村の人達の説得はスバルとラムだけで終わった
「何だよその顔」
不貞腐れた子供のような顔をしているスバルに文句を言う
「いや…エミリア達に会いにいく事を考えたら緊張してきた…それと」
「説得の事か?何で俺が一言も話さなかったのか?て所だろ」
あたりだったのか無言のまま答えを待っている
「村の連中からしたら、ハーフエルフの騎士だ不安要素の一つでもあり、魔獣騒動の時に何もしてなかった奴だ」
スバルが来る前に盗賊の何人かは片付けていた事があったが、それは大ぴらにせず秘密裏に片付けた
だからこそ、村の人達からしてみればレインは信用ならない、ただのお飾りの騎士なのだ
そんな奴の説得よりも、長い付き合いのラムや助けてもらった恩のある人物からの説得の方がいい
「…」
不満げなスバルを見つめる
「飲み込め」
この状況をその不満を飲み込め、そう言い放ったが不満げに目つきの悪い目が見つめてくる
「頭掴むぞ」
と言えばやめた
単純な奴だ
ーー
屋敷に向かうための準備をしていた時、村の一角が爆発した
「は?」
同時に魔女教徒達が村に入ってくる
ーーー
次々と視界に入ってくる魔女教徒を切り刻む
「くっそ」
「レイン殿」
血まみれのヴィルヘルムが駆け寄ってきた、見た感じ怪我などはなく魔女教徒を切った時についた返り血だろう
「何だよ」
「スバル殿は?」
「あ?多分フェリスと一緒だ」
フェリスに呼び出されていた、フェリスは戦闘力はあまりないが、スバルが生きていることは分かる、死んでいたならばあのおかしな巻き戻りに巻き込まれる記憶が無くなっているであろうから
地獄絵図とはこの事だ何も出来ない何もしてない村人達が一方的に殺されていく、村人に投げたであろうナイフを弾き、魔女教徒を叩ききる
「っ」
目の前にいる指先に剣を振り上げた、が
「がっ」
何かに掴まれた見えない何かに、体は宙に浮かぶ
強く掴まれていく骨が軋む音がする
「レイン!」
突然のことにヴィルヘルムも動揺しているのだろう、恩人でなく孫の名を呼んでいた
「貴方やはり、彼の方の寵愛を受けし…者デスよね?」
様子のおかしい指先が気味の悪い笑みを浮かべ歩み寄ってくる
「がっぁあ」
胃液と血が混じった液体が自分の意思と反して口から出る
何かに体が圧迫された、骨が折れ何かに刺さる音がした、持っていた剣を落としてしまった
この攻撃がペテルギウスと名乗った指先と同じ事に気づいていた
「貴様!」
ヴィルヘルムが様子のおかしな指先に走り寄っていく
「ああああああああ、何故何故なのデスか!何故!寵愛を受けているにもかかわらずそれを拒む!拒絶する!何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故!!」
「ぢぁああああああ!!」
右肩から左腹部を綺麗に斜めに切り、ゆっくりとかられた体が落ちていく
残った体は力なく倒れていく、それ同時に何かに掴まれていた感覚がなくなる
地面につく足、力が入らず地面に顔面から着地する
「きゅふ、ッくっ…そ」
口から出てくる血を止めることもできない
抑えても指の隙間から漏れ出る
「レイン殿!」
駆け寄ってくるヴィルヘルムを無視して剣を探す
「今、誰かを」
「いらない、早くスバルを探して守れ」
落とした剣を持ち必死に立つ
もしスバルが先に死んで終えば、この状況を記憶することはできない、それ故の判断だ
心配そうに見つめているヴィルヘルムを見て、この状況に不釣り合いな笑みを浮かべる
心配されて嬉しかったわけではない
「安心しろよ俺は死ねねぇんだから」
「…しかし」
「やばくなったら誰かを頼るに決まってるだろ、それよりもだ、スバルとフェリスは戦闘力がないもし2人だけならそっちの方がやばいだろ」
と言えば不安げな顔をしつつヴィルヘルムは2人を探しに行った
「…お前は死なせてくれないもんな」
眼帯に手を置き呟き、歩き出す
その呟きは信頼や愛情ではなく、憎悪に近かった
「ああ、怠惰デスね」
視界が回った、前を見ていたはずなのに背後の光景が見えて、老人がケタケタ笑っていた
意識が消えた
ーーー
怖くって仕方がなかった
「貴方だけの愛を私だけにそそいで下さい、向けてください」
怖くって呼吸するのが必死で
ただ荒い呼吸を繰り返す
目の前の魔女が話すたびに何かするたびに呼吸は荒くなる
「もし他の方に愛を向けてしまったなら、私はきっと」
そういい微笑むアイツが怖かった
「分かっていただけますか?」
その言葉に頷くことしかできなくって
「約束す、るかッら、だから俺の、家族と周りに手を出さ、なッいで下さい、お願い、します」
震える声で振り絞った声
この選択が間違っていたとは思わない思えない、だってこれ以外の方法がわからなかったから
だから魔女と契約をしてしまった
ーーー
目を開ける
「…」
へし折られたはずの首も、何かに握られ痛むはずの体も
痛みはなくって、怪我も最初っから無かったみたいだ、周りを見渡せばさっき見た光景よりも死体が多くなっていた
「…」
意識がはっきりしていく、夢の中にいたような感覚から徐々に現実だと分かっていく
剣を拾い、音がする方に知ってる声がする方に向かって歩く
「…さっきぶりだな」
「何故?何故何故何故!?」
「レイン!?」
倒れたヴィルヘルムを運ぶユリウスが視界の端で見えた
「レイン、ここは任せてもいいのか」
「嗚呼」
その言葉に頷き走っていく
「レインどうにか出来るのか」
不安げに聞いてくるスバルを見る
「さぁ」
投げやりな答えに不安そうな顔をしている
様子のおかしな指先を見れば魔女教徒が地面から出てきている
「何故!何故ゆえに!貴方は生きているのですか!」
「死ねねぇからだな」
そういいわざとらしく首を触る
「何を」
状況が分からないスバルを無視して剣を構える
「レイン…アイツは任せてくれ」
そういいペテルギウスの福音を取り出した
「こっちは任せろ!」
「死ぬなよ」
「そっちこそ!」
軽い会話をして、走り去っていくスバル、目の前の光景を見てため息をつく
魔女教徒がざっと10人以上
勝てるか勝てないかで言えば勝てる、楽勝だ
「さっさと終わらせて合流だ」
ーーーー
返り血で服も顔も血まみれだ
「…何で」
この場に似つかわしくない、白色の服
「何でって」
綺麗な銀髪の髪が風に揺れている
「こんな状況見逃せるわけないでしょ」
紫紺の瞳を釣り上げ、指先を睨みつけている
スバルが守りたかった人
守らなきゃいけない人
「そこまでよ、悪党」
そういい前に出てしまうエミリアを止めることはしなかった
ーーー
指先はエミリアが氷漬けにした
「…終わった」
犠牲は出てしまったが、怠惰を討伐することには成功した
「…?」
森の方に走っていくスバルが見えた
ふらつく足取りで後を追う
「待つんだ、フェリス。なにを――」
「あと戻りできなく、したげる」
そんな声が聞こえ、焦り走る
「っ」
「レイン…」
苦しみ悶えるスバルとそれを見つめるユリウスとフェリス
「…何が」
「フェリス! お前、なぜ……!」
「本人の望みじゃにゃい。守りたいものを守って、本望……でしょ?」
どうやら説明している暇はないらしい
「……フェリスの行いを招いたのは私の不徳だ。いずれ、この罰を受けるだろう」
待て
今スバルが先に死んだら、頑張りも全部なかったことになる
そのために死にかけたら伝えるように言ったんだ
だから
ユリウスが剣を振り上げた
持っていた剣を自分の首に押し当て、強く引いた
自分の血が飛ぶ、目を見開き驚くスバルの顔が見えた
レインの行動に気づき驚きの顔をしているフェリスが見えた、スバルの首から血飛沫が飛ぶのが見えた
確実に今この選択が間違いではないとそう自信を持って思えた