Repeat after me 「ラミ☆エル」!!   作:妖怪「キラキラ様」

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ラミ☆エル!!

 

「爆豪くん!」

「俺ぁ自前で飛べっから先いけ!合流は?」

「一応正門前!ヴィランから追撃あったら門壊して外へ出るって!」

「わーった!デクには後から追いつくって伝えとけ!」

「わかった!」

 

 というやり取りが、全員を個性『無重力(ゼロ・グラビティ)』で無重力化する際に麗日と爆豪の間で交わされた会話だと言う。

 

(かっちゃん待って!何かちゃんと会話成立してない!?なんで!?)

 

 しつこい様だが険悪な幼馴染みの時間が長すぎて混乱の度合いもその分大きな緑谷出久である。

そんな彼の混乱を余所に、既にクラスメイト全員がロープを腕に巻き付け宙に舞い、そのロープの反対側を束ねて一人持つ青山、の背に負ぶさった麗日という布陣である。

 

「ゴメン青山くん、重くない?」

「ノン◇問題無いさ☆ただお腹の前は塞がないでね☆」

 

 「万が一の時はレーザー撃つから☆」「わかった!」というやり取りを経て、全員準備完了とばかりに出久を見る。

 

 そんな彼らの視線を受けた出久は、

 

「行こう!青山君!」

「ウィ!☆」

 

 自分なりに気合いを入れた出久の号令に、青山が元気に答えたかと思うと、滑るように彼らは空へ飛び立った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「飛んでる⋯」

「飛んでる!よな⋯」

「飛んだ!けどさあ⋯」

 

(((視界がうるさい)))

 

 青山に吊るされる形で空を飛ぶ彼らは、必然的に下から青山を見上げる形となる。

となれば彼の個性の全容が嫌でも視界に入るのだが。

 

(問題無いってこういう事かー)

(レーザーって低出力だと星になんだな)

(メルヘンチックですがこれでこの速度を出せるんですのね)

(ケロ、さつき達が喜びそうね)

 

 青山が普段テンション高く喋る際に身体中に纏う星の『エフェクト』、それが現在彼の背後から出力されて、流れ星の如く尾を引いてキラキラと飛び散っているのだ。

自分達の元まで飛んでくる事は無いが、これに触れても痛みが走る等不都合は無いと言う。

中々に綺麗だがシュールな光景でもあるので、皆、感情の置き場に困った様な微妙な表情で、ロープに掴まり運ばれていた。

 ちなみに不都合と言えば、副次効果として背負われた麗日の姿を隠しているので、某氏が「麗日のうららかボディが!尻が見えねえ!」という血涙を伴う魂の叫びを上げた事以外で、不都合が出なかった事を追記しておく。

 

「緑谷君、正門に着いたよ☆」

 

 空を飛べばさすがに早い。

五分も掛からずに辿り着いた正門で、青山から一旦降りるかどうかの確認を取られた出久は正門を開ける為に降りようとする。

 

「そのまま突破して下さい!」

 

 背後から届いた13号の声に振り向くと、何か不機嫌そうな爆豪、の背中に跨る13号の姿があった。

 

「かっちゃん!!」

「いいから門壊せ!邪魔になんねぇようにさっさと逃げんぞ!」

 

 あの強気な爆豪が逃げの一手とは。

度重なる衝撃に感覚が麻痺して来たのか、「青山君!」と反射で出久は呼び掛ける。

 

「ウィ☆みんな、反動にご注意☆」

 

 注意を促され身構えたクラスメイトを確認して、青山は珍しく真剣味のある表情で大きく息を吸い込み。

 

「ラミ☆エル!!」

 

 謎の掛け声と共に、臍を中心とした自身の身長を越える光点の、巨大なレーザーを発射した。

 

 USJの正門を貫いた光は門と壁とを綺麗な円状にくり抜き、その跡地には燦々と日光が降り注いでいた。

 

 思った以上の威力に唖然とする当人以外の一同を尻目に「早く!」と急かす13号に、再起動した爆豪と、彼らに急かされた青山は、クラスメイト全員を引き連れ無事に『USJ』を脱出したのであった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「『無力化』の個性、ですか!?」

 

 当初は八百万、瀬呂、峰田、轟の個性を用いてソリを作成、麗日によって無重力化してもらい引き続き青山が引いて雄英へ戻る、というプランを考えていたが、教師が、大人が合流出来たならばとプランを変更、現在バス移動中である。

 

 バスが雄英への道をひた走る。

人心地付いて思わず力の抜けた生徒も多い中、未だ気を引き締める一人、出久は13号の話す(ヴィラン)の個性に思わず声を上げていた。

 

「はい。触れた対象の感覚、機能を一時的にですが使用不能にする、強力な個性です」

 

 ボクも現在、個性が使えない状態です。

そう締めくくった13号に一同が戦慄する。

 

「え、じゃあ、今、13号先生無個性って事!?」

 

 力の抜けた筆頭の上鳴が慌てて起き上がり騒ぎ出すが、13号は落ち着いて答える。

 

「個性が扱えない、という意味ではそうかもしれませんが、正確には個性を扱う感覚が痺れているような状態ですね」

 

 正座を続けて足が痺れた、あれのヒドイ状態が近いですかね、と補足され、何とも言えない空気が漂う。

 

「しかし、それでは相澤先生やオールマイトは」

 

「先輩、相澤先生と(ヴィラン)の個性は拮抗しますのでその対応に、オールマイト先生は主力です。私は足手まといですので生徒達の引率に、と」

「もののついでに連れてけって俺に13号ぶん投げやがって、オールマイトの野郎」

「かっちゃんオールマイトに暴言は「ァア゛ッ!?」」

「爆豪君緊急時でしたし、暴言は良くないです。ぶん投げられた身として気持ちは重々分かりますが」

 

 言葉尻からよほど強引な動きだったのだろうと思われる。

温厚な13号から愚痴めいた一言が出るとは、と相澤達の事を尋ねた飯田や他の気を抜かない面々は困惑の色を隠せなかった。

 

「で、では、私達が急いで避難したのは⋯」

「⋯触れられてねぇらしい」

「え?」

 

 気を取り直す様に質問する八百万に答えたのは爆豪だ。

 

「13号はブラックホールの吸引を掌で防がれて、その内個性が止まったらしい」

 

 理解が及ばないと固まる一同を気にせず、爆豪は続ける。

 

「つまり直接触る必要はねぇ。俺の爆破、半分野郎の氷結、もしかしたらテメェの『創造』したものでも、『()()()()()()()()()()()()()()()()()で、他人の『個性』を『無力化』する」

 

 それをモヤのヴィランが『移動』させて来る、下手に留まってたら一網打尽だ、と。

 淡々と語る爆豪に、想像したのだろう、一同の顔色が一気に悪くなる。

 

「何それチートじゃん!?」

「それだけではありません」

 

 思わず芦戸が大声を上げるが、13号がそれを遮る様に口を開く。

 

「ボクが離脱する前、イレイザーの()()()()()()が『無力化』されました。『個性』だけでは無い。()()()()()()、『無力化』させられ得る、()()()()()、何もかも」

 

 だからボクは足手まといで、万が一にも彼らの感知範囲にあなた達を残す訳には行かなかった。

 

 13号の押し殺した声に、思わず爆豪を見る様に振り向いた出久だが、彼の顔が悔しそうに、耐えるように顰められていると気付いてしまい何も言えず俯く。

 

 その後、無事雄英と連絡が取れ、高校へ辿り着き教室での一時待機となったA組一同だが、オールマイトと相澤の無事の一報が届くまで、ほとんど言葉を発する事も無く時を過ごすのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「いやぁ、こういう感じか!」

 

 いつもの笑顔を湛えてオールマイトが飛び退く。

着地のスピードを殺す様に足で、そして片手を地面に着けて踏ん張る彼の左肩には俵抱きにされたイレイザーの姿があった。

 

「すいません、オールマイト」

 

 すっかり足手まといです、と項垂れる彼は現在、右目、右腕、左脚の感覚が無い。

 

「なあに問題無い!」

 

 寧ろ助かってるよ相澤君!と朗らかに返すオールマイトの言葉通り、相澤の未だ感覚の残る左目は、的確に二人の(ヴィラン)を妨害してみせていた。

 

「死柄木という(ヴィラン)、やはり個性による遠距離攻撃に対して、一定時間その攻撃に掌を『晒す』必要がある。恐らくは五秒ほど、()()()()()()()()()()()()

 

 直接触れるなら一瞬でしたが、と悔しそうに続けるイレイザーの左脚は黒い男、『黒霧』と呼ばれた(ヴィラン)の個性『ワープゲート』によって回避した先に差し出された死柄木の手に掴まれた為に、感覚を喪失していた。

 

(だが、失った右目の感覚、視力と視界が徐々に戻ってきている。『無力化』に永続的な効果が無いのが救いだが)

 

「⋯⋯オールマイト、余り振り回されるとさすがに吐きかねません」

 

 ヒーローとして鍛え上げているイレイザーとて、自分を抱えて飛び回り、追従する巨体の(ヴィラン)群、更に後続の死柄木、黒霧両名に捕らえられぬよう大立ち回りを余儀なくされるオールマイトの肩の上では、さすがに気分が悪くなるというものだ。

 

「う〜ん、すまない !もう少しこのままだね!」

 

 何ならそのまま背中に吐いちゃって、と軽く言うオールマイトは、通算十体目の巨体の上半身を、丸ごと地面に埋め込んでいた。

 

「見事な犬神家ですね。⋯⋯もう少し頑張りますが、最悪、クリーニング代は請求して下さい」

「いやあ、それ位大丈夫だよ?」

「私が構いますので」

「アッハッハッハ⋯、では、律儀な相澤君の尊厳とクリーニング代を守る為に、ラストスパートといこうじゃあないか!!」

 

 

 

「何だアレ、チートじゃねぇか!?」

 

 十二体用意されていた改造人間『脳無』、各シチェーションに対応した量産型十一体と、対オールマイト用に用意したと『先生』が豪語していた、『超再生』『ショック吸収』『超怪力』のハイブリッド『脳無』が一体。

 最初は生徒を守る為もあってか防戦一方だった筈のオールマイトが、生徒が離脱したと見るやまずハイブリッド『脳無』ボコボコにして水中に沈め*1、あれだけいた量産型『脳無』も今しがた新たに地面から足だけが生えた斬新なオブジェの材料にされ、残る『脳無』はあと二体。

 

「悠長に見学していいレベルじゃ無かったな。黒霧、帰るぞ」

 

「おや、帰れると思っていたのかな?」

 

 ダウナーな様子を隠さないまま隣の黒霧に命じる死柄木に、不敵な笑みで近付くオールマイト。

 

「イレイザーの『抹消』は効かねえし、『脳無』は動けなくなるまでイレイザーを狙い続ける。ただの顔見せになっちまったが、そもそも俺、ヤル気無かったし」

 

 じゃ、と死柄木が片手を上げると同時、黒霧が今までで最大の出力で黒い靄を展開する。

 

 踏み込もうとするオールマイトの足元に『脳無』。

 

 と見せかけた死柄木の掌が小さく展開した靄から伸びる。

 

「イレイザーいい仕事するなあ」

 

 オールマイトの反射神経も見事なもので、彼らから大きく距離を取るように走り去ったが、今のタイミングはほんの一瞬オールマイトのコスチュームに指が触れるものだった。

 

 コスチュームでは『無力化』出来なかったかもしれない、がそれより明確に感じた『抹消』の感覚。

まともに動けないお荷物の筈のイレイザーの左目は、確かに最後までオールマイトを守りきっていた。

 

 動きを止めない様に走り続けるオールマイトはしかし、最後の一撃の後自分達を追う気配が残る二体の『脳無』だけだと気付いて思わず『SHIT』と毒付く。

 

「逃がしたか!!」

 

「⋯⋯その様ですね」

 

 先ほどまでの軽口を叩き合っていた時とは違い深刻そうな表情を浮かべる二人だが、周囲にはまだ二体の『脳無』が残っている。

 

 その後、消化試合気味に二体の『脳無』を無力化し終わった頃、ようやく雄英から校長をはじめとした援軍が到着し、同時に生徒達が無事逃げおおせた事を二人は知ったのだった。

*1
上がって来ない所を見るに水底に埋まっていると思われる

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