Repeat after me 「ラミ☆エル」!!   作:妖怪「キラキラ様」

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デクとかっちゃんの仲良い絡みは好き。
だけど「ワンチャンダイブ」は絶許。
そんな筆者、とっととかっちゃんを改心させる事にした。


閑話:デクとかっちゃん

 

「デク、面ァ貸せ」

 

 『USJ』でのヴィラン襲撃が終わり、オールマイトや相澤先生の無事も確認出来てホッとした後の事。

 

 帰りのホームルームも終えて、今日の委員長の仕事も終了、僕、今日は頑張ったよね!と高揚感と心地よい疲労感で、帰宅次第ベットに倒れ込んで寝そうかもと考えていた出久は、帰り支度を終えた爆豪に話しかけられ驚いた。

 

 中学以来久しく聞いてないその内容もそうだが、いつもの威圧感の無い、抑えた声量がなんというか『らしくない』。

出久の動揺を尻目に、言いたい事だけ告げた後はさっさと教室を出ていく爆豪に、慌てて荷物をかき集めて追いかけるのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(か、会話が無い⋯⋯)

 

 すわ、校舎裏か、と思えば普通に帰宅中である。

 

 正門を出て、電車に乗って、駅を出て。

 

 もうすぐ互いの家に着く為別れなければならないが、今の今まで誘ってきた爆豪からは何の話題も無い。

一応、何度か出久から話しかけはしたのだが、明確なリアクション一つなく、結局気まずいままここまで来てしまった。

 

「え、と、かっちゃん。」

 

 また明日、とわからないなりにひとまず別れの挨拶だけはしようと話しかけた出久は、

 

「デク⋯⋯いや、出久」

 

 と、振り返った爆豪の真剣な表情に言葉を詰まらせた。

 

(え、エ、かっちゃんが、僕の事名前で呼んだ、え、いつ以来?何事!?)

 

 訂正、内心大いに動揺していた。

そして、そんな出久の動揺を知ってか知らずか、爆豪は出久の顔をしばし見た後、

 

「今までゴメン」

 

 と頭を下げた。

 

「⋯⋯、⋯⋯、⋯⋯は?」

 

 予想外過ぎて硬直して言葉も出ない出久に爆豪は続ける。

 

 青山の言葉に言い返せる様な事が無かった事、子供の頃川で落ちた時、ヘドロヴィランに捕まった時、他の誰かを虐めていた時に出久が助けに来た時、何の力も持たない『無個性』がヒーローに見えて、眩しくて悔しくて、訳がわからなくて気持ち悪かった事。

 

「全部無かった事にしたくて、自分が上だと思わなきゃどうにかなりそうで、だから殴ってでも俺が上だと証明しようとした」

 

「でも、ワンチャンダイブとかヒーロー以前に人として、言っちゃいけねえ事まで言って、今さらだと思うけど」

 

 本当に、ゴメン。

 

 頭を下げ続ける爆豪に、無言のままの出久。

 

 しばらく時間が過ぎていく。

 

 しばらく時間が過ぎていく。

 

 しばらく時間が過ぎて、それでも五分位だろうか。

出久には、爆豪にも、長い長い沈黙が過ぎて。

 

「な、んで⋯⋯」

 

 出久が呟く。

 

「なんで、急にそんな事」

「アイツに、キラキラの、青山に言われて」

 

 戸惑う出久に、爆豪が目を逸らす。

 

「大して知りもしない相手の心情、あそこまで言い当てて来て困惑した。何なら訳分かんなくて気持ち悪かった」

 

 でも、と爆豪が続ける。

 

「その気持ち悪いの、お前の方がマシだったなって思ったら、今までのやらかしも、お前とのやり取りも、自分の情けなさ不甲斐なさも、全部自覚しちまって、そしたら目を逸らせなくなった」

 

「全部自分の汚い部分自覚して、情けなくて、だから、謝ろうって」

 

 出久は驚いた。

 

「今までの事、反省してる」

 

 爆豪の心変わりに、では無い。

 

「許してもらうとか、そういうモンじゃねえのはわかってる」

 

 彼の頭なら、こういう事に気付くなど造作も無い、ただ、今まで自分が正しいと盲目的に信じていたとか、本当に出久が気持ち悪かったとか、色々曲げられない部分が彼の思考を妨げていたのだろう、と、思う。

 

(だってヒーローヲタクの僕、自分でもたまにあの長文早口どうかなって思うし)

 

 迷惑など顧みない性格なら、指摘されて口を塞ぐ事もないのだ。

あれを気持ち悪いと言われたら、一切の反論は出来ない、ヲタク心を抑えきれなくてゴメンなさい。

 

(あれ、僕のアレな部分、本当に青山君と同レベル!?)

 

 キラメキを抑えきれなくてゴメンね☆

 

 ヲタク心を抑えきれなくてゴメンなさい。

 

 青山本人にちょっと失礼な*1事を内心思いながら、長々と動揺していた出久は、

 

「こんな奴がヒーローやれねえって思うなら俺は「待ってよ!!」!!」

 

 その言葉に劇的に反応した。

 

「今、何言おうとしたんだよ!」

 

 思わず一歩を踏み出して。

 

「君は誰より強かったじゃないか!」

 

 戸惑う爆豪に詰め寄って。

 

「いっつもみんなを引っ張って!」

 

 驚く爆豪の胸ぐらを掴み上げて。

 

「派手な『個性』でいつでも前向きで!」

 

 キッと爆豪の顔を睨み上げて。

 

「キミは!ボクの!憧れだったんだ!」

 

 出久は真剣な眼差しで爆豪に告げる。

 

「オールマイトに二人で憧れて、『無個性』だってわかって本当に落ち込んで。それでも!キミがいたから!」

 

 彼を真似て強くあろうとした。

 

「キミの強さに憧れた!キミの姿が鮮烈だった!」

 

 いつでも前を行く彼の背中を追いかけた。

 

「オールマイトが最初に憧れたヒーローなら!」

 

 自分の心に強烈なインパクトを残した。

 

「キミはボクの、一番身近な、近くにいたヒーローだったんだ!」

 

「そんなキミが!ボクなんかの為に!」

 

「ヒーロー辞めるなんて!死んでも言うなよ!!!」

 

 出久は、こんな爆豪の、殊勝な、落ち込んだ顔を知らない。

だから、心底驚いていた。

自分が、これほど彼の心に影響を与える場所にいた事に。

 

 心底、驚いていた。

 

「⋯⋯良いのかよ」

 

 胸ぐらを掴み上げられたまま、目を逸らして爆豪は言う。

 

「俺はお前を虐めたのに」

「他の誰かを相手に虐めてたなら許さないよ!」

 

 今ならきっと負けないしね!としれっと調子の良い事を言う幼馴染みに思わず「ァアッ!?」と返してしまった爆豪はしまったとばかりに再び目を逸らすが。

 

「僕もまあ、殴られたりは嫌だけど」

 

 か、かっちゃんと仲良くなれた方が嬉しいし、と何だか顔を赤らめて目を逸らす出久につい真顔になる。

 

「⋯お前、そこで赤くなんのは、アレじゃねぇのか?」

「⋯ゴメン、何か言語化した内容に照れたら、ちょっとタイミングが悪くて」

 

 スルーして、と出久が告げたのを最後に再び沈黙。

 

 少ししてどちらともなく距離を取って、気まずげに目を逸らす。

 

「⋯⋯良いんかよ」

 

 再び、仕切り直す様に爆豪が話し始める。

 

「俺と一緒にヒーロー目指すとか、トラウマとか無いんか?」

 

「無いよ」

 

 目を逸らす爆豪に、出久はあっけらかんと告げる。

 

「かっちゃんとは友達で、ライバルだからね」

 

 おもむろにファイティングポーズを取る緑谷に、呆れた様にため息を付いた爆豪は、改めて出久の顔を正面から見つめ、頭を下げた。

 

「ゴメン、出久」

 

「デク、で良いよ。今は頑張れって感じのデクなんだ!」

 

 あと、何度も謝らなくて良いよ、大丈夫だから。

 

 そう笑顔で告げる幼馴染みに何だか思わず泣きそうになった爆豪は、への字になった唇を噛み締め、顔を隠す様に俯けた後。

 

「ありがとな、デク」

 

 改めてよろしく、とまだ情けなさの残る表情を何とか取り繕って、幼馴染みに答えながら顔を上げるのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あ、あのさ⋯⋯」

 

 仲直り、と言うかは微妙だが、何となく蟠りが解けて気恥ずかしい空気が互いの間に漂う中、出久は爆豪に思い切って声をかけた。

 

「あ?なんだよ」

 

 平然と返してくれる幼馴染みに、思わず上がりそうになる頬を叱咤しながら、出久は今なら、と考えていた事を告げる。

 

「僕の『個性』の事、なんだけど⋯⋯」

 

「ああ、あの誰かから貰った『個性』か」

 

 貰い物ってバレた!?と普通に返して来た爆豪に動揺する出久だが、「貰い物っつったのはテメーだろーが」と冷静に返され目を逸らす。

 

(迂闊すぎるよ過去の自分!?)

 

 そんな動揺する出久を尻目に「いいんか?秘密なんだろ?」とこちらを慮ってくれるレアかっちゃんに嬉しくなる出久だが、生憎いまはそれどころでは無い。

 

「いや、ダメだろうけど、かっちゃんは幼馴染みだし、何か今のかっちゃんに隠し事はしたくないなって」

 

 本当に今までがあってなお慕われていたらしい、と出久からの信頼の厚さに爆豪もガラにも無くちょっと照れたりしていたのだが。

 

「あ?」

 

「ァアッ?」

 

「ハァアアァアア゛ッ!?」

 

 オールマイトの個性『ワン・フォー・オール』について語られた際の爆豪勝己、渾身の「あ?」の三段活用のリアクションである。

 

 この時の出久は、やっぱり驚くよね、といった程度の感想だったのだが、おもむろに爆豪、緑谷両家に帰るのが遅くなる連絡*2を入れた爆豪に思わず「?」と首を傾げるも、彼に首根っこを掴まれた辺りで状況の変化がわからず慌てふためく。

 

「ま、待ってかっちゃん!いきなりどうしたの!?」

 

「どうもこうもあるかクソナード!テメエ出自が出自の強個性貰ってあの程度かこの無能が!!」

 

「ッッヒィ!?」

 

 後ろ手に首根っこを掴まれているせいで、出久から爆豪の表情は見えないが、何とか首を回して確認しようとした彼は大いに後悔した。

 

 鬼だ。

 

 鬼がいる。

 

「特訓だクソがァ!!」

 

 テメェ使いこなせる様になるまでマトモに寝れると思うなよ!!と吠え立てる爆豪の宣言通り、この後出久は全力で泣きを見る事になるのだった。

*1
残当

*2
出久の母、引子には虐めの謝罪の代わりとばかりの、随分と殊勝な態度であった




拙作のかっちゃんはチョロい気がしますが、青山くんの存在にアイデアロールに成功してSAN値直葬した結果だとでもご理解下さい。
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