Repeat after me 「ラミ☆エル」!! 作:妖怪「キラキラ様」
チラ裏で、ひと月以上も投稿してなくて、エタ扱いでも可笑しくない拙作のお気に入りとか色々増えてるんですか!?
ただの書きなぐりに興味持って頂いてありがとうございます!!
感謝の初投稿です!!
良く晴れた午前中のビジネス街。
連れだって歩く数名の人影を、道行く人が好奇と尊敬、興味と感慨の様々な思いの籠った視線で見つめている。
その先頭を行くのはベストジーニスト、ヒーロービルボードチャートNo.4のトップヒーローであり、後に続く人物の多くは彼のサイドキック達だ。
だが現在、市内のパトロール中であるこの一団だが、そこに見馴れぬ若者が混じっているのが、普段ならばファンや民衆の視線を一身に浴びるベストジーニストへの興味が少なからず薄れ、それでもいつも以上に注目を集めている理由であった。
「あー!魔王様と勇者様が仲良く歩いてるー!!」
ビジネス街近くに併設されているのだろう、保育園の散歩途中とおぼしき一団がやって来ると同時に、幼児の高い声が響き渡る。
「違うよニコニコ魔王とツンギレ勇者のかっちゃんだよ!」
「ダメよアナタたち。ああいうのは演出。だからプライベートの二人はこうやって仲良く歩いてるデショ」
「「「あ~」」」
(誰かこのガキ共黙らせろや!!)
最初の声に反論した幼い声を、訳知り顔のおしゃまな声が窘め、納得の合唱に思わずといった様にすれ違う大人達の含み笑いが追従していく。
そんな中を、職場体験中はこちらの流儀に従って貰うと、綺麗な八二分けに髪型を整えられ、サイズの合ったジーンズを無理やり履かされた(履き心地抜群なのがまた腹立たしい)爆豪が苦み走った不満顔を隠す事も無く歩いていた。
「子供に大人気だね、かっちゃん☆」
「かっちゃん言うなキラキラ様が」
その爆豪の隣を、いつもの笑顔を振り撒き周囲の人々に賑々しく手を振りながら歩いているのはご存知お騒がせ大魔王⋯⋯ではなく、爆豪と同じようにデニム生地のこちらはジャケットを羽織ったお馴染み青山優雅である。
「もっと跳ねっ返りでも良かったんだが、意外と優等生だなかっちゃん」
「オメーもかベストジーニスト!!」
先頭を行くベストジーニストは正反対のリアクションでパトロールに着いてくる二人を可笑しそうに見やりながら微笑む。
「まあ、どんなデニムも馴染めば愛着が湧いてくるもの。この一週間は立派なヴィンテージデニムを目指して頑張ってくれたまえ」
「⋯⋯滲み出るキラメキだけじゃなくて、熟したキラメキもまた一興、だネ☆」
「その通りだラミ☆エル」
「何でテメェら通じ合っとんだ」
ニュアンス以上ではなかなか判りづらいデニム語録を、何故かキラメキ語録で翻訳し出した青山にノータイムで理解を示すNo.4ヒーロー。
ツッコミ不在の濃厚なボケ空間に、来るとこ間違えたよな、と何度目かもわからない溜め息をそっと吐き出す爆豪であった。
☆☆☆
「『個性因子活性化』⋯⋯それが雄英祭での不可解な個性使用の正体か」
「はい、グラントリノ」
(⋯⋯僕、今日が命日なんだろうか)
とある寂れた市街区域の一角、年季の入ったレンガ造りのアパートが立ち並ぶ中のその一室で、ヒーローの卵緑谷出久は、眼前で繰り広げられる自身の敬愛するNo.1ヒーローと、その師匠だという小柄な老人、グラントリノとの話し合いというレアな光景を前に、心停止寸前のオタク心を必死に宥めすかしていた。
『⋯⋯個性黎明期に存在していたと言う『天使』。まさか現代に蘇っていたとは。他人の空似や本人の生まれ変わりとはまた違うんだな?』
「ああ、そうだとも、サー。あくまで青山少年に『AFO』が手放したくて仕方無かった『天使』の個性を与えた結果として、拒絶反応無く完全に適合した事で復活したという事らしい。意志疎通にこそ難はあるが、伝承に聞く『天使の鏡』はこの目で見せて貰ったからね」
だというのに、そんな緑谷を弄ぶ様にオールマイトと続けて会話をするのはモニター越しの眼鏡の男性、あの、オールマイトのサイドキック、サー・ナイトアイである。
一人はリモート会話とはいえ、雲上の人とも言うべきビッグネーム揃い踏みのこの状況、もう僕は死ぬんじゃないか、もう既に死んでたか、そうかここは死後の世界か、天国はここにあったんだ、と話題の中心にいる筈の緑谷が真っ先に魂を飛ばしているのに気付いたのかどうか。
この場に居た最後の一人が優しく彼に話し掛けた。
「大丈夫かい?緊張してるよね?」
優しげに声をかけてくれたのは、緑谷と同じ雄英高校ヒーロー科の三年生の先輩だという遠形ミリオだ。
『雄英BIG3』という異名を持つ三名の内の一人で、オールマイトのサイドキック、サー・ナイトアイの事務所にインターンで参加している有望株。
自分が『OFA』を継承していなければ、目の前のこの青年が九代目継承者だったと紹介された時は一頻りたまげた後でとんでもない邪魔をしてしまったのでは無いのかと罪悪感が込み上げていた緑谷だったが。
「必要とあらば寿命の事があっても継承する気だったからね。確かにポッと出の後輩に役目を取られたと思えばちょっと悔しいけど、『天使』という個性黎明期の伝説まで話に関わって来るならボクが文句を言ってる場合じゃないよね。安心して、先輩であるボクがキッチリサポートしようと思うんだよね!」
そう初対面の挨拶の時に告げて、つぶらな瞳を細めて笑う先輩を、
(大きな人だ)
と、存在以上に大きく感じた尊敬すべき先輩の差し出した手を、緑谷は安心して手に取り、握手を交わしていた。
「大丈夫です、周りがビッグネーム過ぎてドキドキはしてますけど」
せっかく『個性因子活性化』と『天使』の個性について、『
緑谷は自分のナード心を一瞬で締め上げて、取り繕った笑みを浮かべて遠形に向き合った。
「でも現状、君が例の『天使』君を除けば『個性因子活性化』の第一人者だろう?充分君もビッグネームさ!」
実はサーの代理でここにいるボクが一番の小物ってね!と楽しそうに返す遠形に慌てる緑谷だが、ふと思い出した様に遠形が続けるのに耳を貸す。
「活性化すると個性がより強力に変化するならさ、ボクの『透過』も何か凄い事に」『ダメだぞミリオ』
言いかけた遠形の言葉を、大人組で固まり議論していた筈のナイトアイの声が遮る。
『今まで聞いた情報から考えても、制御に失敗した時点でかなりのリスクが伴う危険性が充分にある。ただでさえ制御に時間の掛かった、概念に関わる様な理解の難しい個性の持ち主のお前が失敗した場合、我々で対処出来ない可能性が高すぎる。状況をキチンと理解出来る、対処可能な第三者が監督出来ない状況下において、今後知り得た『個性因子活性化』の実践に関わる全ての行為を禁じる』
「了解だよね、サー!」
冷徹に聞こえる低い声でスピーカー越しに言い渡される無情な宣言に、しかしながら当の本人は真面目に答えた後にこっそり緑谷の方を向いて、
(怒られちゃった)
と茶目っ気たっぷりにウインクまじりに舌を出してみせた。
見ようによっては自分の師の忠告を真面目に受け取ってないと見られるような仕草の遠形が、未だ固さの残る緑谷の緊張を解す為に道化に徹していたというのは、この後も言葉ではともかく行動ではふざける事無く年長者達に追随していた事からも判るのだが、徹頭徹尾気遣われていたと緑谷が気付くのはこの会合が終わった辺りの事で。
(思ったより不真面目な人なのかな?)
と、この時の緑谷はそんな風に考えていた。
☆☆☆
「それで緑谷。『個性因子活性化』ってのは、『器』がねぇと制御が難しいってぇ話だが、自分の感覚として説明出来るか?」
遠形へ注意が向いたまま、ここからは自分達も話に加わるらしい。
緑谷は一度ゴクリと唾を飲み込み、グラントリノの問い掛けに口を開いた。
「感覚としては良くわかりません。最初にかっちゃん――幼馴染みのアドバイスから考えると、『オールマイトの真似事』から『両親の個性を想像』して切り替わったんだとは思いますけど、自分の中では地続きなんです。その後は普通に個性を使うだけで違う感じを感じてますけど、初回の時は幼馴染みが教えてくれなかったら多分しばらく気付かなかったと思います」
出来る限り分かりやすく答えたつもりだが、大丈夫だろうか。
緑谷にとっては爆豪の感じた違和感も、青山の言う『天使』にも、心当たりはない。
本当に無自覚で、急にフルカウルのコントロールが上手くなって、全身の『
「⋯⋯う~ん。自覚無しとは、難しいな」
「やはり、青山少年にも協力をお願いすべきでしょうか?」
「『天使』が意志疎通出来ねぇなら、その青山ってヤツも緑谷と同程度の理解しかしてねぇかもしれねぇし、先ずは俺達だけで理解を深めねぇ事には話も進まねぇ」
『USJ』の敵が似たような事が出来る危険性があんだろ?と言うグラントリノに、オールマイトが重々しく頷く。
そうなのだ。
今回の会合は、何もオールマイトが独断で彼のサイドキックと師匠を集めて秘密裏に開いたものではない。
雄英の根津校長以下、事情を知る者達の代表としてオールマイトが指示を受け、ひとまず『
因みに、それによってA組B組合同での『個性因子活性化講座』はひとまず延期、という扱いになっている。
『ひとまず、実例として一度見せてくれないか?』
悩み始めた師弟を一瞥して、リモート参加のナイトアイからそんな提案をされる。
緑谷は一応オールマイトに視線で許可を求め、彼の頷きを認めてから、「わかりました」と部屋の中央に進み出る。
「
気合いを込めた途端に、構えた緑谷の全身を淡い緑色の光が疾り、バチバチと小さくエネルギーが弾ける。
画面越しでなく肉眼で見るのが初めてなグラントリノと、緑谷の姿が良く見える様にタブレットを持ち、移動する遠形は小さいながらも確かなエネルギーの奔流を訴えかける『
『確かに、オールマイトとはまた違った個性の発露だ。それでいて流れる様なエネルギーの循環が目に見える。オールマイト、君は同じ事は出来ない、だったな?』
「ああ。私では緑谷少年の様なエネルギーを循環させて撃ち出すなんて使い方は出来ない。言い方は悪いが私のは有り余る『
『やはり残り火が『天使』として変質、緑谷に宿っているという仮説が有力視されるか』
「⋯⋯ふぇ?」
「ああ、緑谷少年にはまだ言って無かったな。本来、『
「は、はい。聞いてます。だから今のオールマイトは『
確か継承した時かその後か、急に『
(オールマイト、毎日元気にパトロールもヒーロー活動もしていたよな?)
『
毎日毎日、ヒーローの動向はタイムラインでチェックし、オールマイトの情報ならば寝不足すらなんのその、目を血走らせてでも追い続ける所存の生粋のヒーローオタク、オールマイトオタクである。
そんな彼が毎日追い続けられる程大忙しのオールマイトに、時間制限、あったのだろうか?
「うん、少年が疑問に思うのも無理はない。私もしばらくして、アレ、おかしいな?と首を傾げたからね」
オールマイトが緑谷が現状の違和感に気が付いたのを確認してから続ける。
「これは最近サーとグラントリノと話し合って考えた推論なんだが、どうも、緑谷少年に継承したのは『
「え、ぇええぇえええ!!?」
勿論、続いた彼の言葉を予想などしていなかった緑谷は大声を上げて狼狽えるが、他のメンバーは遠形さえも眉をピクリと揺らした程度で動じた風を見せない。
本当に、自分以外には共有された情報なのだろうと深呼吸を繰り返して、緑谷は何とか内心の動揺を落ち着けようと試みる。
「え、じゃあ、僕は『
「いや、その『残り火』が『天使』の個性に変質し、それを君が扱っているのが現状、と我々は見ている」
「個性の変質ですか!?」
「ああ、そこから逆算して、『
だから緑谷に宿ったのが『残り火』だ、というには仮説だらけではあるが、そも『個性を受け継ぐ』個性である『
『天使』化の仮定も含めて今までの情報から納得出来る設定を捏ね回して作り上げたと言った方が正解に近かった。
「ただでさえ先人達の仮説と実証を頼みに考察していた所に青山少年の『天使』発言だからね」
いつも笑顔がトレードマークのオールマイトの笑顔が煤けているが、理由を聞けば納得である。
(う~ん、わからないとは言ったものの、『
オールマイトとの問答が一段落ついて、緑谷は顎に手を当て考え込む。
「そういえば、ですけど。『器』って何を指すんでしょう?」
緑谷の呟きに周囲の者が顔を見合わせる。
「そりゃ⋯⋯入れ物か?」
「『
『緑谷達の情報を聞くに、心や精神を強く持たねば『天使の鏡』の発現はおろか『活性化』自体が不安定になり、物理的に肉体が崩壊しかねない。それを防ぐだけの強固なナニカ、という印象ですが』
大人組が各々意見を口にするが、手探り故に余り具体的なものは出てこない。
そんな彼らと同じように考え込んでいた遠形が、ナイトアイの映るタブレットを持ったままふと呟く。
「⋯⋯自立心、かな?」
「「「⋯⋯は?」」」
『どういう事だ、ミリオ?』
唐突な呟きに困惑する者達の視線を受け、遠形が自分の考えを述べる。
「さっき緑谷君が言ってましたよね?『オールマイトの真似事』から『両親の個性の想像』って。青山って子も自分の『天使』様に絶大な信頼、って言うより絶対の自信みたいなのを抱いている印象があるので、それって『自分を守ってくれる絶対的な安心感』、つまり手っ取り早く言えば『保護者』みたいなものかな、と」
『それで緑谷と青山は他の者より『活性化』を使いこなしていると。だが保護者ではないが『守護者』としてはオールマイトは適任に思えるが、それに対する反論は?』
遠形の突拍子も無い話に反応出来ない周囲と違い、ナイトアイは推論を頭ごなしの否定ではなく、純粋に疑問として返すが、遠形はそれにも平然と答える。
「それこそ『安心感』ですよサー。緑谷君がどんなにオールマイトに憧れていても、両親の個性を『受け継ぐ事が出来たと喜べた』という感情はきっと、緑谷君にとって大きかったんですよ」
なんだか自分の内心を詳らかにされている感が気恥ずかしいが、とそれでも遠形の話は納得のいく推論だとして、赤くなった顔を無視して緑谷は頷きを返す。
「なら、その『安心感』を胸に子供はどうするか?成長して大人になる。独り立ちするんです。『保護者』とは違う『自我』を持って『自立』する。僕の仮説はこんなところです」
その『自我』と『自立心』こそが、己の心を守る力になる。
遠形の仮説が終わると同時に、周囲の皆は納得したように頷き返す。
「突拍子もねぇし単純だが、納得はいった」
「青山少年の場合は『保護者』からの『自立』以前に、より強固なオリジナルの『天使』による補助が力の根幹、といった所でしょうか?」
『その認識があっているかは後日確かめるとして、先ずは緑谷、今の仮説の検証を試せるだろうか?』
ナイトアイの言葉を受けて、緑谷は再び個性を使うべく構える。
(えっと、心の具体化、みたいな何かあやふやな話だけど、一先ず挑戦してみよう。最初に僕の両親の個性が僕を守ってくれている『安心感』を)
そう考える緑谷の全身に、静かに緑色のオーラが波立ち始める。
(⋯⋯何か、父さんとお母さんの事考えながら個性を使おうとしただけで安定感が違う!?けど何かコレ恥ずかしいぞ!?)
まあ、思春期真っ盛りの少年少女に親の事を考えろとかは中々にハードルの高い話だが。
それはともかく、緑谷はこれが、自分の心の根幹を、『核』を守る力の発露であると漠然と感じていた。
(ここから『自我』を、自分を形作って『自立』出来たと確信出来る『器』を作る事が本来の『個性因子活性化』、あるいは『天使』化って事なのかな?⋯⋯じゃあ、どうする?)
何を以て『自立』した『器』を決める?
(今の時点でさえただのフルカウルじゃない。キチンと全身を巡らせてないのに安定してエネルギーが溢れて来る感じ。これを収める『器』を⋯⋯『器』?)
『自立』した『器』。
そもそもそれは、自分が将来、何になりたいか、という事だろうか?と考えた所で緑谷は雷が落ちたように大きく目を見開いた。
「⋯⋯スマイルヒーロー『オールライト』!!」
唐突に自分のヒーロー名を名乗りだした緑谷に、周囲はなんだと困惑したが、次の瞬間揃って目を見開いて固まった。
緑谷の全身に波うっていた光がフルカウルの時の様に疾り始めたかと思うと同時に赤色に変化し、糸のようにほどけながら全身を巡り始めたのだ。
全身を巡る赤色の光はいつしか緋色に光輝き、稲妻を迸らせる様に光を弾けさせながら、指先、足先から丁寧に糸を編むように緑谷の全身を覆っていく。
最終的に全身を薄い緋色のオーラが覆い尽くした所で迸る稲妻も安定し、緑谷は構えた体勢を直立に戻しながらおもむろに右手を体の正面にまで持ち上げた。
「おお!!?」
『これは!?』
「俊典!これか!?」
「はい!これが、これが『天使の鏡』です!!」
緑谷の開いた右手の先、掌を中心にして中空に浮かぶ緋色の正八角形の半透明の『鏡』。
緑谷の全身を隠せる位の大きさに見えるそれを目にして、一番驚いているのは他ならぬ緑谷本人であった。
「だ、出せた⋯⋯!?」
驚く緑谷の元に、真っ先に感嘆と混乱の境地から立ち直ったオールマイトが近付いて来る。
「緑谷少年!上手くいった様だな!」
「はい!オールマイト!青山君みたいに『鏡』も出せたし、出力だけなら全身五十パーセント位なのに破裂しそうな感覚は全く無いです!」
弟子の成長を喜ぼうとしたオールマイトだが、当の弟子から続けられた一言に思わず目を見開く。
「五十!?大丈夫なのかね!?」
「あ、はい。とりあえず放出するつもりで体を動かしたら周りを吹っ飛ばしそうですけど、何も動かなければ大丈夫ですし、自壊しそうな不安も全く。オンオフも問題無いかと」
ほら、と緑谷が全身のオーラを消したり出したりして見せるが、確かに全身を巡る光は緑谷の制御下に完全に入っているように見える。
「コントロール出来てんのは喜ばしいが、人ん家で不穏な会話と実践は実行前に一呼吸置いて欲しかったんだがなぁ」
「す、すいませんグラントリノ!?」
「ヒーロー名を名乗ったのは何か『器』をイメージしやすい事情があったのかい?」
「はい先輩。単純ですけど『将来の自分』が『自立心』の一つの形かなって考えから、なりたい自分をイメージして身に纏う、つまりは『ヒーローとしての自分の自覚』、というイメージで自分という『器』に『ヒーロー』としての自分を被せてみたんです」
『⋯⋯ほう?つまり『器』は入れ物、と言うより己が纏う外付けの『鎧』のイメージの方が正解に近いのだろうか?』
「そのイメージですサー・ナイトアイ」
混乱が落ち着いたのか、他の面々も次々に声をかけに近付き、だんだんと反省会を兼ねた情報共有に話題も移っていく。
職場体験、というより研究会みたいなものだが、緑谷にとっては充実した一週間の幕開けでもあった。
☆☆☆
「そういえばオールマイト」
「なんだい緑谷少年」
「以前チラッと話した『赤いフルカウル』あったじゃないですか」
「ああ!爆豪少年と開発したという奥の手だね?そういえば同じ『赤』のイメージだが、今回のとは違うのかね?」
「はい。『赤いフルカウル』は通常のフルカウルを無理やり拡張して出力五十パーセントに引き上げた感じで、骨折とかは無くても思い切り殴られた様な吐き気とかが反動で来るんで、固定砲台前提かつ一回限りの奥の手扱いだったんです」
「(内臓への負担ヤバそう)そういう事は今回のフルカウルはまた違うと?」
「はい!今回のも出力五十パーセントは変わらないですが、反動無しで自壊しない代わりに振り回されそうな感じでしょうか。こう、出力を、下げて、いけば⋯⋯ほら!全身出力二十パーセント!!」
(⋯⋯緑谷少年、やっぱり『
「⋯⋯師匠の肩書きを返上するのは早そうだな、俊典」
「!!?」