Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
「――と、この様にバイザーからの視線誘導、音声認識、有線接続した電子機器での指示により、フレキシブルに稼働するマジックハンドがしっかりと対象を保持し、手元まで落とさず運んでくれます!」
意気揚々、元気溌溂に掛けたバイザーをカクカクと指で動かしながら、雄英サポート科一年H組、発目明は空飛ぶ青山の背中に跨り、前に同じく座る普通科一年C組、心操人使の首に手に入れたハチマキを掛けながらプレゼンを続けていた。
「以上がこのドッ可愛いベイビーNo.四十七こと『困ったところに手が届く、連装式マジックハンド『千手くん』』の概要となります!ちなみに現在ワタシが使用している拡声器はドッ可愛いベイビーNo.二十二Ver.1,015であり、ワタシの前に座る彼が使用しているのが同Ver.3,02、『拡声器付き浮遊型小型スピーカー群『コソコソ噂話将軍三世』』であります!」
ツヤッツヤ、キラッキラで自分の作成したサポートアイテムのプレゼンをしていくイイ笑顔の発目とは裏腹に、光の無い目で延々と、手にしたマイクの先に繋がるスピーカーで聞いているであろうA組B組の騎手達の名前を呼んでは自らの個性『洗脳』で意識を奪っていく心操である。
(どんどん『洗脳』してくとか、
心操は『洗脳』を続けながらチラ、と自分が跨がる青山の後頭部に目をやる。
一週間程前、A組がヴィランに襲われたという話が広まり、物見遊山にヒーロー科に向かう人波に紛れ、調子に乗っているであろうヒーロー科連中に宣戦布告の一つでもしてやる!と意気込んだあの日。
心操は確かに青山を『洗脳』した。
無防備に会話を返す彼に意識して個性を使い、一瞬意識が途切れた様に見えた次の瞬間には平然と会話を続けた青山優雅という男。
それどころか「個性を使うほど興味津々なんだね☆」とガッチリ右手を握られ、『売り込み』などとA組のみんなに紹介されて、心操は本当に生きた心地がしなかった。
自分の個性が通じない。
その状況が存在して、あれほど自分が無防備を晒す事になるなんて。
爆豪というヒーロー科の生徒に同情され、青山が特殊だと理解出来なければ心が折れていたかもしれない。
だが、それはそれとして、しっかり心にトラウマが刻み込まれた心操は、コレはないだろうと内心で呻く。
何で必死に走ってギリギリで第一種目を突破して、第二種目のルール説明が終わって早々、件のコイツに捕まるんだ。
なんだ、「緑谷君達にサプライズ返しをしないとね☆」って。
(勝手に一人でやってくれ!!)
しかもジャージの上着を頭まで引き上げて目立つ金髪を隠す代わりになんだかキモい造形の生き物と化した、朝礼台の影に体育座りする青山をどういう嗅覚か「一千万のアナタの側ならよく目立ちます!」と見つけ出してにじり寄って来たサポート科の女、発目明。
(ヒーロー科を蹴落としてでもヒーロー科に入りたいって思ったし、恨まれるのも覚悟の上、だったけどさぁ!)
こんな一斉にヘイトの集まる方法は覚悟してなかったよ!と涙が出そうになる心操であった。
☆☆☆
地上では青山のレーザー照射が終わってすっかり視界が開けた中、全員のハチマキが奪われた事に戦慄しお互い顔を見合わせる選手達。
「ヨ、良くここまで辿リ着いタ!ユ、勇敢ナる『騎士団』の諸君!!」
いつの間に耳元にあったのだろう、先の訳の分からぬ声の出処はこれか!と選手達全員が見つめる小型スピーカーの群れと、上空から聞こえてくる上擦った口上。
真っ赤になりながら懸命にマイクに向かって声を張り上げる心操人使である。
「お前達が今まで守り抜いて来た、このお前達の誇りの証のハチマキは、この、この、「頑張って下さい、目立てませんよ」「一気に言わない方が恥ずかしいよ☆」うるさいなお前ら!こんな役目押し付けやがって!!」
どうやら青山渾身の『サプライズ』に巻き込まれた被害者らしい、と察したA組一同の目が一斉に死ぬ。
「この!『魔王シンソー』が預かった!カエして欲しくば我がシモベ『ドラゴン青山』を倒して、見事ハチマキをう、奪い、サルガイイ!!」
真っ赤になって涙目のまま、噛みに噛みながら大声で言い切った心操に直下のA組は勿論、何やら察したらしいB組、何か青春始まった!と鼻息荒いミッドナイトと、何か巻き込まれてんなあと同情混じりの普通科に、その他の観客達が一斉に温かい拍手を贈る。
「生温かい目で見るなら、いっそ殺せえぇぇぇ!!」と青山の背中で顔を押さえたまま上を向く心操の雄叫びがスピーカーから響いて来る。
「良く、良く頑張った、心操!」
「いや、だから巻き込まれたアイツと違ってオマエは自業自得じゃん爆豪「ウルセェ!!だから現実逃避くらいさせてくれや!!」」
「かっちゃん、さすがにそのネタは天丼だy「ネタじゃねンだわクソナード!!」ア、頭!頭ガガガ!」
ガチで涙目になりながら人一倍力強い拍手を贈る爆豪だったが、上鳴はおろか幼馴染みの緑谷にまでツッコまれて、腹いせに目の前の幼馴染みにアイアンクローをかまして溜飲を下げる。
『⋯なあ、コレ、良いのか?』
『見ろ、香山センパイがノリにノッてる』
『あ〜、コリャ試合続行だな〜』
臨機応変に対処かあ〜、と実況席からも諦めた様な声が聞こえて、(この茶番、続くんだ)と各々が納得した第二種目『騎馬戦』は、『魔王シンソー(青山組)』対『雄英騎士団(その他全員)』の即席レイド戦の様相を呈していた。
☆☆☆
「無理ぃー!もう無理ぃー!?」
「ちょ、後ろから来てんだけど!?」
「いけませんな。巻き込まれまsアバーッ!?」
阿鼻叫喚である。
仕切り直して始まった十五分一本勝負のレイドバトル『騎馬戦』。
勝利条件は『魔王シンソー(青山組)』が十五分間ハチマキを奪われずに耐えきるか、『雄英騎士団(仮)』の誰か一人がハチマキを奪取するかである。
ちなみに現在ハチマキは『Plus Ultra』とのロゴが描かれた物が一本、心操の額に巻かれているのみで、奪取した後の第三種目出場権の話はヒーローらしく友好的に話し合って決めてね、との事*1。
ササッと大枠を決めて後は審判のミッドナイトが判定するねの精神で緩〜く始まった第二種目だが、まあハードである。
上空に鎮座する青山の臍辺りから絶え間なく着物の帯辺りの太さのレーザーが何本、何十本、あるいは何百本単位で競技場の隅々まで降り注ぐので、全員休む間もなく逃げ続けているのだ。
「キラメキが、止められないよォッ!!☆」
「くっ!!(まただ!『右』でも『左』でも
また、轟と爆豪がメインで果敢に空中戦を挑むのだが、それはそれで太さ重さ速度のバリエーションが豊かなレーザーに迎撃されて近付くどころかかわすのが精一杯といった所。
「ぐぁッ!?」
「かっちゃん!!」
挙げ句レーザー自体がホーミングし鞭のようにしなり、割と野放図に暴れ回るので、今しがた左右のレーザーをかわした所を上空からのしなった鞭状のレーザーに叩き落された爆豪の様な目にも遭う。
「ダークシャドウ!」『アイヨ!』
地面に叩き付けられる前にダークシャドウに回収された爆豪は緑谷達騎馬の上、騎手の定位位置に付いた所で脱力する。
「大丈夫爆豪くん?」
「⋯⋯おお」
「さしもの爆豪もこの猛攻の前には言葉も無い、か」
「るせぇ、一息付いとっただけだわ⋯⋯」
「かっちゃん⋯」
逃げ場など無いなりに足を止めて的を絞らせる事の無いよう走り続ける緑谷達だが、予想以上に攻撃が激しく勝ちの目が見えてこない。
「だって緑谷君にいきなり攻撃されたの、本当にビックリしたんだよ☆僕のこの気持ち、わかって欲しくてさ☆」
「それは本当にゴメンね!!」
なんてやり取りを試合開始早々にして、余りのとんでもない展開の引き金になった罪悪感に、血反吐を吐く勢いで謝罪した緑谷だったが、それも今は遠い昔の様で。
(まだ五分も経ってない!いや、何も出来ないままもう五分、が正しいんだけど!)
周囲を見ればもう既に肩で息をしている者が半数を越して来ている。
(このままじゃそもそも十五分持たない!どうすれば⋯)
「デク」
「ん、何、かっちゃん」
上空ではレーザーに足を引っ掛けられて、轟が回転する様に落ちていくのが見える。
騎馬の飯田達に回収されたのを横目に打開策がないか必死に頭を巡らせる緑谷に、爆豪から声がかかる。
「『アレ』、使うぞ!」