戻って…来たらしい
吐き気を抑える、ふらつく足を立て直す
「こんな可愛いラムに触られて顔色が悪くなるなんてレイン様は可哀想ね」
「焦っただけだ…悪い」
気にしてるなら悪いそう思って軽い謝罪をする
気にしていないかのように手を離しレインから墓所に目を向けた
体の中の臓器を無視して掻き回されるような気持ち悪さ、身体中を生きたまま小さな口で喰われ続ける痛み
思い出しただけで脳裏をよぎっただけで吐きそうになる
必死に堪え、スバルが出てくるのを待つ
レインが覚えていると言うことはスバルもあの苦痛を味わった可能性があるから、不安と心配が入り混じりながらただ出てくるのを待つ
「…」
嫌な感じがした
変に嫌な感じ
あの時とおんなじ、魔女を見た時とおんなじ
本能的に恐怖する何か
「…影が」
月が出ているのに、地面が影に覆われている
あ、これヤバいやつだ
すぐに悟った、皆は墓所を見ていてこの異変に気づけていない
「ラム!魔法で周りにいる奴ら上にあげろ!」
ガーフィールは獣人化出来ることしか知らない、リューズは魔法が使えるのかすら知らない
ならこの中で1番可能性のある奴に声をかけるべにそう判断した
状況を理解したのか、ラムが魔法を使おうとした時全てを飲み込もうとする影の波が来た
「っ」
近くにいたラムとガーフィール墓所の方に投げる
この状況、ラムがいればガーフィールもスバルに手出しはしないだろう、そう判断しての行動だった
影に呑まれる
影が視界を埋め尽くす
見知った声が顔が
影に、影が、影に溺れる
ーーー
突然路地裏に引っ張られ、何もできず
急いで声を上げようとした時には猿ぐつわをつけられる、声にならない何かを上げることしか出来なかった
ーー
「起きてください」
かすかに聞こえた声で意識が浮上する
縛られ、椅子に座らされているのがわかる
視界がぼやける
ぼやける視界の中見えるのは白い少女
もし自分と同じ、誘拐されたのならば助けなければそう思ったが、その考えはすぐに打ち破られる
視界が晴れ、少女を見つめる
白金の髪に深い青色の目
人外並みの美貌
「初めましてですね」
嬉しそうに笑うその姿に冷や汗が震えが止まらない
「私は『虚飾の魔女』パンドラ」
そう言い放った少女に耳を疑った『魔女』を自称するのは頭がおかしいと自分から言っているような物だ、なのに目の前にいるパンドラそう名乗った少女は平然と言い退けた、それが当たり前かのように
本能的に恐怖心が込み上げてくる
「な、にが…目的だ」
剣聖の家庭
それも加護無しのレインを誘拐するなんて、ただの嫌がらせか、レインを人質にして揺さぶりたいのか
「目的…そうですね目的は」
そういい動けないレインの膝に座り愛おしそうに頬を撫でる
「貴方に愛してほしい」
「ひゅ」
怖い
見つめてくる目が怖い、愛おしそうに触ってくる指が怖い
「なん、で」
初対面の相手に何故そんなことを言える
「運命です」
わけが分からないそう言いたいがその目が顔が全てが怖くって声にならない呼吸音が出てくる
「大丈夫ですか?混乱してしまいますよね。安心してくださいレイン貴方が愛に目覚めるまで私は愛を囁き続けます」
もうやめてくれ
もう少ない会話だけでも精神状態は擦り切れていた
気づいた時には意識を手放していた
ーーー
薄暗く窓もなく何もない部屋
レインの頭に浮かぶのは、笑いかけてくれるたった1人の愛しい弟の顔
「早く帰らないと」
きっとラインハルトが心配している
ただでさえ幼いのに重い役目を背負われさて、父親からも冷たくされている、だから守らないと安心させないと
「ご家族が心配ですか?」
その言葉が聞こえ体が震え跳ねた
「…」
顔を上げることができなかった
「そんなに警戒してないでください、私はレインのことをこんなにも愛しているのですよ?」
震える体
微かに笑う声が聞こえた
「心配なさらなくっても貴方が考えるような事は起きませんよ、貴方が何かしない限り」
脅しとも取れる言葉に身体が固まる
「…」
「レインは優しい子です、ですからそんなことしませんよね?」
その言葉に下げていた頭を動かすことができなかった
「ああ、愛しい子」
そういい頭を撫でられる、父親や爺や婆やにやられるのとは違いただ嫌悪感と恐怖心が掻き立てられた
たすけて、とうさま
頼りない父親に助けを必死に求めていた、まだ幼いレインには頼れる相手が父親しかいなかったから
ーー
精神的にもかなり限界が来始めていた
まだ10代の子供にとっては当たり前だ
3日間トイレの時以外はずっと椅子上で縛られている
だがレインには此処に来てから何日経ったかも分からない
窓も何もない薄暗い部屋にずっといる
扉が開く音がした
またあの悍ましいアイツが来た
「考えたのです、レインがなかなか心を開いてくれないのは私のことを知らないからだと、私が一方的に知っているだけでは駄目だと」
それ以前の問題だろ
そう思ったが家族に何をされるか分からないので口を開くのをやめた
「まず、レインをどこで知ったのかを話す必要がありますね」
見るのも怖くって下げていた顔を上げられる
「白鯨討伐の混乱に乗じ、貴方の祖母に出会った際に貴方方ご家族に関心を寄せました。その際にレイン貴方に興味を惹かれました」
白鯨討伐、その言葉に驚き珍しくパンドラを見つめた
凄まじい戦いだったと聞いていた、それなのに平然とそんな中祖母と出会いったと言い放った姿にただ唖然とした
それと同時に積み上げてきた恐怖が加速する
剣聖でも死んでしまう場所にいたのだしかも無傷、そしてコイツが祖母に何かしたのでは無いかと言う考えが頭によぎってしまった
「怖がらせてしまいましたか?」
震える体を見てそんなことを言われる
「もっと知ってもらいたいのですが」
そういい話続けるそいつに意識を保つのが精一杯だった
ーーー
トイレに行く際は黒い服の奴らがついてくる
1人の見張りがいる中トイレに案内されていく
緩んだ縄から手を抜け出させる
バレないようにバレないように慎重に
トイレの扉を開け、視線を逸らしたそいつ
剣聖の家庭、と言うこともあってある程度の指導はされていた無防備な大人1人を気絶させられるくらい、この歳のレインでもできた
力なく倒れていく見張り、トイレに押し込め荷物を漁る
ナイフと鍵を手に入れた
自分が縛られていた縄でそいつを縛り逃げ出す
慎重に進む
どこに誰がいるのかもこの建物がどう言う作りなのか地下なのか地上なのかもわかっていない
足音を立てず背後にも気をつけて進む
「何処に行ってしまうのですか?」
「ひゅ」
後ろから聞こえてきた声に背筋が凍る
ゆっくり振り向けば数秒前に確認した時にはいなかったはずのパンドラがいた
「なんで」
声は震えていた
その質問に答えずゆっくりと近づいてくる
後退りをする
「どうして逃げようとするのですか?」
「逃げる…だろ、ふつう」
精一杯振り絞って出た言葉だった
近づいてくる少女
逃げていてもきっとこの先もずっと追いかけてくる
なら
奪い取ったナイフを構える
そのナイフは震えていた
「怯えてますよ」
「っ」
ナイフましてや刃物を人に向けることなんてした事がなかった
「っ」
逃げても追いかけてくるそして、その被害はレインだけに収まらない
ー兄様が守ってやるからなー
いつかの言葉を思い出す
「ぁ…ぁああ!」
大切な人に弟に手を出させるわけにはいかない
声を上げる奮い立たせる、怯えた足を叩き前に出させる
「そんな事せずに」
言葉の途中だったが、走り出しパンドラの胸目がけナイフを差し込む
「ぁあ」
初めて人を刺した感覚
ナイフからつたい、手につく血
怯えるレインを見て愛おしそうに笑う姿
人を初めて刺してしまった罪悪感に怯えるレインの頬を血に濡れた手で触る
「怯えるほど怖がっていた相手にそんな顔をするのですね。嗚呼本当に貴方は優しいですね」
そういい力なく倒れるパンドラ
床にひるがる血、荒れる呼吸
初めての殺人だった
「逃げないと」
呆然としていたがすぐに目的を思い出し
パンドラに背を向け歩き出そうとした
肩に乗る重み
「だからこそ愛おしい」
「え」
さっきまで血を流し、初めて死を見たレインでも死んだそうわかる姿だったのに何事もなかったかのように、平然とそう言い退けた
「レインは逃げてなどいない、大人しく椅子に座っている」
「なにを」
ナイフを握っていた感覚がなくなった
「は?」
椅子に座らされていた
おかしい
おかしいおかしい
「なんで!」
さっきまで立っていてナイフを持っていてこの部屋にいなかった
なのに
部屋の扉近くに立っているパンドラが見えた
「愛してますよ」
微笑みそう言い放った姿に恐怖で涙が出るのを必死に堪える
魔法とも加護とも思えないこの現場に怯えることしかできなかった
嗚呼、もう逃げられないのだとそう悟った
それと同時に世界に愛されたラインハルトすらも殺してしまえるそう思ってしまった
ーーー
頭がおかしくなりそうだった
当然かのように膝の上に座り永遠と愛を囁く魔女
「レイン」
名前を呼ぶ、その姿がもう嫌だった
「契約を結びましょう」
何を言い出す
「このままでは嫌われ続けてしまいます、だから契約です」
嫌われている自覚があるのかと、そんなことを考えてしまう
「レインにとってもいい話だと思いますよ?」
その言葉に反応してしまった
これが駄目だったのかもしれない
「私だけを愛して下さい」
無理な話を何する
「愛してくださるならば私もレインの大切なご家族や知り合いには害を与えないと約束しましょう」
信じていいのか
信じられるのか?
信じて
似たような考えが頭の中を駆け回る
「契約は絶対ですから安心して下さい」
「わ、か、った」
お祖母様みたいにこいつに何かされて仕舞えば、みんな死んじゃうなら、なら母様も父様もラインハルトもおれが、守れるなら守らないと大切な人達を守らないと
返事を聞いてか、嬉しそうに笑いひそさし指をレインの口に当て
「貴方だけの愛を私だけにそぞいで下さい、向けてください」
楽しげにまるで少女かのように話す姿が怖い
「もし他の方に愛を向けてしまったなら、私はきっと」
そういい微笑むアイツが怖かった
「分かっていただけますか?」
その言葉に頷くことしかできなくって
「約束す、るかッら、だから俺の、家族と周りに手を出さ、なッいで下さい、お願い、します」
震える声で振り絞った声
弟を守りたかった、母を守りたかった、父を守りたかった、知ってる人を守りたかった
魔女の手籠にされても
守りたかった
ーーー
虚な目で地面を見つめる
ここにきて六日がたった、だがレインにとってはそれ以上たっている気もする、そもそも時間がわからないのでそんなことを考えるのすらもうやめていた
扉の開く音がした
「今日は方向性を変えてみます」
何をするのだ何を言うのだ
もうやめてくれ、家に帰してくれ
そうとしか思えなかった
顔を上げられ、相変わらず楽しそうな顔がこちらを見つめている
「レインの事を理解したいのです。契約したとしてもそれは理解することとは違うそう思ったのです」
右頬を触る手が嫌だった
嫌な予感がした
右頬を触る手が上がっていく
「私は貴方を愛しています」
右瞼を触る手
「だから知りたいのです」
眼球と瞼の間を細い指が入っていく
痛い、怖い
その2つが頭の中を埋め尽くす
「だから交換です」
嬉しそうに右目をくり抜きそれを見て笑っていた
その姿がただただ悍ましくって恐ろしくって
「安心してください、ずっと見てますから」
震える口から何も出なくって
恐怖で意識を手放した
ーーーー
「今の貴方に愛してほしい。その時が来たら迎に行きます」
きっと契約のことを言っているんだ
ふわふわとした意識の中そんなことを考える
ーー
ーー
ーー
「レイン」
手を握られているような感覚
「にいさま」
誰かの声、大切なだれか
「レイン」
最近ずっと座っていた椅子ではない柔らかい感触
「レイン」
知ってる声だ、あの魔女のでは無いよく知っていて安心できる声
「レイン」
安心できる声で目が覚めた
視界が半分ないのも気になるがそれよりも
「…?」
手を握り心配そうに顔を下に向けている父様の方が気になった
「ルアンナ、俺は俺はどうすれば」
「父様何言ってるの?」
下を向きぶつぶつと何かを言っていたその姿に疑問を持ち声を上げれば、勢いよく首を上げ見つめてくる
涙が溜まっている目が見えた
「レイン!起きたのか」
嬉しそうに、寝ている体に抱きついてくる
「よかった、よかった」
嬉しそうにそう言っているが、レインは離れてほしいと言う気持ちでいっぱいだった、動くたびに中途半端な髭が肌に当たり痛いからだ
普段は切り整えている、そんな余裕がないほどレインを探していたと言うことにもなるが、監禁生活のせいで思考が低下している今のレインにはそんな考えはなかった
ーー
父親を落ち着かせ、医者からの検診も終わり何があったかを詳しく聞ける状態になった
「七日近く行方不明になっていたんだ」
「なのか」
実感が湧かなかった
「…それと」
手鏡を渡された
受け取り覗く
右目を中心に包帯が巻かれていた
「…なくなっているらしい」
そう辛く言い退けた父親を見つめる
「…そっか」
もう両目で家族をラインハルトを見ることはできなくなった
きっと母様が知れば悲しむよな…
「…まだ、もう一つある、しそれに…生きてるから…平気だよ」
動揺が隠しきれてない言葉にハインケルは顔を上げ
「誰にやられたか分かるか!必ず父様が!」
「やらなくっていいよ」
その言葉に目が見開かれていくのがわかる
守りたかった
「それどう言う意味だよ」
肩を掴まれる
「お前も!俺が弱いって役立たずだって!言いたいのか!」
揺さぶられる
愛した人すらも眠り、剣聖の加護にすら見放され、母親を死に場所へと追いやり、勇逸自分と同じだと思っていた子にすら見放されるような言動を取られた
「お前も…俺を」
「…っ父様は」
ーもし他の方に愛を向けてしまったなら、私はきっとーー
父様が殺される
「…」
駄目だ、下手にいつも通りに声をかけて仕舞えば、アイツに父様が殺されてしまう
守らないと
守らないと
「なぁレインお前は!父様にたすけてもらいたいよな!?」
「…要らない」
泣きそうなのを我慢して答える
失望した顔が見えた
すぐに顔を下に向ける
「父様じゃ…無理だよ」
肩から手を離し、部屋を出ていくのが分かる
一つの目からこぼれ落ちる水滴、声を抑えて涙を戻そうと目を抑える
尊敬している信頼しているを父を傷つけてしまったから、追い詰めてしまったから
嗚呼
最後の一押しをしてしまった
なんとかなったかも知れない家族中を完全に後戻りできないようにしてしまった
ーーー
「兄様!大丈夫ですか!?」
顔を見て酷く動揺している姿が見える
「ラインハルト」
小さい弟に手を伸ばそうとした
ーーもし他の方に愛を向けてしまったなら、私はきっとーー
いつもみたいに手を広げて、抱きしめようとするのを咄嗟に止める
「っ…」
何もせず、ラインハルトの横を通り過ぎる
「兄様?」
いつもは笑って近寄り頭を撫でたりしてくれるレインがそれをしないことに疑問に思いながら通り過ぎてしまった背を不思議そうに見つめる
嗚呼ごめん
ごめんな、重いものを一緒に背負う覚悟までしたのに俺は…おれは
後悔を抱え、消えない呪いに蝕まれる
ーー
自室に戻り扉に寄りかかる
雑に前髪をかき上げる
俺が何したんだよ、弟を守りたくって!
父様と母様が昔みたいに楽しく笑って欲しくって!
それだけなのにそれだけなのに
雑に髪をかき上げたせいか、包帯も緩み無くなった視界から地面が見えた
「…?見えてる?」
前みたいに見えているのに疑問が浮かぶそれと同時によくわからない感覚にも疑問を持ち
部屋にある鏡の前に向かう
「ひっ」
自分の顔を見て恐怖して尻餅をつく
正確には自分の顔では無く、右目に
あの女と魔女とおんなじ瞳
「交換って…そ、ういう」
急いで、目を隠す
ー安心してください、ずっと見てますからー
その言葉を思い出したから、この変な感覚はアイツがこの目を通して見ているものなのだと気づいた、だからラインハルトに変に目をつけられる前に急いで包帯を強く巻き付ける
くり抜く事も考えたが、あの魔女だ何をしでかすか分からなかった
だから怖くってそんな事もできなかった
パンドラ口調難しい
難しいから似たような口調のキャラを探してみたんですよ、ボ卿が口調似てるなぁーって思ったんですけど…それからパンドラを書こうとすると脳裏にボ卿が…誰か助けて下さい
後、パンドラによる知ってもらいたい攻撃でパンドラの大体の悪事は知ってます。誰にも言えないけどね
書いてないだけで、パンドラに色々酷いこと(愛情表現)されてる
ハッピーエンドに決まりました!
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ラインハルトルート(和解)
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パンドラルート
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どっちも