは思う。

そう答えた耳郎にしばらく間をおいて、「ちょっと試してみるか」と爆豪が呟き、立ち上がる。

 

「切島」

「お、今度はオレか!何だ?」

「ちょっと実験だ。痛いかも知れねえから嫌なら断れ」

「おお、いいぜ!壁役には『硬化』のオレってな!」

 

 そう言って意気揚々と近付いてくる切島に続き、改めて尾白も呼んだ爆豪は、

 

「一応、近接の間合いに踏み込まれた際の、テメェの隙を無くす為の解決策の一種だと思って聞け」

 

 と耳郎に告げ、彼女が頷いたのに頷き返すと切島に向き合う。

 

「腕の『硬化』を」

 

 おう、と言う返事と共に、切島の腕が岩のような質感を伴い硬くなる。

 

「まずは普通に『爆破』する」

 

 と、軽く物騒な事を言う割にそっと添えるように切島の腕に触れた爆豪は手のひらを通じて軽く爆発を起こす。

 

「痛みは?」

「ん?イヤ、表面に振動があった位で特に無いぜ!」

 

 平然と答える切島に一つ頷くと、爆豪は一度耳郎を見やり、「ちょっと集中すっから目離すなよ」と告げてからもう一度切島の腕に手を添える。

 

「さっきよりキチンと構えとけ」

 

 と言う一言を最後に無言になった爆豪に、只事では無いと気持ちを切り替え踏ん張る切島と、緊張感の高まる周囲。

 

 そのまま少し無言の時間が過ぎてから、くぐもった様な小さな爆音が爆豪の手のひらから響いて。

 

「痛ってえぇぇ〜〜〜!!」

 

と言う切島の叫び声が教室に響き渡った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「かっちゃん今の何、何なの、どうし「ウゼェ」ムギュ」

 

 凄い勢いで突進して来る幼馴染みをアイアンクローで黙らせる爆豪に、いつもの光景だと逆に微笑ましくなる者の中で、今の幼馴染みで共有していない情報?という疑問を抱いた一部が首を傾げる。

 

「これ、浸透勁かい!?」

 

 内部に衝撃を伝えるアレだよね!と驚いた様に尾白が尋ね、状況が飲み込めなかった周囲も何やら高度な技の再現があったらしいと理解する。

 

「真似事な。俺の個性で応用しただけだ」

「それでも凄いと思うけど」

 

 切島大丈夫か、と聞く尾白に「内側がジンジンするけど大丈夫!」と涙目の切島が答える。

 

「一応アレだったらバーさんとこ行っとけ」

「おう!」

「あの⋯」

 

 爆豪と切島の会話に八百万が口を挟む。

今更ながら、自分の個性で金属板でも『創造』すれば良かったのでは、と。

 

二人はしばし固まった後、爆豪の「すまん」という謝罪で再起動した。

 

「イヤイヤイヤ!こういうのがあるって体感しただけでも価値あったから!」

「ホント何かあったらバーさんとこ行けよ」

 

 素で考えつかなかった、と頭を抱える爆豪を切島が慰める。

 

「アレって瞬間的に心音ブチ込んで攻撃にも距離取るのにも使おうって感じ?」

「用途としては合ってると思う。合気だけが回避手段だと読まれるから『攻撃は最大の防御』的な手札って意味で、確かに爆豪以外で耳郎さんなら再現性あるかも」

「へぇ!」

 

 その傍らでは解説を引き継ぐ形で尾白が自分なりの見解を耳郎に伝え、

 

「かっちゃん何今の初めて見たよ!『爆破』以外でこんな事d「ウゼェ」ムギュ」

 

 爆豪が頭を抱えた拍子に自由を取り戻した緑谷が再び突撃してアイアンクローの餌食になっていた。

*1
管理はセメントス

*2
!?

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