今日で何度目かのため息をつく
王都には来たくなかった、だが仕方ないんだ
あの人のお願いなんだから
仕方ないんだ雇い主が何故か王都に行かせたがるから
「…いねぇ」
ふと隣を見ればさっきまで、王都の街並みに目を輝かせていた銀髪の少女はいなくなっていた
数分しか目を離していないのに消えている、いたら立っていたであろう地面のタイルを見て見てまたため息をつく
「かえりてぇな」
来た道を戻る
ーーー
人混みの中、見覚えのある桃髪を見つけ駆け寄る
「ラム」
名前を呼べば振り返り、呆れたような顔で見つめてくる
「エミリア様と一緒では無かったのですか?それともエミリア様を見失ったなんて従者としてあるまじき行為でも?」
「…」
言われてしまい何にも言えなくなる、それを見て鼻で笑われた
「レイン様は目立つのでそこら辺歩いてるだけでもエミリア様が見つけてくれるわ」
赤髪に真っ黒な服、なかなかいない格好のことを言っているのだろう
「だといいな」
「忙しいラムの方でも探してあげる」
何故か偉そうな態度に文句を言おうと思ったが、状況が状況なのでやめた
ーーー
見つけた
変な服着た黒髪の男と話しながら歩いている
本当なら近づきたい所だが、男の方があの人のことをサテラと呼んでいた
サテラだ、『嫉妬』の魔女の名前あの人をそう呼ぶなら切ろうなそう思ったが、あの人もあの人でその呼び方を受け入れていた
困惑して近づけない
「なーにしてるのかなぁ?」
「…パック様」
不思議そうに宙を浮いている灰色の大精霊がいた
「あれは」
「少し事情があってね、僕もあの呼び方については趣味が悪いと思うよ」
パックもパックで複雑なのだろう、何とも言えない顔で2人の背を見つめていた
「…」
「リアの名前を呼ばないなら近寄ってもいいと思う」
ため息をつき足を進める
魔女にはろくな思い出がない、というか思い出したくもない、それがたとえ違う魔女の名前であってもそれを近くで聞くのはあまり気分が良くない
だが給料をもらってる分の仕事はしなきゃならない
「何してんですか」
エミリアの肩にパックが乗り、どこに行っていたのか聞こうとしてか立ち止まったタイミングで話しかけた
「きゃ!レイン!?ち、違うのよ遊んでいたわけじゃないの、それにレインを置いてけぼりにしちゃったことはすごーくごめんなさい」
後ろから話しかけたせいか驚かれた、勢いよく振り返り、手を振り必死に言い訳がましい説明をしている
「サテラこの人は?」
「…」
「えっとね、私の騎士様よ」
申し訳なさそうなエミリアの顔に反して
その言葉を聞いた瞬間敵を見るような目で見つめてくる男にため息をつく
「それで、何を?」
「手癖の悪い子に、その徽章を取られちゃって」
目を離さなきゃよかったと過去の行いに後悔する
それと同時に何故徽章なのかと疑問がよぎる、徽章自体限られた人間にしか渡されず存在もあまり広まっていない、見た目だってあまり高価そうには見えない
「お前はその手伝いか」
だが今はその疑問を置いとく、それに盗んだ張本人に聞いた方が考えるより早いと判断した
「助けられたお礼も兼ねてな」
自信満々にそういう男を見てから、エミリアを見つめる
別に攻めているわけではない、変な事に首を突っ込んで問題が増えたのかと思ったそれ故に説明を求めた視線だった
「…その…ごめんなさい」
「謝罪が欲しくってこんなこと言ってるわけじゃねぇですよ、それで心当たりは?」
「貧民街の盗品蔵にあるんじゃねぇかって話だけど」
申し訳なさそうにしているエミリアの代わりに男が答えた
「じゃ助かったよ、俺の代わりに護衛ありがとうな」
「ちょ!待った!」
「あ?」
エミリアに声をかけ貧民街の方に行こうとした時、待ったをかけられ振り返る
「さっきも言った通り、俺はその子に助けられただから恩返しをしたい」
「もう十分借りは返したぞ」
「それに、一度逸れたんだまた逸れるかもしれねぇよ」
引き下がらない男にどうしたものかと考える
王戦関係者か、あるいは魔女教徒か
今のエミリアに近づく人間なんてそれぐらいしかいない
警戒心を強める
「僕はスバルを連れて行ってもいいと思う」
「何故?」
「ここまで手伝ってくれたんだ最後までやらせてあげようよそれにもしもの時は僕と君がいるだろ?」
「でもパック…」
楽しげに毛繕いを始める姿に頭を抱えてたくなったが、ため息をつくだけで我慢した
「自分の身は自分で守れよ」
「ああ!」
付いてきていいと分かった瞬間嬉しげに笑った
「レイン…」
「騙しっぱなしじゃいやだろ」
「…ありがとう」
きっとサテラと名乗ったのは自分からだろうそう思った、それと同時にもし敵陣営あるいは魔女教徒だったとしても捉えて情報を吐かせればいい
2人の会話は付いてきていいと言われ喜ぶスバルには届いていなかった
ーーー
舗装されてない街を歩く
「改めて名乗る、俺はレイン……アストレア」
名乗っていなかったことに気づき名乗る
「ナツキ・スバル」
「…どっちが家名だ?」
どっちとも名前と家名とも呼べるのと服装的にルグニカの人間なのかも怪しかったため鎌をかける事にした
「ナツキの方だよ」
「スバルはカララギが出身か?」
稀にカララギ特有の家名の置き方にそう聞くが、ピンときていないのか不思議そうな顔をしていた
「カララギ?」
「隣の国だよ…なんかお前と話してると不安になってくるよ」
「そうよね、スバルってなんだか不思議な子よね」
レインの言い方に対して優しい言い方のエミリア
じゃあ帝国か?帝国は黒髪が多い言って聴くし
ーー
精霊との日課を遠くから見つめる
ふよふよと宙を舞う精霊
「レインはサテラとどういう関係?」
「騎士と主人」
「本当にそれだけ?」
不満そうに聞いてくるスバルにため息をつき答える
「はっきり言え」
「サテラの事どう思ってる?」
「あ?」
言葉の意味を考える、普通なら好きか嫌いかとか言うべきところだろうが、こいつは分かってて言ってるのかよくわからない、嘘をついているのかを分かるなんて、事もできない
なんて答えるべきか
ここは素直に言うべきか
「いい人だとは思う、その優しさで変なのが付いてくるぐらいには」
「変なのって俺のこと?」
「他に誰がいんだよ」
日課が終わったエミリアが戻ってきたらしい、嬉しそうな顔をして近づいてくる
「レインとスバルすごーく仲良しになったのね」
嬉しそうに微笑んだ
「何処がですか」
「そうだぜ、俺的にはレインよりもサテラと仲良くなりたいよ」
「またそうやって茶化す」
「俺だってお前みてぇな変やつと仲良くするのは嫌だ」
手をひらひらと振る、横を見れば目つきの悪い目が嫌そうにこちらを見ている
ーーー
夕陽が落ち始めあと数分で夜になる頃だろう
「ここか」
ボロそうな建物
「なんか思った以上にでかいな」
「小屋でなく蔵、と言った意味がわかるわね。……この中にあるのが全部、名前の通りに盗んだ物ばっかりなら救えないわ」
「さて、噂通りなら中にたぶん盗品をまとめてる蔵主ってのがいると思うけど……こちらの立場としてはどんな感じで?」
「正直にいくわよ。盗まれたものがあるから、中を探して見つけたら返してって」
「最悪これで話をつければいい」
そういい黒い上着で隠れていた剣を見せる
経験上こう行った場所にいる奴らは話し合いなんて物に応じない、力の差を見せつけて脅すか、騙くらかして買い取るしかないのだ
「レイン、それはもしもの時だけよ」
「分かりましたよ」
相変わらず優しすぎるな、などと思いながら剣を上着の下に戻す
「レインって剣使えるタイプなんだな」
「人並みにはな」
少し緊張したようすのスバルに不信感を抱く
「うん、よし!ここは俺に任せてくれ」
「なんでだよ」
突然自分の頬を叩いたと思ったらそんなことを言われ困惑する
スバルはどう見ても丸腰でありそして見た目からも弱い事がわかる、何で自ら死ににいくようなことをするのか分からず眉を顰める
「何って女の子にはかっこいいところ見せたいしさ、それにここまで来るまでいいとこ無しだったし」
「スバルがどうして、かっこいい所を見せたいのかよく分からないのだけども…」
「…はぁ、まあいいスバル俺と行くぞ、丸腰のお前が先行ったって舐められるだけだ」
「そうなんだけども」
それを言うかとでも言いたげに見つめてくる
その姿に何故危険がないと思い込んでいるのか不思議で仕方がなかった
「それじゃあ任せるわね」
レインも一緒に行くと言う発言で安心したのか任せられた
不服そうなスバルと共に盗品蔵に入る
「えーっと、どなたかご在宅ですかー?」
先に扉を開け中に入っていくスバルの肩を掴む
「俺より前に行くなよ」
そういい前に出た
中は薄暗くよく見えない、人の気配もしない、留守かと考え始めていた時
「…血?」
扉を開けたことによって入った光が写した床を広がる赤い液体
「ひ」
それに気づいたのか、それともその先をレインよりも早く見たのか後ろにいるスバルからそんな声が漏れた
死体があった、多分この盗品蔵の持ち主の老人の
「スバル今すぐあの人の元に行け、逃げろそんで」
詰所に行け、そう言おうとしたが知らない声に驚き言葉が止まってしまった
「ああ、見つけてしまったのね。それじゃ仕方ない。ええ、仕方ないのよ」
女の冷たい声がした、スバルを庇うべく前に出て剣を抜こうとした
「っ!」
突然何か、多分足に蹴り吹き飛ばされた、まともに見えない中受け身も蹴りも防ぐことなんてできなくって強く壁に打ち付けられた
「がっ」
入り口近くにいるスバルのすぐ近くに黒い影があった、死角なのかスバルは気づいていない
「レイン!?」
「はやく」
逃げろそう言いたかったが何かが頭を貫いた