ラインハルトの兄は魔女に魅入られている!   作:欠けたチーズ

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聖域のあれこれから一年たった

 

屋敷の前に止まる竜車

面倒ごとの気配を感じる誰も来ないであろう場所を探してフラフラと歩く

王戦関係の話ならば、探しに来るペトラには悪いと思いつつ足を止める気は無かった

 

ーー

 

翌日、毎朝ガーフィールの稽古をしている

別に、弟属性に弱くお願いされ推し負けたわけではない、陣営の強化のためだ

ガーフィールの世話をするならばと、スバルとガーフィールの戦闘力強化の訓練内容は全てレインに投げられた

 

ガーフィールが繰り出す拳を木剣で流す

 

「そっいや、よぉ」

 

「あ?」

 

稽古中だと言うのに余裕そうに話しかけてくる、訓練の内容を見直そうか

今もよりも、もっと厳しい内容にしてやろうなどと考え始めていた

 

「プリステラ、レイン兄ぃも行くんだろ?」

 

「知らねぇな」

 

レイン兄ぃ呼びは何度もやめろと言ったのにやめないので今になってはもう諦めた

だがそれよりもプリステラに行くこと自体は知っていた、エミリアと契約していた大妖精、パックを復活させる為に必要な魔石がプリステラにあると、だがレインが行く事は知らなかった

 

「大将が言っていたぜ、レイン兄ぃは嫌がっても無理やり連れて行くってな!」

 

よし決めた、アイツの訓練内容クソ厳しくしてやろう

 

ーーー

 

高い壁で覆われ、監獄らしさはある

その壁の内側に入って仕舞えば、綺麗な街並みが見える

円形にできており、中心に向かい低くなり水が流れて居る

水面が光に反射して、宝石のように輝いてる

 

隣にいるスバル達が見惚れるほど美しい街だ

 

傲慢の魔女を殺す為に作られた場所って知らなきゃな

 

パンドラの気まぐれのせいでプリステラがなぜできたかを知っているレインだけが素直に街並みに見惚れる事ができなかった

 

余計なこと言いやがって

 

今日も心の中で魔女に悪態をつく

 

竜車に揺られながら、アナスタシアが用意した『水の羽衣亭』に向かう

 

ーー

 

プリステラの街並みとは別の建築、カララギで見たことある和風建築が『水の羽衣亭』だったらしい

見慣れない建物の中靴を脱ぎ、アナスタシアの案内の元、一つの部屋で今回呼ばれた魔石についての話し合いになった

 

と言っても、交渉に関してはオットーに任せた方が楽なので、聞き流す

 

「高密度の魔鉱石を持ってるんは、この都市にあるミューズ商会。責任者はミューズ商会の跡取りって言われてる、この町の関係商会の責任者。名前はキリタカ・ミューズ――歌姫に心を奪われた男、やね」

 

ーー

 

水路に浮かぶ小舟、その小舟に乗りキリタカがいる建物に向かう

 

不安定な揺れ

船自体に乗ったのは初めてではない

 

やっぱりこの感覚は慣れねぇな

 

揺れる地面に座っているような感覚に苦手意識はあった

 

平気そうにし、楽しんでいるエミリア達を見て仕舞えば、体調が悪くなってかな、なんて言えるわけなかった

 

「――――ぃ」

 

「……今、なんて言ったのかしら」

 

消え入りそうな声、目を向ければ、誰が見ても体調が悪いと分かってしまうほどに顔色が悪いスバルの顔、それを心配するベアトリスが見えた

 

「ヤバい、吐きそう」

 

その言葉で船の上は大騒ぎとなった

 

ーーー

 

「エミリア様達は、先に向かってください俺らは歩いて向かうんで」

 

近くで降ろしてもらい、体調が悪そうに座り込んでいるスバルを指差す

 

「大丈夫?」

 

「道に迷わない用に俺が付いてるんで」

 

不安そうな顔だったがその言葉を聞いてエミリアだけではなく他の2人も安心したような顔をしていた

 

「無理しないでね」

 

「ぉっぷ」

 

エミリアの言葉にスバルひ口元に手を抑えそう呻き声をあげていたが、片方の手で親指を上げて見せていた、それを見て大丈夫と判断し、エミリア達を先に行かせた

 

心配そうにスバルの背を撫でているベアトリス

 

「…はぁ」

 

小さくなっていく小舟

 

「なんか飲み物買ってくる、ここに居ろよ」

 

「ぉう」

 

珍しく弱っている姿に若干困惑しながら近くの店に歩き出す

 

スバルがあの状態になってくれて助かった、あのままなっていたら俺もああなってたな

 

ーーー

 

 

「もうそろそろ楽になったかしら」

 

「いや、もうちょっと待って。うわ、これヤバい、世界が揺れてる。今もなお揺れ続けてる。てっきり克服できてるかと思ってたけど、ダメだったかぁ。三つ子の魂百までもっちゃってたかぁ……」

 

「そーかー」

 

軽口が叩けてる時点でかなり元気だと察して適当な合槌を打つ

 

エミリア達と別れてから15分が経過した

 

もう交渉しててもおかしくない時間だよな

飲み物を飲みながらそんなことをぼんやり考える

 

「てかこの飲み物何?めっちゃうまい」

 

「知らねぇ」

 

「買ってきたのレインだよな?」

 

「お前は本当にスバルに対してだけ適当なのよ!」

 

心底不思議そうに首を傾げるスバルと頬を膨らましているベアトリス

 

実際のところはミックスフルーツジュースなのだがいちいち答えるのが面倒になった

 

「うまいから後で売ってたところ教えてくれよ、エミリアにも飲ませてあげたい」

 

「交渉が上手くいったらな」

 

子供をあやすようにいい、容器に残っている飲み物を一気に流し込む

 

「もう大丈夫なんだろ?行くぞ」

 

座っているスバルに話しかけ、立つのを待つ

 

ーー

 

「なぁ、あっちじゃね?」

 

「こっちなのよ」

 

目的地とは違う方向を指差す2人、しかも2人とも指差す方向が違う

 

同じであってくれよ、パートナーだろ

 

「俺は街中で遭難したくねぇよ?」

 

黙ってついて来い、と言いたげに見つめるがそんなこと気にせず、辺りを見渡している

このまま放置していれば、気づいた時にはレイン1人で目的地に着いてしまうだろう

 

「あっちの方からなんか聞こえね?」

 

「おい、…はぁ」

 

船酔いしてでも、エミリア達に着いて行くべきだったと後悔しながら、公園の方に向かったスバルを追いかける

 

聞こえてきた声、近づき風と共に乗って聞こえてくるそれは歌声だと気づく

 

プリステラなんて、商人の出入りも多いいだから違う、そうであれ、面倒ごとはごめんだ

 

もしかしたら、この歌を歌っている人物が歌姫ではないことを祈る

歌姫だったならばスバルが面倒事を引き起こすそう考えてだった

 

人混みをかき分け進むスバルの後をついて行く

 

たった1人の少女が楽器を演奏しつつ歌を歌っていた

さっきの不安も何処へやら、歌声に聞き入ってしまった

 

「――金もない、未来もない、夢もない、見栄だけはある。嗚呼、何が見える。瞼の裏に闇が見える。闇の向こうに何も見えない。尽きる、尽きる、終わりがくる」

 

「落ち着いて聞いたらひでぇ歌だな、オイ!?」

 

「ひゃあ!?」

 

スバルの声で我に帰り、安堵する

もしこんな所をアイツにでも見られでもしたら、突撃訪問をされた挙句、歌を歌うか、この少女の首でも持って来かねない

 

「やべぇ、空気読めないことした。今のは違くて……痛ぇ!?」

 

「スバルの馬鹿、台無しなのよ。せっかくいい気分で聞いてたのに、なんて無粋な真似をするのかしら。いくらなんでも酷すぎるのよ」

 

曲を中断したスバルに対して不満の目が降り注がれる

 

何が起きるのかを察したレインは静かにスバルの近くから離れた

 

物を投げられまくり、ボロボロになったスバルを少し離れたところから見守る

 

ーーー

 

曲を聴いていた人達の熱は冷め公演を後にしていた

 

「助けてくれても良かったんだぞ」

 

不満そうに見つめるスバル

 

「…あーあれだ、…面倒だった」

 

「途中まで言い訳を考えていたんだったら、ちゃんと考えてくれよ」

 

「なんでだよ」

 

スバルの隣から呆れたような小さなため息が聞こえた

 

「全く、スバルが怪我して怪我をするのは誰だと思っているのかしら」

 

頬をふくらしそう言い放つベアトリス

 

「ちょっとずつ溜めてるマナの無駄遣いになるのよ。自然に治るのを待つか、エミリアにでも頼むといいかしら」

 

「なんだかんだでお前、エミリアたんに回復せがんだら不機嫌になるじゃん……でもまぁ、自然治癒はそうだな。ちょっと俺も感覚がマヒしてた」

 

治癒魔法にばかり頼っていてはある程度の傷なら大丈夫と言う慢心に繋がる、スバルの判断に顔にも言葉にも出さないが同意する

 

「お前はいつも、俺がそうやって緩みかけてるところを締めてくれるな。頼りっぱなしで悪い。もうちょい考えるよ」

 

「ま、まぁ、反省したならいいのよ。その痛みは教訓と思って堪えることかしら」

 

「ういうい、そうするよっと。そうだ。悪かったな、こっちで話し込んで……」

 

スバル達が歌を歌っていた少女に目を向ける、それに釣られレインも目を向けた

 

「閃きました」

 

「え?」

 

「聞いてください。――年の差なんて知らないわ」

 

呆然となるスバル達を置き去りにして、楽器でリズムをとりながら、歌い出した

 

「ねえ、見えてる感じてる? あなたと私の恋の年の差。周りは変だというけれど、私はそんなの気にしてないわ。私がいつも気にしているのは、私とあなたの恋の身長差。ねえ、待ってて。お願い、待ってて。あと、少し、もう少し、背伸びをすれば届くぐらい。それぐらい二人が近付けば、きっと年の差なんて誰も気にしないわ。だからお願い、二年だけ。お願いそれだけ待っていて。私とあなたの恋の距離。甘くとろける恋の距離」

 

「縮まる二人の恋の距離、静かに燃える愛となり、やがて二人にコウノトリ、きっと二人に子を送り、未来は明るい恋物語っ」

 

「えええ!?」

 

「え、は?!」

 

突然歌い出した少女にも困惑していたが、少女が歌いきりシャウトを入れた直後、突然歌い出したスバルにベアトリスと驚きの声をあげていた

 

「ちょっと待つのよ! なんで……そう、なんでスバルは急に歌に混じってるのかしら。それをお前が当たり前みたいに受け入れてるのもおかしいのよ!」

 

「おいおい、何を言ってんだ、ベア子。……歌は国境を超えるんだぜ?」

 

「言って意味がわかんねぇよ!」

 

「いい言葉ですね。このリリアナ、感激に胸が震えます。震えるほどありませんがっ」

 

リリアナ、と言う名前に嫌な予感は的中したのだと悟りつつも

 

「べ、ベティーが間違ってるみたいな態度はいくらなんでも納得がいかないかしら……」

 

「ベアトリス様は間違っちゃいねぇ、アイツらがおかしい」

 

さも、ベアトリスやレインの驚きがおかしいと言わんばかりの言葉に反論する方が先だった

 

そして少女こと歌姫リリアナの正体に気付かず楽しげに話をしている2人に頭を抱える

ハッピーエンドに決まりました!

  • ラインハルトルート(和解)
  • パンドラルート
  • どっちも
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