ラインハルトの兄は魔女に魅入られている!   作:欠けたチーズ

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心境

目の前の光景に唖然とする

 

「お祖父様」

 

口から漏れ出た小さな声は土が割れる音でかき消された

 

地面ごとヴィルヘルムが白鯨の口の中に入っていた

その様子をただ茫然と眺めていることしかできなかった

別に仲が良かったわけでは無い、何ならその逆だ

 

「ぁ」

 

待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て

 

まだ俺はあの時の謝罪を聞いてないぞ

 

待て

 

眼帯に手を伸ばすがもう遅い

口は閉じた

 

「くそったれが、ラインハルトに謝ってから死ねよ」

 

悪態は誰にも聞かれずに消えた

 

ーー

 

白鯨が三体に増えた

 

「ざっけんな」

 

苛立ちを抑えることもせず悪態をつく

 

「腹に呑み込まれる前なら、まだなんとかなるはずだ――!」

 

その言葉に納得するが不意に落ちないところもある

 

そんな汚い部分を振り払い

 

ヴィルヘルムを飲み込んだであろう白鯨の元に飛び乗る

 

「チッ」

 

剣を抜き肉を切る

 

「いつもいつも!イライラさせやがって」

 

ドス黒い血が剣を入れ抜くたびに吹き出す

 

ラインハルトをなじった時も、勝手に家を出て行った時も

 

今も

 

「自分勝手がすぎるとおもわねぇのかよ!」

 

強く歯を噛み音を鳴らす

 

「泣いて謝るまで死なせねぇぞ!」

 

あの時の謝罪をまだ聞いていない

あれだけラインハルトを傷つけたんだ、謝っても許さないがそれでも、アイツは優しいだから

 

地竜に戻り、行ったん様子を見てからまた飛び乗り切るを繰り返していた時

 

中から衝撃が来る場所がることに気づいた

 

その場に剣を突き立て、肉を割けばドス黒い血と共に出てきたそいつを睨む

 

驚いたような顔をしながらも足取りが不安定なそいつの体を抱え地竜に乗る

 

「ヴィルヘルムさん!?レインも!」

 

「この老ぼれをフェリスのとこまで運ぶ何かあったらさっきみたくやるから安心して駆け回れ!」

 

「何故」

 

弱々しい声がすぐ近くから聞こえ、頷き「分かった」と言ったスバルを見送ってからヴィルヘルムの方を見る

 

「俺は根に持つ性格なんだ」

 

意味が分からないと言いたげな顔を見る

 

ーお祖父様でも!これ以上ラインハルトの事を悪く言うのはー

 

「許さない」

 

ヴィルヘルムがラインハルトをなじった15年前、レインがラインハルトを庇い言い放った言葉だった

 

「ツ!」

 

「お前がラインハルトに謝るまで俺は許さない」

 

驚いた顔のヴィルヘルムを見つめ鼻で笑う

 

「そうか…お前はまだ」

 

ヴィルヘルムの言葉は続かなかった

 

「チッアイツに言ったらただでさえ短い生い先が更に短くなるぞ」

 

「ああ」

 

フェリスの元に行き雑に下ろし、スバル達の元に行こうと思ったがあっちから来た

 

三体の白鯨の謎を解いたスバル

それを倒す作戦を聞いた

 

「…無茶な作戦をするな」

 

スバルが1番上の白鯨の下に行き魔女の匂いを使い下に落とす

そんな作戦を聞いて正気を疑う

 

「んじゃ任せたぜ、他の2体は」

 

「やろうと思えばアイツを下に引き摺り下ろす事もできるぞ俺は」

 

「レイン、好きだって言ってくれた女の子の前では俺は格好つけたいんだよ」

 

その姿をみて呆れた

 

「…馬鹿だなお前」

 

ため息をつき、地竜に乗る

 

「馬鹿だお前は本当に馬鹿だ、ああ馬鹿だ」

 

「馬鹿馬鹿言いすぎじゃね?」

 

反論するスバルを1つの目で見つめる

その考えはなんとなく理解できる、だからそれをやるスバルに尊敬の念を少しだく、多分数時間もしたら冷静になり、それは消えるだろうが

 

「死ぬなよ」

 

「そっちもな」

 

地竜を走らせスバルがやっていた囮役を変わる

 

好きか

 

これがなきゃ俺も誰かを好きになれたり愛したりできたのかな、ラインハルトにも負担をかけずに済んだのか

 

くだらない事を思いながらいやいや眼帯を外し白鯨を見上げる

 

ーーー

 

フリューゲルの大樹に押し潰された白鯨を眺める

 

「んで?復讐遂行した気分はどうなんだ?お祖父様?」

 

嫌味ったらしく言えば顔色一つ変えずに見つめてくる

 

「すまなかった」

 

「あ?」

 

頭を下げてそう謝るヴィルヘルムに困惑する

何に対しての謝罪だ?誰に対して謝罪だ?

 

「…謝る相手がちげぇだろうがよ」

 

苛立ちを隠すように頭をかき、ヴィルヘルムから目を逸らす

 

「家の事も、自分の子供の事もお前達の事も全て投げ出していた」

 

「…」

 

「苦労をかけてしまった」

 

「はぁ」

 

どうしたらいいものかと、求めていた言葉と違うものが出てきたから困り果てていた

 

「俺はアンタを許さない、過去は消えない言葉は取り消せない、でも」

 

遠くでイチャイチャするスバルとレムが見えた

 

「…アンタを英雄として、『剣鬼』ヴィルヘルムとして尊敬はしている、俺のお祖父様は今死んだ目の前にいるのは俺が尊敬している英雄だ、それで手を打ってやる」

 

自分でも何が言いたいのかよく分からないのか、頭を掻いている

レインの言いたい事をまとめれば、他人としてなら許すし仲良くしてやると言う事だ

 

「ッーー!だから!俺はアンタを祖父として見ない!いいな!」

 

祖父としてでは無く他人として見る宣言をしたレインにヴィルヘルムは困ったように笑った

 

「それやめろ!俺が我儘言ってる餓鬼みたいじゃねぇかよ!」

 

指を刺し子供のように地団駄を踏む

 

「それなら私は、悲願を手伝ってくれた恩人の1人として接します」

 

首を振りそう言ったヴィルヘルムを見てため息をつく

自分から言い出した事だが、何を言ってるんだと冷静になった頭が囁く

 

「もうスバルの所に行けよ」

 

虫を追い払うかように手を振る

 

「そうします」

 

子供と接するような優しい声でそう言った

その声を聞きヴィルヘルムの背を睨む

 

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