Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
『雄英体育祭』。
形骸化したオリンピックに代わり、日本で楽しまれる事となったスポーツの祭典だ。
全国ネットでテレビ放映され、プロヒーローの目に留まれば職場体験やインターン、果てはスカウト、早期プロデビューにも繋がる切っ掛けとなる、ヒーロー科は勿論普通科や他の科にも熱の入るこの行事が始まろうとしているヒーロー科一年A組控室。
「俺は、お前に勝つ!」
「僕にかい☆」
((((と、轟〜〜〜!!?))))
そこで、轟焦凍は青山優雅に宣戦布告をしていた。
「僕と、キラメキを掛けて勝負するのかな☆」
「悪い、そういうのは良く分からねえ」
「そう◇残念☆」
「俺から勝負吹っかけておいて、お前の条件飲めねえのは悪いけど、代わりに、体育祭で優勝を掛けて勝負したい」
「僕と、君が、優勝を掛けて勝負するんだね☆」
「ああ」
「良いよ◇やろう☆」
「助かる」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!!」
余りの予想外の組み合わせに固まる一同を余所に決まった轟と優雅の体育祭の勝負。
なんとなく途中の会話が何か抜けていた様な気がしなくも無いが、衝撃から立ち直る際にそんなもの頭からすっぽりと抜け落ちてしまった彼らの中で、真っ先に動き出した芦戸の静止に続き、緑谷も止めに入る。
「そうだよ轟君!いきなりどうしたの!?」
二人に止められた轟は、二人をじっと見て告げる。
「芦戸に、緑谷か。別にいきなりじゃねえ。ずっと、考えてた。戦闘訓練で負けてからずっと」
そういう轟に、周囲は「アレ、一応引き分け、だったよな?」「一般枠の青山が特待生の轟と五分だって盛り上がったけど、なあ?」と疑問を持つが。
「俺は勝てなかった。勝てると思って、慢心して、油断して、青山に押し負けた」
使う気の無かった『左』さえ使うつもりになった。
そう言葉を続ける轟は辛そうに見える。
緑谷達は互いに顔を見合わせるが、上手く言葉が出てこず、その間も轟の会話は続く。
「その内今度は弱いと思っていた緑谷がみんなを引っ張り始めた。いつもキレてる爆豪も変わり始めた」
いきなり名指しされて、当の緑谷と爆豪が顔を見合わせる。
「他のみんなも体育祭に向けてトレーニングを始めて、個性やコスチュームや、戦い方で話し合って、どんどん色々考えて」
「正直、羨ましかった」
「俺はクソ親父とお袋と、『左』の事で頭ん中ぐるぐるしてんのに、みんなどんどん変わってくのが羨ましくて悔しかった」
緑谷はヒーローオタクなので当然No.2ヒーロー『エンデヴァー』の本名が『轟炎司』であると知っている。
(プ、プロヒーローの闇⋯⋯)
「『USJ』の時も、峰田達が寄って来ても『左』は使えなかった」
あれトラウマだったのか、アレで充分暖かかったから問題無かったと、知らず地雷を踏んでいたと焦る峰田達四人がフォローするが、気にしなくていいと轟は答える。
「爆豪みたいに『左』で暖められたら良かった。もっと切羽詰まった時に暖められなかったら、俺は『ヒーロー』やれてんのかなって不安になった」
トラウマで、嫌悪の対象で、でも、そんな事に拘って本当に助けたいもの、救いたいものを取りこぼしたら。
「だから俺は、今日、お前に勝ちたい。『左』を使っても勝てないんじゃないかって思ったお前に。俺の悩みなんか全部捨てて、『左』も何もかも全部使って」
「そうじゃなきゃ、俺も変われない」
「みんなみたいになりてえから、勝ちにいく。お前は俺から見ても変わってるし、キラメキ?とかは良く分からねえから体育祭の結果になっちまうけど」
((((イヤ、それはわからなくて良い))))
クラスメイトの心の声は一致していた。
「勝てなくても、お前に挑まなきゃ、俺は踏ん切りがつかねえ」
だから、今日はよろしく。
そう言って、改めて轟は頭を下げて。
A組一同に揉みくちゃにされた。
「お前凄えよ!自分の悩みに正面から向き合うとか中々出来るもんじゃねぇ!」
「ゴメンな轟!そんな悩んでると思わなくて普通に暖取っちまった!」
「ぉ」
「轟〜、そう言うのもっと早く言いなよ〜!アタシら気にしないで全然絡みに行くのに〜」
「芦戸さん、そういう事を言えるように青山さんと勝負されるのですわ」
「そっか、オトコのケジメってやつダネ!」
「お」
「ちくしょー!イケメン死すべし慈悲はねえ!のに!のに!⋯⋯頑張れ轟!骨は拾ってやる!」
「が、ガンバッテ」
「轟」
「轟」
「轟!」
困惑する轟とわちゃわちゃと団子になるA組。
反対側で彼らを見つめながら「アウェー☆」と楽しそうに優雅が笑う。
そんな彼らに混ざりたそうに一歩踏み出しかけた緑谷の肩を抑えた爆豪と、緑谷が互いに視線を交わし、ニヤリと笑って気配を消すように静かにしている事に、誰も気付かなかった。
☆☆☆
「宣誓!俺は一位になる!」
「「「なんっでだよ!!」」」
『雄英体育祭』開会式。
入試成績一位の爆豪が呼ばれ、壇上に上がっての発言にヒーロー科B組や普通科を皮切りに、大半の生徒から野次が飛ぶ。
更に先ほどの轟の発言の直後の為、「鬼ー!」「悪魔ー!」「ガッチャンー!」とA組からも野次が飛ぶが、壇上の爆豪は「うるせー!」と一蹴する。
「テメェらここに何しに来た!普通に雄英で高校生活楽しみたいだけかよ!俺は違う!ヒーローになりに来た!」
その言葉に生徒達は一斉に黙り込み、壇上から生徒達に向き合う爆豪の背後で式典の司会を担当していた『18禁ヒーローミッドナイト』は「青春!青臭いのは、好み!」と一人身悶えていた。
「普通科の奴は一人、俺らに売り込みに来やがった!ヒーロー科に入りてえって思う奴はソイツだけかよ!」
違えだろ!爆豪の言葉に普通科から強い視線が返って来る。
「サポート科の連中も、ここがアピールのしどころって奴なんじゃねーのか!」
サポート科らしい一団の目に力が籠もる。
「経営科も斜に構えとるらしーが、ここで記憶に残らねー奴が、俺らや、まして先輩がたといい仕事出来ると思っとんのか!」
経営科の多くはアピールするのはここだけじゃない、と余り響いて無いようだが、それでも幾人かは興味深げに爆豪を見ている。
「で、ヒーロー科!俺に散々野次飛ばしやがったが、テメェらはどうだ!」
「俺はヒーローになる!だからここで
テメェらは、どうだ。
A組もB組も関係ない。
ヒーロー科からやるぞ!という気迫と、さっきまでと違う、自分達も勝つ!という野次が飛んでくる。
爆豪は振り向き、ミッドナイトや会場に向かって叫ぶ。
「行くぞ一年!」
Plus ultra !!
一年生ほぼ全員の、魂の叫びで宣誓は終わった。
『いやスゲーわ爆豪リスナー』
『フッ、成長したな爆豪』
『(で、香山先輩はどうよ)』
『(立ったまま気絶してるな)』
☆☆☆
開会式の熱気冷めやらぬ中、いよいよ始まる第一種目。
障害物競走。
個性アリ、妨害アリ、コースを外れなければ何でもアリの会場の外周四キロを一周するレースだ。
開始のホイッスルが鳴って早々轟の凍結に足元を凍らされ行動不能になる大半の生徒達。
残った生徒達の前に現れるのは第一関門、高校入試実技試験にも登場した『ロボ・インフェルノ』。
三体同時に出現したそれらを、
「キラメキが!☆止められないよォッ!!☆」
極太のレーザーが一瞬で薙ぎ払った。
『コイツぁシヴィー!せっかくのロボ・インフェルノが出落ちかよ!』
実況の『ボイスヒーロー・プレゼントマイク』の声量に解説席の『イレイザーヘッド』ことA組担任相澤が煩そうに眉を顰める。
「アデュゥゥゥゥウウウッ!!!☆」
と、実況の声に負けない様な目立つ声と星のエフェクトを撒き散らし、レーザーを撃ち出した海老反りの体勢のまま、青山優雅は上半身の消滅した三体のロボ・インフェルノの向こうの空へと消えていく。
『見事なイナバウアーだな』
地面を凍結させてスケートの様に滑る轟と、『エンジン』の個性で速度に自信のある飯田はしかし、空を行く優雅に追い付けない。
「「くそっ!!」」
と悪態をつく二人。
優雅に微笑み空を行く優雅、を。
「
速度の乗った空気の弾丸が、優雅の顎を打ち抜いた。