Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
第一種目、一位。青山優雅。
獲得ポイント、一千万。
それを聞いた時、傍目には呆然としている様に見えた彼の違和感を、以前の会話から気付けた筈の飯田天哉は、己の不甲斐ない結果を反省し自問していて気付かなかった。
緑谷出久は爆豪と共に八百万の『個性』に関して話し合っていてそれほど注意を向けていなかった。
爆豪勝己はこの先の事を考えていて、今この瞬間に意識が向いていなかった。
麗日お茶子はそもそも青山にさほど注意を向けていなかった。
彼らは、第二種目のルール説明が終わる頃、数名の生徒と共に青山が消えた事に気付かなかった。
気付けなかったのだ。
☆☆☆
「デクくん!一緒に組もう!」
「ありがとう麗日さん!」
第一種目と打って変わってほのぼのとした空気に、しかし爆豪は(気ィ抜くなやボケェ!)と声には出さずにキレていたが、何となく察して野暮は言わなかった。
「じゃああと一人で騎馬が組める「俺ぁテメェと組まねぇぞ?」ナンデェ!?」
第二種目も一緒だと、ちょっとウキウキしていた緑谷は、素っ気ない爆豪に思わず変な声が出る。
「何でって、俺は個性の関係上騎手一択だ。麗日も手を使う以上騎手が選択肢に上がる。コイツはサポートとして騎馬でもいいが、そうなると俺の機動力についてこれねぇだろ?」
「そんな論理的な反論はイイんだよ!一緒にやろうよ体育祭!!」
「テメェ小学生みてぇな駄々捏ねんなや!!」
(仲良いなあ、オサナナコントや)
幼馴染みのコントじみた言い合いに噴き出す麗日達の周囲に、クラスメイトが徐々に集まって来る。
「爆豪、俺と組もうぜ!」
「爆豪、一緒に組もう!」
「緑谷はどうすんだ?」
一斉に自分を売り込むクラスメイトだが、
「ダメだよ!かっちゃんは僕と組むんだからね!」
ひし、と腕に抱き着く緑谷と、死んだ魚の目で抱き着かれるままの爆豪、何となく面白くない気がして来て頬を膨らます麗日に、ピシッと固まるクラスメイト。
「お、おお、どうした緑谷?」
「幼児退行?」
「ナンでシラフなのに酔った勢いみてぇなアクション取っとんだクソナード!」
「だって、初めてなんだかっちゃんと仲良く学校行事やるの!!」
(((幼馴染みの闇⋯!!)))
瀬呂や切島、芦戸辺りのコミュ強組が問いかけるも、対する緑谷の答えに何も言えなくなる。
「わかるぞ緑谷。俺も今日は楽しい気がする」
(((轟〜〜〜!?)))
「轟君も?」
「ああ、中学までは周りを気にする余裕も無かったしな」
「僕も中学までは学校にいい思い出無くて」
「ゴフッ」
「開き直ってみたら、お前らも八百万もイキイキしてるのに気付いて、学校って楽しいんだなって思った」
「うん、僕も青山君を止める為の奇襲だったけど、かっちゃんとこんな風に共同作業するの初めてだなって思ったら、何かウキウキしちゃって」
「グハッ」
「青山か⋯、アイツ凄えな。いるだけで色々見え方が変わるなんて」
「かっちゃんが言ってたけど、本当に厄除けじみた御利益ありそうかも」
「⋯今度お供えするか」
「アハハ、お菓子の差し入れって言ってあげてよ」
(((言葉の端々に見える闇が深い)))
隙を突いた形でエントリーした轟と緑谷の弾む会話から滲む暗い過去の残滓にクラスメイトは震え、未だ抱き着かれたままの爆豪は時折差し込まれる緑谷の過去から自分のやらかしを思い出し致命傷を受けている。
(か、カオスや⋯)
絶妙な会話に嫉妬心すら湧かなくなった、呆然と見つめる麗日の眼前で、緑谷と轟の二人だけが盛り上がる混沌とした空間は、チーム決めの残り時間が一分近くになるまで、延々と続いたのだった。
☆☆☆
残り僅かとなった時間から何とかグループ分けを完了したA組の陣容は以下の通り。
爆豪組
騎手:爆豪
騎馬:緑谷、麗日、常闇
「行こう、闇を乗り越えし者よ⋯!」
「ヤメロや、ただでさえめんどくせぇのにソッチの沼に沈めようとスンナ!!」
轟組
騎手:轟
騎馬:飯田、八百万、芦戸
「大丈夫かい八百万君!」
「はい、問題ありませんわ!」
(結構疲れてる様に見えたけどヤオモモ)
上鳴組
騎手:上鳴
騎馬:切島、瀬呂、尾白
「いや〜俺ら勝っちゃうんじゃね?バランスいいし」
「個性無しならね」
「個性アリだと俺らお前の電撃に耐えられんから実質使用不可よ?」
「あ」
葉隠組
騎手:葉隠
騎馬:耳郎、砂藤、口田
「さあ、行くよ!皆の衆!」
「それどういうノリ?」
「姫!」
「「姫!?」」
峰田組
騎手:峰田
騎馬:障子、蛙吹
「障子が守ってくれりゃ安心安全!」
「隠れられるのはいいわね」
そうして決まった各騎馬に青山の姿が無い事に今更ながらに気付いた彼らだが、声を上げる前にミッドナイトが騎馬戦の開始を宣言し、それと同時に彼女の立つ朝礼台の影からキラキラと星を撒き散らし青山が飛び立っていくのを目にしたのだった。
☆☆☆
「かっちゃん、嫌な予感がする」
「おお、そうだな」
「目を離したら何が起こるかわかんないのに、かっちゃんと戯れてて忘れてた」
「そうだな。ろくでもねぇ戯れで時間を喰ったな」
「大切な時間だったと痛い痛い肩に指食い込んでる!」
「ったりめーだ痛くしとんだわ!」
(完全にいちゃついとる⋯)
(現実と向き合え爆豪)
『ナカイイナー』
現実逃避をするようにじゃれる二人に内心でツッコむ麗日と常闇だが、上空の青山が背に誰かを乗せたままこちらに向かってレーザーの発射体勢に入っているのを見て目が点になる。
「「あ」」
「んふ☆」
まあ、発射されたレーザーは競技場全体を包む規模の巨大さだった為、逃げ場など無かったのだが。
「うわぁ、全面真っ白や〜。意外と眩しくはないなぁ」
『ギャーアカルイィィィ!!』
「落ち着けダークシャドウ!」
「どうしよう。コレ、どうしたらいい?」
「俺に聞くな」
周囲の驚愕と困惑の叫びをBGMに、緑谷と爆豪もまた真っ白な視界の中でどうしようかと困り果てていたが。
『爆豪』
「あ?なん⋯」
「ん、え、かっちゃん!?」
謎の呼びかけに対し、動かなくなる爆豪。
更に上空からうにょっとした何かが伸びてきたかと思うと、爆豪からハチマキを奪い去っていった。
「「「ええぇぇえええ!?」」」
騒ぐ騎馬役三人に我に返る爆豪。
そんな彼らを皮切りに周囲でも次々と同じ様な光景が続き、数分も経たない内に青山のレーザーが延々と降り注ぐ中、全てのハチマキが回収されてしまったのだった。