レムやクルシュ、負傷者達は白鯨の首を持って王都にあるカルステラン邸宅に戻り、スバル達は今メイザース領に向かっていた
「なぁヴィルヘルムさんと何かあった?」
「……はぁ」
「なんかあったなこれ」
勘がいいのかよく分からないがそんな事を聞かれる
「ツンデレもほどほどにしておけよ、兄様」
「うわ…」
ツンデレの意味が分からないがスバルに兄様と呼ばれ、ついそんな声が出てきた
「ガチめのうわが出たよ…流石に傷つく」
「勝手に傷ついてろよ」
自分で言ってその反応に傷つかれてもレイン的には知ったこっちゃ無い話だ
他の場所に配置していた鉄の牙と合流することになったがよく見れば見たことある奴がいた
「――なんで、てめぇが」
スバルをボコボコにした張本人
地竜が動くたびに紫色の髪が靡く
「チクったらお前大変なことになるな」
しないがそんな事を言ってあざ笑う
と言ってももう謹慎は解けているだろうが、解けて早々こんな大事に参加しているなんてバレたら別の意味で叱られるだろうそう思っての発言だった
「それは勘弁願う」
気障ったらしく前髪を掻き上げた
小さい時から一応顔見知りだった相手、と言っても誘拐事件が起きてからはあまり顔を合わせていないが
「だが、そんな面倒な事レインはしないだろう?」
「気分次第だな」
キザったらしく前髪を掻き上げ苦笑していた
「こんにゃところで合流だなんて、いいご身分だよネ、ユリウス。ほんの数時間前にはこっちは命懸けで戦ってたってのにさ」
「それを言われると面目も立たない。だが、訂正させてもらおうか、フェリス。私はユリウスという人物ではない。そうだな……ユーリと名乗っておこうか」
相変わらず形から入るよな
などと思いながら飛び掛かりかねないスバルの肩を掴む
文句言いたげに見ていたが知らない
「仮に、ではあるが、騎士の身分を持つ人物が雇われ者の集団に加わり、傭兵に身を落とすといったことはあってはならない。ユリウス・ユークリウスという人物が鉄の牙に加わった事実はなく、ここにいるのはユーリというひとりの男というわけだ」
「にゃーる。相変わらず、ちゃんとしたお家の騎士道は面倒っちいよネェ。フェリちゃんところは没落貴族で良かったぁ」
「騎士道を面倒などと思わないさ。友人に助力するだけのことに、気を回さなくてはならない点は問題だと思うがね。――余談ではあるが、ユリウス・ユークリウスが受けた謹慎処分は昨晩、日が変わった時点で解けている、とも明言しておこうか」
「くだらねぇ予防線張りやがって……偽名の意味とかあんのかよ、それで」
「喧嘩すんなよ」
苛立つスバルにめんどくさげにそう言い放つ
「しねぇよ」
「思ったより元気そうでなによりだ。――体の調子はどうだろうか」
「ああ、まあ、かすり傷だったし? 唾つけときゃ治ったみたいな感じ? そっちの方こそ、援軍とか名乗るわりには出番が遅いんじゃねぇの? なに、素人相手にマジになっちゃったせいで、お偉いさんに提出する始末書書くのに忙しかった?」
「その話ではなく、魔獣討伐の名誉の負傷の話をしたかったんだが……そちらの傷も復調したようでなによりだ。もともと、見た目ほど派手な傷ではなかったはずなのでね。同情を買うのが得意な君は、大げさに痛がって転げ回っていたものだが」
見事なすれ違いに呆れつつ、困り果てる
止めるのも面倒だし、誰かに押し付けたとしても借りを作るのは嫌だ
「ははははははは」
「ふふふふふふふ」
乾いた笑いが2人の間に流れる
フェリス達は止める気配もない
「俺、アイツ、嫌い」
「俺に言うな、本人に言え」
レインの方を向きそう言い放ったスバルに顔を見ずそう言い放った
ーー
「それじゃ、これから猿でもできる魔女教狩りの簡単説明――始めるぜ」
そういい作戦会議は始まった
聞く限りどう足掻いてもレインが持つ記憶以上の事を話すスバルにレインは1人頭を抱えた
そもそも白鯨の出没時間を知っている時点で問い詰めるべきだったと後悔する
レインの記憶では、白鯨が現れる事なんて無かったのだから
作戦会議も終わり、地竜に乗ろうとしていたスバルに声をかける
「
「こっちにもあるのか」
そんな事を言うスバルの足を軽く蹴る
痛がりつつ文句を言おうとしたスバルの顔を真っ直ぐみれば、言いたい事がわかったのだろう、申し訳なさそうに目を逸らした
「…」
「悪かったよ…次からちゃんとやります」
「…死にかけたら言え」
「え」
その言葉に驚きの声を上げるスバルを無視して自分の地竜に乗る
自分らしく無い発言に悶々としながら雑に髪を掻き上げる
「ずいぶん面白くなさげに見るな」
ずっと見ていたであろう人物を睨みつける
「…いや随分肩入れしているのだと思ってね」
不思議そうにそう言い放つユリウスに眉を顰める、言いたい事がわからなかった
「何が言いたい?」
「…自分の弟よりもよく見ていて、感情的になってるそう思っただけだよ」
「…チッ」
その言葉に舌打ちをして地竜を走らせる
側から見れば、弟のラインハルトより出会ったばかりのスバルを気にかけているように見えている、それは事実だ、本当のことを知らなきゃ
それはレインも自覚していた
だから気にかけてやりたいのにかけれないラインハルトの事を思い出し、自分に苛立っていた
だからユリウスの言葉にイラつき舌打ちをしたわけではな
それをちゃんと言えない故に誤解は深まる
ーー
スバルを囮にし怠惰を倒す、そんな作戦は順調に進んでいる
洞窟の入り口近くに立つ痩せこけた男
「良いデス。わかったのデス! やりましょう、やるとするデス。ワタシとアナタと、どちらが寵愛に、愛に、魔女の情熱を受け入れるに相応しいか、競い合うとしましょう! ああ、愛に、愛に、愛にぃぃぃぃぃ!!」
「……盛り上がってるとこ悪いんだけどよ」
スバルの背後から黒い影がペテルギウスの元に一直線に駆け抜けていった
「なんデスかね!? 今! まさに! ワタシは! 自らの命運を賭け、試練に挑まんとするところで――」
「お前の相手は、他に任せてある」
前にはレイン、後ろにはヴィルヘルム
スバルが考えた絶対に殺す作戦
「ぢぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」
前と背後からの攻撃に代用できるわがない
「貴方は」
ペテルギウスがレインを見て何かを言おうとしただが言い切る前に、ヴィルヘルムに上半身と下半身をレインに首と頭を切断されてしまった
首と上半身が音を立てて落ちた
あっさり怠惰ペテルギウスを倒すことに成功した
死体を漁る双子を眺める
「アレって普通なのか?」
不思議そうに聞いてくるスバル
「まぁ普通じゃね?」
驚き目を見開いている
この世は弱肉強食弱いものを食うのが正しい
「レインもあんなことするのか…」
「いや?汚いから俺はしたくない」
「何で普通って言った?」
手袋をつけていても血とか汚いし、なるべく触りたくはない…
だが必要ならばやる
「必要ならするって話だ」
「…」
信じてなさそうなスバルの顔を見て、ため息をつき頭をつかむ
「地味に痛いんだって!」
スバルの叫び声のせいか木に止まっていたであろう鳥が飛び立った
ーー
ユリウスと合流して説明は全部スバルに投げた
「…」
右目を眼帯越しに触る
あの思い出すだけで悍ましいと思える魔女の目
「…はぁ」
ため息をつき考えるのをやめた
「随分ため息が多いいね、何か不安ごとでも?」
「そうだな、絡んでくるめんどくさい奴がいなきゃため息が減るかもな」
皮肉たっぷりにそう言ったが、通じてないのか気にしてないのか分からないが鼻で笑っている
「お前らって結構前からの顔見知りだったりする?」
2人の会話を聞いてからそんな事を聞いてくる
「フェリスと、だとレインはもうちょい他人行儀だしそれにしてはユリウスに遠慮が無いというか」
「お前勘がいいのか悪いのか分かんねぇな」
ユリウスと話している際は確かに遠慮がない、と言うか何を言われるのが嫌か分かっているように話しているのがスバルでも分かる
「幼い頃からの知り合いだよ、と言っても私はラインハルトとの方が付き合いは長いが」
「俺はついでだ」
と言えば何とも言えない顔で見つめてくるユリウスの顔に意味がわからず首を傾げる
ユリウスからしてみれば、ついでなどではなく幼い頃に憧れた人間の1人でもあったそれ故に訂正すべきか悩んでいた
何かに気づいたようにスバルは森の方を見た
不思議に思い森の方を見る
「しゃがめ!!」
剣を抜き周りを見る
宙に浮かぶ数人
「…ぁ」
鎧を着ている奴でさえ雑巾のように捻られ肉塊になった
「何が」
「うわぁ!!」
「な!スバル!?」
何かに足を引っ張られ引き摺られていくスバルを追いかける
森の中に入っていくが、途中地面から指先が現れ邪魔をする
「チッ」
今日で何度目かの舌打ちをする
ーーー
スバルを助け、指先である人間がペテルギウスを名乗った謎についても軽く話し、一旦屋敷に向かうことになった
途中からラムの襲撃もあったが、誤解を解くことに成功した
「スバルに任せなきゃよかった」
「レイン様も何故バルスに任せたのですか?」
常識が所々抜けているスバルでも白紙のまま出さないと思っていたが
呆れ、竜車に寄りかかる
「何かの手違いだったんだよ!」
第三者の手違い、だとしてもこの反応を見るにやりかねない
「レイン様は次からバルスに頼む時は最後に確認すべきです、ラムでさえします」
「確かにな…」
ため息をつきながら必死に弁明するスバルを見る
「悪かったって!」
「はぁ」
「顔見てため息つかないで!?」
誤字報告してくれる方ありがとうございます!