正直、何となく思い付いただけなので行き当たりばったりな小説なのですが、読者の皆様が楽しんでいただければモチベーションが上がって続きが書けると思います。
それでは、どうぞお楽しみください。
「ハァ、ハァ、ハァ…!」
少年は、走る。
階段を駆け降り、通路を進み、逃げていく。
それを追いかけるのは、異形だった。スポーティーな全身黒ずくめの装いに、顔はペストマスクを思わせる不気味な黒い仮面。
その異形──【エージェント】は、手にした銃から光線を放ち、それをギリギリで避けた少年は、弾が被弾して飛び散る火花に片を震わせつつ逃げ続ける。
アスリートも顔負けの速力で通路を走り続ける少年は、ある扉を見つけた。
何の扉かも分からないまま、少年はその扉を開けた。
「ッ!?ここって……!」
扉を開けた先に広がっていた光景は、異界だった。
縦横あらゆる方向に繋がっている階段に扉、少し赤みがさした白い空間は、とてもこの世のものとは思えない不可思議な光景だった。
「そっか、ここが……ッ!?」
触覚が生えたような特徴的な青い髪をした少年──【イルマ】はしばらく見入ったようにその世界を眺めていると、突如として、地面から赤い光弾が襲ってきた。
下を覗けば、イルマが足っている場所の裏側に、エージェントがまるで重力を無視したかのように足をつけながら、銃を構えている。
エージェントは間髪入れずに銃弾を放ち、イルマは直ぐ様飛び出してその光弾を避ける。
すると、緑がかって角が無い別個体のエージェントがイルマの走る先に現れ、縦断を放ってくる。
「うわぁっ!!?」
高速で迫る銃弾を、イルマはアクション映画の俳優のように、体を捻りながら飛び上がってその銃弾を回避すると、背後からイルマを追っていたエージェントが被弾して後退する。
しかし、イルマは銃弾は避けれても、上手く着地することが出来ず、足を滑らせて見えない地面へと落下したかと思うと、眼下にあった浮かんでいる扉に墜落した。
「アタッ!?イテテ……ッ!?」
体を打ち付けた痛みに顔をしかめるのも束の間、イルマが着地したその扉がガチャッと開き、イルマは声を上げる間もなくその扉の向こう側へと落ちていった。
色とりどりに変わっていく奇妙な空が広がり、辺りにはこの世のものとは思えない棘だらけの不気味な植物が至る所に生えており、さらに辺りには見たこともない生物がいる世界で、一人の老人が空を飛んでいた。
「……あ~ぁ。今日もベリやんとレヴィの孫自慢ばっかり聞かされちゃったよ~。僕も孫、欲しいなぁ~」
口髭とスキンヘッドと牛角が特徴の丸眼鏡をかけた長身痩躯の老人──【サリバン】は、本日開催された魔界の重要な定例会議と称した、旧友達の孫自慢大会の記憶を思いだし、頬を膨らませる。
「…やっぱり、誰かを孫に向かえようかなぁ~……ん?」
そこで、サリバンは大きな2つの月が浮かぶ空に、何かがあることに気付いた。
魔界には鳥や翼竜型の魔物が飛んでいることもあるし、この世界には飛べる者なんて珍しくも何ともない。しかし、サリバンが目にしているものは、明らかに人型で、羽を生やして飛ばず、どんどんと高度を下げて墜落していた。
それを見たサリバンは、スッと腕を上げる。すると、地面に向かって墜落していた人物──少年は、突如として重力に解放されたかのようにフワリと速度を落として空にプカプカと浮かび、サリバンは指を動かし、その少年を自身のもとへ引き寄せた。
「この子は……」
引き寄せた少年を抱え、サリバンは少年の全容を確認する。
歳は10代前半くらいで、童顔ながらも整った顔立ち。髪の色は透き通った青色で、屈折した触覚が生えているような特徴的なヘアースタイル。着ている服はボロボロで、何かの拍子に破けたのか腹部が露になっており、そこから見えたものに、サリバンの目が引き付けられる。
色は赤と黒で、立派なアゴと舌を備えた真っ赤な獅子舞や饕餮の顔のような機械的な外観で、右側にレバーが取り付けられている何かだった。
サリバンが引き付けられるようにそれを目にしていると、少年の瞼がふるふると震えながら開かれ、少年の青い瞳が露になる。
「う……うぅ……」
「おや、目が覚めたかい?大丈夫?」
苦しげに呻く少年に、サリバンは優しく声をかける。
少年は、朦朧とする意識の中で、自分に向けられた優しい声を聞き、サリバンの顔を見つめると、老人の頭の上についている物に気付かぬまま、今自分が一番に求めているものを口にした。
「な…何、か……ごはんを……ください………」
これが、異世界からやって来た少年───【イルマ・ストマック】と、サリバンの初めての邂逅だった。
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