スバルのおかげで交渉はうまく行った
今は白鯨討伐の準備時間だ
「白鯨な」
ため息混じりに呟く
「今回は白鯨だけなんだろうな」
小さな呟きはスバルの耳に入ってなかったらしい
本来ならば知るはずのない事、それを知ってるのはあの魔女がお互いのことを知りましょうとか言って話だからだ、誰にも言えないままだが
「何て?」
「何でもねぇよ」
ため息をつく
此処最近よくため息をつくな、そう思いながら綺麗な月を見上げる
「…そのレイン、謝るのが遅くなったけどごめん」
改まってそう言い出す、記憶にある話かない話か分からないから、少し考えてから口を開いた
「何に対してだ」
「騎士を名乗ったこととか」
「ああそれか、俺的にはあのままエミリア様の騎士にお前がなってくれるとうれしいぜ」
その言葉に驚き嬉しそうな顔をしてこちらを見つめている
「俺の仕事が減る」
「お前な!」
ぬか喜びだったと肩を落としている
少しだけ気まずかった空気がなくなった
大きなため息をした後胸を張りスバルが拳を突き出してきた
「レイン、頼りにしてるぜ」
突然のことに困惑する、普通なら突き出してきた拳と自分の拳をぶつけるのだろうが、やめた
「俺にできる範囲で期待しろ」
それだけいい、スバルの笑った顔を見て釣られて笑ってしまった
「初めてレインの笑った顔見たかも」
「五月蝿い」
頭を掴む
それは照れ隠しに等しい行動だった
ーーー
数時間後には戦場になる場所、リーファウス平原の真ん中にそびえ立つフリューゲルの大樹の近く
「意外だっなー」
こちらを見てニヤニヤと笑っている
「何がだ」
「レインきゅんはさ、白鯨討伐に絶対に参加しないと思ってたから」
「…したくねぇよ」
スバルに助けを求めるように見たが、リカードとのお話に夢中だ
「フェリスあまり揶揄うものじゃない」
「はーいクルシュ様」
「と言いたい所なのだが、確かに私も何故貴公が参加するのかは知りたい」
助け舟を出されたと思ったらそれは泥舟だった
「…」
「どうかしたのか?」
答えないレインに不思議そうに2人とも見つめている
「誰にも言わないと約束できますか」
その言葉に2人は了承した
「…今倒さないといつか、ラインハルトがこんな事しなきゃ行けなくなる、それはい、やだ…から」
口籠もりながらそう言い放った姿に2人は顔を見合わせ驚いていた
「絶対に言わないでください」
念押しするレインに2人はまだ驚きを隠せていないようだった
側から見ればレインは弟であるラインハルトを嫌っている
だがその嫌っていると思っていた本人から出た言葉は、予想外もしていなかった弟を本気で心配している言葉であると嘘ではないと加護を使わなくっても分かってしまったからだ
「にゃんかすごい以外」
「ああ」
「本当に言わないでください」
約束したからには言わないと2人は頷く
信じてなさげにレインは2人を見つめる
ーーー
首が痛くなるほどにでかい木
「…」
眼帯越しに右目に触る
「ずっと気になってたんだけど、それどうしたんだ?」
不思議そうにそう聞いてくる
「別に嫌なら全然いいけど」
「…まぁいいか」
同じ魔女に魅入られた可哀想なやつ同士だ
今はレムもいない
遠くでフェリスと話しているレムを確認して話す
「前に…もう10年くらい前か?誘拐されたんだ」
「え?」
「その時にやられた」
そういい右目を指差す
右目は誘拐され抉り取られたと思われた、そうスバルは解釈した
実際は別の目にすり替わっているだけだが、それを知ってるのはレインと魔女しかいない、父親とラインハルトもレインの右目は無いものだと思っている、そう言うことにされたから
「なんか悪いこと聞いたな」
「別にいいさ、それに俺はお前に仲間意識持ってるだぜ」
「仲間意識ってなんのだよ」
その言葉に以外そうにレインは首を傾げた
「レムから匂いの事で聞いてると思ったが」
言葉の意味が分からず不思議そうな顔をする
「魔女に魅入られた同士頑張ろうな」
「は」
目を見開き、心臓らへんを抑えるスバルを眺める
やっぱりスバルと俺は魅入られた魔女が違う
おんなじならそんな反応はしない、心臓を抑えることなんてしない
「そういうことか」
死に戻りが一部共有できることに納得したスバルとは違い、別のことを考えていた
「まぁ、よろしくなレイン」
「ああ」
「てかよくよく考えたら、魔女の匂いで囮作戦なのに」
「安心しろそこら辺はもう話はつけてある。お前らの護衛に俺がつく、それに俺よりお前の方が臭いらしい」
「言い方!」
レム曰く、「スバル君の方が魔女臭いです」とのことだ
だが念には念をで一緒にいることになった
ーー
緊張した空気が流れる
白鯨が来るまであと少しだ
スバル達の方を見れば同じく顔をこわ張らせていた
聞きいたことのない音楽が流れる
「総員、警戒だ――」
雲越しに白鯨の姿が見えた
「――全員」
続きを口にしようとしたクルシュよりも先に
「――ぶちかませぇッ!!」
「――アルヒューマ!!」
「バカだな」
そんな声に本音が漏れた
走り出す2人を見て自分もいそいで地竜を走らせる
「全員――あの馬鹿共に続け!!」
そんな声が後ろから聞こえた
俺も馬鹿共に入ってるのか?
ーー
「俺の存在を意識させて、討伐隊に基本背中を取らせるように立ち回る――!」
「それは分かってるが!」
「闇払いの結晶が砕けます、目をつむってください!!」
目を瞑れば瞼越しに眩しい光が目をさす
光が落ち着き目を開ければ、昼間と対して変わらない光景
「っても!」
後ろを見ればなかなかに早い速度で追ってくる白鯨
「追いかけっこしててもいつかは捕まるぞこれ」
「それは分かってる、でも戦ってるみんなにそこら辺は任せる」
「見事な丸投げだな!」
改めて白鯨を見る
15年前、レインの祖母であるテレシアを殺し、アストレア家に亀裂を入れた一部
「…見てろよ、ちゃんと殺す所を」
右目を触りそう呟く
頭に浮かぶのは思い出すたびに頭痛と吐き気に襲われる、魔女の姿
ーーー
ヴィルヘルムが白鯨の左目を落とした
「すげぇ!」
「…」
隣で喜ぶスバルと素直に喜べないレイン
そんな中近くにいたフェリスが異変気づいた
「白鯨の目の色が……!」
「くるよ!!」
「スバルくん、頭を下げていてください――!!」
「っ」
地竜を加速させる
白鯨の全身から口が出てきだと思えば霧が噴き出した
出てきた霧のせいで白鯨は隠れてしまった
ーーー
白鯨の声にやられたのか一部はマナ酔いのような状態になっていた
ダメそうな奴らをフェリスの元に引きずり持っていく
この状況下立て直す時間すらない、早く1人でも多く戦場に復帰させなきゃいけない
重い鎧を引きずり運ぶ
「俺とレムが白鯨を引きつける。その間にあんたらはフェリスの治療を受けてくれ。レインはこのまま運ぶのを手伝ってやってくれ、大丈夫そうな奴らはフェリスに預けたあと、合流してくれ」
「…スバルお前」
なんでそんな無茶する、そう言おうお思ったがが、格好つけたように笑っていたので呆れてやめた
本当にお前はバカだ、だから格好つけさせてやるよ
「引きつける!? いったい、どうやって……」
「こうやるんだよ」
「――聞こえる奴らは耳を塞げ!! それどころじゃない奴らはそのままで!!」
「…」
もしスバルが俺と同じように魔女と契約していたら、契約を今破ろうとしていたら
そんな考えが頭をよぎる
「――俺は『死に」
止めようとしたが遅かった
「――戻った」
少しの間を置いてそう言った
「レム、どうだ。俺から魔女の臭いは……」
「はい、臭いです!」
「狙い通りだけど言い方悪くねぇ!?」
魔女が来る様子はない、当然と言えば当然だが、もう死んでるか封印されてるのしかいない、アイツ以外は
「俺たちはすぐにここを離れる! なるたけ根の近くには寄らないようにするから、クルシュたちとうまく落ち合ってくれ!」
「わ、わかった! 武運を祈る!」
「お互いにな!」
「気をつけろよ」
「任せろ!」
そういい親指を立てて笑っていた
ーー
「あれはまずい」
遠くからみえるスバル達は白鯨に追い付かれそうになっていた、それを見て持っていた兵士を雑に投げ、地竜に飛び乗る
「フェリス後は任せる」
「任せるって!何するつもり!」
「俺に出来ることだよ」
地竜には無理をすることになる思う
スバル達がいる方向とは違う、少し離れた場所に行く
「使いたくない」
本音が漏れるが覚悟を決め、眼帯を取る
少しぼやける片方の視界
「来いよ白鯨ッ!」
遠く離れているというのに、尾が見切れるほどの大きさ
その言葉が終わった同時に白鯨は向きを変えてこっちに向かってくる
冷や汗が流れる
気持ち悪い
視界が別の所に流れているような感覚
ー安心してください、ずっと見てますからー
笑顔で目を取り出された後に言われた言葉を思い返して吐きそうになる
「っははは見てろよちゃんと見てろよ、お前がやったんだ、お前が俺の目とお前の目交換したんだ、だからちゃんと見てろよ」
狂ったようにそう嘆き、
左右、違う青い瞳で白鯨を見つめる
「…反吐が出る」
ある程度距離も取れたので眼帯をつけ、逃げる
「何したのか分かんねぇけど!助かった!」
「よかったな」
「すげぇ投げやりだな!」
「レイン様何をしたんですか、一時的に魔女の匂いが…スバル君よりも」
眉を顰め聞いてくる、レムに答えを迷わず口を開く
「悪いが秘密だ、安心しろよそう簡単に使わねぇしもう使いたくねぇ」
吐きそうな口元を抑える