Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
『第一種目『障害物競走』を制したのは、A組、青山優雅〜!!⋯⋯イヤ、本当に凄かったな、二位以下のリスナー、大丈夫か〜?』
会場に降り立つ優雅を称える歓声とプレゼントマイクの実況の通り、第一種目は彼が一位となった。
二位轟、三位緑谷、爆豪、五位峰田、と次々選手が到着していく。
「「ダァーーーッ!!クソ!!」」
珍しく汚い言葉で罵るようにして頭を抱え天を見上げる緑谷と、平常運転で罵声をハモらせ膝に手を掛け地面を睨む爆豪にビビる峰田は、その向こうでキラキラと星を撒き散らして笑う優雅と、それを真顔でじっと見つめる轟を視界に納めて、思わずケッ、イケメンが、と悪態をついてやさぐれている。
だが、意外にもその中で爆豪勝己は内心、冷静に先ほどまでのレース内容を反芻していた。
☆☆☆
(最後の特大レーザーはいい、イヤ良くはねぇが、見た目だけの虚仮威し、俺らを怯ませた隙にさっさと逃げんのは、アレを殺傷に使えねえ以上効率的で文句は付けられねえ)
そう、あの甲高い音と共に撃ち出され、周囲を薙ぎ払ったレーザー。
退避しようとした勝己達も、地上の八百万達も、勿論青山の眼前にいた轟も巻き込まれ、レーザーの餌食になっていた。
だが、揺さぶられる様な衝撃だけで、何事も無く事は終わり、咄嗟に目を瞑ってしまっていた勝己は青山の「アデューーーー!!☆」という景気のいい声に目を開けると同時に、自分達が担がれた事を理解した。
(アレはアレで要検証だが、まずはあの『もぎもぎ』を焼き払ったレーザー)
八百万が『もぎもぎバズーカ』から発射した『もぎもぎ』を、青山のレーザーは一つ残らず焼き払った。
だが、あのレーザーの先端が地面に当たった時、
(確かに叩き割った!焼き焦がしたんじゃねぇ!万一見間違ったとして、削ったか砕いたかだ。焼け焦げた跡は無かった!!)
直後の轟の登場に気を取られ、緑谷は見ていなかったろう。
自分も回避行動の一瞬に視界に映らなければ見逃していた筈だ。
(一度撃ち出したレーザーが熱線から打撃に性質が変わった?そういう個性だって言っちまえば終わりだが、そこで終わらせて良いようなモンじゃねぇ)
(普通のレーザーは収束されたエネルギーだ、焼き切る事はあっても光で殴れる訳じゃねぇ。殴りレーザーへの性質の変化はまだ、解る。個性で『そういうレーザーを作る個性』ってんなら、まあ世の中広いから物理法則に喧嘩売ってようが面白強個性って事で納得する)
問題は、『個性の使用者から一度離れた個性が途中で変質した』事。
それも思考を巡らす暇もない一瞬で、である。
(『個性』製で人間に目視出来るスピードでっつったって、音速を下回る様な愚図な訳がねぇ。俺の目測でも充分『光線』と呼んでいい速度だった)
そんなものを見てから変更など、人間の思考速度で出来るとは思えない。
(あの時、距離こそ離れていたが八百万達にあのレーザーが当たる危険を考えていたなら、撃つ時に危険性を察してそう変化させたかったのは解る。だが、目視でその判断が出来ない以上、感覚で変更したとしか思えねぇ)
そんな事、出来るのだろうか?
上鳴電気の『放電』は、無理だ。
アイツ自体ろくすっぽ『個性』を鍛えてないというのを鑑みても、そんな細かい変化は出来そうにない。
芦戸三奈の『酸』ならどうだ?
アイツは器用に変化させるので見込みはあるが、地面に落ちた酸を更に変化させるなど、自分でも無理だと思う。
(他の奴らも大体似たような結果にしかならねぇ、だが!)
八百万なら。
峰田の『もぎもぎ』そのものは無理でも、当人にしかノーリスクで触れられない筈の『もぎもぎ』を収納、まして高速で発射出来るバズーカを生成してみせた彼女なら。
もしくは
(可能、かも、しれない)
だが、そうなると前提は。
(デクの、『
自分と、八百万の個性変化の前提には、勝己が彼女にうっかり洩らした『個性因子の能動的な活性化』のプロセスが存在する。
そもそもその可能性に気付いたのは、『無個性』の筈の緑谷に宿る『
(そんな特殊な状況をオールマイトがマトモに教えられなかった現状、下手すりゃ完全未確認の新説!俺ですら自分でやっと確認、実感出来たレベル)
そんなモノに時間と労力を掛け、短時間で実現してみせた八百万の天才性と技術と努力には頭が下がるが。
(なら、あの青山は、なんだ?)
最初から、あんな事が出来たのだろうか?
四歳児の自分が直観でそんな事を出来てたら、緑谷にコンプレックスなど抱かなかった。
(⋯⋯冷静になれ!)
頭を振って思考を元に戻す。
一度深呼吸をして、雑念を頭から追い払い、勝己はもう一度深く思考する。
(青山が、もし『
もしその可能性があるなら。
(『無力化』野郎のバックにいる奴⋯⋯!!)
オールマイトを想定したとしか思えない十二体の改造人間。
彼らの持つ、対オールマイト様に誂えた様な『個性』の数々。
(詳細は分からねぇが、それでもオールマイトを明確に足止めしたんだ。一筋縄じゃいかねぇラインナップだった筈)
なら、それらはどうやって用意した?
(オールマイトの『継承』、八百万の『創造』、B組の奴に『模倣』がいるって噂も聞いた)
なら、『強奪』『生成』『付与』『蓄積』。
そんな個性もあるのではないか。
(青山が
思いたくない、という心情は、確かにある。
(だが、ソレにしちゃあマヌケじゃねぇか?アイツ)
コレで騙されたならどうしようもない、が。
もし、青山が裏にいる、オールマイトの『敵』から『個性』を手に入れた尖兵だとして、
(手札が分からねぇのはヤバすぎる!!)
ここで先ほどの特大レーザーがネックになって来る。
(勘でしかねぇが、アレは逃げ切れる気がしなかった)
アレが殺す気なら、勝己は緑谷を守れなかった事になる。
(最大射程が分からねぇ、最大威力が分からねぇ、あの『音』の意味も、分からねぇ!)
改めて、青山の『個性』には不明点が多すぎた。
(確かめなきゃならねぇ!)
味方なら、良い。
イヤ、味方であっても不味い。
アレだけの強個性、本当に『強奪』なんてあったら奪われる筆頭だ。
もし、青山はただのクラスメイトで、仲間であるのに、無駄にいがみ合っていたら。
その隙を連中に突かれて、一網打尽にされかねない。
(万が一を考えて!本人に直接確かめずに!ヤツの『個性』を丸裸にする!)
(デクに、もし『敵』の手が届いたら)
アイツを守れなかった俺は、アイツをイジメただけの、アイツを傷付けただけのクズで終わる。
(デクを、守らねぇと)
『ヒーロー』だと、言ってもらえたのだ。
アレだけの事をして、アレだけ傷付けて。
まだ、自分に背中を預けてくれる。
ヒーローオタクで、クソナードで、自分を顧みない世話の焼ける幼馴染み。
(有言不実行で負けんのはクソダセェが)
今の自分には丁度いい。
(アイツの手札、全部暴いて、オールマイトにくれてやる!)
例の『敵』について、オールマイトは何も教えてくれなかったが、それでもこれだけの情報を揃えられたら、嫌でも考えざるを得ないだろう。
(その反応でどれだけの驚異か測ってやる!)
それが、あのまだまだ頼りない幼馴染みの助けになる筈だから、と。
「だぁああ!このクソ忙しい時に面倒な!!」
「かっちゃん!!?」
それはそれとして。
七面倒臭い案件に巻き込まれたものだ、と勝己はひとまず文句だけは言わせて貰うのだった。