Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
雄英体育祭、最終種目『ガチバトルトーナメント』は『レース』、『騎馬戦』で観客を大いに沸かせた青山優雅、爆豪勝己の両名が欠場という事もあり、大方の予想通りA組轟焦凍の優勝で幕を閉じた。
とは言え第二種目までは今回目立ち辛かった他の面々に取って大いにアピールの場となったのも事実で、各試合、中々見応えのあるものも多かった。
例えば一回戦から、吹出漫我VS芦戸三奈の試合は最初からお互い一歩も譲らず、吹出の叫びと共に形成される様々なオノマトペの山を片っ端から芦戸の全力の溶解液で溶かし切るという、中々に危険だが見映えのする試合となって観客は盛り上がった。
最終的にこの試合は声を出しすぎて噎せた吹出の隙を突き、芦戸が懐に滑り込む事で勝利を収めた。
次に切島鋭児郎VS鎌切尖の試合は終始鎌切が攻勢に徹したものの、体育祭前の浸透勁の一件で鍛え直したのか切島が良く耐え切り、攻撃の隙を突いたカウンターで鎌切を沈めるというどんでん返しを起こして勝負を終えた。
他にも飯田天哉VS尾白猿夫、拳藤一佳VS庄田二連撃といった格闘主体の試合は見応えがあったと観客からの人気は高く、尾白庄田の両名が一回戦で敗退したものの、尾白の流れる様な体捌きがヒーローに、庄田の「人は動ける恵体と僕を呼ぶ」との言葉が決め台詞として一般の観客から評価を受け、アピールとしては上々の結果を得ていた。
また、二回戦に進んだ実直な性格の飯田と、拳法主体の搦め手を併せた技術の拳藤の試合は、優勝した轟の火力、相性差も相俟った一方的な試合展開が続いた反動か、今回のトーナメントベストバウトとの声も多い白熱した試合となり、奥の手のレシプロバーストによって飯田が勝利したものの、彼のスピードを丁寧な技術で捌いていった拳藤との勝敗は紙一重の差といった所であった。
ただ、残念ながら相性、個性、環境によって十全に活躍出来なかった選手も勿論いて、轟に瞬殺された瀬呂範太、塩崎茨に耐え切られた上鳴電気、事前評価が高かったにも関わらず自分の足元が乗る程度の大きさに舞台を縮小化して、対戦相手を強制的に場外扱いにするというトリッキーな個性使用で二回戦の切島共々、小大唯に瞬殺されてしまった八百万百はその代表格であった。
また、黒色支配VS凡戸固次郎戦も、黒色に影に入られる前に凡戸が個性で捕まえて勝利となったのだが、一回戦最終試合というタイミング、二回戦進出した凡戸が対戦相手の塩崎に瞬殺されたせいもあって、悲しい事に余り印象に残らなかった。
こうして最終種目『ガチバトルトーナメント』は、優勝・轟焦凍、準優勝・塩崎茨、三位・小大唯、飯田天哉という結果を迎え、グダグダなオールマイトとミッドナイトのやり取りをアクセントに、一年生にとって初めての雄英体育祭が終了したのである。
☆☆☆
「⋯⋯ハァー」
「泣くなデク」
「泣いてない、⋯ハァ」
体育祭の翌日に一日休日を挟んでの登校日、通学途中の電車内にて緑谷の深い溜息を横目に、爆豪はスマホの画面を睨みつける様に眺めていた。
昨日は体育祭のエゴサが怖いと泣き言を言った緑谷*1*2と一日調整を兼ねて軽いトレーニングを行い、今朝、電車を待つ間に体育祭の一般人からの評価を確認したのだ。
その結果、悪い評価では緑谷は主に『腰巾着』『おこぼれ君』と言った、爆豪のついでに第二種目に進んだだけというモノ*3で、余りの評価に肩を落とした。
ちなみに爆豪も『口だけ』『イキリ』『顔面凶器』と酷い言われようだが、こちらは覚悟していた為にそれほどダメージは無い*4。
だが、緑谷の溜息の理由はこちらではなく、良い評価の方であった。
主に『ストッパー』『フォロー役』と言った感想に始まり、『可愛い』『幼馴染み』『べったり』と続いて、最終的に落ち着いたのが、
「あ、アレ、体育祭の『マスコット』君」
「ああ、『デコピン・デク』。マジか、同じ路線か!」
周囲からも聞こえるこの二つ、デコピンの空気弾を使ったから『デコピン・デク』、そして競技とそれ以外の目撃情報から生徒に可愛がられるポジション、『ヒーロー科のマスコット』という評価を得ていたのだ。
(腰巾着とかべったりとか、挙げ句にホモ扱いとかあったし、それよりは高評価は嬉しいけどさ!『デコピン・デク』はいいよ!何か韻を踏んでて悪くないし!でも!)
「『マスコット』って何だよ!」
「声、出てんぞ。落ち着け」
「だってかっちゃん、僕だって男だよ!カッコいい方が良い!」
そう言って再び溜息を吐いて落ち込む緑谷を慰めたい爆豪だったが、
「あれ、『かっちゃん』だよね?」
「本当だ、『マスコット』の『デク』くんもいる〜」
「あの二人、
「随分距離近いけど」
「『ツンギレかっちゃん』と『デコピン・デク』だ」
「『勇者かっちゃん』と『魔王キラキラ様』の勝負、派手だったな〜」
「ヤダ、マジでニコイチじゃん。ガチでデキてんじゃね?」
「違うよ。すれ違ってた二人が心を通わせ合って、愛を育むのはこ・こ・か・ら!」
「把握」
(把握、じゃねンだわ!!)
緑谷の隣でスマホを眺めたフリで微動だにしない爆豪の理由はこれであった。
緑谷と共に雄英祭で活躍した功罪として、過去のイジメの件がまずリークされた。
一瞬炎上し酷い事になりかけたが、ソレを
さすがに細かいイジメのやり取りが外部に漏れた事が無かったのか、『爆豪が緑谷をイジメていた』以上の情報がほとんど無かった理由を『爆豪が緑谷を好きだから』とし、イジメられていた筈の緑谷が爆豪に懐いているのを『緑谷が爆豪を好きだから』として、この二代派閥がまず戦争を始めネット*5は大炎上。
ソレが一般に飛び火し『幼馴染み』という関係性と『デク』『かっちゃん』という互いの呼び名を燃料に更に燃え上がった結果、『ニコイチ』『オサナナ』『カツデク』『デクカツ』のワードが元気良くネット界隈を飛び回る事となった。
(峰田〜〜〜!!)
奇しくも前回の峰田の発言が予言となったが、さすがに冤罪である。
『イジメっ子』のレッテルがほとんど広がらなかったのは今や明確に友人と言っていい間柄になった自分としてもありがたい事だったが、頼むからBLはヤメて欲しい!と心の底から思う爆豪である。
(そういうのは何か架空のアレコレで妄想しろや!ネットリテラシー百ぺん読み返してこい!!)
とはさすがに声に出せず、雄英の最寄り駅に着くまで延々と内心で罵倒の叫びを上げ続ける爆豪であった。
だが爆豪はこの後、更なる燃料を投下するハメになり、高校を卒業しプロデビューをした以降もしばらくこの話題に悩まされ続ける事になる未来を、まだ知らないのである。
☆☆☆
「おはよう⋯」
「あ、デクくんおはよう!」
「お、『デコピン・デク』!」
「おーっす、『ツンギレかっちゃん』!」
「ヤメロや、今穏やかにリアクションしてやる自信ねーから!」
「あ〜⋯」
二人揃って落ち込んだ様に肩を落として教室に入って来た緑谷と爆豪は席に着くなり突っ伏してうなだれる。
そっくりな仕草は正に幼馴染みといった所だが、空気を読んでクラスメイトの誰もツッコミを入れなかった。
「「⋯峰田(君)〜〜〜!!」」
「オ、オイラ〜〜〜!!?」
入れなかったが、突っ伏したままのオサナナコンビからまさかの八つ当たりでやり玉に上げられた峰田はさすがに「濡れ衣だ〜!」と全力涙目で反論の叫びを上げた。
「まあまあ、落ち着けよお二人さん」
そんな中、果敢にも話しかけるのはこちらも煤けた表情の瀬呂である。
「お前らも色々あったのは分かる、だけどな、俺も『ドンマイ』コールが鳴り響く中やって来たんだ」
「あ、俺も俺も、『ウェイ』の人って話しかけられて登校したよ」
更に涙目の上鳴まで便乗して「まず覚えられるのが大事なんだよ」「好意的に呼び掛けられるなら儲けもんじゃん」と優しく慰めてくる。
そんな彼らに瞳を潤ませながら緑谷は顔を上げる。
「せ、瀬呂君、上鳴君⋯⋯!!」
「「だから『オサナナ』通り越して『カップル』扱いでも元気出せ!」」
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜!!」」
そしてトドメを刺された緑谷は爆豪と共に地の底を這うような呻き声を上げて再び机に突っ伏した。
ただ、勘違いしないで欲しいのは瀬呂も上鳴も笑顔でからかうのでは無く、半分は本気で苦渋の表情を浮かべて慰めている*6。
「可哀想になデクくん」
「全く、有名税とは言え彼らの友情が随分と曲解されたものだ」
窓際の席で騒ぐ彼らを廊下側の席から眉根を下げて同情を示す麗日に飯田が同調する。
「あの二人はお友達でもあるだろうけど、私にはどちらかと言うと兄弟に見えるわ」ケロ
「「兄弟!?」」
そこに前の席から掛けられた蛙吹の言葉が意外だったのか、麗日も飯田も驚いた様な声が出た。
「兄弟みたいに育ったから、喧嘩も根深いし、イジメの様な事にもなるし、だけど深い所で分かり合う部分があるから、二人で同じ価値観でものを捉えられるんじゃないかしら」
「だから普通のお友達よりも距離が近い分、二人を知らない人から勘違いされてしまうと思うの」ケロ
「「「⋯ぁあ〜〜!」」」
蛙吹の言葉に納得が言ったのか、二人以外の周囲の生徒からも同意の声が上がる。
「だから最近爆豪君も興味深く思えるんだね☆」
そんな納得にノイズを差し挟む男に、周囲の目が一斉に向けられる。
そう、青山優雅である。
「何、青山、爆豪にまだ興味あるの?」
こないだしっかりドンパチしたじゃん、と後ろの芦戸に指摘されるが、
「騎馬戦の時は緑谷君とお話したかったからね☆将を射んとすればまず馬から、さ☆」
いつもの様に顎を両手に乗せ、机に立てた両肘で支える姿勢で緑谷と爆豪の方を眺めながら告げる青山は特に気にした風も無く答える。
「緑谷⋯⋯ライバルだ!」
「芦戸さん何でウチの方向くん!?」
興味があるんだか無いんだか、青山の言葉に気のない返事を返してしばし黙考した後おもむろに振り返る芦戸に麗日は驚いて答える。
「え〜、違うの?」
「な、ん、え、良くわからんけど」
意味ありげに眉を上げて尋ねる芦戸に、答える麗日の表情は一見平然と見えてその実。
(無意識に照れてる感が。これはまだ自覚無しか!?もうちょい泳がせてから畳み掛けると面白いか?)
ニヤリ、と嫌らしく微笑みたくなるのをグッと堪えて、「ふ~ん」と気のない返事で煙に巻く様に黒板の方を振り向いて話を終えた芦戸は、にこやかな笑みでこちらを見つめる青山と目が合ったのだった。
(ラブかい?☆)
(まだまだ、美味しく恋バナ出来るまで突付いたらダメだよ!)
(ウィ☆)
そんなやり取りをされているとはつゆ知らず、当の麗日は心配とも不満とも言いかねる不思議な表情で、朝のSHRが始まるまで机に突っ伏す緑谷を見つめ続けるのであった。