Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
『雄英体育祭』昼のレクレーションの後、午後に行われる最終種目『ガチバトルトーナメント』。
そのトーナメントに出場する選手だが、半数はあっさり決まった。
足場を作りフィールド形成の裏方として貢献したB組の小大組、小大唯、凡戸固次郎、吹出漫我、庄田二連撃の四名と、青山組に引導を渡したA組の上鳴組、上鳴電気、切島鋭児郎、瀬呂範太、尾白猿夫の四名、計八名である。
誰がより貢献したかの話し合いで*1特に反対も無くそこまで決まった所で、拳藤より「あとは互いのクラスから四名ずつ、恨みっこ無しで決めよう」と提案があり、今現在、B組一同による熾烈なジャンケン大会が開催されている。
そんな彼らの熱い前哨戦を尻目に、緑谷はA組一同に誰が出場するのか問うていた。
「ひとまず青山君とかっちゃんは除外だね」
「妥当」
「残当」
「しょうがないよね☆」
「⋯⋯ちょっと待て」
「言っとくけど反論は聞かないよ。顔色真っ青じゃないか」
傍らで座り込み肩で息をする爆豪に、緑谷は素っ気なく告げる。
「昼休憩で休めば「それで結局出れなかったら一枠無駄に空くだろ!みんなだって出たいんだし」チィッ!!」
こんな時まで強気のままかと周囲は慄きつつ、早くも定番と化しつつあるオサナナコントに温かい眼差しを向けていた。
「でも、不思議だね☆何で爆豪君疲れちゃうんだろう☆緑谷君は疲れないだろう?☆」
「え!?えっと、かっちゃんはちょっと特殊な個性の使い方をしてて、その反動なんだけど⋯」
唐突に口を挟んだ青山に、何故かっちゃんの疲労と僕を比較するんだろう、と緑谷は彼の着眼点は相変わらずわからないと頭に疑問符を浮かべつつ答える。
「⋯?別に『
「「「⋯⋯ハァ!?」」」
そんな中での唐突な『天使』発言に周囲はどよめいた。
「天使って、アレ?キャラものとかシャツのロゴのデザインとかの」
「あ〜、羽根のヤツ。⋯⋯元ネタ何?」
「あれじゃね?何か旧時代の、歴史の授業の」
「旧時代に乱立していた『宗教』の一つに記載のあった、神の御使い、というものでは無かったでしょうか」
「え、何、ヤオモモ。旧時代ってそんなのいたの!?そういう個性?」
「いや、そういう概念があったというだけの、架空のおとぎ話の様なものだ。旧時代にはそもそも『個性』自体存在していない」
「あ、そっか」
まるで聞き覚えの無いワードに色めき立ったA組だが、だんだんとどういうものか概要を理解するにつれ訝しげな表情になる。
「待って青山君。何でかっちゃんが、その、『天使』の力?を持ってるって思ったの?」
肩で息をする爆豪に代わり緑谷が尋ねるが、
「何でって、
と何を当然の事を、と言うように困惑した表情の青山に返され、互いに困った顔で見つめ合う。
「ええっと⋯?」
「えっと、違うのかい?☆君も『
僕と同じって、何。
なんと答えていいかわからない微妙な会話に困惑しきりの緑谷に対し、傍らの爆豪は青い顔色の裏で戦慄する。
(赤い⋯って、『
どちらにせよ具体的な言及は、少なくとも
何を見て、何を感じて、何をどう判断したのかは知らないが、このままこの会話を続けさせてメリットは一つも無いと爆豪は絶不調の脳内で即決した。
「だって緑谷君、君オー「デク⋯悪い」」
「へ、え、何?かっちゃん」
緑谷と青山の会話に割り込みながら、内心(このキラキラ妖怪今ナニ口走る気だったクソが!!)とただでさえ無い血の気を引かせた内心をひた隠し、爆豪は渾身の『調子の悪い演技』をする。
「やっぱ、ちょっとダルい「か、かっちゃんが弱みを見せたぁ!?大丈夫かっちゃん!?死なない!?」」
よく知らぬ相手ならばもう少しスムーズに事は進んだだろう。
だが残念ながら相手は勝手知ったる幼馴染みの緑谷出久であり、爆豪勝己は自他ともに認めるセンスと才能の持ち主であり、現在、演技の必要を感じない程個性の反動により絶不調である。
結果。
「ど、どどっどっどどうしよう!?かっちゃん!生きてるかっちゃん!?大丈「イキトルワクソが、あんまユラスナヤ」!?」
無事を確かめたい善意ではあるのだろうが、パニクる緑谷に肩を掴まれグラグラ揺さぶられる爆豪に生きた心地はしない。
いよいよ本格的にヤバいかも、と他人事の様に冷静に自分を把握する爆豪を見かねた訳ではないだろうが、「デクくん揺さぶると逆に気持ち悪くなるよ?」だの「まずはリカバリーガールの所へ運ぼう!」だの、緑谷の奇行に呆気に取られていたクラスメイト達が我に返り、テキパキと爆豪を保健室に連れていく算段を整える。
「じゃあ僕が連れて行くね☆」
「ありがとう青山君。⋯八百万さん、悪いけど選手決めと後をお願い」
「わかりましたわ。爆豪さんもお大事になさって下さい」
器用な事に星のエフェクトをベットの様に敷き詰めた上に寝かされた爆豪を、音も振動も無く滑らかに浮かし、青山は優雅に運んでいく。
それを追い掛ける緑谷も最終種目を辞退する旨を八百万に告げて、動揺冷めやらぬ様子で去っていく。
「大丈夫か爆豪」
「爆豪ちゃんもそうだけど、緑谷ちゃんも心配ね」
「多分大丈夫だろ?爆豪、あの派手派手しい輸送方法に死んだ魚の目出来る余裕はあったぜ?」
「不謹慎感あるけど、まあ、爆豪なら大丈夫かもって思うな、ソレ」
☆☆☆
「おやおや、モニターでも調子悪そうには見えたけど。さ、そこのベッドに寝かせておやり」
体育祭の救護所奥のベッドに横になった爆豪が一息つく。
パニック状態が抜け切らない緑谷も、救護所担当の保健医、『リカバリーガール』にハリボーグミを手渡されてやっと肩の力が抜けたのか、グミを口にしながら力無くベッド脇の椅子に腰掛けている。
何となく所在なさ気な青山が、責任でも感じてるのかずっとオロオロしているのを横目に、爆豪は自身を診察してくれているリカバリーガールに話かけた。
「⋯リカバリーガール」
「なんだい爆豪、調子は「『オールマイトの事情』っつって、大体状況わかりますか」!?」
リカバリーガールの表情を見て概ね察した爆豪は、「オールマイトを呼んで欲しい」と一言告げた。
「かっちゃん、大丈夫?「テメェの揺さぶりで絶賛吐き気と格闘中だわ」ゴメンナサイ!!」
一通り診察してしばらく休む様に爆豪に告げてから、オールマイトに連絡を入れ始めたリカバリーガール入れ替わりで緑谷が枕元に寄って来た。
やらかした緑谷に噛み付く爆豪に、続いて青山が話しかける。
「んー◇爆豪君って、『天使』様が付いてる訳じゃ無いよね☆」
「⋯あ゛?」
「爆豪君、多分『心』が垂れ流しだから辛いんだと思うよ☆」
「は?」
いつもの調子で、相変わらず独特のセンスで。
よくわからない事を告げられ思わずこんな時にと爆豪は睨みつけるも、同時に直感的に何か大事な取っ掛かりになる事を言われているように思えてそのまま聞く体勢に入ってしまう。
「僕、緑谷君もだけど◇『天使』様に『お願い』して、『天使』様の力を引き出してるような感覚なんだ☆」
「え、僕?」
「緑谷君もオールマイトの『天使』様の力を引き出してるんだろう?「!?!!?」」
「⋯青山、トップシークレットだ。口に出すな「そうなのかい!?♧」」
「ゴメンね◇余りにも大っぴらに見えてるから普通の事かと思っていたよ♧」
しょんぼり顔で謝る青山に、
「テメェの主観は共有出来ねぇが、ガチで慎重に頼む」
と、青い顔でうんざりした風を隠さない爆豪に、緑谷は目を白黒させる。
「え?へ?なん?かっちゃん!?「人間の言葉でしゃべれや」だって!何で!?オールマイト!?」
「呼んだ?緑谷少年」
取り乱した流れで出た自分の名前に反応したオールマイトが救護所の入り口から覗き込んでいる。
「オールマイト!!」
「五月蝿いよ緑谷、どこだと思ってんだい」
「す、スミマセン⋯」
三人で一斉に振り向く中、条件反射の様に喜び叫ぶ緑谷は、場所ゆえに静かにリカバリーガールに注意され、小さくなって謝罪するのだった。