ラインハルトの兄は魔女に魅入られている!   作:欠けたチーズ

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仲間外れは可哀想ですから

誘導されるような動きに困惑しつつ、警戒しながら、魔女教徒を追い詰めるように追いかけ、剣を振るう

 

すぐにでも都市庁舎に向かいたい、その焦りもあってかなかなか刃が魔女教徒に当たることはなかった

魔女教徒達のせいで空は綺麗な星が浮かぶ時間帯になっていた

 

剣を振り上げた首に向かって剣を下ろす

 

「っ!」

 

一撃を喰らわそうとした時、魔女教徒は地面に沈んでいった、沈む体を剣で刺そうとしたが硬い地面に刺さり、手が痺れるだけで終わった

 

何故こんなことをするのかは、分からない分かったとしてもそれはろくなこと(魔女関係)でしかない

 

来た道を戻るべく足を進めようとした

 

「待て……待て、ーーーー!」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、最後誰かの名前のようなものを叫んでいたが上手く聞き取れなかった、急いで声の聞こえた方向に走る

 

案外近くだったようで、倒れるヴィルヘルムと角度的な顔は見えないが魔女教徒に襲われているハインケルが見えた

 

迷わず剣を構え、駆け出した

魔女教徒にむけて剣を振り上げた

 

「え」

 

剣を振り下ろした時、レインの存在に気づいたのか魔女教徒はレインの剣と自分の剣をぶつからせ、攻撃を防いだ

その時に顔が見えてしまった

 

ーレイン、この花は私とあなたのお祖父様が出会うきっかけになった花なのー

 

黄色い花を持ち頬を赤らめ笑いかけてくれた祖母の顔

暖かい青い目、暖かかった手の温度

 

幼い時の記憶が蘇った

 

「…お祖母様?」

 

死んだように冷たい目、血の巡りを感じさせない肌

 

記憶にあるすべてと反対の姿

 

動揺してしまった

それと同時に近くにパンドラが居るのではないかと焦ってしまった、それがいけなかった

 

剣を強く振り、動揺と焦りで剣を持つ力が弱くなっていたレインの剣は簡単に手の中から離れ、音を立てて地面に転がった

 

「待て!テレシア!」

 

これは知らなかったな…

 

パンドラの悪行を一通り聴いていたが、その後に起こった事なのだろう

 

「待て!お袋!」

 

剣を振り下ろされる

 

「っ!」

 

死を覚悟した、だが2人の声でここで死ぬ、そんな覚悟捨てることにした

 

今ここで殺されるのは駄目だ、こんな悪趣味アイツの仕業だ、俺をここまで誘導したのも絶対アイツだ!

 

剣を振り下げきれていない状況のテレシアの腹にタックルをかまして、橋の手すりにテレシアの体を押し付ける

剣を持っている手を押さえつけようとしたが、少し遅くテレシアの持っていた剣がレインに突き刺さった、それを利用し腹に剣を固定させるべく、剣を持っている手を掴む

テレシアの体が手すりの外に行くたびにレインの足元には真っ赤な水たまりが広がっていく

 

俺はやり直しが効く!

 

「レインお前!」

 

何をしようとしているのか分かったのか、焦り声をあげている

 

「っ!!」

 

水路に落とし戦えない2人から遠ざける!

 

父様とお祖父様を殺させない!

お祖母様がの尊厳をこれ以上踏み躙られてたまるか!

 

この血の量では、水路に落としたところでレインはすぐに死ぬだろう

それを悟り、まともに動けない足を必死に動かしてヴィルヘルムは向かっていく

地面を這いずる、それは恩人を助けるためか、孫を助けるためかなんて誰にも分からなかった

 

ヴィルヘルムの行動に気にも留めず、ただ優しくって暖かかったはずの目が、冷たく光を宿さずレインをただ見つめていた

 

緊張した空気、テレシアも落とされまいと剣に力を入れている

 

音を立てて真っ赤な水たまりが広がっていく

それと同時にテレシアの体も橋の外へと追いやられていく

 

「そこまでだ」

 

その言葉に声にレインの力が若干緩んだ

 

何で来たんだよ…ラインハルト

今この状況で1番聞きたくない声が聞こえた

 

目を向ければ白い服に斜めに切り込みが入り、白い服のせいで血が染み込んでいるのがよく分かる

 

「お前その怪我」

 

血が出ている、平気なのか?そんな大きな傷、痛いだろうに何で来たんだ

 

加護や精霊のおかげで平気だとしても痛みは残るだろ

 

言いたいことを抑え込む

 

「ッァガ!」

 

隙だと判断したのか、腹に蹴りを入れられ勢いのままハインケルの近くまで転がる

 

「…っ!待てラインハルト駄目だ!」

 

テレシアの元に真っ直ぐ歩いていく姿に声を荒げる

 

普段なら名前を読んだ時点で振り返ると言うのに、テレシアを真っ直ぐ見て、こちらには目もくれない

 

やめてくれ

駄目だ

 

ゆっくりとラインハルトの腰にある剣を抜いていく

 

真っ白な刃が、今はただ憎かった

普段は役立たずのその刃が、必要じゃ無い時に抜けた刃が憎かった

 

地が震える

 

「待て! テレシア! こっちを、俺を見ろ、テレシアぁぁ!」

 

「ラインハルト!やめろ!」

 

足を引きずり必死に叫ぶヴィルヘルムと腹を押さえ立ち上がり叫ぶレイン

2人の静止に名前を呼ばれた人間達は聞こえていないかのように、気にも留めなかった

 

レインとハインケルを守るように立つラインハルト

 

だがその後ろでは必死に止めようと、力が抜ける中必死に立ち上がり止めようと手を伸ばしているレインとこの状況をただ理解したくなさげな頭を抱えているハインケルがいた

 

今ラインハルトがテレシアを殺して仕舞えば本当に祖母殺しを着せられる

 

やめろやめろ

 

俺が…あのことを言えたら…

 

脳裏に浮かぶのは魔女の姿

 

「やめろ……なんだよ、なんなんだよ……俺が、俺が何したってんだよ……!」

 

「ラインハルトやめろ!お前がこれ以上濡れ衣を被るひつよ、ケホ」

 

頼りにならないハインケルととうとう座り込み吐血をし始めたレイン

 

「やめろ、ラインハルト! 私を見ろ! テレシアとは、私が戦っている途中だ! 剣士と剣士の戦いに、他者が割って入ることなど許されはしないぞ!」

 

2人の様子を見て自分が声をあげなくてはと思ったのか、必死に声を荒げている

 

「……その足では、戦いを続けることはできません」

 

「足が動かなければなんだと言うのだ! 剣を握る、この手はまだ生きている……手が死ねば口が! 口が利かねば魂が! 命を失わない限り、負けではない!」

 

「命を失わなければ……ならば、目の前にいる彼女はなんとしますか?」

 

「――っ」

 

ああ駄目だ、何でそんなことを言い出す

 

「術者の意に従って、自意識なく動くだけの亡骸――死者を弄ぶような行いに、剣士の流儀を持ち込む意味があるとは思えません」

 

「剣士の流儀などと……ッ!」

 

血のせいか焼けるように熱い喉を無理矢理にでも使う

 

「ラインハルト」

 

座り込み必死に手だけを伸ばす、それが届かないと分かっていても

 

「――死者は動かない。死者にその先はない。僕はその不条理を、許さない」

 

その言葉に、次の言葉が喉から出てこなくなった

 

死者にその先はない

 

その言葉で頭の中が真っ白に染まっていくのが分かる

ただそれだけが分かってしまう

 

死者、それは一度死んだ人間を指すのだろうか、それとも葬儀などが行われた人間を指すのか?もし前者なのであれば、何度も死を体験しているレインも先の無い不条理である

 

動揺してしまった

 

「やめろ――ッ!」

 

止めようと、立ちあがろうとした状態で固まっていたらしく、何とも情けない体制のまま、ラインハルトとテレシアの決着を見る事になってしまった

 

「それは俺の、テレシアなんだ――ッ!!」

 

ああ俺は、まだラインハルトを守れないのか

 

「――お祖母様は、十五年前に僕が殺した」

 

違うそう言いたいのに、恐怖が邪魔をする

言えたならば、ラインハルトは祖母殺しの汚名から抜け出せるのに

 

ただ怒りで手が震える

 

早くアイツを殺さなければならない、ラインハルトを苦しめるアイツを

 

「ここにいるのは、ただの偽物だ」

 

急いで立ち上がり止めるために手を伸ばしたが無理だった、人間限界はいつかくる、血が抜けすぎたのか意識が一瞬消えた

 

ーーー

 

何が「兄様が守るだ」俺が守れたことなんて一度たって無いじゃねぇかよ

 

ーーー

 

ヴィルヘルムが大切そうに抱える女性

 

それを冷たく見つめるラインハルトの隣に立ち肩に手を置く

 

顔がこちらに向く、青い瞳が昔と変わらない悲しげな瞳と目が合う

 

「気にしなくっていい、お前が殺したんじゃ無い」

 

「…兄様は優しいですね」

 

慰めなんかじゃ無い、本当の事なのだ

 

「…優しいのはお前のほうだろ」

 

昔っから

 

「…」

 

ごめんな、俺のせいで俺が弱いばっかりに

 

お前の足を引っ張る

 

ーー

 

ヴィルヘルムと会話を交わし終え、灰になっていくテレシアを見送り

 

「……これで、満足か?」

 

黙ったまま動かないヴィルヘルムの代わりにハインケルが声を上げた

 

「満足、とは?」

 

「とぼけるなよ、見たままだろうが! 満足か? 満足だろうな、お前は! 名実ともに、これで『剣聖』の座はお前のものだよ、おめでとう! 先代を死なせて奪ったって風聞も、疑いようのない事実ってわけだ。なぁ、満足だろ? おい!」

 

「何をおっしゃられるのか、意味がよくわかりません」

 

「すかした顔してるんじゃねえよ! クソガキが!」

 

「副団長!!」

 

ラインハルトに掴み掛かろうとしたが、珍しく怒鳴り声をあげたレインに、固まる

 

「何だよ!お前だってラインハルトが嫌いで仕方ないんだろ!?『剣聖』の兄、何て言われるのを嫌がっているぐらいだもんな!レインだって見ただろ!ラインハルトがお袋を!テレシアを殺す所を!お前は何にも思わないのか!お前はテレシアにお袋に懐いていたじゃねぇか!」

 

「ラインハルトはお祖母様を殺してなんかいない」

 

「あ?」

 

待っていた答えとは違うものが出てきたせいか眉を顰め、レインを見つめていた

 

「じゃさっきのは何だ!さっきのはお袋、テレシアじゃ無いのか!」

 

「ああ『剣聖』テレシアだとも、だが!あれはただの死体だ!お祖母様は15年前に殺されているんだよ!ラインハルトは殺してなんて無い!殺すわけないだろ!」

 

やけに辺りを気にしている様子が目立つが、そんな事今のハインケルが気にしている暇などなかった

 

「じゃあ、最後のアレはなんだ? 親父と、話してたアレは!? 俺やお前を恨めしそうに睨んで……アレが、お袋でないなら!」

 

怒鳴りそう言い放ったハインケルを見て、咄嗟にラインハルトの前に庇うように出てしまった

 

「――もうやめろ、ハインケル」

 

「やめろって……親父! あんたはそれでいいのかよ!? こいつは……!」

 

「やめろ、ハインケル。……やめろ」

 

まだ噛みつこうとするハインケルに重ねて静止する

 

「っ」

 

咄嗟の行動には本性が出る

レインが気づいた時にはラインハルトの前に出て庇うように立っていた、その事に気づき急いで離れる

 

「――触るな!!」

 

「――――」

 

ヴィルヘルムの肩にラインハルトが触れようとした時、指先が肩に触れる前にヴィルヘルムの怒号が突き放した

 

「っ…」

 

その様子を見ていたレインはただ唇を噛み締め苛立ちを必死に抑える

 

「ラインハルト……」

 

「――はい」

 

震えるヴィルヘルムの声とは違いラインハルトの声はいつも通りだった

 

「祖母を……テレシアを斬ったことを、後悔しているか?」

 

「――――」

 

その問いかけの答えが出てくるまでに少しの間があった

 

「いいえ。――僕は正しいことをした。そのことを、悔やんだりはしない」

 

「……そう、だな。その通りだ」

 

噛み締めていた唇からは血が慕っていた

 

「お前は正しい。私が間違っている。――だから、お前と話すことはもう、何もない」

 

「ガーフィール殿が向かったが、都市庁舎が心配だ。可能なら援護に向かっていただきたい。『剣聖』ラインハルト殿」

 

「『剣鬼』!!」

 

我慢の限界だった、感情のままに動きヴィルヘルムに掴みかかっていた

 

強くはを噛み締め、奥歯がなる

ギチギチと奥歯が割れるんじゃ無いかと思えるほどに

 

「お前は!まだ!その選択をとるのか!」

 

冷たい目が見つめている、今のレインにはその冷たい目すら、怒りの炎を燃え上がらせる燃料にしかならなかったり

 

「何なんだよ!逃げたと思えば寄り添い始めて!まだ逃げんのかよ!」

 

「レイン殿どうか落ち着いて下さい」

 

「黙れよ!お前は!お前は何回ラインハルトに英雄なんざくだらないものを背負わせる!お祖母様が死んだのはラインハルトのせいなんかじゃ無い!ただ相手が悪かったんだよ!」

 

怒鳴り、そう声を荒げ肩で息をし言い切った直後、何かに気づいたように怯えて、口を押さえ始めた

 

魔女の存在自体は言っていないため契約違反にはならない

 

「兄様…僕は大丈夫ですだから、落ち着いてください」

 

レインの肩に手を置き、優しい声で言い放ったラインハルトにレインはただ無言のままその声に従うしか無かった

 

笑みを浮かべてはいたが、ラインハルトの顔を見てレインの顔は、悲しげに眉を顰めラインハルトをただ見つめていた

 

「大丈夫なわけないだろ…」

 

「大丈夫です、僕は兄様の弟です」

 

「っ!」

 

ラインハルトがレインにどれだけの幻想を抱いているのかは分からなかったでも、それでも、その考えは払拭しなければならない、そう感じた

 

だがレインがラインハルトにその行為を止めさせる権利などないのだ、先に約束を破りラインハルトを突き放したのはレインなのだから

 

それを理解した、今止めることも出来ず、ただ空いた口を閉ざす

 

「…っ」

 

守るためという言い訳で、弟を突き放し傷つけ1人にした、その罪は消えることはない

それはレイン自身も理解していた

 

「…」

 

小さくなっていくヴィルヘルムの背を睨みつけ、去ろうとするラインハルトの背に語る

 

「ラインハルト、嘘をつくぐらいなら全部捨てちまえ、そんな顔をするぐらいなら…英雄なんて重荷捨てちまえよ…今はフェルト様達が頼れる奴が沢山いるんだろ…」

 

「兄様僕は嘘なんてついていません」

 

「…俺はお前の兄だ、お前の嘘ぐらいわかる」

 

わかりたかった、だから必死に見ていた、ずっと見て嘘をつく時にする仕草を見つけて大丈夫かを見て心配して

 

「…大丈夫です、兄様は心配しすぎです」

 

足りないのか 

 

飛ぶように去っていくラインハルトの背を見つめることしかできなかった

 

もうない、あったこと自体なかったことにされた、刺された腹を撫でる

 

痛みはない

ただあの魔女が近くにいるのではないかという恐怖感だけがある

テレシアが死ぬ要因をつくったのはパンドラだ、そして屍兵としてこの場にテレシアがいた、ならば自然時にパンドラの存在と結びつけてしまう

 

「何なんだよ!お前も!アイツらも!」

 

泣きそうな声で叫ぶハインケル

 

父様

 

声をかけ、手を伸ばそうとしたがすぐにやめた

 

母様には父様が必要なんだ、だから

 

言葉を発しそうになる唇を噛む

 

「お前だって!ラインハルトが嫌いなんじゃないのか!『剣聖』の座も奪われて!いつもいつも比べられて!天才には届かない差を毎日見せつけられて!レイン!お前は俺とおんなじじゃないのかよ!」

 

すがるように叫ばれた

その姿を見ても失望しることが出来なかった

 

「…父様、俺は…」

 

父様と同じなら別にいいし、ラインハルトは俺の弟ですごい奴なんだだから嫌いにはなれない。

 

声に出そうになった言葉を噛み殺す、きっと嫌絶対にこの言葉を声に出すことは許されない

 

あの日から父親を拒絶した日から、ずっと本音で語り合えないこの状況を何度も恨んだ

少しでも話せるのであれば、出来たならば酒浸りの日々を解消できたかもしれない、こんなに思い詰めさせる必要がなかったかもしれない

 

「俺は誰とも同じにはなれない」

 

なっては行けない、魔女に愛されるなんて

 

あの時と片目を失い突き放した日と似たような失望した顔をされ、目を逸らしまた逃げることにした

 

逃げるしか出来なかった

 

いつだって逃げる事しか出来ないから




ルアンナが眠り姫になってから心配して様子をよく見に来ていたので、レインはテレシアに結構懐いていた。
レインは何があっても家族を嫌いになりきれない可哀想な奴なのです、嫌いになれたならば少しは楽になれるのに。

ハッピーエンドに決まりました!

  • ラインハルトルート(和解)
  • パンドラルート
  • どっちも
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